37 / 50
第37話 正義の置き土産
しおりを挟む
「シトリーネ様お帰りなさい。見て下さい、あの宝箱開けられましたよ! こんなのが入っていました! この壺自体もかなり値打ちがありそうですが、中に何が入っているのかも気になりますね!」
そう言ってマルセリカはハイテンションで金庫の中に入っていた不思議な装飾が施された壺を掲げた。
「今はそんな状況じゃないけど、少しぐらいならまあいいでしょう。その壺の中身を改めたらすぐにゴースト達の対策を練りますよ」
「はーい」
陶器製のその壺には蓋がされており、お札によって封印が施されていた。
どう見ても何か悪しきものが封印されているとしか思えない壺だ。
日本人からしたら思わず中身を改めるのを躊躇うような見た目だが、異世界人である彼らにはそういった感性はない。
「それではお宝とご対面!」
マルセリカはお札をビリビリと破り一気に蓋を開けた。
その瞬間壺の中から出てきたのはお宝ではなく、夥しい量の黒い霧が噴出した。
「うわっ、なにこれ?」
マルセリカは驚きのあまり壺を放り投げる。
「これは……まずい! バリアウォール!」
シトリーネは咄嗟に結界魔法を発動させるが、自分の身を守るので精いっぱい。
他のギルドメンバーは一瞬にして全身に黒い霧を浴びてしまった。
「うわあああああああああ! 何だこれは!?」
「きゃあああああああああ」
「ごほっ、ごほっ、く……苦しい……」
仲間達の悲鳴と怒号が響き渡る。
「なんて事……これは魔王の呪いに違いない……」
如何に桁外れの魔力を有するシトリーネとはいえ、魔王の呪いには抵抗できない。結界の内側でその様子を黙って眺めている事しかできなかった。
「う……あ……」
仲間達の悲鳴はやがて呻き声へと変わっていく。
「があああああああ!」
「ぎゃあっ!」
ケルピムが手にした斧で仲間である魔法使いウーナの頭を唐竹割りにしたのが見えた。
彼の意識は既に魔王の呪いによる狂気に支配されていた。
「くっ、このままでは全員同志討ちで死んでしまう……こうなったら……バリアウォール!」
シトリーネは仲間達ひとりひとりに個室のような結界を作り出しその中に閉じ込める。
「があっ!」
閉じ込められた冒険者達は結界を破ろうと得物を手に暴れまわるが、シトリーネの強大な魔力によって作り出された結界は傷一つ付かない。
これで少なくとも同志討ちは避けられるはずだ。
後は呪いを解く方法を見つけ出せば仲間達を助けられるかもしれない。
ひとつ心当たりがある。
聖女フィロリーネがまだ生きていればその聖なる力で魔王の呪いを浄化できるかもしれないとシトリーネは考えた。
この村が六芒星の形をしている事は把握した。
そしてその頂点に当たる場所には何らかの施設がある。
そこを順番に当たればきっと生きている仲間達と合流できるはずだ。
「うが……」
「がああっ!」
仲間達は結界の中で暴れ続けている。
「まだ助けられるかもしれないからしばらくこの中でじっとしてて」
シトリーネは仲間達を結界の中に閉じ込めたまま、フィロリーネを探す為にその場所を離れようとした時だった。
「うがあ……」
狂気に捕らわれたロンティアはそれでも普通の武器では結界が破れないと理解し、先程回収した猟銃を手にする。
彼女のハンターとしての本能がその異界の武器の使い方を瞬時に把握させた。
ロンティアは結界に向けて猟銃を構え引き金を引く。
バァン!
何十年も手入れされずにいた銃がまともに撃てるはずはない。
銃は暴発し、ロンティアの身体をバラバラに吹き飛ばした。
「う……あ……」
魔法使い達はそれに倣うように結界に向けて爆裂魔法や炎魔法を放つ。
閉ざされた結界の中ではエネルギーの逃げ場がない。
彼らは皆自らの魔法の威力に巻き込まれてある者は四肢を飛ばされ、ある者は灰となって息絶えた。
魔法を使えない者も例外ではない。
自分達の力では結界が破れないと分かると、その矛先を自分自身に向ける。
自らが手にした刃を自らに向けて振り下ろし、皆自殺にも等しい最期を遂げていった。
いかに強大な魔力を持つシトリーネとはいえ魔王の呪いに侵された仲間を救う手立ては持ち合わせておらず、仲間達が無残に死んでいく様をただ眺めている事しかできなかった。
そう言ってマルセリカはハイテンションで金庫の中に入っていた不思議な装飾が施された壺を掲げた。
「今はそんな状況じゃないけど、少しぐらいならまあいいでしょう。その壺の中身を改めたらすぐにゴースト達の対策を練りますよ」
「はーい」
陶器製のその壺には蓋がされており、お札によって封印が施されていた。
どう見ても何か悪しきものが封印されているとしか思えない壺だ。
日本人からしたら思わず中身を改めるのを躊躇うような見た目だが、異世界人である彼らにはそういった感性はない。
「それではお宝とご対面!」
マルセリカはお札をビリビリと破り一気に蓋を開けた。
その瞬間壺の中から出てきたのはお宝ではなく、夥しい量の黒い霧が噴出した。
「うわっ、なにこれ?」
マルセリカは驚きのあまり壺を放り投げる。
「これは……まずい! バリアウォール!」
シトリーネは咄嗟に結界魔法を発動させるが、自分の身を守るので精いっぱい。
他のギルドメンバーは一瞬にして全身に黒い霧を浴びてしまった。
「うわあああああああああ! 何だこれは!?」
「きゃあああああああああ」
「ごほっ、ごほっ、く……苦しい……」
仲間達の悲鳴と怒号が響き渡る。
「なんて事……これは魔王の呪いに違いない……」
如何に桁外れの魔力を有するシトリーネとはいえ、魔王の呪いには抵抗できない。結界の内側でその様子を黙って眺めている事しかできなかった。
「う……あ……」
仲間達の悲鳴はやがて呻き声へと変わっていく。
「があああああああ!」
「ぎゃあっ!」
ケルピムが手にした斧で仲間である魔法使いウーナの頭を唐竹割りにしたのが見えた。
彼の意識は既に魔王の呪いによる狂気に支配されていた。
「くっ、このままでは全員同志討ちで死んでしまう……こうなったら……バリアウォール!」
シトリーネは仲間達ひとりひとりに個室のような結界を作り出しその中に閉じ込める。
「があっ!」
閉じ込められた冒険者達は結界を破ろうと得物を手に暴れまわるが、シトリーネの強大な魔力によって作り出された結界は傷一つ付かない。
これで少なくとも同志討ちは避けられるはずだ。
後は呪いを解く方法を見つけ出せば仲間達を助けられるかもしれない。
ひとつ心当たりがある。
聖女フィロリーネがまだ生きていればその聖なる力で魔王の呪いを浄化できるかもしれないとシトリーネは考えた。
この村が六芒星の形をしている事は把握した。
そしてその頂点に当たる場所には何らかの施設がある。
そこを順番に当たればきっと生きている仲間達と合流できるはずだ。
「うが……」
「がああっ!」
仲間達は結界の中で暴れ続けている。
「まだ助けられるかもしれないからしばらくこの中でじっとしてて」
シトリーネは仲間達を結界の中に閉じ込めたまま、フィロリーネを探す為にその場所を離れようとした時だった。
「うがあ……」
狂気に捕らわれたロンティアはそれでも普通の武器では結界が破れないと理解し、先程回収した猟銃を手にする。
彼女のハンターとしての本能がその異界の武器の使い方を瞬時に把握させた。
ロンティアは結界に向けて猟銃を構え引き金を引く。
バァン!
何十年も手入れされずにいた銃がまともに撃てるはずはない。
銃は暴発し、ロンティアの身体をバラバラに吹き飛ばした。
「う……あ……」
魔法使い達はそれに倣うように結界に向けて爆裂魔法や炎魔法を放つ。
閉ざされた結界の中ではエネルギーの逃げ場がない。
彼らは皆自らの魔法の威力に巻き込まれてある者は四肢を飛ばされ、ある者は灰となって息絶えた。
魔法を使えない者も例外ではない。
自分達の力では結界が破れないと分かると、その矛先を自分自身に向ける。
自らが手にした刃を自らに向けて振り下ろし、皆自殺にも等しい最期を遂げていった。
いかに強大な魔力を持つシトリーネとはいえ魔王の呪いに侵された仲間を救う手立ては持ち合わせておらず、仲間達が無残に死んでいく様をただ眺めている事しかできなかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
魔斬
夢酔藤山
歴史・時代
深淵なる江戸の闇には、怨霊や妖魔の類が巣食い、昼と対なす穢土があった。
その魔を斬り払う闇の稼業、魔斬。
坊主や神主の手に負えぬ退魔を金銭で請け負う江戸の元締は関東長吏頭・浅草弾左衛門。忌むべき身分を統べる弾左衛門が最後に頼るのが、武家で唯一の魔斬人・山田浅右衛門である。昼は罪人の首を斬り、夜は怨霊を斬る因果の男。
幕末。
深い闇の奥に、今日もあやかしを斬る男がいる。
2023年オール讀物中間発表止まりの作品。その先の連作を含めて、いよいよ御開帳。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる