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海誓山盟明和暗(不変の誓い)
127:陰謀詭秘(三)
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「見間違うな!」
毅然と煬鳳たちに叫ぶ声。
それは凰神偉だ。
「閑白の使う術は、確かに良くできてはいるが、単に姿形を写し取り、仮初めの肉体を与えているに過ぎない。いわば見た目だけそっくりの紙傀儡だ!」
「紙傀儡だって!?」
煬鳳は驚いて声をあげ、そして翳冥宮の人々――の偽物を見る。
初めは確かに閑白の羽が紙片へと変わり、そして人の姿に変わったはずだが、こうして見ても彼らは紙傀儡であるなんて、とても思うことはできない。
「そういえば……。以前、閑白が魔界で自分の分身を作り出した術も、魔界の皇帝すら見破ることができないほど、精巧な紙傀儡でしたね」
しかし凰黎の言葉で、そんなこともあったと思い出す。
閑白が作り出した紙でできた己の分身は、魔界の皇帝すら騙すことができたのだ。それほどの効力であるならば、目の前の彼らが紙であってもなんらおかしいことはない。
「で、でも、この人たちが紙傀儡としても、魂魄は本物なんじゃないか?」
躊躇いがちに凰神偉に言った煬鳳だったが、凰神偉は動じる様子もなく煬鳳を一瞥する。なぜか煬鳳は余計なことを言ったように感じ、気まずさを感じてしまう。
「本当にこの場所に翳冥宮の人々の魂魄があるのなら、ここまで激しく閑白は怒り散らしたりしないだろう。本来であれば今に至るまでの間にもっと彼らの魂魄を利用していたはずで、出来なくなったからこそ小宮主に怒りを向けたのだ。先ほども言ったが、あの術は姿形を写し取っただけの、存在しないものを、さも存在するかのように作り出す。実体を持った幻術のようなものであり、そこに当人の意志も魂魄も必要としない」
涼しい顔で凰黎と会話を続ける凰神偉に、閑白が顔を真っ赤にして怒り散らす。
「おのれ恒凰宮の宮主! 余計なことを!」
閑白が袖を振れば、紙傀儡たちが凰神偉に襲い掛かる。凰黎と同じ色の淡い燐光を凰神偉が纏えば幾多の光の剣が降り注ぎ、紙傀儡たちを縫い留めた。
「万物の理に於いて、紙は人に非ざれば、幻もまた真実に非ず。則ち紙人は紙に、幻は無に。――天地の常経に従いて、急々として太上の勅命が如くせよ。……消え去れ!」
凰神偉の声に呼応するかのように、淡い光に包まれた紙傀儡は次々に人の姿を失い、元の紙へと還ってゆく。
――まるで、元からそこには何も存在しなかったかのように。
まさに彼の言う通り、幻は幻であり――何も無かったのだ。
煬鳳はほっと胸を撫でおろし、凰黎に向かって微笑んだ。思えば本当にあれが翳冥宮の人々であったのならば、悲しみの感情で埋め尽くされてこの場所は淀みきっていたかもしれない。そう考えれば、やはり凰神偉の言ったように、彼らはただの姿だけを写し取った幻の存在というのも納得のゆく話だった。
「ふ……ふふふ……」
己の手駒が消えたというのに、閑白は動揺もなく笑っている。確かに彼は小細工など使わなくとも十分すぎるほど強い。だからなのだろうか、煬鳳は閑白の様子をじっと見つめた。
「なかなかやるじゃないか。それならこいつはどうだ?」
この状況を楽しんでいるのか、閑白の声は楽しそうに聞こえる。先程まで怒り狂っていた人物とは思えない。それか――余程とっておきのものがあるのだろうか。
閑白は白い羽を投げつける。
匕首へと姿を変えた羽は、凰神偉に襲い掛かったが、凰神偉は袖のひと振りでそれらを払い除ける。しかし、払った瞬間にくり出された閑白の攻撃を受けきることができず、思い切り後方へと吹っ飛んだ。
「兄上!」
凰黎が駆け寄ろうとしたが、凰神偉に「来るな!」と止められる。
煬鳳には凰黎の気持ちが痛いほど分かったが、それでも凰黎の手を引いて、
「駄目だ、いまは兄貴の言葉に従おう」
と、訴えた。
凰神偉は次なる攻撃をはじき返すと閑白に向かって言い放つ。
「答えろ。なぜ翳冥宮を乗っ取ろうとした? 恒凰宮ではなく、なぜ翳冥宮だった?」
辛うじて持ちこたえてはいるが、それでも凰神偉は閑白の攻撃を防ぐのでやっとの様子。やはり仙界の者である閑白と一対一でやりあうことは、宮主である彼ですら困難を極めるのだろう。
「決まってる、翳冥宮のほうが簡単だったからだ! 恒凰宮の内側に入り込むのは難しいが翳冥宮は恒凰宮よりは容易い。双宮どちらかが無くなれば原始の谷を開くことは永遠にできなくなる、そうだろう?」
「お前は、それだけのために!?」
「それだけじゃないさ!」
閑白が叫ぶ。
「ついでに魔界に恩を売ってやりゃ、魔界も私たちを無碍にはできなくなるだろう?」
「随分とまあ……俗世に染まった考えだな。呆れたものだ!」
「地べたを這いつくばってる奴に言われる筋合いはない!」
閑白が凰神偉を蹴り飛ばす。あっと凰黎が叫んだ瞬間に、馬乗りになった閑白の持つ刃が凰神偉の頭上に振り下ろされた。
「兄上ーーーーっ!」
叫ぶ凰黎の声とほぼ同時のことだ。
凰神偉の上にいたはずの閑白が、広間の壁に飛んで行った。壁が脆かったのか、力が強かったのか、どちらかは分からない。しかし、閑白がぶつかった壁は音を立てて崩れ落ち、閑白の眼前にはゆっくりと立ち上がる翳黒明の姿があった。
「小癪な……魂魄だけの存在の癖に!」
閑白が翳黒明を睨みつけ、翳黒明は手に持った剣を静かに構える。
翳冥宮の復興を夢見たはずの彼ではあったが、間違いなくいまは――刺し違えてでも閑白を葬る気でいるようだ。先程まで震えていた剣先も、覚悟を決めたいまとなっては、水が打ったように静けさを取り戻している。
凰黎と煬鳳はすぐさま凰神偉を助け起こしに走ったが、助け起こされるなり凰神偉は「私は平気だから、翳黒明の力になってやれ」と言ってくる。
「そう言わないでくださいよ、兄上のことを心配しているんですよ、凰黎は」
兄上、と呼ばれた凰神偉の眉がぴくりと動いたが、
「せめて貴殿だけでも彼の力になってやりなさい。彼はいま、一人なのだから」
と、やはり煬鳳は背中を押し返されてしまった。
「ああもう、師兄の身体なんだから、絶対無茶するなよ……!」
小さい声で彩藍方がそう言ったのが聞こえたが、流石に空気を読んで大声では叫ばなかったようだ。無慈悲にも聞こえるが『命を懸けてもあいつを倒せ』というよりはまだ『無茶するな』のほうが翳黒明にも優しいかもしれない。
翳黒明と閑白とは互いに構え、睨みあっている。
閑白は強い。煬鳳も首の痣のことがあったとはいえ閑白に一矢報いるのが精一杯で凰神偉でさえも本気の閑白に押され気味だった。
対して翳黒明は借りている体の制限を受けており、本来の自分の力の全てを使うことはできない。
それでも翳黒明は閑白を睨みつけ、はっきりした声で言い放った。
「お前は百年にわたって俺たちを、翳冥宮の人たちを傷つけてきた。その責めは負って貰おう」
「はっ、よくもまあ被害者ぶるものだな?」
閑白はそんな翳黒明の言葉を笑い飛ばす。
「元はといえば自分で蒔いた種だろう。お前が一度でも問題に真摯に向き合っていたのなら結果は違ったのではないか? 結局、お前は自分がやってきたことのツケを、私に転嫁しようとしているだけだ!」
「それでも……っ」
翳黒明が走り出す。
振りかぶった剣と閑白の持つ刃とが激しい音を立てて交錯する。その激しさのあまり、火花が飛び散ったようにすら見えた。
「俺に罪があるように、お前にも罪がある! お前こそ、俺に全てを擦り付けて何事もなかったような顔をするんじゃない!」
「その減らず口、翳冥宮の奴らにも聞かせてやりたかったぞ! 翳黒明! 全く、お前と来たら本当に私の邪魔をしてくれる! いまも、そして過去も! お前が戻ってきたあとで翳冥宮の人間たちを跡形もなく消し飛ばしてくれたお陰で、私は何も手柄を持ち帰ることはできず、ただ翳冥宮を捨てて戻る羽目になったのだ!」
それは違う――煬鳳には、腕の中にいる黒曜がそう叫びたいのが分かった。
(黒明は怒りでそうしたんじゃない。今度こそ、翳冥宮の人たちがちゃんと眠れるように……死んでもなお、その体を利用されることが無いようにしたんだ……!)
煬鳳は震える黒曜をそっと撫でる。幼い頃から生まれ育った場所の人々に己の手で引導を渡さねばならないこと、その辛さはいかほどのものだろうか。
だからこそ一度は正気に戻った翳黒明も、彼らを葬ったとき再び心を失ってしまったのだ。
「なら、こいつにも直接言ってやれ! 己に罪はないってな、仕方がなかったんだとな!」
叫んだ閑白は片手を空に向かって突き上げた。翳冥宮の天井が崩れ落ち、暗雲渦巻く天が見える。白い光が空から降ってきたかと思うと、煬鳳たちの目の前に轟音を立てて落ちてきた。
「煬鳳、危ない!」
凰黎が咄嗟に煬鳳に覆いかぶさる。煬鳳は凰黎の腕の中で、翳黒明の無事を確かめようとしたが、光が強すぎて目の前が真っ白になってしまった。
毅然と煬鳳たちに叫ぶ声。
それは凰神偉だ。
「閑白の使う術は、確かに良くできてはいるが、単に姿形を写し取り、仮初めの肉体を与えているに過ぎない。いわば見た目だけそっくりの紙傀儡だ!」
「紙傀儡だって!?」
煬鳳は驚いて声をあげ、そして翳冥宮の人々――の偽物を見る。
初めは確かに閑白の羽が紙片へと変わり、そして人の姿に変わったはずだが、こうして見ても彼らは紙傀儡であるなんて、とても思うことはできない。
「そういえば……。以前、閑白が魔界で自分の分身を作り出した術も、魔界の皇帝すら見破ることができないほど、精巧な紙傀儡でしたね」
しかし凰黎の言葉で、そんなこともあったと思い出す。
閑白が作り出した紙でできた己の分身は、魔界の皇帝すら騙すことができたのだ。それほどの効力であるならば、目の前の彼らが紙であってもなんらおかしいことはない。
「で、でも、この人たちが紙傀儡としても、魂魄は本物なんじゃないか?」
躊躇いがちに凰神偉に言った煬鳳だったが、凰神偉は動じる様子もなく煬鳳を一瞥する。なぜか煬鳳は余計なことを言ったように感じ、気まずさを感じてしまう。
「本当にこの場所に翳冥宮の人々の魂魄があるのなら、ここまで激しく閑白は怒り散らしたりしないだろう。本来であれば今に至るまでの間にもっと彼らの魂魄を利用していたはずで、出来なくなったからこそ小宮主に怒りを向けたのだ。先ほども言ったが、あの術は姿形を写し取っただけの、存在しないものを、さも存在するかのように作り出す。実体を持った幻術のようなものであり、そこに当人の意志も魂魄も必要としない」
涼しい顔で凰黎と会話を続ける凰神偉に、閑白が顔を真っ赤にして怒り散らす。
「おのれ恒凰宮の宮主! 余計なことを!」
閑白が袖を振れば、紙傀儡たちが凰神偉に襲い掛かる。凰黎と同じ色の淡い燐光を凰神偉が纏えば幾多の光の剣が降り注ぎ、紙傀儡たちを縫い留めた。
「万物の理に於いて、紙は人に非ざれば、幻もまた真実に非ず。則ち紙人は紙に、幻は無に。――天地の常経に従いて、急々として太上の勅命が如くせよ。……消え去れ!」
凰神偉の声に呼応するかのように、淡い光に包まれた紙傀儡は次々に人の姿を失い、元の紙へと還ってゆく。
――まるで、元からそこには何も存在しなかったかのように。
まさに彼の言う通り、幻は幻であり――何も無かったのだ。
煬鳳はほっと胸を撫でおろし、凰黎に向かって微笑んだ。思えば本当にあれが翳冥宮の人々であったのならば、悲しみの感情で埋め尽くされてこの場所は淀みきっていたかもしれない。そう考えれば、やはり凰神偉の言ったように、彼らはただの姿だけを写し取った幻の存在というのも納得のゆく話だった。
「ふ……ふふふ……」
己の手駒が消えたというのに、閑白は動揺もなく笑っている。確かに彼は小細工など使わなくとも十分すぎるほど強い。だからなのだろうか、煬鳳は閑白の様子をじっと見つめた。
「なかなかやるじゃないか。それならこいつはどうだ?」
この状況を楽しんでいるのか、閑白の声は楽しそうに聞こえる。先程まで怒り狂っていた人物とは思えない。それか――余程とっておきのものがあるのだろうか。
閑白は白い羽を投げつける。
匕首へと姿を変えた羽は、凰神偉に襲い掛かったが、凰神偉は袖のひと振りでそれらを払い除ける。しかし、払った瞬間にくり出された閑白の攻撃を受けきることができず、思い切り後方へと吹っ飛んだ。
「兄上!」
凰黎が駆け寄ろうとしたが、凰神偉に「来るな!」と止められる。
煬鳳には凰黎の気持ちが痛いほど分かったが、それでも凰黎の手を引いて、
「駄目だ、いまは兄貴の言葉に従おう」
と、訴えた。
凰神偉は次なる攻撃をはじき返すと閑白に向かって言い放つ。
「答えろ。なぜ翳冥宮を乗っ取ろうとした? 恒凰宮ではなく、なぜ翳冥宮だった?」
辛うじて持ちこたえてはいるが、それでも凰神偉は閑白の攻撃を防ぐのでやっとの様子。やはり仙界の者である閑白と一対一でやりあうことは、宮主である彼ですら困難を極めるのだろう。
「決まってる、翳冥宮のほうが簡単だったからだ! 恒凰宮の内側に入り込むのは難しいが翳冥宮は恒凰宮よりは容易い。双宮どちらかが無くなれば原始の谷を開くことは永遠にできなくなる、そうだろう?」
「お前は、それだけのために!?」
「それだけじゃないさ!」
閑白が叫ぶ。
「ついでに魔界に恩を売ってやりゃ、魔界も私たちを無碍にはできなくなるだろう?」
「随分とまあ……俗世に染まった考えだな。呆れたものだ!」
「地べたを這いつくばってる奴に言われる筋合いはない!」
閑白が凰神偉を蹴り飛ばす。あっと凰黎が叫んだ瞬間に、馬乗りになった閑白の持つ刃が凰神偉の頭上に振り下ろされた。
「兄上ーーーーっ!」
叫ぶ凰黎の声とほぼ同時のことだ。
凰神偉の上にいたはずの閑白が、広間の壁に飛んで行った。壁が脆かったのか、力が強かったのか、どちらかは分からない。しかし、閑白がぶつかった壁は音を立てて崩れ落ち、閑白の眼前にはゆっくりと立ち上がる翳黒明の姿があった。
「小癪な……魂魄だけの存在の癖に!」
閑白が翳黒明を睨みつけ、翳黒明は手に持った剣を静かに構える。
翳冥宮の復興を夢見たはずの彼ではあったが、間違いなくいまは――刺し違えてでも閑白を葬る気でいるようだ。先程まで震えていた剣先も、覚悟を決めたいまとなっては、水が打ったように静けさを取り戻している。
凰黎と煬鳳はすぐさま凰神偉を助け起こしに走ったが、助け起こされるなり凰神偉は「私は平気だから、翳黒明の力になってやれ」と言ってくる。
「そう言わないでくださいよ、兄上のことを心配しているんですよ、凰黎は」
兄上、と呼ばれた凰神偉の眉がぴくりと動いたが、
「せめて貴殿だけでも彼の力になってやりなさい。彼はいま、一人なのだから」
と、やはり煬鳳は背中を押し返されてしまった。
「ああもう、師兄の身体なんだから、絶対無茶するなよ……!」
小さい声で彩藍方がそう言ったのが聞こえたが、流石に空気を読んで大声では叫ばなかったようだ。無慈悲にも聞こえるが『命を懸けてもあいつを倒せ』というよりはまだ『無茶するな』のほうが翳黒明にも優しいかもしれない。
翳黒明と閑白とは互いに構え、睨みあっている。
閑白は強い。煬鳳も首の痣のことがあったとはいえ閑白に一矢報いるのが精一杯で凰神偉でさえも本気の閑白に押され気味だった。
対して翳黒明は借りている体の制限を受けており、本来の自分の力の全てを使うことはできない。
それでも翳黒明は閑白を睨みつけ、はっきりした声で言い放った。
「お前は百年にわたって俺たちを、翳冥宮の人たちを傷つけてきた。その責めは負って貰おう」
「はっ、よくもまあ被害者ぶるものだな?」
閑白はそんな翳黒明の言葉を笑い飛ばす。
「元はといえば自分で蒔いた種だろう。お前が一度でも問題に真摯に向き合っていたのなら結果は違ったのではないか? 結局、お前は自分がやってきたことのツケを、私に転嫁しようとしているだけだ!」
「それでも……っ」
翳黒明が走り出す。
振りかぶった剣と閑白の持つ刃とが激しい音を立てて交錯する。その激しさのあまり、火花が飛び散ったようにすら見えた。
「俺に罪があるように、お前にも罪がある! お前こそ、俺に全てを擦り付けて何事もなかったような顔をするんじゃない!」
「その減らず口、翳冥宮の奴らにも聞かせてやりたかったぞ! 翳黒明! 全く、お前と来たら本当に私の邪魔をしてくれる! いまも、そして過去も! お前が戻ってきたあとで翳冥宮の人間たちを跡形もなく消し飛ばしてくれたお陰で、私は何も手柄を持ち帰ることはできず、ただ翳冥宮を捨てて戻る羽目になったのだ!」
それは違う――煬鳳には、腕の中にいる黒曜がそう叫びたいのが分かった。
(黒明は怒りでそうしたんじゃない。今度こそ、翳冥宮の人たちがちゃんと眠れるように……死んでもなお、その体を利用されることが無いようにしたんだ……!)
煬鳳は震える黒曜をそっと撫でる。幼い頃から生まれ育った場所の人々に己の手で引導を渡さねばならないこと、その辛さはいかほどのものだろうか。
だからこそ一度は正気に戻った翳黒明も、彼らを葬ったとき再び心を失ってしまったのだ。
「なら、こいつにも直接言ってやれ! 己に罪はないってな、仕方がなかったんだとな!」
叫んだ閑白は片手を空に向かって突き上げた。翳冥宮の天井が崩れ落ち、暗雲渦巻く天が見える。白い光が空から降ってきたかと思うと、煬鳳たちの目の前に轟音を立てて落ちてきた。
「煬鳳、危ない!」
凰黎が咄嗟に煬鳳に覆いかぶさる。煬鳳は凰黎の腕の中で、翳黒明の無事を確かめようとしたが、光が強すぎて目の前が真っ白になってしまった。
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