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うんうんと唸ってもいい考えは浮かばない。
このまま諦めて帰るか!
初めてのカフェをなんの前情報も無しに、突撃するか!ちなみに今、アプルの持っている情報はプリンだけだ。
動きが止まってしまったアプルを見かねて、ナーラとリアノはお互いに顔を見合わせ小さく頷く。
「アプルさん。もし良かったらなんですけど。」
「私たちもお付き合いしていいですか?」
「ほ、ほんと?いいの?」
「ただし、その服・・っ痛!」
リアノの言葉を遮って、ナーラが肘鉄をくらわせる。
「ちょっと、何をいうつもりよ!!」
「だって!一緒に行くのなら言いたい!ていうかナーラだって気になるでしょ!」
ナーラもリアノも二人ともチラチラとアプルを、正確には服を見ている。リアノを止めたナーラも結局気になるのか、促すように目配せをした。
「えっと、そのワンピースってアプルさんが選んだんですか?結構古くさ・・いやいや、レ、レトロ?みたいな?」
「レトロっていうのかなぁ?母のお下がりなの。妹のお下がりだとちょっときつくて。」
「母って、お母さんのワンピース?それにしても・・・」
プリーツのワンピースは少し前にレトロブームで流行った。しかしアプルの着ている首まで詰まった総プリーツのワンピース、しかもローウエストでは非常に太って見える。レトロとも言える小花柄は、このデザインではおばさ・・・かなり年上に見える。つまり・・・
「ダセぇです。はっきり言って!」
「リアノ、はっきり言い過ぎ!せめて、せめて・・・。なんて言えばいい?」
「ダサい・・・」
自分の持っている服で、まだマシな方と思っていたアプルはスカートをそっと持ち上げてみる。ほつれはないし、汚れてもいない。
「清潔な服だしダメかな?あとは図書館の制服しかないし・・・。」
誰も私のことなんか見てないよ。というと、お洒落なカフェに一緒に行くのにありえない!と捲し立てられ、アプルはだんだん気分が落ち込んでくる。
カフェとはアプルにとってハードルが高いようだ。
「ごめん、二人とも。今日はやめとくよ。色々教えてくれてありがとう。」
やっぱり私がカフェに行くなんて無理だよね。いつもの休日通り、パン屋にでも行って帰ろう。図書館から借りてきた本もある。
この後の休日の過ごし方を考えながら歩き出そうとすると、ナーラとリアノにガっシッと手を掴まれた。
「まって、待って!違います。」
「諦めないで下さい!アプルさん!!」
二人の剣幕にアプルは身を縮こませる。
「カフェってそんなにお洒落じゃなくてもいいんです。別に貴族の行くお店みたいにドレスコードがあるわけじゃないし。」
「ただ、アプルさんの服サイズも合ってないし、それしか服がないとか言われたらなんか、頭に来ちゃって!」
「ごめんなさい。服には興味が無くて。サイズって、着られればいいって思っていたから。」
「!!!ちょっとだけ、アプルさん。ちょっとだけ待っていてください!」
二人は俯いてしまったアプルから離れると小さな声で話し合う!!
「やっぱり!あの性悪ジョナールの言うことなんてあてにならないわ!何がお姉様はなんでも人のもの奪っていく、よ!」
「そんなの図書館で話した時からわかってたじゃない。でも、あの服はないわぁ。っていうかあの服以外碌な服がないって!!」
半年前の卒業式の時、ジョナール・リンゴニア侯爵令嬢とマックス第二王子殿下の婚約破棄という大スクープがあった。
だがナーラやリアノなど大半の女生徒にとって、それは予想した展開だった。ジョナールは第二王子殿下の婚約者だということを差し引いても傲慢で我儘な令嬢でいつかそうなるのではないかと思っていたのだ。
その上、最近になって学園ではジョナールがマックス第二王子の婚約者ではなかったと、衝撃的な話題が駆け抜けた。
元々ジョナールの姉が婚約者であったが、傲慢で我儘で、妹のジョナールのものをなんでも奪い取っていくなど酷い嫌がらせをするため、それを嫌ったマックスが、ジョナールを婚約者と望んだのだと。しかし姉の策略でジョナールの悪評を信じたマックスがジョナールに婚約破棄を叩きつけてしまった。ジョナールとマックスは真実の愛で結ばれるはずの恋人同士で、今は二人の愛が試されているのである、と。
こんな顎が外れるような話を本気で聞いている人間は多分いないだろう。
だが、性悪ジョナールが性悪だという姉は多分碌な人間ではないだろうというのが学園内での共通認識だ。
ナーラとリアノは、近衛騎士団のオーリーを目当てに図書館に通い始めてしばらく経ってからアプルが、あのアプル・リンゴニア元侯爵令嬢だと知った。
いつもぼんやりとした笑顔を見せるアプルはジョナールの妹にも、性悪にも見えなかったからだ。
そして今日、二人は確信した。
あんな流行遅れの母親のお古を押し付けられて、それを清潔だから良いと言って着る人間が、妹のものを奪うなんてありえない。
だいたいそれしかないってなんなんだ!!
二人はこれ見よがしにジョナールが来てくる、派手で豪華な衣装の数々を思い出して義憤に駆られたのだ。
ナーラとリアノは力強く頷き合うと、アプルの小柄な体を挟み込むように腕を取ると、朗らかに宣言した。
「アプルさん、服を買いに行きましょ!」
このまま諦めて帰るか!
初めてのカフェをなんの前情報も無しに、突撃するか!ちなみに今、アプルの持っている情報はプリンだけだ。
動きが止まってしまったアプルを見かねて、ナーラとリアノはお互いに顔を見合わせ小さく頷く。
「アプルさん。もし良かったらなんですけど。」
「私たちもお付き合いしていいですか?」
「ほ、ほんと?いいの?」
「ただし、その服・・っ痛!」
リアノの言葉を遮って、ナーラが肘鉄をくらわせる。
「ちょっと、何をいうつもりよ!!」
「だって!一緒に行くのなら言いたい!ていうかナーラだって気になるでしょ!」
ナーラもリアノも二人ともチラチラとアプルを、正確には服を見ている。リアノを止めたナーラも結局気になるのか、促すように目配せをした。
「えっと、そのワンピースってアプルさんが選んだんですか?結構古くさ・・いやいや、レ、レトロ?みたいな?」
「レトロっていうのかなぁ?母のお下がりなの。妹のお下がりだとちょっときつくて。」
「母って、お母さんのワンピース?それにしても・・・」
プリーツのワンピースは少し前にレトロブームで流行った。しかしアプルの着ている首まで詰まった総プリーツのワンピース、しかもローウエストでは非常に太って見える。レトロとも言える小花柄は、このデザインではおばさ・・・かなり年上に見える。つまり・・・
「ダセぇです。はっきり言って!」
「リアノ、はっきり言い過ぎ!せめて、せめて・・・。なんて言えばいい?」
「ダサい・・・」
自分の持っている服で、まだマシな方と思っていたアプルはスカートをそっと持ち上げてみる。ほつれはないし、汚れてもいない。
「清潔な服だしダメかな?あとは図書館の制服しかないし・・・。」
誰も私のことなんか見てないよ。というと、お洒落なカフェに一緒に行くのにありえない!と捲し立てられ、アプルはだんだん気分が落ち込んでくる。
カフェとはアプルにとってハードルが高いようだ。
「ごめん、二人とも。今日はやめとくよ。色々教えてくれてありがとう。」
やっぱり私がカフェに行くなんて無理だよね。いつもの休日通り、パン屋にでも行って帰ろう。図書館から借りてきた本もある。
この後の休日の過ごし方を考えながら歩き出そうとすると、ナーラとリアノにガっシッと手を掴まれた。
「まって、待って!違います。」
「諦めないで下さい!アプルさん!!」
二人の剣幕にアプルは身を縮こませる。
「カフェってそんなにお洒落じゃなくてもいいんです。別に貴族の行くお店みたいにドレスコードがあるわけじゃないし。」
「ただ、アプルさんの服サイズも合ってないし、それしか服がないとか言われたらなんか、頭に来ちゃって!」
「ごめんなさい。服には興味が無くて。サイズって、着られればいいって思っていたから。」
「!!!ちょっとだけ、アプルさん。ちょっとだけ待っていてください!」
二人は俯いてしまったアプルから離れると小さな声で話し合う!!
「やっぱり!あの性悪ジョナールの言うことなんてあてにならないわ!何がお姉様はなんでも人のもの奪っていく、よ!」
「そんなの図書館で話した時からわかってたじゃない。でも、あの服はないわぁ。っていうかあの服以外碌な服がないって!!」
半年前の卒業式の時、ジョナール・リンゴニア侯爵令嬢とマックス第二王子殿下の婚約破棄という大スクープがあった。
だがナーラやリアノなど大半の女生徒にとって、それは予想した展開だった。ジョナールは第二王子殿下の婚約者だということを差し引いても傲慢で我儘な令嬢でいつかそうなるのではないかと思っていたのだ。
その上、最近になって学園ではジョナールがマックス第二王子の婚約者ではなかったと、衝撃的な話題が駆け抜けた。
元々ジョナールの姉が婚約者であったが、傲慢で我儘で、妹のジョナールのものをなんでも奪い取っていくなど酷い嫌がらせをするため、それを嫌ったマックスが、ジョナールを婚約者と望んだのだと。しかし姉の策略でジョナールの悪評を信じたマックスがジョナールに婚約破棄を叩きつけてしまった。ジョナールとマックスは真実の愛で結ばれるはずの恋人同士で、今は二人の愛が試されているのである、と。
こんな顎が外れるような話を本気で聞いている人間は多分いないだろう。
だが、性悪ジョナールが性悪だという姉は多分碌な人間ではないだろうというのが学園内での共通認識だ。
ナーラとリアノは、近衛騎士団のオーリーを目当てに図書館に通い始めてしばらく経ってからアプルが、あのアプル・リンゴニア元侯爵令嬢だと知った。
いつもぼんやりとした笑顔を見せるアプルはジョナールの妹にも、性悪にも見えなかったからだ。
そして今日、二人は確信した。
あんな流行遅れの母親のお古を押し付けられて、それを清潔だから良いと言って着る人間が、妹のものを奪うなんてありえない。
だいたいそれしかないってなんなんだ!!
二人はこれ見よがしにジョナールが来てくる、派手で豪華な衣装の数々を思い出して義憤に駆られたのだ。
ナーラとリアノは力強く頷き合うと、アプルの小柄な体を挟み込むように腕を取ると、朗らかに宣言した。
「アプルさん、服を買いに行きましょ!」
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