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第三章 心魂定着 -しんこんていちゃく-

14 マジンゴ~~~

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「ようこそ。良い天気だね」
 青龍さん、今日はご機嫌な様子ンゴ。
「今が一番暖かい時期ですもの。気分も晴れやかですわ」
「それでも気温は17度から18度、といったところかな」
 僕にとっては、ただ立っているだけで汗が滴る陽気。リハビリで廊下を何往復か歩けば、着物は全部着替えないといけなくなる。今も、青龍さんの部屋まで数分の早足だけで、額やもみあげの辺りから汗が滝のように流れている。僕が肩で息をしているので、「どうぞ、まずは一息吐きましょう」座布団とお茶を勧められ、20分ほど、いつも通り3人で雑談をしたンゴ。

「耕作様、皇室の歴史については御詳しいでしょうか?」
「ンゴ?」
「本日は皇室の話をしながら記憶の定着を行いましょう。耕作様の時代の、天子様は分かりますか?」
 天子様……? ああ、天皇の事ンゴね。
「ン~ゴ……聞いた事あるンゴね」
「思い出せるかい?」
「明本……明憲……そんな感じだったンゴねえ~」
「平成天皇ですから、明仁様で御座います」
「ンゴ~、そんな名前だったンゴね。詳しいンゴね」
「それはもう。天子様に仕えるのがヤタガラスだからね」
 デスヨネ~。ドヤ顔で答える青龍さンゴ。
「では、第何代目かは分かるかい?」
「第125代天皇ンゴ! それはニュースで見たンゴ! 国会で天皇譲位の議論が始まったンゴ!」
「おお!」
「素晴らしいですわ! さすが耕作様です」
「ほう……」
 青龍さん、朱雀さん、そしてまたどこからともなく現れた玄武さん。3人が口々に賞賛の言葉を述べるンゴ。そんなに褒められると照れちゃうンゴ!
「……」
「……?」
 ん? なんでこんな微妙な空気? 僕、間違った? いつの間にか、また玄武さんいなくなったンゴし。
「合ってるンゴ?」
「さあ?」
「私は分かりませんわ」
「知らないンゴか~い!」
「何代目かまではね」
「えぇ……」
「逆に聞くけどさ、例えば会社で働いているとして」
「ンゴ?」
「創業数百年、または千年という老舗で」
「老舗ンゴ」
「百年前の西暦何年に、社長が誰で何代目の社長だったか、と聞かれて答えられると思う?」
「ン~ゴ、それは無理ンゴねえ」
「そういうことだよ」
 お、おう……? そ、そういう事ンゴ……ね。

「少し話を変えましょうか。耕作様、皇室に代々伝わる三種の神器。というものを御存知でしょうか」
「聞いた事あるンゴ」
「歴史に御詳しい、耕作様なら御存知だったと思います。日本の皇室に代々伝わる秘宝で御座います」
「ン~ゴ……?」
 確かに知っている気がするンゴねえ。
「三種の神器は、神話の時代より皇室に代々受け継がれてきた秘宝さ。天子様が代替わりする際に継承されてきたものなんだ」
「あ~ンゴ……知ってる気がするンゴ」
「今後、耕作様の心魂定着のために……いや、日本と皇室存続のために、一つないし二つは使うことになるだろうと考えている」
 青龍さんは立ち上がると、何か護符かお札のようなものを取り出したンゴ。
「そろそろ始めようか」
「な、何をするンゴ?」
「大丈夫。心配は要らないよ。体も良くなって、だいぶ記憶も戻っている。だけど、まだ戻らない記憶の奥底を呼び覚ましていくだけだから」
 嫌な予感がするンゴ。
「それは、思い出さないといけないンゴ?」
「そうだね。とても重要なことだよ。そのために、これを用意したんだ」

 厳かな雰囲気で、大事そうに奥の間から運んで来たのは、ブタのように大きな僕の顔よりも、更に一回りか二回り大きな円形の金属だった。広げた護符の上に載せられたそれは、黒ずんでるが、丁寧に磨き上げられているのが分かる。炎のような形をした、簡易な装飾が円形に施され、焚火かキャンプファイヤー、または太陽のようにも見えるンゴ。
「これは……何ンゴ?」
「八咫鏡。というものだよ。知っているかい?」
「ヤタノカガミ……?」
 聞いた事があるような、ないような? 失われた記憶のどこか、聞き覚えがある気がする。曖昧に、首を縦に振るンゴ。
「知っていたんだね。そうだろうとも。これこそが、三種の神器が一つ。八咫鏡だよ」
「ンゴ……ンゴォ!?」
 へぇ~……えっ!? マジンゴ? マジンゴ~ッ!? マジンゴ~~~~~Z!?

「先に忠告しておくよ。施術前に、この鏡の表側は見ないよう注意してね」
「ンゴ?」
「表側は磨き上げられた鏡面になっております。ここに、今から青龍が術を施し、過去の映像を映し出します。施術前の鏡面は……真実を映す鏡となっております。それを御覧になってしまいますと……」
「なってしまいますとンゴ……?」
 ゴクリ。なんだろうンゴ……?
「きっと後悔なさいます」
「ンゴー!」
 ズコーっとコケそうになった。えっ? 何それンゴ?
「……それだけンゴ?」
「はい」
「後悔するだけンゴ?」
「はい。大変、後悔なさるかと存じます」
「ン~ッゴ……」
 取り敢えず、見ない方がよさそうンゴね。

「では始めようか」
 青龍さんは、鏡の下に敷いた護符を1枚取ると、舞い踊り、護符を投げながら、祝詞を読み上げていったンゴ。
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