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第二章 皇八咫烏 -すめらぎやたがらす-

10 せ、世界を、救うンゴ……

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「当時のヤタガラスも、パンデミック阻止のため、あらゆる手立てを尽くしたんだ。その結果、日本は世界でも稀に見る、疫病に対抗し得た国になった。ヤタガラスの手の者が多く入り込み、日本の裏の顔でもあった台湾も同様。青龍の力で疫病を抑え込んだんだよ」
「台湾ゴ! 僕大好きンゴ~」
「青龍。耕作様が来たのは2016年ですよ。その先、未来の話をしても分からないでしょう」
「そうか……そうだね。兎に角、青龍隊は日本が滅亡の危機に瀕した際、表に出て秘術を行使し、日本を救う役目を担ってきたんだ」
 青龍さん思ったよりすごい人なンゴね。

「先刻までいた白虎隊は、主として肉体を使った仕事を行います。土木・運搬などから白兵戦まで、何でもやります。最後に玄武隊の役割ですが、主に謀略工作活動です。玄武隊も日本を守るため、歴史の裏で活躍しました」
「すごいンゴねえ」
 すごい。という言葉しか出ない。ヤタガラス。そんな組織があったなんて、知らなかったンゴ。

 ……って、僕、記憶もないンゴけどね!

「このように私たちヤタガラスは、日本を御守りするため、歴史の表裏で活動してきました。耕作様の魂をこの時代に御招きしたのも、そういう理由です」
「そういう……理由ンゴ?」
「耕作様には、日本を、世界を救って頂きたいのです」
「何を言って……?」
 ブタと呼ばれた僕が……呼ばれた? 誰に? 運動も出来ない。勉強も苦手。何の取柄もない。誰が呼んだか、僕はただのブタ野郎ですンゴ。
「どうか! どうか世界を救うために! 御力を貸して頂けませんか!」
 せ、世界を、救うンゴ……?
「ちょっと何言ってるか分からないンゴ」
「先ほども御話しましたように、日本が危機に陥った際、私たちヤタガラスが歴史に干渉し、日本を守って来ました。今がその時なのです」
「だからどういう……」
「朱雀、少し先走り過ぎだよ。記憶も心魂も、まだ完全には定着していないんだ。今日のところはこの辺にしよう」
「そうでした。耕作様、大変失礼致しました。御容赦下さい」
「いや、ビックリしただけンゴよ」

 よく分からない話を、いっぱい聞いた。頭が混乱する。ちょっと整理しよう。僕の名前は高橋耕作というらしい。何となく聞き覚えがあるような気がするンゴ。
 誰かに、僕はブタだと、そう言われ続けていた気がする。そして僕自身も、僕はブタ野郎だと思っている。このぶよぶよの体型がその印。僕を肥らせて食べようとしている、なんて心配は、もうしなくても大丈夫そうンゴね。
 昔の事は、あまり思い出せない。でも時々、無意識のうちに何か昔の事を喋っている様子。魂に染み付いた記憶、またはクセ、のようなものンゴか?
 朱雀さん、青龍さん、そして今、僕を肩に担ぎ上げて部屋まで運んでる、白虎さん。ヤタガラス。皇室に仕える秘密部隊で、日本を守るために暗躍してきた。今も暗躍している……これは本当ンゴ!?
 今は西暦で3500年代と言っていた。僕の魂だけを1500年前から……これは本当ンゴ!?
 世界が滅びる。人類が滅亡しかけている。そんな事って……本当だろうンゴか?

 部屋に戻ってからも、僕は色々と考えた。考えても何も分からなかった。僕自身の事も、あまり思い出せない。色々な事があり過ぎて、気分が悪い。もやもやした気持ち。軽いパニックになるンゴ。
 ただ、僕が家畜のブタのように人間に食べられる、という心配はしなくて大丈夫みたいなので、安心して食事が出来たし、体を動かすためのリハビリも、また始めるようになった。リハビリの成果はなかなか出ない一方で、食っちゃ寝生活を繰り返した成果はたっぷり出て、僕のお腹はまた一回り大きく膨らんだンゴ。

「お米は、やっぱりないンゴよね」
「はい。本当に申し訳ございません」
「それも第三次世界大戦の影響で?」
「はい。水田を耕す機械も、道具も、今はほとんど残っていないのです」
「残念ゴねえ」
「自生している稲から、少量の玄米でしたら、何とか御用意出来るかも知れません」
「ンゴ!?」
「御召し上がりになりますか」
「ンゴ! ンゴォ!」
「では明日、残っているか確認して参りますわ」
「ンゴ~! あ、あと僕、刺身も好きなンゴけど、鮮魚は手に入らないンゴ? お刺身も食べたいンゴねえ」
「も、申し訳……」
「あ、無理ンゴ?」
「はい……」
 深々と頭を下げて平謝りする朱雀さん。僕はまた慌てて両手を振って、先の言葉を打ち消したンゴ。
「沖縄だからあるかなって思っただけンゴ! 本当は魚より肉派ンゴ! 肉食系ンゴ!」
 せっかくの沖縄なのに、外は寒いし魚は獲れない。う~ん、残念。それともう一つ、気になる事があったンゴ。
「最近、佳久子さンゴ、見掛けないンゴねえ?」
「佳久子ですか。佳久子には、罰を与えております」
「罰ンゴ!?」
「はい、左様です。佳久子は少々、お喋りなところが御座いまして。軽すぎる口を閉じさせるためです」
「そ、そうなンゴね……」
 怒った表情でそう言う朱雀さん、ちょっと怖いンゴねえ。
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