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第一章 記憶喪失 -きおくそうしつ-

3 お米大好きンゴ!

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「立って移動するのは難しい御様子ですので、御食事はこちらの部屋に用意させます。少し御部屋の掃除をする間、こちらの隅へ……」
 恥ずかしさのあまり顔を両手で覆った状態まま、僕は座布団ごと引き摺るように部屋の隅へ移動させられた。女性3人に寄って集ってズボンを脱がされ、股間を弄られ、排出した体液を拭かれる。そんな初めての体験に僕は茫然自失。食卓が運び込まれ、てきぱきと食事の準備が整っていく。その様子を、僕は目だけで追っていたンゴ。

「御食事の準備が整いました。どうぞこちらへ」
 まだ夢心地。初体験後の賢者モードとは、こんな感じなのだろうか? そんな事を考えている間に、動けない僕はまた座布団ごと部屋の真ん中へ。30~40センチほどの高さの、背が低く小さな食卓。旅館で食事の際に出されるような。ちゃぶ台、とか、座卓、というのだろうか? そこには幾つかのお皿と料理が並べられていたンゴ。
 魚を焼いたもの。これは何の魚だろう? あまり詳しくないので分からない。掌より少し小さい川魚の丸焼きが2尾。何かの肉を焼いたもの。牛肉かな? バナナが房ごと。まだ少し青みの残るバナナが十本ぐらい付いている。それと、これはヤシの実? 茶色っぽい、固い外皮の果実に、金属製のストローのようなものが刺してある。果汁を飲めば良いンゴ?

「さあさ、どうぞ御召し上がり下さい」
「あの、白いご飯ってあるンゴ?」
「ご飯……白米、でしょうか?」
「そうンゴ! お米大好きンゴ!」
「も、申し訳ありません!」
 そんなに泣きそうな瞳で謝らないで欲しいンゴ……
「白米は、その……今は御出し出来ないのです! 申し訳御座いませんっ!」
「あ、だ、大丈夫ンゴ。あったらいいンゴねえ~って思っただけンゴ。また今度、ある時でいいンゴよ」
 朱雀さん、佳久子さん、眞代子さん。3人は顔を見合わせると、申し訳なさそうにもう一度、深々とお辞儀をしたンゴ。
「い、頂きますンゴ……」
 3人がジッと見詰める中、僕は一人、箸を手に取る。食べづらいンゴ……
「あの~、皆さんは食べないンゴ?」
「私どもは、後ほど別のものを頂きます」
「そうンゴ……? い、一緒に食べた方が、ほら、美味しいンゴ? 皆さんも一緒に、どうンゴ?」
 また顔を見合わせる3人。
「いいえ、そういうわけには参りません。どうぞ、私どもは気にせず、御召し上がり下さいませ」
「それとも、御箸を持つ手が動きませんか? 食べさせて差し上げた方が宜しいでしょうか?」
「だっ! 大丈夫ンゴ!」
 慌てて箸を持つ手を動かし、魚の身をほぐすと、口に運んでみせたンゴ。
「ほら、ね? 自分で出来るンゴ! それより、テレビか何か、BGM代わりに見たいンゴねえ」
「も、申し訳御座いません!」
「あ~大丈夫ンゴ! もうほら、美味しく頂くンゴ!」
 無言の女性3人に見られながらの食事。味は、美味しかった、ような気がする。実際は緊張して、ほとんど味が分からなかったンゴ。

「ご馳走様ンゴ」
「御粗末様でした。綺麗に御食べになられましたね」
 微笑みかけてくれる朱雀さん。ニッコリ笑うと、美人が一層美人になるンゴ。
「デブを甘く見てはいけないンゴよ。伊達に太ってないンゴ!」
 何の自慢だろう? よく分からないけど、兎に角そう言っておいた。十本ほどのバナナには苦戦したけどね! 食べ物は残してはいけない。テーブルに並んでたものは、全部平らげたンゴ。
「もう少し、召し上がられますか?」
「いや~もう結構ンゴ、お腹いっぱいンゴ、もう入らないンゴォ~」
 嘘じゃない。本当に、ちょっと無理して食べ過ぎた気がするンゴ。
「それでしたら、また御休みしましょうね。今は体力を回復させるのが一番大事ですから……」
 そう言えば、お腹いっぱいになったせいか、少し眠たいンゴ……
「御隣、失礼致しますね」
 そう言って、畳を滑るように近寄ってくる朱雀さん。佳久子さんと同じで、ここの女性は音もなく近付いてくる。ちょっと怖いンゴ……
「頭をこちらへ……」
 僕の後ろに座ると、朱雀さんがそっと僕の体を引き寄せる。強く引っ張られたわけではないのに。か細い女性の腕力なのに。なぜか抵抗出来ないンゴ……
「ゆっくり、ゆっくり」
 頭の後ろに柔らかい感触。朱雀さんの胸かお腹か、その辺りの柔らかさを感じつつ、そのままゆっくり引き倒されて膝の上へ。温かくて、柔らかいンゴ……

「アーアーアー、アアアー、アーアー……」
 朱雀さんが、まるで最愛の恋人を愛でるように僕の髪を撫でて……気持ち良いンゴねえ……

「アーアアアー、アアアーアアー……」
 僕は無意識のうちに朱雀さんの腰に手を回していた……朱雀さんの温もりをいっぱい感じるンゴ……

「アアアーアアアー、アーアーアアアアアー……」
 ママァ……暖かい水の中に……沈み込んで行くンゴ……

「アーアーアー、アアーアーアー……」
 僕の意識は、そこで途絶えたンゴ……


「先代みたいに、体をべたべた触ってくるので苦手です」
「仕方ないわ。あなたはおぼこですもの……」
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