バレンタインを救え!大作戦

武藤勇城

文字の大きさ
4 / 47
第一章 記憶喪失 -きおくそうしつ-

1 ここはどこンゴ!

しおりを挟む
「お前さあ。キモいんだよ。ンゴンゴって老人かよ」
 もう語尾なんてンゴなんて言わないよ絶対。
「ど~でもいい話をペラペラ喋り出すしさあ。ヲタク丸出しでキモすぎ。高校も大学も無理して同じ所に来やがってストーカーかっつうの。いつもいつもエロい目で見てさあ。スリーサイズ聞かれた時マジ殺意芽生えた」
 あれ? おかしいな。涙が溢れてきた。
「前も寝たフリした私の髪の毛触って匂いかいでキスしやがったろ。耳元でンゴンゴ言いやがってマジ鳥肌。キモいからすぐ髪切ったし。告白? 婚約指輪? マジキモいマジ無理マジ死ねよ」
 全否定。悲しい……悲しいよ。
「お前は! 事故で! 落下した! って! ご両親にも! 伝えて! おいて! や! る! よっ!」
 ああ。僕の人生、何だったのかな。彼女のために生きて。でも彼女に殺されるなら……それもいいか。
「お、ち、ろォ!」
 最期に見た光景。濃紺の小箱を投げ捨てる彼女の姿。遠いのに。さっきまで霞んで見えなかったのに。彼女の鬼のような形相も。小さな宝石の輝きも。妙にくっきり見えた。

 何百メートルの高さだろう。急激な気圧の変化。息苦しい。岩。樹々。地面が。ゆっくりと近付いて来る。木の葉一枚一枚の形まで見分けられるほど……なんでこんなに遅いンゴ? 早く楽にして欲しい。ああ、痛くないといいンゴねえ……



「……か?」
 良かった。痛くない。それどころか、ふわふわして気持ちが良いンゴ。
「……夫ですか?」
 暖かいし、柔らかいし、何だかすべすべの手触りンゴねえ~……
「意識はありますか?」
 えっ!? ここは……天国? これはラノベでよくある展開! 異世界転生ンゴ!?
「大丈夫ですか?」
 呆然とする僕を、上から覗き込むように見ているのは、漆黒ロングヘア―の女性。誰? もしかして女神様ンゴ?
「聞こえますか?」
 近い近い近い! こんな間近で、こんな美人に見られたら! 女性経験がない僕はどうしていいか分からないンゴ。
「落ち着くンゴ、ここはどこンゴ!?」
「良かった。成功みたいです」
「セイコウ?」
 セイコウと言うと、男性と女性が真夜中に全裸でキャッキャウフフする、あれンゴ?
「起きられますか? 無理はせず、もし大丈夫なら御体を起こして頂けますか」
 無意識に撫でていた、柔らかくて温かいもの。それはこの女性の……お尻!? そして膝枕!? 慌てて跳ね起きたンゴ。

「あら。動けるみたいですね。御体は問題ないようですわ」
「ああ、見ていたから分かるよ、朱雀」
 朱雀、と呼ばれたのは、僕を膝枕していた中性的な魅力の女性。二十代後半か、三十そこそこぐらいに見えるンゴ。
「では手前は奏上に参る。後は頼んだよ」
 朱雀と呼んだ方は性別不詳の……多分男性ンゴ?
「問題ないとは思うけど、くれぐれも油断しないようにね」
「ええ、大丈夫です。いざとなったら音階を使いますから」
 そう言い残すと、スラッとしたスタイルの、床に届くほど長髪を一つに束ねた男性は部屋を後にした。広い和室の中は、僕と朱雀と呼ばれた女性、二人きりになってしまったンゴ。

「あの~ンゴ……」
 何がどうなっているのか、さっぱり分からない。混乱する僕に、優しく話しかけてくれたンゴ。
「まだ無理をなさってはいけません。定着度も分かりませんし、体も思うように動かないと思います。意識レベルは……いかがでしょう? 気分が悪かったり、何か体の異変はありませんか?」
「異変ンゴ? ン~っゴ……」
 お腹や背中を触ってみる。うん、いつも通り、だぶだぶ贅肉だらけのだらしないお腹! 自分で言ってて悲しくなるンゴ。
「問題ないンゴ」
「そうですか、それは幸いです。御名前は覚えていらっしゃいますか?」
「名前? それはもちろ……ンゴ?」
 僕の名前は……名前? なんでだろう、覚えているのに、覚えている筈なのに……記憶が……おかしいンゴ……
「名前は……僕の名前ンゴ……こ……すざ……たか……?」
「大丈夫ですよ、ゆっくり。ゆっくりです」
 なぜか……思い……出せないンゴ……
「分からないンゴ……名前が……分からないンゴ」
 泣きそうだ。なんで名前が分からないンゴ!?
「落ち着いて下さい、ね、大丈夫ですから。意識が混濁しているのですね。あっ暴れないで、危な……キャアッ!」
 気持ちが悪い! なんだろう、この感じは! 自分が自分ではないみたいンゴ!
「暴れないで! お願い、危ないですからっ」
 腹の底から湧いてくる違和感。恐怖感。絶望感ゴ!

「仕方がないわ。……アーアーアー、アアアー、アーアー……」
 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い!

「アーアアアー、アアアーアアー……」
 気持ち悪い! 眠い! 何か聞こえるンゴ……

「アアアーアアアー、アーアーアアアアアー……」
 気持ち悪い。眠い。歌声が頭の中で響くンゴ……

「アーアーアー、アアーアーアー……」
 眠い……歌声が体中に沁み込んで行くンゴ……

「アーーーアーーーアーーー、アーアーーーアーーーアーーー……」
 そうして僕は意識を失ったンゴ……


「大丈夫ですか?」
「ぐっすり眠ったわ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...