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攻防

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 やっぱり七緒は、溂のベッドに潜り込む。溂も、それを拒まない。
 だって、とっても温かいから。
 七緒の羽の下は、ぬくぬくもふもふしていて、天国だ。

 七緒は、しつこい。
 溂のスウェットを剥ぎ取ろうとしてはたかれ、ズボンをずり下ろそうとして蹴られている。
 溂のほうが体重はある。フロレツァールごときに、簡単にやられはしない。

 無言の戦いの後、ふたりで笑い出すこともある。七緒の羽が、くすぐったいのだ。くすくす笑う溂につられて、七緒もげらげら笑い出す。半分やけっぱちのように見えなくもない。

 時には、七緒が怒って、部屋中、ばたばた飛び回ることもある。電気のかさにぶつかって、痛そうな顔をしている。
 そうして、疲れ切って、ばたりと落ちてくる。
 七緒の羽が、いつの間にか、溂の上に覆いかぶさっている。




 朝は、いつも戦争だ。
 七緒は早起きだ。
 太陽の光とともに目を覚ます。

 まず、溂に擦り寄り、寝息を探る。
 眠っていると判断すると、腰をこすりつけてくる。

 ぱしんとはたいて、溂は眠り続ける。ズボンのゴムを鉤爪で引っ張られても、スェットを、胸までめくられても。
 温かくて気持ちよくて、とてもじゃないけど、起きる気がしない。

 それでも七緒がうるさくて、仕方なく、渋い目を開ける。
 ぎゅっと羽ごと抱きしめて、動けなくする。
 あるいは、素早く体を入れ替え、七緒の上に乗る。

 おもむろに、性器に手を伸ばす。
 体をずらし、口を寄せてキスをする。

 七緒はいつも、変な鳴き声を出して、逃げようとする。
 決して逃さず、口に含む。

 羽でばさばさ頭をはたかれながら、顔を上下に動かす。
 歯を舌で隠し、唇をきゅっと締め付ける。まっしろいその部分が、決して傷つかないように、細心の注意を払う。

 舌先で先端を撫でるのに、七緒は弱い。
 だから、長引かせてやりたい時は、それはしない。


 お返しとばかり、七緒が溂自身に口を寄せてくると、溂は、ぱっと起き上がる。
 階段を駆け下り、風呂場に駆け込む。

 七緒に、風呂場の折戸は開けられない。

 少しして、家の外に回った七緒が、窓を力いっぱい羽でたたく音が聞こえる。
 悔しそうに、があがあ鳴いている。


 熱いシャワーを浴びながら、これでしばらく安全だ、と溂は思う。
 そしてとても、寂しい気持ちになる。

 ……自分はいったい、何をやっているんだ。
 ……こんなことをしたいわけじゃない……。
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