69 / 82
Ⅳ
攻防
しおりを挟む
やっぱり七緒は、溂のベッドに潜り込む。溂も、それを拒まない。
だって、とっても温かいから。
七緒の羽の下は、ぬくぬくもふもふしていて、天国だ。
七緒は、しつこい。
溂のスウェットを剥ぎ取ろうとしてはたかれ、ズボンをずり下ろそうとして蹴られている。
溂のほうが体重はある。フロレツァールごときに、簡単にやられはしない。
無言の戦いの後、ふたりで笑い出すこともある。七緒の羽が、くすぐったいのだ。くすくす笑う溂につられて、七緒もげらげら笑い出す。半分やけっぱちのように見えなくもない。
時には、七緒が怒って、部屋中、ばたばた飛び回ることもある。電気のかさにぶつかって、痛そうな顔をしている。
そうして、疲れ切って、ばたりと落ちてくる。
七緒の羽が、いつの間にか、溂の上に覆いかぶさっている。
朝は、いつも戦争だ。
七緒は早起きだ。
太陽の光とともに目を覚ます。
まず、溂に擦り寄り、寝息を探る。
眠っていると判断すると、腰をこすりつけてくる。
ぱしんとはたいて、溂は眠り続ける。ズボンのゴムを鉤爪で引っ張られても、スェットを、胸までめくられても。
温かくて気持ちよくて、とてもじゃないけど、起きる気がしない。
それでも七緒がうるさくて、仕方なく、渋い目を開ける。
ぎゅっと羽ごと抱きしめて、動けなくする。
あるいは、素早く体を入れ替え、七緒の上に乗る。
おもむろに、性器に手を伸ばす。
体をずらし、口を寄せてキスをする。
七緒はいつも、変な鳴き声を出して、逃げようとする。
決して逃さず、口に含む。
羽でばさばさ頭をはたかれながら、顔を上下に動かす。
歯を舌で隠し、唇をきゅっと締め付ける。まっしろいその部分が、決して傷つかないように、細心の注意を払う。
舌先で先端を撫でるのに、七緒は弱い。
だから、長引かせてやりたい時は、それはしない。
お返しとばかり、七緒が溂自身に口を寄せてくると、溂は、ぱっと起き上がる。
階段を駆け下り、風呂場に駆け込む。
七緒に、風呂場の折戸は開けられない。
少しして、家の外に回った七緒が、窓を力いっぱい羽でたたく音が聞こえる。
悔しそうに、があがあ鳴いている。
熱いシャワーを浴びながら、これでしばらく安全だ、と溂は思う。
そしてとても、寂しい気持ちになる。
……自分はいったい、何をやっているんだ。
……こんなことをしたいわけじゃない……。
だって、とっても温かいから。
七緒の羽の下は、ぬくぬくもふもふしていて、天国だ。
七緒は、しつこい。
溂のスウェットを剥ぎ取ろうとしてはたかれ、ズボンをずり下ろそうとして蹴られている。
溂のほうが体重はある。フロレツァールごときに、簡単にやられはしない。
無言の戦いの後、ふたりで笑い出すこともある。七緒の羽が、くすぐったいのだ。くすくす笑う溂につられて、七緒もげらげら笑い出す。半分やけっぱちのように見えなくもない。
時には、七緒が怒って、部屋中、ばたばた飛び回ることもある。電気のかさにぶつかって、痛そうな顔をしている。
そうして、疲れ切って、ばたりと落ちてくる。
七緒の羽が、いつの間にか、溂の上に覆いかぶさっている。
朝は、いつも戦争だ。
七緒は早起きだ。
太陽の光とともに目を覚ます。
まず、溂に擦り寄り、寝息を探る。
眠っていると判断すると、腰をこすりつけてくる。
ぱしんとはたいて、溂は眠り続ける。ズボンのゴムを鉤爪で引っ張られても、スェットを、胸までめくられても。
温かくて気持ちよくて、とてもじゃないけど、起きる気がしない。
それでも七緒がうるさくて、仕方なく、渋い目を開ける。
ぎゅっと羽ごと抱きしめて、動けなくする。
あるいは、素早く体を入れ替え、七緒の上に乗る。
おもむろに、性器に手を伸ばす。
体をずらし、口を寄せてキスをする。
七緒はいつも、変な鳴き声を出して、逃げようとする。
決して逃さず、口に含む。
羽でばさばさ頭をはたかれながら、顔を上下に動かす。
歯を舌で隠し、唇をきゅっと締め付ける。まっしろいその部分が、決して傷つかないように、細心の注意を払う。
舌先で先端を撫でるのに、七緒は弱い。
だから、長引かせてやりたい時は、それはしない。
お返しとばかり、七緒が溂自身に口を寄せてくると、溂は、ぱっと起き上がる。
階段を駆け下り、風呂場に駆け込む。
七緒に、風呂場の折戸は開けられない。
少しして、家の外に回った七緒が、窓を力いっぱい羽でたたく音が聞こえる。
悔しそうに、があがあ鳴いている。
熱いシャワーを浴びながら、これでしばらく安全だ、と溂は思う。
そしてとても、寂しい気持ちになる。
……自分はいったい、何をやっているんだ。
……こんなことをしたいわけじゃない……。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた
空松蓮司
ファンタジー
A級パーティに荷物持ちとして参加していたオッサン、ダンザはある日パーティのリーダーであるザイロスに囮にされ、神竜に丸呑みされる。
神竜の中は食料も水も何もない。あるのは薄ピンク色の壁……神竜の肉壁だけだ。だからダンザは肉壁から剝ぎ取った神竜の肉で腹を満たし、剥ぎ取る際に噴き出してきた神竜の血で喉を潤した。そうやって神竜の中で過ごすこと189日……彼の体はリザードマンになっていた。
しかもどうやらただのリザードマンではないらしく、その鱗は神竜の鱗、その血液は神竜の血液、その眼は神竜の眼と同等のモノになっていた。ダンザは異形の体に戸惑いつつも、幼き頃から欲していた『強さ』を手に入れたことを喜び、それを正しく使おうと誓った。
さぁ始めよう。ずっと憧れていた英雄譚を。
……主人公はリザードマンだけどね。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる