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Ⅲ
行き止まり
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「それでよく、人間のペットなんか、やってこれたな……」
思わず溂はつぶやいた。
「お前ら、人間よりよっぽど、ものしりなんじゃないか?」
「ええと、」
七緒は目を閉じた。
しばらく無言でそうしている。
知識をダウンロードしているのだ、と、溂は思った。
ややあって、七緒は目を開けた。眉に皺を寄せ、目の前の何かを読んでいるような顔になった。虚ろな眼差しのまま、続ける。
「人間の文明は、とても参考になる。僕らは今、人間が滅んでいく過程を……学習? している。フロレツァールが同じ運命を辿らないように」
「……げ」
思わず溂はつぶやいた。
「人間を反面教師にするわけか……」
しかしそれには、人類の滅亡が、大前提である。
つまり……。
「人類は、滅びるんだな」
「わりと近いうちにね。何千年か……何百年か、後?」
けろりとして、七緒は言った。
「そして、地球は、フロレツァールのものになる」
「何百年? すぐじゃないか」
荒唐無稽な話だと、溂は思った。だが、信じない理由はない。少なくとも、自分には関係ないことだと思った。
子孫を残すことのない自分には。
すり、っと七緒の体が一層近づいた。
ほとんど溂の体に乗りかからんばかりにして、耳元でささやいた。
「でも、僕と溂は、ずっと一緒だ。だって僕らは、番いなんだから」
「俺と番いになったら、お前も子孫を残せない」
七緒を押しのけ、ぼそりと溂は言った。
「お前の遺伝子が、地球を支配する日は、永遠に来ないんだ」
七緒には、人間の遺伝子が組み込まれている可能性がある。
渋沢研究員が盗んだ2つの卵。
片方は遺伝子組み換えの卵で、もう片方は、普通のフロレツァールの卵。
七緒の卵がどちらだったかは、わからない。
でも、それをここで口にするつもりはなかった。
七緒は、七緒だ。
人間の遺伝子を持っていようが、純粋に鳥であろうが、そんなことはどうでもよかった。
ただ、どういう形であれ、溂は、七緒の可能性をフイにしたくなかった。
もし万が一、七緒が人間の遺伝子を持っていたとしても、そして、その遺伝子のせいで、人間との交配が可能だったとしても……、
……俺は、男だ。
ふたりの間には、何も生まれない。
どうしたって、七緒と溂の組み合わせでは、進化の袋小路に入り込んでしまう。
The end.
行き止まりだ。
思わず溂はつぶやいた。
「お前ら、人間よりよっぽど、ものしりなんじゃないか?」
「ええと、」
七緒は目を閉じた。
しばらく無言でそうしている。
知識をダウンロードしているのだ、と、溂は思った。
ややあって、七緒は目を開けた。眉に皺を寄せ、目の前の何かを読んでいるような顔になった。虚ろな眼差しのまま、続ける。
「人間の文明は、とても参考になる。僕らは今、人間が滅んでいく過程を……学習? している。フロレツァールが同じ運命を辿らないように」
「……げ」
思わず溂はつぶやいた。
「人間を反面教師にするわけか……」
しかしそれには、人類の滅亡が、大前提である。
つまり……。
「人類は、滅びるんだな」
「わりと近いうちにね。何千年か……何百年か、後?」
けろりとして、七緒は言った。
「そして、地球は、フロレツァールのものになる」
「何百年? すぐじゃないか」
荒唐無稽な話だと、溂は思った。だが、信じない理由はない。少なくとも、自分には関係ないことだと思った。
子孫を残すことのない自分には。
すり、っと七緒の体が一層近づいた。
ほとんど溂の体に乗りかからんばかりにして、耳元でささやいた。
「でも、僕と溂は、ずっと一緒だ。だって僕らは、番いなんだから」
「俺と番いになったら、お前も子孫を残せない」
七緒を押しのけ、ぼそりと溂は言った。
「お前の遺伝子が、地球を支配する日は、永遠に来ないんだ」
七緒には、人間の遺伝子が組み込まれている可能性がある。
渋沢研究員が盗んだ2つの卵。
片方は遺伝子組み換えの卵で、もう片方は、普通のフロレツァールの卵。
七緒の卵がどちらだったかは、わからない。
でも、それをここで口にするつもりはなかった。
七緒は、七緒だ。
人間の遺伝子を持っていようが、純粋に鳥であろうが、そんなことはどうでもよかった。
ただ、どういう形であれ、溂は、七緒の可能性をフイにしたくなかった。
もし万が一、七緒が人間の遺伝子を持っていたとしても、そして、その遺伝子のせいで、人間との交配が可能だったとしても……、
……俺は、男だ。
ふたりの間には、何も生まれない。
どうしたって、七緒と溂の組み合わせでは、進化の袋小路に入り込んでしまう。
The end.
行き止まりだ。
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