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Ⅲ
16歳ではない
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「……いや、だから、ね」
お返しとばかり、七緒は、再び溂のバックルを舐め回し始めた。
時折、あせったように、金具の部分に噛み付いている。
バックルから垂れた唾液が、ズボンを濡らし始めた。
「いくらなんでも、これ以上はまずい」
脇に手を差し入れ、立たせた。
溂は16歳ではない。
我慢ということを知っている。
それに……。
鳥と人間ということは、もう、どうでもよかった。
七緒には、理性も感情も、つまり、心がある。
そして、ちゃんと、気持ちが通じ合っている。
ただ。
溂が気になっているのは……。
……。
七緒は、不服そうに、羽をばさばささせた。
羽で覆われているから、万が一、誰か来ても、外からは見えない。だからいいじゃないか、というわけだ。
「いや、廃寺だけど、ここは一応、境内だからさ、」
ばさ、ばさ。
「こらっ、やめっ! これ以上、ここでしたら、仏の罰が当たるぞ」
ばさばさばさ。
「七緒」
改まった声で、溂は言った。
「お前、しゃべれるんだろ? 言いたいことがあったら、自分の口で言ったらどうだ?」
「……」
七緒はじっと溂の顔を見つめた。
「自分で。自分の言葉で」
「……」
まっすぐに見つめてくる七緒の目を、溂は、負けずに見返した。
「前に、きなりちゃんと一緒に、朝飯、食った時、お前、顔を赤くしたろ? 俺が、同じ箸で食べようか、って言ったら」
フロレツァールには言葉がない。人間の言葉も理解しないといわれている。
でも溂は、随分前から、七緒には、言葉が通じていると気がついていた。
ただそれが、本当に「言葉」として理解されているのか、人間の感情を読んでいるだけなのか、いまひとつ、わからなかった。
あの朝。
溂は、単に、同じ箸で食べたら便利かな、くらいの意味で言ったのだ。
決して、性的な意味を含ませたわけではない。
それなのに、七緒は、ひどく照れたように、顔を赤らめた。
だから、確信した。
七緒は、感情を読んでいるのではない。
ちゃんと言葉を理解しているのだ、と。
「言葉がわかるだけじゃない。お前、しゃべれるんだろう?」
……ら……つ……。
……す、き。
ついさっき、七緒は、夢中で口走っていた……。
「溂。好き」
溂を澄んだ瞳で見つめ、はっきりと、七緒は言った。
お返しとばかり、七緒は、再び溂のバックルを舐め回し始めた。
時折、あせったように、金具の部分に噛み付いている。
バックルから垂れた唾液が、ズボンを濡らし始めた。
「いくらなんでも、これ以上はまずい」
脇に手を差し入れ、立たせた。
溂は16歳ではない。
我慢ということを知っている。
それに……。
鳥と人間ということは、もう、どうでもよかった。
七緒には、理性も感情も、つまり、心がある。
そして、ちゃんと、気持ちが通じ合っている。
ただ。
溂が気になっているのは……。
……。
七緒は、不服そうに、羽をばさばささせた。
羽で覆われているから、万が一、誰か来ても、外からは見えない。だからいいじゃないか、というわけだ。
「いや、廃寺だけど、ここは一応、境内だからさ、」
ばさ、ばさ。
「こらっ、やめっ! これ以上、ここでしたら、仏の罰が当たるぞ」
ばさばさばさ。
「七緒」
改まった声で、溂は言った。
「お前、しゃべれるんだろ? 言いたいことがあったら、自分の口で言ったらどうだ?」
「……」
七緒はじっと溂の顔を見つめた。
「自分で。自分の言葉で」
「……」
まっすぐに見つめてくる七緒の目を、溂は、負けずに見返した。
「前に、きなりちゃんと一緒に、朝飯、食った時、お前、顔を赤くしたろ? 俺が、同じ箸で食べようか、って言ったら」
フロレツァールには言葉がない。人間の言葉も理解しないといわれている。
でも溂は、随分前から、七緒には、言葉が通じていると気がついていた。
ただそれが、本当に「言葉」として理解されているのか、人間の感情を読んでいるだけなのか、いまひとつ、わからなかった。
あの朝。
溂は、単に、同じ箸で食べたら便利かな、くらいの意味で言ったのだ。
決して、性的な意味を含ませたわけではない。
それなのに、七緒は、ひどく照れたように、顔を赤らめた。
だから、確信した。
七緒は、感情を読んでいるのではない。
ちゃんと言葉を理解しているのだ、と。
「言葉がわかるだけじゃない。お前、しゃべれるんだろう?」
……ら……つ……。
……す、き。
ついさっき、七緒は、夢中で口走っていた……。
「溂。好き」
溂を澄んだ瞳で見つめ、はっきりと、七緒は言った。
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