朝になるまでモフッてやるから覚悟しろ

Ⅲ

群青色の空の彼方から

　群青色の空の彼方から、空気を震わせる音が聞こえてきた。
　羽音だ。
　羽音はだんだん大きくなってきた。星の光を受けて銀色に輝く鳥が、夜空を横切ってくるのが見えた。
　鳥は、まっすぐに寺めがけて飛んでくる。
　すこしもためらわず、一直線に、全速力で。
　溂めがけて。
　胸が熱くなった。

「おおい、なな！」
空を見上げて、溂は叫んだ。
　だが、何を言いたかったのか、自分でもよくわからない。
　とりあえず叫んだ。
「お前が帰ってくるって、わかってたよ！」

　空を飛ぶ七緒が、微笑んだように見えた。
　溂の頭の上で３回周回すると、ゆっくりと下降してきた。

　溂は、大きく腕を広げた。
　まっすぐに、七緒が飛び込んでくる。
　今度こそしっかりと受け止めて、溂は、胸に抱きしめた。