朝になるまでモフッてやるから覚悟しろ

Ⅰ

ハードなおふざけ

　……敬介が来てくれて、本当に良かった。
　溂は思った。
　……あのままいったら、危ないところだった。

　敬介にはああ言ったが、七緒はかなり本気だった。
　かなり本気で溂を押さえ込み、股の間に割り込もうとしていた。
　今思い出しても、いやな汗が出る。


　通常の動物は、卵から孵って初めて見たものを、親だと思う。
　だが、フロレツァールは、それを、自分の番いだと認識するという。
　たとえ、オス同士であっても。


　番い……。

　だが、人間と鳥は違う。
　種しゅを越えての番いなんて、溂には、到底、考えられない。

　いや、種を越えて云々の前に、溂は、七緒の子ども時代を知っている。
　たった２週間だったけど、七緒の成長を見守ってきたのだ。
　その元子どもに対して、劣情を抱けるか？


　自分が育てたなんて、言うつもりはない。
　むしろ、七緒が勝手に育った、というのが正しい。
　だけど……。


　見れば見るほど、かわいい子どもだった。
　それが、あっという間に……、なんというか……、

　目力が強くて。
　鼻筋がすっと通っていて。

　額がわりと広いのは、溂の好みじゃない。でも、我慢できないほどじゃない。
　唇がぷっくりしてるのは、子どもっぽいあどけなさを残していて、かわいいと思う。
　落ちそうだったほっぺたは、この頃、すっきり痩せて見えるようになったし。

　人間だったら、大変なイケメンの部類に入るだろう。
　ただ、色が異様に白くて、髪の毛は銀色。目は青味を帯びたグレー。
　この色みのなさは、相変わらずだった。
　七緒が、ヒトでないことを思い知らされる。
　あと、言うまでもなく、羽と尾羽と、足先と。


　……無理。

　番いなんて、とても無理だ。
　七緒と何かしようなんて、考えただけで……、というか、考えられない。

　七緒だって、きっと、ふざけていただけだろう。
　それにしても、ハードなふざけ方だったが。