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Ⅰ
不服そうな美少年
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「こらっ! ナナ!」
溂が叫んだ。
敬介の喉元をえぐる寸前、それは、ぴたりと動きを止めた。
喉の奥から低い唸り声を出す。
威嚇しながら、再び、飛び掛かってこようとする。
「ダメだ! 七緒!」
再び、溂が叫んだ。
不服そうな少年の顔が、敬介を睨んだ。
大変な美形だ。
肌色が、ここまで白くなければ。
あまりに色白なので、逆に妖怪じみて見える。
妖しい魅力がある。目が離せない。
襲われかけたことも忘れて、敬介は、魅せられたように、見入ってしまった。
自分が標的に見られていることに気づいたらしい。それは、ゆっくりと羽を持ち上げた。白く大きな羽の陰に、顔を隠してしまった。
「ナナ!」
なおも強い声を溂が発した。
羽根の間から、顔がのぞく。横目になって、ちらっと、溂を見た。怒られて、しょげているようにも見えなくもない。
「敬介に謝りなさい」
溂が命じると、今度は、不服そうにぶんむくれた。
「さあ、早く!」
「ガアー、ガガガ、ガーッ」
すごく大きな鳴き声だった。
美少年が出しているとはとても思えない。
ダミ声だ。不平不満、反抗心でいっぱいの。
「だめだ。ちゃんと謝れ」
溂が怖い声を出す。
羽が、音もなく上下に動いた。美少年の体が浮いた。あ、と思う間もなく、彼は、開け放たれた窓から外へ飛び出した。
「ガガ、ガガガガガガガーーーー」
なおも奇声を上げつつ、飛び去っていく。
溂が叫んだ。
敬介の喉元をえぐる寸前、それは、ぴたりと動きを止めた。
喉の奥から低い唸り声を出す。
威嚇しながら、再び、飛び掛かってこようとする。
「ダメだ! 七緒!」
再び、溂が叫んだ。
不服そうな少年の顔が、敬介を睨んだ。
大変な美形だ。
肌色が、ここまで白くなければ。
あまりに色白なので、逆に妖怪じみて見える。
妖しい魅力がある。目が離せない。
襲われかけたことも忘れて、敬介は、魅せられたように、見入ってしまった。
自分が標的に見られていることに気づいたらしい。それは、ゆっくりと羽を持ち上げた。白く大きな羽の陰に、顔を隠してしまった。
「ナナ!」
なおも強い声を溂が発した。
羽根の間から、顔がのぞく。横目になって、ちらっと、溂を見た。怒られて、しょげているようにも見えなくもない。
「敬介に謝りなさい」
溂が命じると、今度は、不服そうにぶんむくれた。
「さあ、早く!」
「ガアー、ガガガ、ガーッ」
すごく大きな鳴き声だった。
美少年が出しているとはとても思えない。
ダミ声だ。不平不満、反抗心でいっぱいの。
「だめだ。ちゃんと謝れ」
溂が怖い声を出す。
羽が、音もなく上下に動いた。美少年の体が浮いた。あ、と思う間もなく、彼は、開け放たれた窓から外へ飛び出した。
「ガガ、ガガガガガガガーーーー」
なおも奇声を上げつつ、飛び去っていく。
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