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告白?

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 どうやって階段を駆け上がったのか覚えていない。
 気がつくと俺は、調理台に向かい、玉ねぎを刻んでいた。

 骸骨は、ドレスを着ていた。あれは、女性だ。

 湧き出る涙が、信頼が裏切られたせいなのか、玉ねぎのせいなのか、判然としない。
 きっと玉ねぎのせいだ。
 なら、泣いていいのだろう。
 包丁を放り出し、俺は盛大に涙を流した。


 「やっぱり。ここにいた」
尊大な声が聞こえた。
「急にいなくなるなんて、ひどいじゃないか。料理なんて君がする必要はない。君がすべきことは、いつも俺のそばで……どうしたんだ、シグ!」

 伸ばされてきた腕を、俺はよけた。涙の向こうで、ヴァーツァが傷ついた顔をする。
 ひどい。まるで被害者はヴァーツァのようじゃないか。憤慨して俺は叫んだ。

「本当は女性が好きなくせに! 俺なんか、ただの気まぐれなんだ」
「は? 何を言ってる?」
「あなたは、大の女性好きで……。何人もさらってきたのでしょう?」
「何を言う。失礼な」

 むっとした声。騙されまいと思った。彼は、地下室の彼女たちを愛したのだ。たとえ一時でも、その髪を撫で、肌を慈しみ……。

「トラドに命じて、定期的に空気を入れ替えさせて。神経質なくらい。大事なんだ。大事だから、しまっておくんだ。ラベンダーやミルラで守って」

 頭の中に警鐘が鳴り響いた。これ以上、言ったらダメだ。この男は危険だ。
 けれど、止まらない。自分で自分が抑えられない。

「飽きて殺してしまったくせに。でも、貴方は彼女らを愛したんだ! あんなにたくさん!」
「……地下室へ行ったのか?」

 質問ではない。断定だった。
 はっとした。
 秘密を知った俺は、殺されるのに違いない。
 けど、この美しい男に殺されるのなら、本望だ。だって俺は……。

「そして飽きたら殺してしまうんだ!」
「棺の蓋を開けたのだな?」
 この場にそぐわない優しい声だった。

「あ、開けた。だって、貴方を疑いたくなかった。あの中には、本が入ってると思った。あるいは骨董品か。そうだったら、どんなによかったか!」

 血を吐く思いだった。だって俺は、本当にそう思っていた。あれは棺桶なんかじゃないって。ヴァーツァを信じていたのに!

 俯き、涙を流す俺を、ヴァーツァがじっと見ている。何も言わず、食い入るように。
 しばらくして彼は言った。

「黙っていてごめん、シグ。でも君は気にしないと思った」
「気にしない? 地下室に大量の死骸があることを? それも、女性の!」
「うん、女性のもあるな。だが、男性のもあるぞ」

 ぱっと俺は顔を上げた。見上げるヴァーツァは、どこかいたずらっぽい顔をしている。

「俺も殺すの?」
「殺されたいのか?」
「やだ。だって俺はまだ、飽きられるほど貴方を知っていない」

 それが愛の告白だとは、微塵も思わなかった。
 そもそも、俺からのキスで始まった関係だ。主導権は、最初からヴァーツァに握られている。口づけたのはガラスで、本物のキスではなかったけれど。






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