ピュアなカエルの恋物語

せりもも

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2章 発情への道

28 ロンウィ将軍の匂い

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 低い唸り声が聞こえた。
 あっという間に、俺は、抱きすくめられた。

「なに? ちょっと、将軍!」

驚いて、俺は叫んだ。


「ああ、グルノイユ。お前はこんなに愛らしい声だったのか。まるで、銀の鈴を振るようじゃないか。それに、なんてなめらかできれいな肌なんだ。吸いついてくる」

 すりすりと、頬ずりしてくる。薄いと思っていた髭の毛は、意外と太かった。人の肌に変わったばかりの頬に、ちくちくと痛い。


 不意に、彼は、体を離した。
 俺の肩を両手で掴んだまま、軽く背後にのけぞる。

 視線をおろし、しげしげと見つめた。
 くすりと笑う。

「ふ、かわいい」


 羞恥で俺は、真っ赤になった。
 俺のそこは、さっきからずっと、立ち上がったままなのだ。

「発情したんだな、グルノイユ?」
優しい声だった。


 持っていたシャツで、前を隠そうとした。
 強い手が、それを押しとどめる。

「そのままで。どこまでも、お前はとてもきれいだ」

俺の手から取り上げようとして、彼はそれが、自分のシャツであることに気がついたようだ。なんともいえない、複雑な顔になった。


「あ、あ、あなたのせいだ、ロンウィ将軍」

渡さじと、強く握りしめ、俺は叫んだ。

「あなたのシャツにずっとくるまれていたから……。あなたの匂いがして……だから!」

言い終わる前に、息が止まるほど強く、抱きすくめられた。

「そういうことを言ったらだめだ。グルノイユ。ああ、グルノイユ!」


 このまま抱かれていたかった。

 だって、そうすれば、体を見られることもないし?
 恥ずかしくて真っ赤になった顔に気づかれることもない。

 将軍に、自分の気持ちが伝わってしまったことに、俺は動揺していた。まだ、話すつもりはなかった。

 だって、彼はとても人気がある。

 女の子たちにも。
 兵士達にも。

 こんな人と、両想いになれるわけがない。



 ぎゅう、ぎゅう、と、将軍は、俺を抱きしめ、締め付ける。息詰まるような強さの中で、俺は、甘く、乾いた香りに包まれていた。

 本物の彼の香りは、うっとりするようだった。

 全身の力が抜ける。

 全てはどうでもよくなっていった。

 彼の胸に顔を押し付け、そうすることが許されたことに感動する。柔らかく後頭部を撫でる、大きな手のひらを感じた。



 かちゃかちゃと耳障りな音がした。
 しぶしぶ彼の胸から顔を離し、ぎょっとした。

「ちょ、将軍、何を!」

 ロンウィ将軍が、ズボンを脱いでいる!

「大丈夫だ」

 ベルトを外し、皺だらけのズボンを、彼は脱ぎ始めたところだった。

「大丈夫? 何が?」
「大丈夫」
「いや、だから、将軍、あのね、」
「気にするな」

 俺の肩を両手で握り締めたまま、脚にまとわりつくズボンを、蹴り飛ばそうとしている。

「あ、えと、俺、服を着なくちゃ」

 ようやく、自分が裸であることに気がついた。

 いや、最初からわかっていたのだが、なにしろ、カエルには服を着る習慣がない。
 それがどんなに危険なことか、今の将軍を見て、初めて悟った。


「そのままでいい」

 彼の目は、完全に座っている。イっちゃってる感じ。
 これは、まずいのでは……。

 大きく足を蹴り、とうとう、ズボンを脱ぎ捨てた。

 思わず俺は、目を瞠った。
 だって彼は、下穿きまで一緒に脱いでしまったのだ。

「お、大きい……」

「嬉しいことを言うな」

「前に河で見た時は、こんなんじゃなかった」

「グルノイユ。それは天然か?」


 だめだ。
 何を言っても、喜ばせるだけだ……。

 彼は、俺の体をくるりと後ろ向きにした。

 チャンスだ。

 逃げようとしたが、がっちりと腰を掴まれ、動けない。
 そのまま、壁に押し付けられた。


「すぐすむから」
「えええ、ちょっと、ねえ、……あっ!」

 ぬるりとしたものが、股の間に押し込まれた。

 熱い。
 そして、

「おっ、おっきい」

「グルノイユ! もうっ!」


 激しく腰を打ち付けられる。
 将軍のそれが、俺のとこすりあわされた。驚きと恐怖で項垂れかかっていた俺のが、みるみる、立ち上がっていく。


「グルノイユ。グルノイユ」

うわごとのように言って、しきりと腰を動かしている。

「ぬるぬるって、ぬるぬるって、いやあああああ」

 あまりのことに、悲鳴が出た。
 だって。

 キスもしていないのに。
 気持ちも聞いていないのに。
 告白だってまだちゃんとはしていないのに。

 いきなり、これって、


「あっ! あ、ああっ!」

「しっ!」

後ろから、将軍が俺の両手首を握りしめた。上にあげて壁に押し付ける。

「足を締めろ」

「ううっ」

命令してくる彼が、怖かった。


 だって、いつもは、自信なさげで、少し疲れたようで。
 今までこんな風に強く命じられたことはない。

 手を握られているのもいやだった。体の自由が利かないのは、怖い。

 将軍は腰を振り続けている。
 知らない人みたいだ。

 怖い。


「これは違う」

 声が聞こえた。両手が解放される。弾みで、俺は、壁にぶつかってしまった。

「お前が先だ」

 大きな手が、前へ回ってきた。
 俺のそこを掬い、包み込む。

「あっ!」

 ゆるゆるとこすられる。
 すでに十分に立ち上がっているのに、優しく、強く、何かに導くように……。

「あ、あ、あ、きもちい、」

今まで知らなかった快感に、俺は喉を鳴らした。

「そうだ。いい子だ、グルノイユ」

 下半身が熱い。煮えたぎりそうだ。
 でも、背後に感じる将軍のは、もっと熱い……。

 ……怖い。

 将軍は、手を緩めなかった。
 しつこいくらいに、執着している。

 体の奥から、何かが近づいてくる。
 だめだ。堪えないと。
 出したらダメだ。
 ダメ……。

「あぅ、あんっ、あんっ」

 限界を、俺は感じた。

「やめっ、も、出ちゃ、」


 不意に、後頭部の髪を掴まれた。首をぐるりと回された先に、彼の顔があった。

「いやあぁぁぁっ!」

 何かが弾ける。
 強烈な白い光。

 俺の叫びは、将軍の口に吸い込まれていく。

「あっ、ああああああああーーーーっ」

 その瞬間与えられた、長く熱いキス。
 将軍の唇が俺の口を覆い、口腔中を、舌が舐め回す。

 将軍の舌は、驚くほど長く、そして、器用だった。歯の裏を探り、奥に引っ込んでいた俺の舌に絡みつく。

 息ができない。

 ……これが、ファースト・キス。

 体がくずおれた。
 足に力が入らない。立ち上がれない。

 ぐったりとした脇に、手が差し込まれた。強引に立たせる。 

 耳元で囁きが聞こえた。

「もう我慢できない。グルノイユ、俺にも……」

 再び腰を掴まれた。
 巨大なそれが熱く熱く……。

 ……。






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