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玉ねぎ革命

3 飴色玉ねぎの入らないカレー

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 「玉ねぎの価格高騰は一時的なものです」
執務室に入ってきた代表団に、宰相は言った。
「今年は例年になく寒い春が続きましたから、玉ねぎの一大産地であるホッカイドーの玉ねぎが打撃を受けたのです。もう少し待てば、西からの玉ねぎが流通し、価格は安定するはずです」

「騙そうとしてもダメです!」
女性の代表者が抗議した。
「今はもう、初夏です。西からの玉ねぎは新たまではなくなり、茶色い皮を被っています。それなのに玉ねぎの値段は一向に下がっていない」

 宰相は首を傾げた。
「そんなはずはないけどなあ……。あ、アレじゃないですかね。外国の戦争で燃料費が上がり、海外からの輸入品が入って来なくなっちゃったせいじゃないですかね」

代表団は顔を見合わせた。

「いやいや、そこを何とかするのが、あんたらの仕事でしょ」
柔らかそうな猫っ毛の青年が詰め寄った。
「戦争とか、価格高騰とか、我々も理解しているつもりです。しかし、たとえば、防衛費、これ、こんなに必要なんですか?」

「必要です」
きっぱりと宰相は言った。軍事シロートの代表団には、取りつく島もない。

「せめて秋からの肥料の値上げを何とかしてください。このままでは、日本の農業自体がたちゆかなくなってしまう」
黒縁のメガネをかけた男が抗議した。

「何? 肥料の値上げ? そんな話があるのか?」
「おおありですよ」
「知らなかった」

代表団は顔を見合わせた。

「そもそも、一度値上がりしたものが値下がりしたなんての、私は見たことがないわ!」
女性代表が叫ぶ。

「じゃ、玉ねぎはずっと1個136円なのか?」
「なんて恐ろしい。飴色玉ねぎの入らないカレーを喰えというのか!」
「味噌汁もだ! 俺は玉ねぎの味噌汁を毎朝飲んでいたのだ。このままでは血液がどろどろになりそうだ!」
「ああ、恐ろしい恐ろしい」

宰相室は、阿鼻叫喚の地獄図絵となった。




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