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第五章 『渋谷』ダンジョン 中層編
第89話 敵の敵は味方
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あれは話し合いなんかじゃない、言葉による一方的な虐殺だった――。
「…頼む奈美。にぃちゃんを元気づけてくれ」
「あ~…よしよし、流石にあれは可哀想だったね…おにぃ」
時刻は24時を過ぎもうそろそろ25時になろうというところ。先ほどまで家族会議が開かれていた一階のリビングには既に両親の姿はなく、ソファにうつ伏せになる俺とその横に座りぺちぺちと脚を叩いてくる、もとい哀れで情けない兄を慰めてくれている奈美の二人だけ残っていた。
「容赦なさすぎない?あの二人」
「美作美海と美作湊に話しかけたのはおにぃでしょ…ママとパパにじゃなくて」
「まぁそうだけどさぁ…」
奈美の言う通り俺はあの場で母と父にではなく、美白華社長『美作美海』と佐藤忠役員『美作湊』に話を持ち込んだ。そしてボロクソのけちょんけちょんにされたのだ。
相手は社会の中でも上澄みのそのまた上澄みに棲む権力者。一介の高校生が歯向かえるような人物でないことくらい知っていた。けれども多少は食らいついていけるだろう…なんて思っていたのだ。大きな勘違いだったと思い知らされたよね。
「おにぃはママとパパのこと嘗め過ぎ」
「…そんなに酷かった?」
「酷くはなかったけど、なんていうか…薄っぺらかった」
「…薄っぺらい、ですか」
「うん、薄っぺらい。つい一時間前に思い付きました…って感じ」
「……」
確か母さんにも言われた気がするな、そんなこと。こんなにも大事な話し合いだというのに事前準備がおざなりすぎやしないか?と。
頭の回転は人並み以上であると自負している俺氏、しかし口の方は人並み以上に回らなかったのである。
…仕方ないじゃないか、思い立ったが吉日と行動したせいで下準備が足りなかったのだから。両親の醸し出す只人ならぬ雰囲気に気圧されてしまったのだから。
しかし社会じゃそんなもの言い訳にもならない。そうして本題とはあまり関係ないところでボロクソ言われたのである。
ただ驚いたことに家族会議の結果はそこまで悪くなかった、寧ろ上々の出来と言ってもいいだろう。母さんの口から「前向きに検討しておくから少し時間を頂戴」という言葉を引き出したのだからな。それだけでなく父さんの口からも同じような前向きな言葉を貰えた。な?上々の出来以上に出来過ぎているだろう?
両親ともに会社の上役であるけど独断で会社を動かせはしないし、相手が相手なだけに流石に今すぐOK協力しよう、となるわけではなかったが、日本を代表する大手化粧品メーカー『美白』と日本五大商社の一つ『佐藤忠』からの前向きな検討にそれ以上を求めるのは欲張りが過ぎるという話。
「それにしてもおにぃの持ち札一枚一枚が強すぎじゃない?」
「そのお陰で何とかなったって感じだな、はは」
「まぁね~。でも終わりよければすべて良しじゃん。頑張ってたよ、おにぃは」
「あんがとな」
「うん」
まぁ、奈美の言う通り最初から結果の見えていた話し合いだった感は否めない。
何せ、特級冒険者『竜胆真』に天才ダンジョン研究家『間瀬朝陽』、日本史上最速最年少で一等冒険者に至った『我妻桜子』のみならず、世界を変えるモテ男(自称)『美作海』の少数超精鋭たちがタダ同然で協力させてくださいと頭を下げたようなものだから。
今回は自分の持っている手札と奈美のアシスト、それと権力者の顔から時折垣間見える親心に救われた。俺自身のあの場における活躍と言えば……美作美海と美作湊が両親であったことくらいだろう。
「あ、竜胆様からサイン貰ってくるの忘れないでよ?じゃ、おやすみ~」
「へいへい、おやすみ~」
とてとてと階段を上っていく奈美を見送りながら思う。こういったことはなるべく朝陽さんに任せよう…と。竜胆さんの気持ちが痛いほど分かった家族会議だった。
(あ~…ねむ)
◇◇◇
「ん~…」
自室に戻ること叶わず、海がリビングで寝落ちしたころ。二つ上の階にある一室で美作美海は頭を抱えていた。
もちろん彼女を悩ませているのは先ほどの家族会議で息子、海が持ちかけて来た話――『対氷室派同盟』への誘いである。
悩むような選択肢ではなかった――。
日本が世界に誇る大ダンジョン企業か、吹かずとも勝手に飛んでしまいそうな会社…というか起業段階でしかない集団。それのどちらを取るかの二択。
千人に問えば一人の例外もなく千人全員が前者をと答えるだろう。かくいう美海自身もその千人のうちの一人だった…―――海《息子》の話を詳しく聞くまでは。
あの特級冒険者『竜胆真』が美白華の所有しているダンジョンの攻略を手伝ってくれる?取引先になるだけで?
あの天才ダンジョン研究者『間瀬朝陽』がまだ世間には公開していない研究データの一部を極秘で見せてくれる?場合によっては美白華が行っている研究の補助も?所有するダンジョンの一つ二つを共同所有にするだけで?
どこの誰かは知らないけれど、天才冒険者でいて超絶美人な女性が美白華のモデルをやってくれる?無給同然の薄給で?
海《竜胆派》が美海《美白華》に対して提示してきたそれは一つ一つが他企業が喉から手が出るほどの好条件でいて、普通では決して手に入れられないものだった。
しかし世界のシーカーズフレンドを敵に回すリスクを考えれば全然足りない、役者不足。美海は海に対して「前向きに検討する」ではなく「考えておくわ」とまるで行けたら行くのような口調で言っていただろう。シーカーズフレンドを敵に回すとはそれほどのことなのだ。
(一応会議に掛けておこうかしら…くらいだったのよねぇ)
ただ海の話はそこで終わらなかった。
『こちらにはスキルを無制限で獲得するスキル――【スキルボード】を持つ冒険者がいる』
切り札を使って来たのである。
スキルの説明を海から受けた時の衝撃は忘れられそうにない。
まず初めに何だそのインチキスキルはと思った。
ダンジョンに関する最低限の知識しか持ち合わせていない美海でも【スキルボード】が如何に強力で、常識クラッシャーなのか、その程度はすぐに分かった。
次に【スキルボード】持ちの冒険者とは協力関係にありたいと思った。
今の時代、商品にダンジョン産の素材が含まれていて当たり前である。美白華が出す化粧品の中にもダンジョン産素材を原材料とした商品はあり、そのほとんどが売れ筋の商品。そして日常使いする化粧品とは安ければ安いほど良く、安くするためには収集、製造、販売をなるべく自社内で完結させたい。だから美白華社内には『ダンジョン課』というダンジョン産素材を収集するための冒険者集団があり、その集団の練度が高いに越したことはなく、終身雇用と贅沢は言わないがせめて協力関係にありたかった。社が保有するダンジョンに何かしらのトラブルがあった時の保険という意味でも。
そして最後「あ、ちなみにその冒険者って俺のことね」と自慢げに言った息子にそれをもっと早くに言えと思った。
自分が頷きさえすれば望んだ協力関係以上のモノが手に入るのだから美海の口調に熱が籠ってしまうのは致し方なし。結果、勿体ぶったどこか自慢げな海が、けちょんけちょんにされたのだが自己責任である。
……まぁそれはともかく。海が最後に使った切り札によって美海は前向きに検討する他なかった。もしかしたら風の噂で聞いた氷室東郷の欲しがった冒険者とは海なのかもしれない……いや、絶対に海だ。間違いない。
家族会議よりも前に聞いた海を取り巻く現状を思い出し確信を得た美海はパソコンを立ち上げ、ある資料に目を通した。
資料のタイトルは『2030年化粧品業界売上高&シェア』。誰もが知る有名な化粧品メーカーから一応化粧品を売っていますという会社までの化粧品年間売り上げをまとめた表で、『美白華』はもちろんのこと最近になって化粧品業界へと新規参入してきたシーカーズフレンドも載っている。
『美白華』
売上高:8912億
市場占有率《シェア》:38.5%
『Seeker’s Friend』
売上高:2001億
市場占有率《シェア》:10.2%
数字だけを見ればやはりまだまだ日本の化粧品市場は美白華のものだろう。しかしシーカーズフレンドが参入してきたのはここ五年であるということを忘れてはいけない。折れ線グラフで確認してみるとその成長ぶりは一目瞭然で、二次関数を描く成長曲線は2000年代後半から2010年代前半にかけて世界を震撼させた中国の経済成長を彷彿とさせる。
2015年から2029年に渡ってただの一度も落ちることなく右肩上がりで年間売上高を更新してきた美白華が去年、15年ぶりに更新を逃した原因の一つにシーカーズフレンドの快進撃が含まれていることは言うまでもない。
またこのような現象《下剋上》は化粧品業界だけでなく他の業界でも巻き起こっており、中心にはやはり氷室東郷率いるシーカーズフレンドが。
その快進撃の原動力となっているのは贅沢過ぎるお抱え冒険者たちが収集してくるダンジョン資源が為す、安価且つ高品質な商品。
そんな絶好調のシーカーズフレンドの牙城を崩すにはどうすればいいか。
「散々奪って来たんですもの。冒険者の一人くらい奪われても文句ないわよねぇ?」
目には目を、歯には歯を、冒険者には冒険者を。一手でルールそのものを壊しかねない盤上最強の駒は初めから美海の掌の中に収まっている。
悩むべきはどこまで協力するかの線引きであって、話を受けるか受けないかという根本的なところではなくなっていた。
「…頼む奈美。にぃちゃんを元気づけてくれ」
「あ~…よしよし、流石にあれは可哀想だったね…おにぃ」
時刻は24時を過ぎもうそろそろ25時になろうというところ。先ほどまで家族会議が開かれていた一階のリビングには既に両親の姿はなく、ソファにうつ伏せになる俺とその横に座りぺちぺちと脚を叩いてくる、もとい哀れで情けない兄を慰めてくれている奈美の二人だけ残っていた。
「容赦なさすぎない?あの二人」
「美作美海と美作湊に話しかけたのはおにぃでしょ…ママとパパにじゃなくて」
「まぁそうだけどさぁ…」
奈美の言う通り俺はあの場で母と父にではなく、美白華社長『美作美海』と佐藤忠役員『美作湊』に話を持ち込んだ。そしてボロクソのけちょんけちょんにされたのだ。
相手は社会の中でも上澄みのそのまた上澄みに棲む権力者。一介の高校生が歯向かえるような人物でないことくらい知っていた。けれども多少は食らいついていけるだろう…なんて思っていたのだ。大きな勘違いだったと思い知らされたよね。
「おにぃはママとパパのこと嘗め過ぎ」
「…そんなに酷かった?」
「酷くはなかったけど、なんていうか…薄っぺらかった」
「…薄っぺらい、ですか」
「うん、薄っぺらい。つい一時間前に思い付きました…って感じ」
「……」
確か母さんにも言われた気がするな、そんなこと。こんなにも大事な話し合いだというのに事前準備がおざなりすぎやしないか?と。
頭の回転は人並み以上であると自負している俺氏、しかし口の方は人並み以上に回らなかったのである。
…仕方ないじゃないか、思い立ったが吉日と行動したせいで下準備が足りなかったのだから。両親の醸し出す只人ならぬ雰囲気に気圧されてしまったのだから。
しかし社会じゃそんなもの言い訳にもならない。そうして本題とはあまり関係ないところでボロクソ言われたのである。
ただ驚いたことに家族会議の結果はそこまで悪くなかった、寧ろ上々の出来と言ってもいいだろう。母さんの口から「前向きに検討しておくから少し時間を頂戴」という言葉を引き出したのだからな。それだけでなく父さんの口からも同じような前向きな言葉を貰えた。な?上々の出来以上に出来過ぎているだろう?
両親ともに会社の上役であるけど独断で会社を動かせはしないし、相手が相手なだけに流石に今すぐOK協力しよう、となるわけではなかったが、日本を代表する大手化粧品メーカー『美白』と日本五大商社の一つ『佐藤忠』からの前向きな検討にそれ以上を求めるのは欲張りが過ぎるという話。
「それにしてもおにぃの持ち札一枚一枚が強すぎじゃない?」
「そのお陰で何とかなったって感じだな、はは」
「まぁね~。でも終わりよければすべて良しじゃん。頑張ってたよ、おにぃは」
「あんがとな」
「うん」
まぁ、奈美の言う通り最初から結果の見えていた話し合いだった感は否めない。
何せ、特級冒険者『竜胆真』に天才ダンジョン研究家『間瀬朝陽』、日本史上最速最年少で一等冒険者に至った『我妻桜子』のみならず、世界を変えるモテ男(自称)『美作海』の少数超精鋭たちがタダ同然で協力させてくださいと頭を下げたようなものだから。
今回は自分の持っている手札と奈美のアシスト、それと権力者の顔から時折垣間見える親心に救われた。俺自身のあの場における活躍と言えば……美作美海と美作湊が両親であったことくらいだろう。
「あ、竜胆様からサイン貰ってくるの忘れないでよ?じゃ、おやすみ~」
「へいへい、おやすみ~」
とてとてと階段を上っていく奈美を見送りながら思う。こういったことはなるべく朝陽さんに任せよう…と。竜胆さんの気持ちが痛いほど分かった家族会議だった。
(あ~…ねむ)
◇◇◇
「ん~…」
自室に戻ること叶わず、海がリビングで寝落ちしたころ。二つ上の階にある一室で美作美海は頭を抱えていた。
もちろん彼女を悩ませているのは先ほどの家族会議で息子、海が持ちかけて来た話――『対氷室派同盟』への誘いである。
悩むような選択肢ではなかった――。
日本が世界に誇る大ダンジョン企業か、吹かずとも勝手に飛んでしまいそうな会社…というか起業段階でしかない集団。それのどちらを取るかの二択。
千人に問えば一人の例外もなく千人全員が前者をと答えるだろう。かくいう美海自身もその千人のうちの一人だった…―――海《息子》の話を詳しく聞くまでは。
あの特級冒険者『竜胆真』が美白華の所有しているダンジョンの攻略を手伝ってくれる?取引先になるだけで?
あの天才ダンジョン研究者『間瀬朝陽』がまだ世間には公開していない研究データの一部を極秘で見せてくれる?場合によっては美白華が行っている研究の補助も?所有するダンジョンの一つ二つを共同所有にするだけで?
どこの誰かは知らないけれど、天才冒険者でいて超絶美人な女性が美白華のモデルをやってくれる?無給同然の薄給で?
海《竜胆派》が美海《美白華》に対して提示してきたそれは一つ一つが他企業が喉から手が出るほどの好条件でいて、普通では決して手に入れられないものだった。
しかし世界のシーカーズフレンドを敵に回すリスクを考えれば全然足りない、役者不足。美海は海に対して「前向きに検討する」ではなく「考えておくわ」とまるで行けたら行くのような口調で言っていただろう。シーカーズフレンドを敵に回すとはそれほどのことなのだ。
(一応会議に掛けておこうかしら…くらいだったのよねぇ)
ただ海の話はそこで終わらなかった。
『こちらにはスキルを無制限で獲得するスキル――【スキルボード】を持つ冒険者がいる』
切り札を使って来たのである。
スキルの説明を海から受けた時の衝撃は忘れられそうにない。
まず初めに何だそのインチキスキルはと思った。
ダンジョンに関する最低限の知識しか持ち合わせていない美海でも【スキルボード】が如何に強力で、常識クラッシャーなのか、その程度はすぐに分かった。
次に【スキルボード】持ちの冒険者とは協力関係にありたいと思った。
今の時代、商品にダンジョン産の素材が含まれていて当たり前である。美白華が出す化粧品の中にもダンジョン産素材を原材料とした商品はあり、そのほとんどが売れ筋の商品。そして日常使いする化粧品とは安ければ安いほど良く、安くするためには収集、製造、販売をなるべく自社内で完結させたい。だから美白華社内には『ダンジョン課』というダンジョン産素材を収集するための冒険者集団があり、その集団の練度が高いに越したことはなく、終身雇用と贅沢は言わないがせめて協力関係にありたかった。社が保有するダンジョンに何かしらのトラブルがあった時の保険という意味でも。
そして最後「あ、ちなみにその冒険者って俺のことね」と自慢げに言った息子にそれをもっと早くに言えと思った。
自分が頷きさえすれば望んだ協力関係以上のモノが手に入るのだから美海の口調に熱が籠ってしまうのは致し方なし。結果、勿体ぶったどこか自慢げな海が、けちょんけちょんにされたのだが自己責任である。
……まぁそれはともかく。海が最後に使った切り札によって美海は前向きに検討する他なかった。もしかしたら風の噂で聞いた氷室東郷の欲しがった冒険者とは海なのかもしれない……いや、絶対に海だ。間違いない。
家族会議よりも前に聞いた海を取り巻く現状を思い出し確信を得た美海はパソコンを立ち上げ、ある資料に目を通した。
資料のタイトルは『2030年化粧品業界売上高&シェア』。誰もが知る有名な化粧品メーカーから一応化粧品を売っていますという会社までの化粧品年間売り上げをまとめた表で、『美白華』はもちろんのこと最近になって化粧品業界へと新規参入してきたシーカーズフレンドも載っている。
『美白華』
売上高:8912億
市場占有率《シェア》:38.5%
『Seeker’s Friend』
売上高:2001億
市場占有率《シェア》:10.2%
数字だけを見ればやはりまだまだ日本の化粧品市場は美白華のものだろう。しかしシーカーズフレンドが参入してきたのはここ五年であるということを忘れてはいけない。折れ線グラフで確認してみるとその成長ぶりは一目瞭然で、二次関数を描く成長曲線は2000年代後半から2010年代前半にかけて世界を震撼させた中国の経済成長を彷彿とさせる。
2015年から2029年に渡ってただの一度も落ちることなく右肩上がりで年間売上高を更新してきた美白華が去年、15年ぶりに更新を逃した原因の一つにシーカーズフレンドの快進撃が含まれていることは言うまでもない。
またこのような現象《下剋上》は化粧品業界だけでなく他の業界でも巻き起こっており、中心にはやはり氷室東郷率いるシーカーズフレンドが。
その快進撃の原動力となっているのは贅沢過ぎるお抱え冒険者たちが収集してくるダンジョン資源が為す、安価且つ高品質な商品。
そんな絶好調のシーカーズフレンドの牙城を崩すにはどうすればいいか。
「散々奪って来たんですもの。冒険者の一人くらい奪われても文句ないわよねぇ?」
目には目を、歯には歯を、冒険者には冒険者を。一手でルールそのものを壊しかねない盤上最強の駒は初めから美海の掌の中に収まっている。
悩むべきはどこまで協力するかの線引きであって、話を受けるか受けないかという根本的なところではなくなっていた。
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