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12、ありとあらゆる知識は私にお任せあれ
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地面に落ちていたそれは、一冊の本だった。
えんじ色のハードカバーで、とても分厚くて、とても古そうな、立派な本。いかにも私は偉大な書物です、と今にも語り出しそうなくらいの風格さえ感じられる。
アリサはその本をそっと拾い上げる。もしかしたら、あの魔女の罠かもしれない、と恐る恐るだったけれども、特になにも起こることはなかった。
そっと表紙を開き、一ページ目をめくってみた。
『やあ、初めまして。お嬢さん』
と、声がしたのはその瞬間だった。
側にいたマクスウェルではない。声は、すぐそばに。その手元から聞こえてくる。声の正体は、アリサのその手に持った本そのものだった。開かれた本の上に、ふわふわと浮かぶ丸っこいものがある。燕尾服を着て、ハットをかぶり、杖を持ち、立派な髭を蓄えた三頭身ほどのオジサン。
『私はザ・ブックです。古今東西のありとあらゆる知識は私にお任せあれ。貴方の知りたいことはなんですか?』
そう言って、三頭身のオジサン、ザ・ブックは頭にちょこんと乗っかっていたハットを持ち上げる。
「ザ・ブック?」
「なんだ、これは?」
アリサとマクスウェルはその本を覗き込む。
『私は日本中央図書館の利用者支援用自立AI搭載本型ツールです。館内の案内や、調べ物は私が支援致します』
そう言いながら、ザ・ブックは自らの髭を触る。
「日本中央図書館なんてもの、存在しないだろう。これはいったい何の冗談だ?」
マクスウェルは両腕を組む。
――え、日本中央図書館ってないの?
と、内心驚きながらも、アリサはそれを表に出さないようにする。
『ああ、そうですね。今のこの時代にはまだ日本中央図書館はありませんよね』
と、ザ・ブックは両腕を組みながら辺りを見回す。そして、ウインクしながら人差し指を立てる。なんだか、コメディー俳優みたいな動きだ。コミカルな動きをしながら、ザ・ブックはとても重要なことを口にする。
『実は私、未来から来たのですよ』
「は?」
その唐突な告白に、アリサは手に持ったその本を落としかけるものの、なんとか持ち直す。
『おっと、危ないですよ。しっかり持っててください』
「未来って、どういうこと?」
『言葉の通りの意味ですが。それに、そちらの男性は納得していらっしゃるようですよ』
と、ザ・ブックはマクスウェルにウインクを飛ばす。
不機嫌そうな表情を浮かべるマクスウェルは、小さく頷く。
「まあ、納得というか、それが自然だと思う」
そう言って、マクスウェルはザ・ブックに訊ねる。
「キミは、あの魔女が落としたものだね?」
『ええ、そうですね。私は彼女の所有物でした……先程まで。ですが、落とされてしまい、こうして貴方たちに拾われたというわけです。いやあ、彼女がうっかり者なのは知っていましたが、まさか私を落としていくだなんて。困ったものです』
「彼女が落としたキミが未来から来たと主張するということは、あの魔女もまた、未来から来たということだね?」
『ええ、その通りです』
まるでなにもかもを見通したような顔のマクスウェルを見て、アリサは慌てる。
「ねえ、ちょっと待ってよ。私にも説明してよ」
「別に、説明するほどのことでもないさ。あの魔女は言っていただろう? 八十六万年生きてきた、と。そうすることによって、この街を時間の流れからも切り離して、永遠に残し続ける魔力を蓄えた、と。けれども今現在、ホモサピエンス誕生以来の人類の歴史はせいぜい二十五万年がいいところだ。八十六万年前なんて、魔女はおろか、人類さえこの地球上には存在していなかったはずなんだ。
ならば、彼女の言う八十六万年という年月はいったいどこに存在するのか。答えは単純、それは未来だ。僕はそれなりに魔女については詳しい。専門分野だからね。魔女は、魔力を持ち続ける限り、死ぬことは無い。それはロンドンでの魔女の武装蜂起事件でも証明されている。銃弾を額に撃ち込まれても、爆弾による爆発に巻き込まれてもなお彼女たちは死ななかった。魔女が死なないものだという噂は聞いてはいたものの、普通の人間が死に至るようなダメージを魔女が受けるような機会には遭遇したことはなかったからね。今まで半信半疑だったんだけれども、今回のこのロンドンでの事件で、魔女は不死だという事実を受け入れた。
きっと、彼女は八十六万年の年月を生き、その間魔力を蓄え続け、そして彼女自身が思う、人類のもっとも幸福な時代である今、この時代へと時間を超えてやってきたんだろう。時空を超えて、さらに街ひとつを時空から切り離すだけのプラナの総量なんて、どれだけ必要になるのか、想像もつかないけれども」
それでも、わからないことだらけだ、とマクスウェルは頭を抱える。
「えっと、つまり、貴方と彼女は未来から来たタイムトラベラーってこと?」
と、アリサはザ・ブックに目を向ける。
『ええ、そういうことです。いいですねぇ。タイムトラベラーという音の響き。実にロマンに溢れている。1、21ジゴワットの電流を発生させてやってきたわけではありませんが、確かにタイムトラベラーと呼べるでしょう』
なぜか得意げに胸を張るザ・ブック。三頭身がいくら胸を張っても、威厳はさほどない。
「ザ・ブック。いくつかキミに訊きたいことがあるんだが」
そう言って、マクスウェルはアリサの手元から本をかっさらう。
『ええ、どうぞどうぞ。私に答えられることならば、なんでも答えましょう。私のデータベースには日本中央図書館に所蔵されている書籍のタイトルからその内容はもちろん、ネット上のニュースやログもすべて記録されています。きっと、貴方の期待にお応えいたしますよ』
「あの魔女の正体はいったいなんなんだ?」
ザ・ブックは、ジャケットの襟を正す仕草を見せてから、話す。
『彼女は、死を司る青の魔女と呼ばれ、恐れられてきた魔女でした。出自は不明。その記録が詳細に残されるようになったのは、魔法が科学に取り込まれ、人類の科学がさらに一段階上のステージに上がった時期のことです。今のこの時代から見れば、もう少し先のことですね。彼女は魔法研究のために多くの魔女が捕らわれ、人体実験により、多大な苦痛を受けている、と主張し、純血の魔女としてのその圧倒的な力によってレジスタンス活動を行い、魔女の王国が成立する目前までこぎつけました。もちろん、その過程では多大な犠牲が生じました。多くの人々を殺し、途方もない悲しみを生み、世界は混乱に陥った。しかし、王国は建国には至りませんでした。彼女に追い込まれた人類はその叡智を集結させ、なんとか月の牢獄へと監禁することに成功したのです』
「月の……牢獄」
アリサは復唱する。
月の牢獄。
それはきっと、とても寒いところなのだろう。と、なんとなく思う。孤独に牢の中で膝を抱える魔女のイメージが、自然と頭の中に浮かぶ。
『彼女はまさに死を司る魔女でした。纏う魔力は青く滲み、普通の人間は彼女のその身体に触れるだけで死に至る。と、記録にはそう残っています。彼女を月の牢獄へと投獄するのはきっと骨が折れたことでしょう』
「つまり、あの魔女についてのパーソナルな情報はなにもない、ということか」
『ええ、まあそういうことですね』
ザ・ブックは大げさに肩をすくめてみせる。
「なら、他の質問をしよう。キミはどうしてあの魔女の所有物になったんだ? もともとキミは日本中央図書館の……」
『利用者支援用自立AI搭載本型ツールです』
「そう、それだ。そんなキミが魔女とともにこの時代へと来るに至った経緯は?」
『少し、長くなってしまいますが、それでもよろしいですか?』
「ああ、いいよ。頼む」
『そうですか、わかりました』
そう言って、ザ・ブックは深く頷き、少し間を置く。まるで人が、深い奥底に沈む記憶を思い出すように。AIである彼に、そんな時間のロスは必要ないはずなのに。
そして、彼はゆっくりと語り出す。
えんじ色のハードカバーで、とても分厚くて、とても古そうな、立派な本。いかにも私は偉大な書物です、と今にも語り出しそうなくらいの風格さえ感じられる。
アリサはその本をそっと拾い上げる。もしかしたら、あの魔女の罠かもしれない、と恐る恐るだったけれども、特になにも起こることはなかった。
そっと表紙を開き、一ページ目をめくってみた。
『やあ、初めまして。お嬢さん』
と、声がしたのはその瞬間だった。
側にいたマクスウェルではない。声は、すぐそばに。その手元から聞こえてくる。声の正体は、アリサのその手に持った本そのものだった。開かれた本の上に、ふわふわと浮かぶ丸っこいものがある。燕尾服を着て、ハットをかぶり、杖を持ち、立派な髭を蓄えた三頭身ほどのオジサン。
『私はザ・ブックです。古今東西のありとあらゆる知識は私にお任せあれ。貴方の知りたいことはなんですか?』
そう言って、三頭身のオジサン、ザ・ブックは頭にちょこんと乗っかっていたハットを持ち上げる。
「ザ・ブック?」
「なんだ、これは?」
アリサとマクスウェルはその本を覗き込む。
『私は日本中央図書館の利用者支援用自立AI搭載本型ツールです。館内の案内や、調べ物は私が支援致します』
そう言いながら、ザ・ブックは自らの髭を触る。
「日本中央図書館なんてもの、存在しないだろう。これはいったい何の冗談だ?」
マクスウェルは両腕を組む。
――え、日本中央図書館ってないの?
と、内心驚きながらも、アリサはそれを表に出さないようにする。
『ああ、そうですね。今のこの時代にはまだ日本中央図書館はありませんよね』
と、ザ・ブックは両腕を組みながら辺りを見回す。そして、ウインクしながら人差し指を立てる。なんだか、コメディー俳優みたいな動きだ。コミカルな動きをしながら、ザ・ブックはとても重要なことを口にする。
『実は私、未来から来たのですよ』
「は?」
その唐突な告白に、アリサは手に持ったその本を落としかけるものの、なんとか持ち直す。
『おっと、危ないですよ。しっかり持っててください』
「未来って、どういうこと?」
『言葉の通りの意味ですが。それに、そちらの男性は納得していらっしゃるようですよ』
と、ザ・ブックはマクスウェルにウインクを飛ばす。
不機嫌そうな表情を浮かべるマクスウェルは、小さく頷く。
「まあ、納得というか、それが自然だと思う」
そう言って、マクスウェルはザ・ブックに訊ねる。
「キミは、あの魔女が落としたものだね?」
『ええ、そうですね。私は彼女の所有物でした……先程まで。ですが、落とされてしまい、こうして貴方たちに拾われたというわけです。いやあ、彼女がうっかり者なのは知っていましたが、まさか私を落としていくだなんて。困ったものです』
「彼女が落としたキミが未来から来たと主張するということは、あの魔女もまた、未来から来たということだね?」
『ええ、その通りです』
まるでなにもかもを見通したような顔のマクスウェルを見て、アリサは慌てる。
「ねえ、ちょっと待ってよ。私にも説明してよ」
「別に、説明するほどのことでもないさ。あの魔女は言っていただろう? 八十六万年生きてきた、と。そうすることによって、この街を時間の流れからも切り離して、永遠に残し続ける魔力を蓄えた、と。けれども今現在、ホモサピエンス誕生以来の人類の歴史はせいぜい二十五万年がいいところだ。八十六万年前なんて、魔女はおろか、人類さえこの地球上には存在していなかったはずなんだ。
ならば、彼女の言う八十六万年という年月はいったいどこに存在するのか。答えは単純、それは未来だ。僕はそれなりに魔女については詳しい。専門分野だからね。魔女は、魔力を持ち続ける限り、死ぬことは無い。それはロンドンでの魔女の武装蜂起事件でも証明されている。銃弾を額に撃ち込まれても、爆弾による爆発に巻き込まれてもなお彼女たちは死ななかった。魔女が死なないものだという噂は聞いてはいたものの、普通の人間が死に至るようなダメージを魔女が受けるような機会には遭遇したことはなかったからね。今まで半信半疑だったんだけれども、今回のこのロンドンでの事件で、魔女は不死だという事実を受け入れた。
きっと、彼女は八十六万年の年月を生き、その間魔力を蓄え続け、そして彼女自身が思う、人類のもっとも幸福な時代である今、この時代へと時間を超えてやってきたんだろう。時空を超えて、さらに街ひとつを時空から切り離すだけのプラナの総量なんて、どれだけ必要になるのか、想像もつかないけれども」
それでも、わからないことだらけだ、とマクスウェルは頭を抱える。
「えっと、つまり、貴方と彼女は未来から来たタイムトラベラーってこと?」
と、アリサはザ・ブックに目を向ける。
『ええ、そういうことです。いいですねぇ。タイムトラベラーという音の響き。実にロマンに溢れている。1、21ジゴワットの電流を発生させてやってきたわけではありませんが、確かにタイムトラベラーと呼べるでしょう』
なぜか得意げに胸を張るザ・ブック。三頭身がいくら胸を張っても、威厳はさほどない。
「ザ・ブック。いくつかキミに訊きたいことがあるんだが」
そう言って、マクスウェルはアリサの手元から本をかっさらう。
『ええ、どうぞどうぞ。私に答えられることならば、なんでも答えましょう。私のデータベースには日本中央図書館に所蔵されている書籍のタイトルからその内容はもちろん、ネット上のニュースやログもすべて記録されています。きっと、貴方の期待にお応えいたしますよ』
「あの魔女の正体はいったいなんなんだ?」
ザ・ブックは、ジャケットの襟を正す仕草を見せてから、話す。
『彼女は、死を司る青の魔女と呼ばれ、恐れられてきた魔女でした。出自は不明。その記録が詳細に残されるようになったのは、魔法が科学に取り込まれ、人類の科学がさらに一段階上のステージに上がった時期のことです。今のこの時代から見れば、もう少し先のことですね。彼女は魔法研究のために多くの魔女が捕らわれ、人体実験により、多大な苦痛を受けている、と主張し、純血の魔女としてのその圧倒的な力によってレジスタンス活動を行い、魔女の王国が成立する目前までこぎつけました。もちろん、その過程では多大な犠牲が生じました。多くの人々を殺し、途方もない悲しみを生み、世界は混乱に陥った。しかし、王国は建国には至りませんでした。彼女に追い込まれた人類はその叡智を集結させ、なんとか月の牢獄へと監禁することに成功したのです』
「月の……牢獄」
アリサは復唱する。
月の牢獄。
それはきっと、とても寒いところなのだろう。と、なんとなく思う。孤独に牢の中で膝を抱える魔女のイメージが、自然と頭の中に浮かぶ。
『彼女はまさに死を司る魔女でした。纏う魔力は青く滲み、普通の人間は彼女のその身体に触れるだけで死に至る。と、記録にはそう残っています。彼女を月の牢獄へと投獄するのはきっと骨が折れたことでしょう』
「つまり、あの魔女についてのパーソナルな情報はなにもない、ということか」
『ええ、まあそういうことですね』
ザ・ブックは大げさに肩をすくめてみせる。
「なら、他の質問をしよう。キミはどうしてあの魔女の所有物になったんだ? もともとキミは日本中央図書館の……」
『利用者支援用自立AI搭載本型ツールです』
「そう、それだ。そんなキミが魔女とともにこの時代へと来るに至った経緯は?」
『少し、長くなってしまいますが、それでもよろしいですか?』
「ああ、いいよ。頼む」
『そうですか、わかりました』
そう言って、ザ・ブックは深く頷き、少し間を置く。まるで人が、深い奥底に沈む記憶を思い出すように。AIである彼に、そんな時間のロスは必要ないはずなのに。
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