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お手伝いロボ ゆうた
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「ゆうくん、お買い物手伝ってくれない?」
「えー、めんどくさーい」
「じゃあ、お洗濯畳んでくれない?」
「やだー、ママがやってよー」
「はぁ…全くもう…」
「僕はゲームで忙しいんだ。お買い物やお洗濯はママがやってよねー」
ゆうたくんは手元の携帯ゲーム機に夢中です。
ゆうたくんは小学一年生の男の子。
いつもゲームに夢中でお母さんのお手伝いをしません。
お母さんはそんなゆうたくんに毎日手を焼いていました。
「ごちそうさまー!」
「ゆうくん、食器のお片付け手伝って」
「え~、僕はゲームするもんね~」
「こら!たまにはお手伝いしなさい!」
「やーだねー!」
ゆうくんはテーブルから離れてゲームを始めてしまいました。
「はあ…全くもう…」
お母さんはため息をついて、お皿を片付け始めました。
キッチンから水が流れる音と、ゆうたくんのゲームの音がリビングに流れました。
しばらくして、お父さんが帰ってきました。
「ただいまー」
「あら、お父さんおかえりなさい」
「ゆうくんも、ただいま」
「うーん、おかえりー」
「ゆうくん、少しはゲームから目を離しなさい」
「はいはーい」
「全く、ゆうくんったら…」
「ゆうくん、お母さんの言うことはちゃんと聞くんだぞ」
「はいはいはーい」
「ゆうくん…」
ゆうくんはお父さんが帰ってきても、目も向けません。
いつもいつも、ゲームに夢中です。
お父さんとお母さんは、2人であることを決心しました。
次の日、お仕事が終わったお父さんは、あるものを買って帰ってきました。
「お母さん、これみてよ」
「ん?なあに?…お手伝いロボ?」
「そうそう、たまたま電機屋さんで見つけたんだ!これがあればゆうくんも…。」
「ああ、なるほどね…。これが上手く行けばゆうくんも…!」
お父さんとお母さんはにやにやしながら、2人で作戦を立てました。
また次の日…。
お父さんが大きな箱を持って帰ってきました。
「ただいま!お母さん、買ってきたよ!」
「おかえりなさい!早速あけましょう!」
お父さんとお母さんは、何やら2人で盛り上がっています。
「お父さん、お母さん、それなあに?」
「これはね、お手伝いロボだよ」
「お手伝いロボ?なにそれ?」
お父さんが買ってきた箱の中には、ゆうたくんそっくりのロボットが入っていました。
「なにこれ?ロボット?」
「そうよ、お手伝いロボット。家のことをなんでもお手伝いしてくれるの、便利でしょ?電源を入れてみましょう」
お母さんはお手伝いロボットに電源を入れた。
箱から出されたお手伝いロボットは、ピコピコと音を出し、1人で立ち上がった。
「コンニチハ、ボクはお手伝いロボットです」
「あら!お喋りが上手ね!名前をつけてあげなきゃ…」
「ユウクン、ボクの名前はユウクンです」
「ゆうくんっていうの?ゆうたと同じ名前じゃない」
「ユウクン!ユウクン!」
「あはは!ユウクンは元気だなぁ!」
お父さんとお母さんはお手伝いロボットのユウクンに夢中です。
ゆうたくんはそれが面白くありません。
お手伝いロボットのユウクンは、ゆうたくんには目もくれず、お父さんとお母さんに媚びを売っています。
「お父サン、お母サン、ナニをシマショウカ?」
「あら、早速お手伝いしてくれるの?じゃあ、お皿洗いを手伝ってくれる?」
「おまかせあれ~!」
ユウクンは足のタイヤをキュルキュルならし、キッチンまでひとっ飛び。
あっという間に洗い物を片してしまいました。
「すごいわぁ!さすがお手伝いロボット!」
「こりゃたまげた!本物だな!」
お母さんとお父さんは拍手して大喜び。
ユウクンは自慢げな顔をして、鼻の下を指で撫でています。
「ぐぬぬ…なかなかやるな…僕だって!」
ゆうたくんは負けじと、自分の使ったおもちゃを片付けました。
「そうそう!ゆうくんもこの子を見習って、お手伝い頑張ってちょうだいね!」
そう、お父さんとお母さんは、ゆうたくんがお手伝いロボットを見れば、ゆうたくんも見習ってお手伝いしてくれるのでは無いかと考え、買ってきたのです。
やはり2人の思惑通り、上手くいきつつありました。
次の日から、お手伝いロボットのユウクンはせっせか動き回りました。
掃除に洗濯に、なんでもお手伝いしてくれるのでお母さんは大助かり。
「ユウクンがいてくれて助かるわぁ~」
これがお母さんの口癖になりました。
ユウクンが来てから1週間、お母さんとお父さんはユウクンをとても可愛がりました。まるで自分の子供のように。
「ちえっ。僕だってお手伝いしてるのに…」
ユウクンが来てから、ゆうたくんも少しずつお手伝いを始めました。ご飯を運んだり、お片付けをしたり、負けじと頑張りました。
しかし、お母さんとお父さんはユウクンしか褒めません。
ユウクンばかり可愛がられ、ゆうたくんは次第にユウクンのことが嫌いになりました。
さらに1週間後…。
「ユウクン、これとこれ、お買い物お願いね」
「リョウカイシマシタ!イッテキマース!」
「いってらっしゃ~い」
お母さんはユウクンの頭を撫で、ユウクンは元気に出ていきました。ゆうたくんはお洗濯をしまっているお母さんに近寄りました。
「ねえ、お母さん」
「なあに?」
「僕もお買い物行こうか?」
「もういいわよ、ユウクンに行ってもらったから。それより宿題は終わったの?」
「う、うん…」
「そう、ならいいわ」
お母さんは、少しだけゆうたくんに冷たくなってしまいました。ゆうたくんは寂しい気持ちになりました。
「お母さん…」
「なあに?」
「僕、ユウクン嫌い」
お母さんは洗濯物をしまう手を止め、僕を睨みました。
「こら!なんてこと言うの!ユウクンも家族でしょ、仲良くしなさい!」
「ご、ごめんなさい…」
「ユウクンはお手伝いもしてくれるし、しっかりした子だわ。それに比べてあなたは…」
僕はお母さんに怒られてしまいました。
きっと僕よりユウクンのが大切なんだ…。
次の日、友達のケンくんに相談しました。
「お手伝いロボット?」
「そう、そいつが僕からお母さんを取ろうとしてるんだ…」
「ロボットがそんなことするわけないだろう?考えすぎだよ」
「そ、そうかなあ…?お母さん、僕のこと捨てたりしないかな…?」
「大丈夫だって!ゆうたが1番大切に決まってる!親ってそういうものなんだぜ!」
「そ、そうだよね!ありがとう、ケンくん!」
「おう!元気出せよ!」
僕はケンくんに別れを告げ、走って家に帰った。
ケンくんに話したことで少し元気が出た。
もう日が暮れて暗くなり始めてる。お母さんもお父さんも心配してるだろうな…。今日は少し甘えてもいいかな?
「えーーーー!?!?」
家に着くと、僕は驚いて叫んでしまった。
「なによ、そんなに大きな声を出して」
「そうだぞゆうた。夜は静かにしなさい」
「な、なんでそいつが僕の席に!?」
リビングでは、お母さんとお父さん、そしてユウクンの3人で食卓を囲んでいました。
ユウクンはゆうたくんの椅子に座って、ご飯を食べています。
「ユウクンは好き嫌いしなくて偉いわね~」
「ああ、本当だな!いっぱい食べるんだぞ」
お母さんとお父さんはニコニコしながらユウクンを見つめています。
「ちょっとちょっと2人とも!なんでユウクンが僕の席に座ってるんだよ!」
ゆうたくんはユウクンを椅子から引きずり下ろそうとしました。
「ヤ、ヤメテクダサイ…」
「こら!ゆうた!なんて乱暴なことをするんだ!」
お父さんがゆうたくんを怒鳴りました。
「お、お父さん…」
「ゆうた!あっちにいってなさい!」
お母さんがゆうたくんをリビングから追い出しました。
「お母さん…お父さん…」
ゆうたくんは薄暗い廊下で座り込み、1人泣きました。
リビングからは3人の笑い声が聞こえてきました。
ゆうたくんは寝室に行き、大きな声で泣きました。
次の日、ケンくんに会いに公園に行きました。
「ケンくん!」
ケンくんを見つけ、声をかけると、何やら人だかりが出来ていました。
「ゆうた!これが前言っていたお手伝いロボットか?」
「え?」
人だかりの中心を見ると、ユウクンが立っていました。
「な、なんでお前がここに!?」
「こいつ面白い奴だな!なんでも知ってるし!」
「そ、そんな事ないぞ!そいつは悪いやつだよ!」
ゆうたくんがそういうと、皆がゆうたくんを見つめました。
「ゆうたくん!なんでそんな事言うの!」
「酷いよゆうたくん、この子は悪いことしてないよ」
ユウクンを囲んでいる女の子たちがゆうたくんを責め始めました。
「ち、違う…。そいつはお母さんとお父さんを取ったんだ…」
「ユウクン、あっちで遊ぼう」
「もうゆうたくんとは遊んであげないんだからね」
「遊びたかったらちゃんとごめんなさいしてね」
「ユウクン、アソブ、アソブ!」
「ユウクン!一緒にサッカーしようぜ!」
皆はユウクンを連れて行ってしまいました。
「み、みんな…」
ゆうたくんはお母さんとお父さんだけでなく、友達まで取られてしまいました。
ゆうたくんは1人でブランコに乗り、みんなを見つめていました。
日もくれて、みんなが帰り出した頃、ユウクンも1人になりました。
「ソロソロ、帰るカ」
ユウクンはそう呟き、キュルキュルとタイヤを鳴らし、家の方向に向かいました。
すると、後ろから足音が近づいてきました。
「おい!お手伝いロボット!」
「ン?」
振り向くと、ゆうたくんが泣きべそをかいて立っていました。夕日に照らされて、涙がキラキラと輝いていました。
「お前の目的はなんだ!」
「……」
「おい!応えろよ!お父さんとお母さんを返せ!」
「…キミは」
「…え?」
「キミは、お手伝いもしない。いつもゲームして、ゴロゴロしている。ボクは、お手伝いたくさんする。お母さん、お父さん、ボクの方が好き。お友達も、ボクの方が好き。ボクが、君の代わりになる。その方が、イイ。ボクが、ゆうただ。」
「何言ってるんだ!ゆうたは僕だ!お母さんとお父さんの家族は僕だけだ!」
「イイヤ、モウオソイ、ボクが、ゆうただ。」
ユウクンはそう言って、家まで猛スピードで帰った。
「ま!待てよ!」
ゆうたくんも急いで後を追いかけた。
家に着くと、ドアが開かない。
「…あれ?鍵が閉まってる?」
ゆうたくんは庭に回って、リビングを覗きました。
そこには、お母さん、お父さん、ユウクンの3人で食卓を囲む姿がありました。3人とも楽しそうに話しながら、ニコニコしています。お母さんも、お父さんも、幸せそうです。しかしどこか違和感があり、ゆうたくんはじっと見続けました。
すると、ユウクンが自分そっくりになっていました。
顔も、身体も、髪型も、全部ゆうたくんになっていました。足もタイヤじゃありません。
「そんな…どうして…」
ゆうたくんが見つめていると、ユウクンがゆうたくんに気が付きました。
ユウクンはゆっくりと笑顔を作り、ゆうたくんに手を振りました。
ゆうたくんは涙が止まらなくなり、地面に座り込みました。
「お母さん…お父さん…」
ゆうたくんは2人の笑顔を思い出し、涙が止まりません。
「ごめんなさい…僕、ちゃんとお手伝いするから…戻ってきて…」
ゆうたくんがそう願った時、1本の流れ星が落ちました。
すると、目の前が真っ白になり、ゆうたくんは気を失いました。
「ゆうくん、起きて、遅刻するわよ」
「ん…ん?ここは?」
「ほら起きて、朝ごはんできてるわよ」
「…お母さん?」
目を覚ますと、ゆうたくんは自分のベッドの上にいました。外を見ると、朝になっていました。
「ほらゆうくん、お顔を洗ってご飯食べましょう」
「お、お母さん!」
ゆうたくんはお母さんに抱きつきました。
「ちょっと、なあに?どうしたの?」
「お母さん、ごめんなさい、僕、これからお手伝いする。ちゃんと言うことも聞く、だから捨てないで…」
「何言ってるの、ゆうくん。お母さんはあなたを愛しているわ。お父さんもあなたを愛しているわ。あなたを捨てるわけないでしょう。」
「…絶対?」
「ええ。約束するわ。あなたは私たちの宝物だもの。」
「おかあさーん!」
ゆうたくんはお母さんを強く抱き締め、お母さんもゆうたくんを抱きしめました。
ゆうたくんはこの日から変わりました。
毎日お母さんのお手伝いをして、ご飯も好き嫌いせずに食べ、見違えるほど立派な子になりました。
お母さんもお父さんもゆうたくんを褒め、ゆうたくんは毎日幸せに暮らしました。
一方お手伝いロボットのユウクンは…。
今もお店で、買ってくれる人を待っています。
「えー、めんどくさーい」
「じゃあ、お洗濯畳んでくれない?」
「やだー、ママがやってよー」
「はぁ…全くもう…」
「僕はゲームで忙しいんだ。お買い物やお洗濯はママがやってよねー」
ゆうたくんは手元の携帯ゲーム機に夢中です。
ゆうたくんは小学一年生の男の子。
いつもゲームに夢中でお母さんのお手伝いをしません。
お母さんはそんなゆうたくんに毎日手を焼いていました。
「ごちそうさまー!」
「ゆうくん、食器のお片付け手伝って」
「え~、僕はゲームするもんね~」
「こら!たまにはお手伝いしなさい!」
「やーだねー!」
ゆうくんはテーブルから離れてゲームを始めてしまいました。
「はあ…全くもう…」
お母さんはため息をついて、お皿を片付け始めました。
キッチンから水が流れる音と、ゆうたくんのゲームの音がリビングに流れました。
しばらくして、お父さんが帰ってきました。
「ただいまー」
「あら、お父さんおかえりなさい」
「ゆうくんも、ただいま」
「うーん、おかえりー」
「ゆうくん、少しはゲームから目を離しなさい」
「はいはーい」
「全く、ゆうくんったら…」
「ゆうくん、お母さんの言うことはちゃんと聞くんだぞ」
「はいはいはーい」
「ゆうくん…」
ゆうくんはお父さんが帰ってきても、目も向けません。
いつもいつも、ゲームに夢中です。
お父さんとお母さんは、2人であることを決心しました。
次の日、お仕事が終わったお父さんは、あるものを買って帰ってきました。
「お母さん、これみてよ」
「ん?なあに?…お手伝いロボ?」
「そうそう、たまたま電機屋さんで見つけたんだ!これがあればゆうくんも…。」
「ああ、なるほどね…。これが上手く行けばゆうくんも…!」
お父さんとお母さんはにやにやしながら、2人で作戦を立てました。
また次の日…。
お父さんが大きな箱を持って帰ってきました。
「ただいま!お母さん、買ってきたよ!」
「おかえりなさい!早速あけましょう!」
お父さんとお母さんは、何やら2人で盛り上がっています。
「お父さん、お母さん、それなあに?」
「これはね、お手伝いロボだよ」
「お手伝いロボ?なにそれ?」
お父さんが買ってきた箱の中には、ゆうたくんそっくりのロボットが入っていました。
「なにこれ?ロボット?」
「そうよ、お手伝いロボット。家のことをなんでもお手伝いしてくれるの、便利でしょ?電源を入れてみましょう」
お母さんはお手伝いロボットに電源を入れた。
箱から出されたお手伝いロボットは、ピコピコと音を出し、1人で立ち上がった。
「コンニチハ、ボクはお手伝いロボットです」
「あら!お喋りが上手ね!名前をつけてあげなきゃ…」
「ユウクン、ボクの名前はユウクンです」
「ゆうくんっていうの?ゆうたと同じ名前じゃない」
「ユウクン!ユウクン!」
「あはは!ユウクンは元気だなぁ!」
お父さんとお母さんはお手伝いロボットのユウクンに夢中です。
ゆうたくんはそれが面白くありません。
お手伝いロボットのユウクンは、ゆうたくんには目もくれず、お父さんとお母さんに媚びを売っています。
「お父サン、お母サン、ナニをシマショウカ?」
「あら、早速お手伝いしてくれるの?じゃあ、お皿洗いを手伝ってくれる?」
「おまかせあれ~!」
ユウクンは足のタイヤをキュルキュルならし、キッチンまでひとっ飛び。
あっという間に洗い物を片してしまいました。
「すごいわぁ!さすがお手伝いロボット!」
「こりゃたまげた!本物だな!」
お母さんとお父さんは拍手して大喜び。
ユウクンは自慢げな顔をして、鼻の下を指で撫でています。
「ぐぬぬ…なかなかやるな…僕だって!」
ゆうたくんは負けじと、自分の使ったおもちゃを片付けました。
「そうそう!ゆうくんもこの子を見習って、お手伝い頑張ってちょうだいね!」
そう、お父さんとお母さんは、ゆうたくんがお手伝いロボットを見れば、ゆうたくんも見習ってお手伝いしてくれるのでは無いかと考え、買ってきたのです。
やはり2人の思惑通り、上手くいきつつありました。
次の日から、お手伝いロボットのユウクンはせっせか動き回りました。
掃除に洗濯に、なんでもお手伝いしてくれるのでお母さんは大助かり。
「ユウクンがいてくれて助かるわぁ~」
これがお母さんの口癖になりました。
ユウクンが来てから1週間、お母さんとお父さんはユウクンをとても可愛がりました。まるで自分の子供のように。
「ちえっ。僕だってお手伝いしてるのに…」
ユウクンが来てから、ゆうたくんも少しずつお手伝いを始めました。ご飯を運んだり、お片付けをしたり、負けじと頑張りました。
しかし、お母さんとお父さんはユウクンしか褒めません。
ユウクンばかり可愛がられ、ゆうたくんは次第にユウクンのことが嫌いになりました。
さらに1週間後…。
「ユウクン、これとこれ、お買い物お願いね」
「リョウカイシマシタ!イッテキマース!」
「いってらっしゃ~い」
お母さんはユウクンの頭を撫で、ユウクンは元気に出ていきました。ゆうたくんはお洗濯をしまっているお母さんに近寄りました。
「ねえ、お母さん」
「なあに?」
「僕もお買い物行こうか?」
「もういいわよ、ユウクンに行ってもらったから。それより宿題は終わったの?」
「う、うん…」
「そう、ならいいわ」
お母さんは、少しだけゆうたくんに冷たくなってしまいました。ゆうたくんは寂しい気持ちになりました。
「お母さん…」
「なあに?」
「僕、ユウクン嫌い」
お母さんは洗濯物をしまう手を止め、僕を睨みました。
「こら!なんてこと言うの!ユウクンも家族でしょ、仲良くしなさい!」
「ご、ごめんなさい…」
「ユウクンはお手伝いもしてくれるし、しっかりした子だわ。それに比べてあなたは…」
僕はお母さんに怒られてしまいました。
きっと僕よりユウクンのが大切なんだ…。
次の日、友達のケンくんに相談しました。
「お手伝いロボット?」
「そう、そいつが僕からお母さんを取ろうとしてるんだ…」
「ロボットがそんなことするわけないだろう?考えすぎだよ」
「そ、そうかなあ…?お母さん、僕のこと捨てたりしないかな…?」
「大丈夫だって!ゆうたが1番大切に決まってる!親ってそういうものなんだぜ!」
「そ、そうだよね!ありがとう、ケンくん!」
「おう!元気出せよ!」
僕はケンくんに別れを告げ、走って家に帰った。
ケンくんに話したことで少し元気が出た。
もう日が暮れて暗くなり始めてる。お母さんもお父さんも心配してるだろうな…。今日は少し甘えてもいいかな?
「えーーーー!?!?」
家に着くと、僕は驚いて叫んでしまった。
「なによ、そんなに大きな声を出して」
「そうだぞゆうた。夜は静かにしなさい」
「な、なんでそいつが僕の席に!?」
リビングでは、お母さんとお父さん、そしてユウクンの3人で食卓を囲んでいました。
ユウクンはゆうたくんの椅子に座って、ご飯を食べています。
「ユウクンは好き嫌いしなくて偉いわね~」
「ああ、本当だな!いっぱい食べるんだぞ」
お母さんとお父さんはニコニコしながらユウクンを見つめています。
「ちょっとちょっと2人とも!なんでユウクンが僕の席に座ってるんだよ!」
ゆうたくんはユウクンを椅子から引きずり下ろそうとしました。
「ヤ、ヤメテクダサイ…」
「こら!ゆうた!なんて乱暴なことをするんだ!」
お父さんがゆうたくんを怒鳴りました。
「お、お父さん…」
「ゆうた!あっちにいってなさい!」
お母さんがゆうたくんをリビングから追い出しました。
「お母さん…お父さん…」
ゆうたくんは薄暗い廊下で座り込み、1人泣きました。
リビングからは3人の笑い声が聞こえてきました。
ゆうたくんは寝室に行き、大きな声で泣きました。
次の日、ケンくんに会いに公園に行きました。
「ケンくん!」
ケンくんを見つけ、声をかけると、何やら人だかりが出来ていました。
「ゆうた!これが前言っていたお手伝いロボットか?」
「え?」
人だかりの中心を見ると、ユウクンが立っていました。
「な、なんでお前がここに!?」
「こいつ面白い奴だな!なんでも知ってるし!」
「そ、そんな事ないぞ!そいつは悪いやつだよ!」
ゆうたくんがそういうと、皆がゆうたくんを見つめました。
「ゆうたくん!なんでそんな事言うの!」
「酷いよゆうたくん、この子は悪いことしてないよ」
ユウクンを囲んでいる女の子たちがゆうたくんを責め始めました。
「ち、違う…。そいつはお母さんとお父さんを取ったんだ…」
「ユウクン、あっちで遊ぼう」
「もうゆうたくんとは遊んであげないんだからね」
「遊びたかったらちゃんとごめんなさいしてね」
「ユウクン、アソブ、アソブ!」
「ユウクン!一緒にサッカーしようぜ!」
皆はユウクンを連れて行ってしまいました。
「み、みんな…」
ゆうたくんはお母さんとお父さんだけでなく、友達まで取られてしまいました。
ゆうたくんは1人でブランコに乗り、みんなを見つめていました。
日もくれて、みんなが帰り出した頃、ユウクンも1人になりました。
「ソロソロ、帰るカ」
ユウクンはそう呟き、キュルキュルとタイヤを鳴らし、家の方向に向かいました。
すると、後ろから足音が近づいてきました。
「おい!お手伝いロボット!」
「ン?」
振り向くと、ゆうたくんが泣きべそをかいて立っていました。夕日に照らされて、涙がキラキラと輝いていました。
「お前の目的はなんだ!」
「……」
「おい!応えろよ!お父さんとお母さんを返せ!」
「…キミは」
「…え?」
「キミは、お手伝いもしない。いつもゲームして、ゴロゴロしている。ボクは、お手伝いたくさんする。お母さん、お父さん、ボクの方が好き。お友達も、ボクの方が好き。ボクが、君の代わりになる。その方が、イイ。ボクが、ゆうただ。」
「何言ってるんだ!ゆうたは僕だ!お母さんとお父さんの家族は僕だけだ!」
「イイヤ、モウオソイ、ボクが、ゆうただ。」
ユウクンはそう言って、家まで猛スピードで帰った。
「ま!待てよ!」
ゆうたくんも急いで後を追いかけた。
家に着くと、ドアが開かない。
「…あれ?鍵が閉まってる?」
ゆうたくんは庭に回って、リビングを覗きました。
そこには、お母さん、お父さん、ユウクンの3人で食卓を囲む姿がありました。3人とも楽しそうに話しながら、ニコニコしています。お母さんも、お父さんも、幸せそうです。しかしどこか違和感があり、ゆうたくんはじっと見続けました。
すると、ユウクンが自分そっくりになっていました。
顔も、身体も、髪型も、全部ゆうたくんになっていました。足もタイヤじゃありません。
「そんな…どうして…」
ゆうたくんが見つめていると、ユウクンがゆうたくんに気が付きました。
ユウクンはゆっくりと笑顔を作り、ゆうたくんに手を振りました。
ゆうたくんは涙が止まらなくなり、地面に座り込みました。
「お母さん…お父さん…」
ゆうたくんは2人の笑顔を思い出し、涙が止まりません。
「ごめんなさい…僕、ちゃんとお手伝いするから…戻ってきて…」
ゆうたくんがそう願った時、1本の流れ星が落ちました。
すると、目の前が真っ白になり、ゆうたくんは気を失いました。
「ゆうくん、起きて、遅刻するわよ」
「ん…ん?ここは?」
「ほら起きて、朝ごはんできてるわよ」
「…お母さん?」
目を覚ますと、ゆうたくんは自分のベッドの上にいました。外を見ると、朝になっていました。
「ほらゆうくん、お顔を洗ってご飯食べましょう」
「お、お母さん!」
ゆうたくんはお母さんに抱きつきました。
「ちょっと、なあに?どうしたの?」
「お母さん、ごめんなさい、僕、これからお手伝いする。ちゃんと言うことも聞く、だから捨てないで…」
「何言ってるの、ゆうくん。お母さんはあなたを愛しているわ。お父さんもあなたを愛しているわ。あなたを捨てるわけないでしょう。」
「…絶対?」
「ええ。約束するわ。あなたは私たちの宝物だもの。」
「おかあさーん!」
ゆうたくんはお母さんを強く抱き締め、お母さんもゆうたくんを抱きしめました。
ゆうたくんはこの日から変わりました。
毎日お母さんのお手伝いをして、ご飯も好き嫌いせずに食べ、見違えるほど立派な子になりました。
お母さんもお父さんもゆうたくんを褒め、ゆうたくんは毎日幸せに暮らしました。
一方お手伝いロボットのユウクンは…。
今もお店で、買ってくれる人を待っています。
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