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冬が来た
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暑い暑い夏がようやく過ぎ、寒い寒い冬がやってきた。
立っているだけで滝のように流れる汗も、いつまでもうるさい蝉の声も、もうどこにもいない。
テリーはこの街に住む10歳の男の子。
まだ小さいのに親をなくし、住む家を失った。
テリーは1人になってから、とても貧しい生活をしていた。
まだ子供だからと働かせて貰えず、使えるお金が無い。
一日中街を徘徊して、街中のゴミ箱を漁る毎日を送っていた。
不憫な生活だが、子供ながらに知恵を絞り、何とか生き延びていた。しかし、季節や天候にはどうしても勝てない。
テリーはこの厳しい寒さの冬をどう乗り越えようか考えていた。
暖かいお店の中で過ごそうとすれば、お店の人に白い目で見られ追い出された。
豚小屋で過ごそうとすれば、暖かいが獣の匂いが服に染み付いて取れない。
少しでも暖かい空気が欲しいと、人の家の庭に入り込んでみると、バットを持って追いかけ回された。
テリーの居場所はどこにもなかった。
街の人々は、道の隅で丸まる薄汚れたテリーを見ることもなかった。
だが、そんなテリーに優しい声をかける珍しい人もいた。
まずテリーに声をかけたのは、街1番のお金持ちのおじさん。
「こんな小さな子が、かわいそうに。」
お金持ちのおじさんは、テリーを見るとそう言った。
おじさんは、テリーに向かって何度も暖かい言葉をかけ、自分の家に来ることを提案した。
テリーはそれがとても嬉しく、喜んで頷いた。
お金持ちのおじさんの家は、とんでもなく大きかった。
テリーがやってくると、綺麗なドレスに身を包んだ奥さんと共に、3人の子供たちが出迎えてくれた。
みんな、初めは優しく接してくれた。
テリーは温かいご飯と暖かい家を手に入れて、しかもお金持ちの家。辛かった日々を忘れるほど、とても幸せだった。
だが、テリーの幸せは長くなかった。
テリーが来てからしばらくすると、家事のお手伝いを始めた。
お金持ちの家族はすごく厳しかった。
少しでもホコリを見つけると、テリーを容赦なくぶった。
食事の味付けが気に食わないと、テリーになげつけて新しい食事を用意させた。
出会った時は優しかったおじさんも、テリーの仕事ぶりを見て幻滅したようだった。
ある時、テリーは3人の子供たちに呼び出された。
子供たちとテリーは歳が近いが、あまり話したことがなかった。
テリーは遊んでもらえるのかと思い、少しワクワクしていた。
だが3人の子供たちは、テリーがやってくると壁際に立たせて動かないように言った。
テリーは不思議に思ったが、言われるがままに立っていた。
すると、目の横に鋭いナイフが止まった。
「惜しいなぁ」
3人の子供たちは、数歩離れた先からテリーにナイフを当てるゲームをしていた。
もう一本、もう一本と子供たちは投げ続ける。
テリーは子供たちの狂気を感じ、その場を逃げ出した。
そうしてお金持ちの家での生活に耐えられなくなり、みんなが眠っている頃にこっそりと抜け出した。
次にテリーに声をかけたのは、犬をたくさん連れた太ったおばさん。
おばさんはテリーを連れて帰ると、たくさんの犬たちにテリーを紹介した。
犬たちはテリーに近づいて匂いを嗅ぎ、ヨダレを垂らしていた。
おばさんはテリーにたくさんの食事を与えた。
大きなお皿に山盛りのご馳走を乗せ、毎食与えてくれた。
痩せて細くなったいたテリーには多すぎたが、それでもおばさんは無理やり食べさせた。
そしてある日、テリーが寝ている時にそれは起こった。
テリーが自分のベッドで寝ていると、犬たちの荒い息遣いと太ったおばさんの足音で目を覚ました。
テリーが起き上がると、すでにヨダレを垂らした犬たちにかこまれていた。
「さあさあ、お前たち、久しぶりのご馳走の時間だよ」
太ったおばさんが犬たちにそう言うと、犬たちは一斉に雄叫びを上げて、テリーに向かって飛びかかった。
テリーは慌てて走り出し、部屋の窓から外へ身を投げた。
「お前たち!絶対に逃がすなよ!何のためにたくさん食べさせたと思ってるんだい!」
おばさんの雄叫びも、外まで響いていた。
テリーは1回も振り返らずに、ひたすら走り続けた。
しかし、いつまで走ろうとも、どこまで逃げても、犬たちの荒い息遣いが聞こえてくる。
体力がそこを尽き、もう走ることが出来なくなったテリーは、傍にあった川に身を投げ、気を失った。
そうしてそのまま、ずっとずっと遠くまで流された。
テリーが目を覚ますと、始めに見知らぬ天井が目に付いた。
「目が覚めたかい?」
声のする方を見ると、とっても年老いたおばあちゃんが、テリーをにっこり見つめていた。
「誰?」
「驚かせて済まないね。あんたが川から流れてきたから、慌てて連れてきたのさ」
おばあちゃんはテリーを助けてくれたのだ。
ここは、テリーの住む街からかなり離れた田舎町。
おばあちゃんはこの家で1人で住んでいるらしい。
テリーはおばあちゃんに色々な事を聞かれ、全て答えた。
「そうかい…。あんた、まだそんなに小さいのに…」
おばあちゃんはテリーの話を聞くと、涙をうかべた。
「よかったら、うちの子になりなさい」
おばあちゃんは、テリーを暖かく迎えた。
そうして、おばあちゃんとテリーは一緒に暮らし始めた。
おばあちゃんはとても優しく、いつまでもいつまでもテリーを可愛がってくれた。
人間のような暮らしができなかったお金持ちの家とも、犬の食用に育てられた家とも違い、おばあちゃんはいつまでも優しく、それはずっと変わらなかった。
テリーはついに居場所をみつけ、ようやく幸せな暮らしを手に入れました。
立っているだけで滝のように流れる汗も、いつまでもうるさい蝉の声も、もうどこにもいない。
テリーはこの街に住む10歳の男の子。
まだ小さいのに親をなくし、住む家を失った。
テリーは1人になってから、とても貧しい生活をしていた。
まだ子供だからと働かせて貰えず、使えるお金が無い。
一日中街を徘徊して、街中のゴミ箱を漁る毎日を送っていた。
不憫な生活だが、子供ながらに知恵を絞り、何とか生き延びていた。しかし、季節や天候にはどうしても勝てない。
テリーはこの厳しい寒さの冬をどう乗り越えようか考えていた。
暖かいお店の中で過ごそうとすれば、お店の人に白い目で見られ追い出された。
豚小屋で過ごそうとすれば、暖かいが獣の匂いが服に染み付いて取れない。
少しでも暖かい空気が欲しいと、人の家の庭に入り込んでみると、バットを持って追いかけ回された。
テリーの居場所はどこにもなかった。
街の人々は、道の隅で丸まる薄汚れたテリーを見ることもなかった。
だが、そんなテリーに優しい声をかける珍しい人もいた。
まずテリーに声をかけたのは、街1番のお金持ちのおじさん。
「こんな小さな子が、かわいそうに。」
お金持ちのおじさんは、テリーを見るとそう言った。
おじさんは、テリーに向かって何度も暖かい言葉をかけ、自分の家に来ることを提案した。
テリーはそれがとても嬉しく、喜んで頷いた。
お金持ちのおじさんの家は、とんでもなく大きかった。
テリーがやってくると、綺麗なドレスに身を包んだ奥さんと共に、3人の子供たちが出迎えてくれた。
みんな、初めは優しく接してくれた。
テリーは温かいご飯と暖かい家を手に入れて、しかもお金持ちの家。辛かった日々を忘れるほど、とても幸せだった。
だが、テリーの幸せは長くなかった。
テリーが来てからしばらくすると、家事のお手伝いを始めた。
お金持ちの家族はすごく厳しかった。
少しでもホコリを見つけると、テリーを容赦なくぶった。
食事の味付けが気に食わないと、テリーになげつけて新しい食事を用意させた。
出会った時は優しかったおじさんも、テリーの仕事ぶりを見て幻滅したようだった。
ある時、テリーは3人の子供たちに呼び出された。
子供たちとテリーは歳が近いが、あまり話したことがなかった。
テリーは遊んでもらえるのかと思い、少しワクワクしていた。
だが3人の子供たちは、テリーがやってくると壁際に立たせて動かないように言った。
テリーは不思議に思ったが、言われるがままに立っていた。
すると、目の横に鋭いナイフが止まった。
「惜しいなぁ」
3人の子供たちは、数歩離れた先からテリーにナイフを当てるゲームをしていた。
もう一本、もう一本と子供たちは投げ続ける。
テリーは子供たちの狂気を感じ、その場を逃げ出した。
そうしてお金持ちの家での生活に耐えられなくなり、みんなが眠っている頃にこっそりと抜け出した。
次にテリーに声をかけたのは、犬をたくさん連れた太ったおばさん。
おばさんはテリーを連れて帰ると、たくさんの犬たちにテリーを紹介した。
犬たちはテリーに近づいて匂いを嗅ぎ、ヨダレを垂らしていた。
おばさんはテリーにたくさんの食事を与えた。
大きなお皿に山盛りのご馳走を乗せ、毎食与えてくれた。
痩せて細くなったいたテリーには多すぎたが、それでもおばさんは無理やり食べさせた。
そしてある日、テリーが寝ている時にそれは起こった。
テリーが自分のベッドで寝ていると、犬たちの荒い息遣いと太ったおばさんの足音で目を覚ました。
テリーが起き上がると、すでにヨダレを垂らした犬たちにかこまれていた。
「さあさあ、お前たち、久しぶりのご馳走の時間だよ」
太ったおばさんが犬たちにそう言うと、犬たちは一斉に雄叫びを上げて、テリーに向かって飛びかかった。
テリーは慌てて走り出し、部屋の窓から外へ身を投げた。
「お前たち!絶対に逃がすなよ!何のためにたくさん食べさせたと思ってるんだい!」
おばさんの雄叫びも、外まで響いていた。
テリーは1回も振り返らずに、ひたすら走り続けた。
しかし、いつまで走ろうとも、どこまで逃げても、犬たちの荒い息遣いが聞こえてくる。
体力がそこを尽き、もう走ることが出来なくなったテリーは、傍にあった川に身を投げ、気を失った。
そうしてそのまま、ずっとずっと遠くまで流された。
テリーが目を覚ますと、始めに見知らぬ天井が目に付いた。
「目が覚めたかい?」
声のする方を見ると、とっても年老いたおばあちゃんが、テリーをにっこり見つめていた。
「誰?」
「驚かせて済まないね。あんたが川から流れてきたから、慌てて連れてきたのさ」
おばあちゃんはテリーを助けてくれたのだ。
ここは、テリーの住む街からかなり離れた田舎町。
おばあちゃんはこの家で1人で住んでいるらしい。
テリーはおばあちゃんに色々な事を聞かれ、全て答えた。
「そうかい…。あんた、まだそんなに小さいのに…」
おばあちゃんはテリーの話を聞くと、涙をうかべた。
「よかったら、うちの子になりなさい」
おばあちゃんは、テリーを暖かく迎えた。
そうして、おばあちゃんとテリーは一緒に暮らし始めた。
おばあちゃんはとても優しく、いつまでもいつまでもテリーを可愛がってくれた。
人間のような暮らしができなかったお金持ちの家とも、犬の食用に育てられた家とも違い、おばあちゃんはいつまでも優しく、それはずっと変わらなかった。
テリーはついに居場所をみつけ、ようやく幸せな暮らしを手に入れました。
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