1 / 1
僕と、ニャン太。
しおりを挟む
「ニャン太!ほら、とってこーい!」
(待て待てー!逃がさないぞー)
「いい子だぞ、ニャン太。それ、もういっかい!」
(まてまてー!)
「ニャン太!すごいぞー!」
(これ楽しいねー!)
ニャン太と僕は、小さな頃から一緒に暮らしていた。
僕が生まれた日、家の前にガリガリに痩せ細った子猫が倒れていたらしい。
その子猫をお父さんが病院に連れて行って、家族として迎え入れた。
ニャン太という名前は、お父さんがつけた。
僕とニャン太が家に来てから、お父さんとお母さんは大忙しだったらしい。
ニャン太はすくすく育ち、僕にちょっかいをかける。
僕は大泣きして、2人とも目が離せなかったと言っていた。
ニャン太と僕が大きくなると、二人で仲良く遊んでいたらしい。
僕は泣き虫だったから、ニャン太が遊び相手をして、よくあやしてくれていた。
僕が歩くようになると、ニャン太は心配そうに僕を見ながら僕の周りをウロウロしていた。
「ニャン太が居れば安心だな」
お父さんはそう言って笑っていた。
僕が幼稚園に行くようになると、ニャン太は毎日毎日お見送りをしてくれた。
「ニャン太、いってきまーす!」
「にゃ~ん」
幼稚園から帰ると、ニャン太はお出迎えしてくれる。
「ニャン太、ただいまー!」
「にゃーにゃー!」
「一緒に遊ぼう!」
僕はニャン太と毎日遊んだ。
僕が小学生になると、友達が沢山できた。
僕はニャン太よりも、友達と遊ぶようになった。
ニャン太はいつも暇そうにゴロゴロしていた。
「ニャン太にエサあげといて!」
「えー、後でね~」
「はぁ…全くもう」
僕がもう少し大きくなると、ニャン太と遊ばなくなった。
ニャン太はじっと外を見つめ、たまにチラッと僕を見る。いつもいつも退屈そうにしていた。
僕が中学生になると、勉強に部活に忙しくなった。
ニャン太との時間はもっと無くなった。
「いってきまーす」
僕が学校に行く前にそう言うと、ニャン太は駆け寄ってきて僕の前に腰を下ろした。
ニャン太は大きくなった僕をじっと見つめ、いい子に座っていた。
僕はニャン太をチラッと見るだけで、家を出た。
よく考えると、ニャン太はいつもお見送りをしてくれていたかもしれない。
健気なやつ…。
さらに大きくなると、僕は家にいる時間が短くなった。
友達と遊びに行ったり、遅くまで部活したり、勉強をしに行ったり、ほとんど家にいなかった。
僕の帰りが遅いと、ニャン太は玄関に座ってドアをじっと見つめてるらしい。
多分、僕が帰るのを待っているんだと思う。
お母さんが、
「ニャン太、もうこっちおいで。一緒にゴロゴロしよう」
と言っても、ニャン太は頑なに動こうとしない。
何時間も何時間も僕の帰りを待っているらしい。
僕はそんなこと、全く知らなかった。
ある日から、ニャン太は眠ることが多くなった。
いつ見ても目を閉じて眠っている。
「あんた、たまにはニャン太と遊びなさいよ」
お母さんは僕にそう言った。
「また今度ね」
僕はそう返して、友達と遊びに行った。
その日から、ニャン太はお出迎えをしてくれなかった。
ニャン太はあまり餌を食べなくなった。
一日に動いてるところを見なくなった。
大好きな外を見ることも無く、いつもぐっすり眠っていた。
「ニャン太ももうすぐ17年になるわね…」
「ああ、そうだな…。もうその時までゆっくりさせてあげよう」
夜中、お母さんとお父さんが話しているのを聞いた。
その時僕は気づいた。ニャン太が餌を食べない理由も、動かない理由も、寝てばっかりの理由も。
ニャン太は寿命が来たのだ。
ニャン太はもうとっくにおじいちゃんだった。
次の日、僕は寝ているニャン太にそっと近づき、頭を撫でた。
ニャン太は寝たままだっが、口元がニコッと笑ったように見えた。
それから、ニャン太が目を覚ますことはなかった。
「ただいまー!ニャン太!遊ぼう!」
「おかえり!遊ぶ遊ぶ!待ってたよ!」
「よーし!公園まで競争だ!」
「待て待てー!」
「ニャン太、行くぞー!」
「頑張ってキャッチするぞー!」
「それ!とってこーい!」
「まてまてー!ボール!ボール!」
「ニャン太はボールが大好きだな~。それ、もう1回!」
「ボールたのしー!もっともっと遊ぼう!」
「ニャン太、そこは寒いだろう?こっちにおいで。一緒寝よう」
「ぬくぬく暖かい。ありがとう」
「ニャン太、これからもずっと一緒にいようね」
「うん、もちろんだよ」
「ニャン太、僕の家族になってくれて、ありがとう」
「こちらこそ、僕を家族にしてくれて、ありがとう」
ニャン太は旅立つ直前、昔の僕と遊んでる夢を見て幸せそうに旅立った。
ニャン太の幸せな時間は、あの時から止まっていたようだ。
ニャン太は遊んでくれない僕をどう思っていたのだろうか。
構ってくれなくて寂しかっただろうか。
ニャン太を見もしない僕をどう思って見ていたのだろうか。
ニャン太が元気なうちに遊んでおけばよかった。
「幸せそうに眠ってるわね」
「ああ。そうだな。ニャン太、元気でやるんだぞ」
お母さんとお父さんはニャン太を埋葬してあげた。
僕はそれを見つめていた。
次の日、ニャン太が夢に出てきた。
昔の小さな僕と遊んでいた。
夢の中のニャン太は幸せそうに小さな僕を見つめ、走り回っていた。
僕は2人を見つめ、立っていた。
ニャン太は僕を見ることなく、小さな僕と幸せそうに遊んでいた。
ニャン太はきっと、僕のことが嫌いだっただろう。
僕はニャン太のお墓を前に跪き、大声で泣いた。
(待て待てー!逃がさないぞー)
「いい子だぞ、ニャン太。それ、もういっかい!」
(まてまてー!)
「ニャン太!すごいぞー!」
(これ楽しいねー!)
ニャン太と僕は、小さな頃から一緒に暮らしていた。
僕が生まれた日、家の前にガリガリに痩せ細った子猫が倒れていたらしい。
その子猫をお父さんが病院に連れて行って、家族として迎え入れた。
ニャン太という名前は、お父さんがつけた。
僕とニャン太が家に来てから、お父さんとお母さんは大忙しだったらしい。
ニャン太はすくすく育ち、僕にちょっかいをかける。
僕は大泣きして、2人とも目が離せなかったと言っていた。
ニャン太と僕が大きくなると、二人で仲良く遊んでいたらしい。
僕は泣き虫だったから、ニャン太が遊び相手をして、よくあやしてくれていた。
僕が歩くようになると、ニャン太は心配そうに僕を見ながら僕の周りをウロウロしていた。
「ニャン太が居れば安心だな」
お父さんはそう言って笑っていた。
僕が幼稚園に行くようになると、ニャン太は毎日毎日お見送りをしてくれた。
「ニャン太、いってきまーす!」
「にゃ~ん」
幼稚園から帰ると、ニャン太はお出迎えしてくれる。
「ニャン太、ただいまー!」
「にゃーにゃー!」
「一緒に遊ぼう!」
僕はニャン太と毎日遊んだ。
僕が小学生になると、友達が沢山できた。
僕はニャン太よりも、友達と遊ぶようになった。
ニャン太はいつも暇そうにゴロゴロしていた。
「ニャン太にエサあげといて!」
「えー、後でね~」
「はぁ…全くもう」
僕がもう少し大きくなると、ニャン太と遊ばなくなった。
ニャン太はじっと外を見つめ、たまにチラッと僕を見る。いつもいつも退屈そうにしていた。
僕が中学生になると、勉強に部活に忙しくなった。
ニャン太との時間はもっと無くなった。
「いってきまーす」
僕が学校に行く前にそう言うと、ニャン太は駆け寄ってきて僕の前に腰を下ろした。
ニャン太は大きくなった僕をじっと見つめ、いい子に座っていた。
僕はニャン太をチラッと見るだけで、家を出た。
よく考えると、ニャン太はいつもお見送りをしてくれていたかもしれない。
健気なやつ…。
さらに大きくなると、僕は家にいる時間が短くなった。
友達と遊びに行ったり、遅くまで部活したり、勉強をしに行ったり、ほとんど家にいなかった。
僕の帰りが遅いと、ニャン太は玄関に座ってドアをじっと見つめてるらしい。
多分、僕が帰るのを待っているんだと思う。
お母さんが、
「ニャン太、もうこっちおいで。一緒にゴロゴロしよう」
と言っても、ニャン太は頑なに動こうとしない。
何時間も何時間も僕の帰りを待っているらしい。
僕はそんなこと、全く知らなかった。
ある日から、ニャン太は眠ることが多くなった。
いつ見ても目を閉じて眠っている。
「あんた、たまにはニャン太と遊びなさいよ」
お母さんは僕にそう言った。
「また今度ね」
僕はそう返して、友達と遊びに行った。
その日から、ニャン太はお出迎えをしてくれなかった。
ニャン太はあまり餌を食べなくなった。
一日に動いてるところを見なくなった。
大好きな外を見ることも無く、いつもぐっすり眠っていた。
「ニャン太ももうすぐ17年になるわね…」
「ああ、そうだな…。もうその時までゆっくりさせてあげよう」
夜中、お母さんとお父さんが話しているのを聞いた。
その時僕は気づいた。ニャン太が餌を食べない理由も、動かない理由も、寝てばっかりの理由も。
ニャン太は寿命が来たのだ。
ニャン太はもうとっくにおじいちゃんだった。
次の日、僕は寝ているニャン太にそっと近づき、頭を撫でた。
ニャン太は寝たままだっが、口元がニコッと笑ったように見えた。
それから、ニャン太が目を覚ますことはなかった。
「ただいまー!ニャン太!遊ぼう!」
「おかえり!遊ぶ遊ぶ!待ってたよ!」
「よーし!公園まで競争だ!」
「待て待てー!」
「ニャン太、行くぞー!」
「頑張ってキャッチするぞー!」
「それ!とってこーい!」
「まてまてー!ボール!ボール!」
「ニャン太はボールが大好きだな~。それ、もう1回!」
「ボールたのしー!もっともっと遊ぼう!」
「ニャン太、そこは寒いだろう?こっちにおいで。一緒寝よう」
「ぬくぬく暖かい。ありがとう」
「ニャン太、これからもずっと一緒にいようね」
「うん、もちろんだよ」
「ニャン太、僕の家族になってくれて、ありがとう」
「こちらこそ、僕を家族にしてくれて、ありがとう」
ニャン太は旅立つ直前、昔の僕と遊んでる夢を見て幸せそうに旅立った。
ニャン太の幸せな時間は、あの時から止まっていたようだ。
ニャン太は遊んでくれない僕をどう思っていたのだろうか。
構ってくれなくて寂しかっただろうか。
ニャン太を見もしない僕をどう思って見ていたのだろうか。
ニャン太が元気なうちに遊んでおけばよかった。
「幸せそうに眠ってるわね」
「ああ。そうだな。ニャン太、元気でやるんだぞ」
お母さんとお父さんはニャン太を埋葬してあげた。
僕はそれを見つめていた。
次の日、ニャン太が夢に出てきた。
昔の小さな僕と遊んでいた。
夢の中のニャン太は幸せそうに小さな僕を見つめ、走り回っていた。
僕は2人を見つめ、立っていた。
ニャン太は僕を見ることなく、小さな僕と幸せそうに遊んでいた。
ニャン太はきっと、僕のことが嫌いだっただろう。
僕はニャン太のお墓を前に跪き、大声で泣いた。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【怖い絵本】弟の人形
るいのいろ
絵本
ある日、弟が死んだ。
道路に飛び出して、車に轢かれちゃったらしい。
弟の部屋を片付けていると、見たことない人形があった。
「こんなもの、持ってたっけ?」
気づいたら私は、その人形を貰い、とても可愛がっていた。
なんだか、弟が帰ってきた気がして…。
ミツバチの子
るいのいろ
絵本
あるところに、とても大きな巣を持つミツバチたちがいました。
ミツバチたちは毎日せっせと働き、仲間や子供のためにたくさんのはちみつを作りました。
産卵の時期になると、女王蜂は新しい子供を作りました。
女王蜂は大きな部屋に1つ卵を落とすと、
「ミッチ」と名前をつけて、とても可愛がりました。
ミッチは卵の中ですくすく育ち、やがて大きな体で産まれました。
ミッチたちの巣は、とある養蜂場にありました。
この養蜂場には、みつるくんのおじいちゃんが
大事に大事に育てたミツバチたちがたくさんいました。
みつるくんは、このミツバチたちが作る、甘〜いハチミツが大好きでした。
みつるくんは、このハチミツがどうやって作られているのかきになり、おじいちゃんと一緒にハチミツをとってみることにしました。
ミッチたちは、毎日毎日働き、たくさんのハチミツを作りました。
しかしある時、ハッチたちの身に危険が迫ります…。
【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)
天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。
+:-:+:-:+
ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。
+:-:+:-:+
「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。
+:-:+:-:+
「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。
+:-:+:-:+
寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです!
+:-:+:-:+
2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。
+:-:+:-:+
未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。
僕の家が、乗っ取られた!
るいのいろ
絵本
お母さんのお手伝いをしないゆうたくん。
面倒くさがりのゆうたくんはいつも自分のことばかり。
家のお手伝いを全くしません。
ある日、ゆうたくんのお父さんがお手伝いロボを買ってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる