あなたのため。

るいのいろ

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あなたのため

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お母さんは、いつも口うるさい。
お片付けはしたの?宿題は終わったの?明日の準備はしたの?

いつもいつも、怒られちゃう。

「あーもう、うるさいなぁ」

僕はゲームが大好き。
お片付けよりも、宿題よりも、ゲームがしたい。

だけどお母さんは、いつもいう。

「先に終わらせちゃいなさい」

それで、ゲームを取り上げられちゃう。


お母さんは、いつもいう。

「あなたのためにうるさく言っているのよ。お母さんが言わないと、あなたやらないじゃない」

そんなことないもん。僕は言う。

お母さんが言わなくても、片付けだってやるし、宿題だってやるし、明日の準備だって終わらせられるんだから。


ある日の朝、僕は寝坊した。

「お母さん!なんで起こしてくれなかったの!」

「何回も起こしたわよ。ほら、朝ごはん早く食べちゃって」

「これじゃあ完全遅刻だよ!」

「いいから、早く食べちゃって。ほんとに遅れるわよ」


お母さんに言われるまま、急いで朝ごはんを食べた。

「急げ急げ...あー!学校の準備するの忘れてた...」

昨日、ゲームしたまま寝ちゃったからだ。
学校の用意をする前に寝てしまっていた。

「ほら、これ」

慌てている僕に、お母さんがカバンを持ってきてくれた。

「準備は終わってるわよ。早く学校に行きなさい」

お母さんは、学校の準備をやっておいてくれていたんだ。

「全く、お母さんがいないと何も出来ないんだから」

「そんなことないもん!じゃあ行ってくるから!」


僕はお母さんの最後の一言に少しむっとして、家を出た。

「僕だって、自分で出来るんだから」

その日の学校は、遅刻することも無く、何事もなく終わった。



ある日、僕はお母さんと喧嘩した。
お母さんがゲームの邪魔をして、口うるさく言うから、とうとう頭にきてしまったのだ。

「もう!お母さんなんていらない!」

僕は、お母さんに向かってそう言ってしまった。
お母さんは、少し寂しそうな顔をして、

「あっそう。じゃあ、お母さんやめますから」

とだけ言った。


次の日、僕はまた寝坊した。

「お母さん!なんで起こしてくれなかったの!」

「どうして起こさなきゃ行けないの?」

そうだった。お母さんは、今はお母さんじゃないんだ。

僕は黙って、テーブルに置かれた朝食を急いで食べた。

「あ!学校の準備してないや!体操服に、リコーダー...あー!宿題も終わってない!どうしよう...」


僕は大慌てで準備をした。
もちろん、学校には間に合わなくて、遅刻した。
宿題も終わらなかった。

学校に着くと、遅刻したことを叱られた。


「それじゃあ、宿題を出してもらおうかな」

授業が始まると、早速宿題を集め始めた。

「なんだ?宿題を忘れたのか?ちゃんとやらなきゃダメじゃないか!」

また、怒られてしまった。


昨日僕は、ゲームに夢中になって、何もしてなかったんだ。
お母さんが何も言わなかったから、やらなかったんだ。

いつもいつも、お母さんが言ってくれてたから、準備しない僕を叱ってくれてたから。
お母さんは、いつも僕のために言ってくれてたんだ。



家に帰ると、僕はお母さんに謝った。

「お母さん、ごめんなさい。」

お母さんは僕に背中を向けたまま、

「明日の準備は終わったの?」

と聞いた。

「今からやるよ!」

僕はそう言って、明日の準備をした。
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