【怖い絵本】お菓子あげるよ

るい

文字の大きさ
上 下
1 / 1

ついておいで

しおりを挟む
「お菓子、あげるよ」

学校の帰り道、一人で帰っていると、
知らないおじさんが、声をかけてきた。

私は、

「ううん。」

と、首を横に振った。

おじさんの車には、もう2人、おじさんの友達が乗ってた。
2人とも、私を睨むように見てた。
目が合うと、怖かった。


「お母さんにダメって言われてるから、いかないよ。」

私は、早足で歩いた。


「追いかけろ」

おじさん達が、後ろを着いてくる。


「好きな物、買ってあげるよ」

私は立ち止まった。

「なんでも?」

「もちろん。おもちゃでも、絵本でも、好きな物なんでも。」

ちょっと、揺らいだ。

「でも、やっぱり行かないよ。」


私は、また早足で歩いた。

おじさん達は、まだ着いてくる。


「お母さんとも、友達だよ」

おじさんは、お母さんと友達らしい。

「ほんとう?」

「本当だよ。だから、家まで送って行ってあげるよ」

おじさんは、ニコニコ笑顔で優しそう。
本当にお母さんの友達なのかも。

「私の家知ってるの?」

「もちろんだよ。お母さんの友達だからね」


それなら、大丈夫かも。
お母さんの友達なら。家を知っているなら。


「さあ、車に乗って。家まで送るよ」


私は、おじさん達の車に乗った。

車の中で、お菓子をくれた。ジュースもくれた。
楽しい話を沢山してくれた。



「あれ?おじさん、私の家こっちじゃないよ」


私がおじさんに言っても、おじさんは無視した。


「おじさん?」

「大丈夫だよ。ちょっと寄り道をするだけだからね」


そっか。もしかして、おもちゃを買ってくれるのかな?
わくわく。わくわく。



でも、それは違った。
車は、人のいない道を通って、どんどん山の中へ入っていく。
もうすぐ、日が暮れてしまう。


「おじさん、私の家、こっちじゃないよ?」

もう一度教えてあげた。
もしかして、迷子かもしれないから。


「大丈夫。大丈夫。」

おじさんは、そう言うだけだった。


山道を走っていると、おじさん達は誰も笑ってなかった。
さっきまで、楽しくおしゃべりしてたのに。
楽しくお菓子パーティーをしてたのに。


「おじさん...?」


おじさんは、返事をしてくれなくなった。
ハンドルを握って、前だけ見てた。



「さあ、着いたよ。」

しばらくすると、知らない場所に着いた。


「おじさん、ここはどこ?私の家は?」

「もうお家には帰さないよ。大人しく着いてきてくれてありがとう」

「お母さんは?お父さんは?」


だんだん、怖くなってきた。

「もう会えないよ。君は今日からここで暮らすんだ」

「嫌だ!嫌だ!おうちに帰してよ!」


私は、たくさん泣いた。


「だめだ。ここで暮らすんだ」


おじさん達は、怒っていた。
逃げようと走ったけれど、すぐに捕まっちゃった。


「やだやだ!お母さん!お父さん!助けて!」


私がどんなに暴れても、おじさん達は離してくれなかった。


「うるさい!」


おじさんは、大きな声で怒った。
それが怖くて、私は泣き止んだ。


「さあ、中へ連れていけ」


私はいっぱい暴れた。
たくさん叫んだ。

でも、誰も助けに来てくれなかった。



おじさん達は、女の子を家の中へ連れていき、閉じ込めた。
女の子が出てくることは二度となかった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

絵本 メリーさん

るい
絵本
夜遅くまで遊んでいるこの元には、メリーさんがやってくる。 有名なホラー話「メリーさん」を絵本にしてみました。

こわがりおばけ

るい
絵本
おばけなのに、こわがりなおばけ。 おばけの仲間たちからはバカにされ、仲間はずれにされた。 1人人間界をさまよっていると、こわがりな男の子と出会う。

ミツバチの子

るい
絵本
あるところに、とても大きな巣を持つミツバチたちがいました。 ミツバチたちは毎日せっせと働き、仲間や子供のためにたくさんのはちみつを作りました。 産卵の時期になると、女王蜂は新しい子供を作りました。 女王蜂は大きな部屋に1つ卵を落とすと、 「ミッチ」と名前をつけて、とても可愛がりました。 ミッチは卵の中ですくすく育ち、やがて大きな体で産まれました。 ミッチたちの巣は、とある養蜂場にありました。 この養蜂場には、みつるくんのおじいちゃんが 大事に大事に育てたミツバチたちがたくさんいました。 みつるくんは、このミツバチたちが作る、甘〜いハチミツが大好きでした。 みつるくんは、このハチミツがどうやって作られているのかきになり、おじいちゃんと一緒にハチミツをとってみることにしました。 ミッチたちは、毎日毎日働き、たくさんのハチミツを作りました。 しかしある時、ハッチたちの身に危険が迫ります…。

【いじめ絵本】Aくん

るい
絵本
僕のクラスに、Aくんが居た。 Aくんは夏休みが終わった頃に転校してきた。 Aくんは大人しい子で、あまり喋らなかった。 クラスのみんなは、無口なAくんのことを気持ち悪がった。 そのうち、Aくんは男の子たちにいじめられるようになった。 Aくんは、それでも黙っていた。 冬休みが明けると、Aくんは転校した。 その頃から、僕のクラスでは変なことが起こるようになった。

【怖い絵本】ザー。ザー。

るい
絵本
壊れたラジオが 泣いてるような音。 ザー。ザー。 部屋の周りを うろうろ。 ザー。ザー。 と、行ったり来たり。 布団にくるまって ようすをみる。 ザー。ザー... もう 行ったかな?

スキマ妖怪

るい
絵本
扉の隙間、カーテンの隙間、引き出しの隙間、色んなところに現れるよ。 隙間がないように閉めようね。

赤鬼と人間の男の子

るい
絵本
ある山奥に、真っ赤な赤鬼が住んでいた。 赤鬼には家族がおらず、いつも1人だった。 赤鬼は、ずっと1人だったので、友達が欲しかった。 ある時、そんな赤鬼の家に、人間の男の子が迷い込んだ。 男の子は、目が見えなかったので、赤鬼を怖がらなかった。 赤鬼は、男の子を心配して家に連れ込んだ。 赤鬼は、男の子と話すうちに、少しづつ仲良くなった。 でも、赤鬼の正体がバレたら、きっと怖がられ、嫌われてしまう。 赤鬼はそんな不安を抱えつつ、男の子と過ごしていく。

ノック ノック

るい
絵本
夜中にノックが聞こえても、絶対に出ちゃいけないよ。 それはお母さんでも、お父さんでもない。 ましてや、夜中に友達は来ない。 それは、こわいこわーい妖怪かもしれないよ。

処理中です...