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スイとはる
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とある家に、1匹の猫と1人の男の子がいました。
猫の名前はスイ。
男の子の名前ははるきくん。
スイははるきくんが生まれてからすぐにこの家に来ました。
2人は兄弟のように仲良しでした。
はるきくんが小さい時は、スイが面倒を見ました。
スイが風邪をひいた時は、はるきくんが看病しました。
はるきくんのお父さんとお母さんは、2人を温かい目で見守り、可愛がりました。
「スイとお散歩に行ってくる!」
幼稚園生になったはるきくんは、毎日のようにスイと散歩に行きました。
スイははるきくんとの散歩が大好きで、はるきくんの帰りを楽しみに待っていました。
お散歩がおわると、今度ははるきくんの膝の上でごろごろ。
はるきくんはスイを撫でながら、一緒に寝てしまいます。
ご飯も一緒に食べました。お風呂も一緒に入りました。
この時の2人はとっても仲良しでした。
はるきくんが小学生になると、友達と遊ぶようになりました。
スイは、学校から帰ってくるはるきくんを待っていましたが、はるきくんは友達と遊びに行くようになりました。
「ただいまー!」
「はるき、スイと散歩に行かないの?」
「これから友達と遊ぶから行けなーい」
はるきくんはピカピカのランドセルを放り出して、すぐに出ていってしまいました。
スイははるきくんの後ろ姿をじっと見つめ、玄関の扉が閉まるまで眺めていました。
それから、はるきくんはスイと散歩に行かなくなりました。
スイは楽しみの散歩が無くなってしまい、寂しい思いをしました。
でも、毎日はるきくんが楽しそうにしているので、それで良かったのです。
はるきくんがさらに大きくなると、スイに構うことは無くなりました。
スイは1人でごろごろして、1人でご飯を食べて、また1人でごろごろしました。
毎日毎日、日向であくびをして過ごす日々を送りました。
「スイ、久しぶりにお母さんと散歩に行こうか」
久しぶりの散歩に嬉しくなったスイは、はるきくんのお母さんに連れられて外に出ました。
久しぶりにふかふかな芝生を踏み、スイは駆け回りました。
どこからか楽しそうな声がして、辺りをキョロキョロ見渡しました。すると、小さな女の子と小さな子猫が仲良く遊んでいました。
2人はとても仲良しに見えました。
女の子が投げたボールを子猫が取りに行き、また女の子の元へと駆けます。
スイがそんな2人を見つめていると、お母さんがスイの頭を撫でました。
「さあ、帰ろうか」
お母さんに連れられ、スイは家へ向かいました。
はるきくんは、すくすく育ちました。
中学生、高校生…。
そしてはるきくんは、大学生になりました。
「はるき、元気でやるのよ」
はるきくんの大学は県外にあり、はるきくんは独り立ちすることになりました。
お母さんとお父さんははるきくんを見送る日、涙を流していました。
大きくなったはるきくんは、2人よりも背が高く、頼もしく見えました。
スイも、歳をとりました。
手足が上手く動かせず、ずっと寝ている状態でした。
スイはお気に入りの寝床から重い腰を上げ、はるきくんの元へ近寄りました。
「ほら、スイもお別れをしに来たわよ」
「スイ…」
はるきくんは元気の無いスイを抱き抱え、そっと鼻にキスをしました。
「今までありがとう。元気でな、スイ」
はるきくんはスイを下ろし、頭をなでました。
そうして、はるきくんはみんなにお別れを告げ、旅立って行きました。
スイは、もうはるきくんの目を見ませんでした。
はるきくんともっと遊びたかった。もっとかまって欲しかった。大好きな散歩にも行きたかった。
スイは長年待っていましたが、結局はるきくんは遊んでくれませんでした。
「はるきくん、さようなら」
スイはそっとつぶやき、目を閉じました。
その後、次にはるきくんがスイと再開した時、スイはピクリとも動きませんでした。
猫の名前はスイ。
男の子の名前ははるきくん。
スイははるきくんが生まれてからすぐにこの家に来ました。
2人は兄弟のように仲良しでした。
はるきくんが小さい時は、スイが面倒を見ました。
スイが風邪をひいた時は、はるきくんが看病しました。
はるきくんのお父さんとお母さんは、2人を温かい目で見守り、可愛がりました。
「スイとお散歩に行ってくる!」
幼稚園生になったはるきくんは、毎日のようにスイと散歩に行きました。
スイははるきくんとの散歩が大好きで、はるきくんの帰りを楽しみに待っていました。
お散歩がおわると、今度ははるきくんの膝の上でごろごろ。
はるきくんはスイを撫でながら、一緒に寝てしまいます。
ご飯も一緒に食べました。お風呂も一緒に入りました。
この時の2人はとっても仲良しでした。
はるきくんが小学生になると、友達と遊ぶようになりました。
スイは、学校から帰ってくるはるきくんを待っていましたが、はるきくんは友達と遊びに行くようになりました。
「ただいまー!」
「はるき、スイと散歩に行かないの?」
「これから友達と遊ぶから行けなーい」
はるきくんはピカピカのランドセルを放り出して、すぐに出ていってしまいました。
スイははるきくんの後ろ姿をじっと見つめ、玄関の扉が閉まるまで眺めていました。
それから、はるきくんはスイと散歩に行かなくなりました。
スイは楽しみの散歩が無くなってしまい、寂しい思いをしました。
でも、毎日はるきくんが楽しそうにしているので、それで良かったのです。
はるきくんがさらに大きくなると、スイに構うことは無くなりました。
スイは1人でごろごろして、1人でご飯を食べて、また1人でごろごろしました。
毎日毎日、日向であくびをして過ごす日々を送りました。
「スイ、久しぶりにお母さんと散歩に行こうか」
久しぶりの散歩に嬉しくなったスイは、はるきくんのお母さんに連れられて外に出ました。
久しぶりにふかふかな芝生を踏み、スイは駆け回りました。
どこからか楽しそうな声がして、辺りをキョロキョロ見渡しました。すると、小さな女の子と小さな子猫が仲良く遊んでいました。
2人はとても仲良しに見えました。
女の子が投げたボールを子猫が取りに行き、また女の子の元へと駆けます。
スイがそんな2人を見つめていると、お母さんがスイの頭を撫でました。
「さあ、帰ろうか」
お母さんに連れられ、スイは家へ向かいました。
はるきくんは、すくすく育ちました。
中学生、高校生…。
そしてはるきくんは、大学生になりました。
「はるき、元気でやるのよ」
はるきくんの大学は県外にあり、はるきくんは独り立ちすることになりました。
お母さんとお父さんははるきくんを見送る日、涙を流していました。
大きくなったはるきくんは、2人よりも背が高く、頼もしく見えました。
スイも、歳をとりました。
手足が上手く動かせず、ずっと寝ている状態でした。
スイはお気に入りの寝床から重い腰を上げ、はるきくんの元へ近寄りました。
「ほら、スイもお別れをしに来たわよ」
「スイ…」
はるきくんは元気の無いスイを抱き抱え、そっと鼻にキスをしました。
「今までありがとう。元気でな、スイ」
はるきくんはスイを下ろし、頭をなでました。
そうして、はるきくんはみんなにお別れを告げ、旅立って行きました。
スイは、もうはるきくんの目を見ませんでした。
はるきくんともっと遊びたかった。もっとかまって欲しかった。大好きな散歩にも行きたかった。
スイは長年待っていましたが、結局はるきくんは遊んでくれませんでした。
「はるきくん、さようなら」
スイはそっとつぶやき、目を閉じました。
その後、次にはるきくんがスイと再開した時、スイはピクリとも動きませんでした。
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