僕が蓋を開ける時

るいのいろ

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パパがくれた箱

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「これはパパの宝物だよ。君が大きくなった時に、開けてごらん。きっと気に入ってくれると思う」

僕が小さい時、パパはそういって僕にある箱をくれた。
古くて、ボロボロで、小さな箱。

「こんな箱、何が入っているんだろう?」

小さかった僕は、気にもしなかった。


それから2年が経って、僕は5歳の誕生日を迎えた。


「お誕生日おめでとう。こんなに大きくなって…」

5歳の誕生日は、お母さんとおじいちゃん、おばあちゃんの4人で迎えた。お父さんはそこにはいなかった。

お母さんとおばあちゃんは、たくさんのご馳走と大きなケーキを用意してくれた。


「さあ、冷めないうちに食べましょう。」


いただきますの合図と同時に、僕達はご馳走を頬張った。


「ほれ、プレゼントじゃよ。」

おじいちゃんがプレゼントを持ってきてくれた。


僕が欲しかったおしゃべりするロボットのおもちゃと、綺麗な三輪車をくれた。


「ありがとう!」


僕はすごく嬉しかった。
お母さんたちも、喜ぶ僕を見て嬉しそうだったり、安心したりしていた。



ご馳走を食べ終え、貰ったプレゼントを眺めていたら、お母さんが変な箱を持ってきた。


「お母さん、これなあに?」

「これは、お父さんからよ。ずっと前にあなたへって、貰ったでしょう?」



そうだ。これは僕が小さい頃に、お父さんがくれた謎の箱だ。


「それ、何が入ってるの?」

「さあ?開けてご覧なさい」


僕はその箱を丁寧に開けてみた。


「…これ、なあに?」


箱の中には、糸で繋がっている赤い玉が刺さっている変な棒とか、変な絵が書かれたトランプみたいなカードとか、電動ではない小さな車とか、色んなおもちゃが入っていた。



「うわぁ。懐かしいなぁ。」

おじいちゃんとおばあちゃんは、懐かしそうにしていた。目がキラキラしていた。
お母さんは笑っていたけど、少し呆れたような目だった。


「これはね、けん玉だよ。こうやって遊ぶんだ」


おじいちゃんはけん玉を持って、色んな技を見せてくれた。


「これは?」

「これはお手玉だよ。こうやってやるのさ」


おばあちゃんはお手玉を3つ手に持って、ひょいひょいと投げて遊んでみせた。



「すごいすごい!」


お母さんはお手玉が好きなようだ。


「じゃあじゃあ、これは?」

「これはかるただね。どれ、ちょっとみんなでやってみようか」


おじいちゃんはかるたを机の上に広げた。
かるたは子供の僕でも楽しめた。
お母さんも、おばあちゃんも、みんな楽しそうだった。



「懐かしいねぇ…」

「お父さんはどうしてこれを僕にくれたんだろう?」

「さあねぇ…ん?これは?」


おばあちゃんは、箱の中から1枚の紙を取りだした。


「お手紙だ!」

お父さんから、僕宛てに書いてくれたお手紙だった。


「読んでごらん。」



手紙には、こう書かれていた。





「5歳のお誕生日おめでとう。
今日まで無事に成長してくれて、パパも嬉しいよ。大きくなったね。
プレゼントは喜んでくれたかな?
それは、パパが小さい頃によく遊んだおもちゃだよ。
おじいちゃんから貰ったんだ。
昔、みんなでよく遊んだものだよ。

この箱を開いた時、きっとみんな笑顔になるだろう。
おじいちゃんも、おばあちゃんも、お母さんも。
みんなが笑顔になってくれる物を選んだんだ。
みんなが笑っていてくれたらいいな。

最後に、お誕生日の場にパパがいられなくてごめんね。
パパはもう同じ世界には居ないけれど、いつでも君を見守っているよ。ずっと、空の上から見ているよ。
安心して、もっともっと大きくなってね。
これからも、君の健康を祈って。

パパより」





「次はこれで遊びましょう」

「これまたなつかしいねぇ。昔はずっとこれで遊んでいたなぁ」


おじいちゃんも、おばあちゃんも、お母さんも、みんな笑っている。
このおもちゃは、みんなの思い出なんだ。
みんなとお父さんとの、大切な思い出。



「お父さん、みんな笑っているよ。プレゼントをありがとう。」



お父さんは空からみんなを見ていた。


「よかったよかった。みんな楽しそうだ。」



我が家からは、ずっと笑い声が聞こえていた。

みんな笑っていた。
おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、僕。
そしてお父さんも、笑っていた。
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