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森の魔女
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あるところに、とても仲良く暮らす父と娘がいました。
親子はとても貧しく、苦しい生活をしていました。
継ぎ接ぎだらけの家に住み、食事は1つのパンを2人で分けて食べました。
父は昨年足を怪我し、歩くこともろくに出来なくなりました。
そのせいで元の仕事をなくし、この家には十分な収入がありませんでした。
小さな娘は、そこら辺で摘んだ花で花飾りを作り、それを街に持っていって売りました。
手先が器用な娘の花飾りは、綺麗でよく出来ていましたが、1日ひとつ売れればいい方でした。
それでも2人は、励まし合い、仲良く暮らしていました。
しかしある時、父は自分の情けなさとこの暮らしに嫌気がさし、娘を森へ捨てようと考えました。
森へ向かう日、朝早くから娘を起こしました。
「これから森へ行って、綺麗な花を摘み行こう。その花で、また花飾りを作っておくれ」
父は娘にそう言い、森へ連れ出しました。
森の中へ入り、娘は花摘みをしました。
父はどんどん森の奥へ入り、娘も後に続きました。
日が暮れ、辺りが暗くなった頃、父は娘にこう言いました。
「父さんは向こうのお花を積みに行ってくるよ。お前はここのお花を摘んでいてくれ」
「でもお父さん、もうこんなに真っ暗よ。一人でいるのは怖いわ」
「大丈夫、すぐに戻ってくるよ。少しの間だけ待っててくれ」
そうして父は、娘を置いて森を出ていきました。
翌朝、日が辺りを照らし始めた頃、森の中はまだ薄暗いままでした。
父に捨てられたことを悟った娘は、いつの間にか寝ていたようです。
森が少しだけ明るくなった頃、娘は目を覚ましました。
娘は川で顔を洗い、近くにあった木の実で腹を満たしました。
「こんなに森の奥では、帰り道も分からない。お父さんには捨てられてしまった。私にはもう居場所がないわ…」
すると、森の魔女が娘の前を通りました。
魔女は娘を見ると、そのあまりの美しさに目を輝かせました。
魔女は思わず、娘に声をかけました。
「あんた、迷子かい?」
「ええ、そうなんです。昨夜父に捨てられてしまったのです」
「なんだい、捨て子かい。かわいそうな子だね。よし、私の家に来なさい。汚いところだが、家がないよりマシだろう」
魔女はそう言うと、娘をほうきに乗せて飛び立ちました。
魔女の家は森のさらに奥にあり、雲まで届きそうなほど細長く高い建物でした。
「さあ、お入り。おまえ、名前はなんて言うんだい?」
「メリー。メリーって言うの」
「そうかい、メリー。あんたは今日から私の娘だ。この家に来たからには、しっかり働いてもらうよ」
「はい!おばあさん、私、何でもするわ!」
それから、メリーと魔女の暮らしが始まりました。
メリーは魔女の家の家事を毎日こなしました。
前の生活とは一転、大きなお家に贅沢なご馳走、メリーは幸せを感じていました。
しかし、魔女にはある企みがありました。
魔女は、メリーを悪い魔女に仕立て上げ、街を破壊してしまおうと考えていたのです。
メリーはそんなことには気が付かず、毎日幸せに暮らしました。
メリーは毎日家事におわれ、大忙しでした。
気づけば、魔女の家に来てから、1度も外に出ていませんでした。
ある天気のいい日に、久しぶりに外に出てみようと、メリーは玄関の扉を開けようとしました。
しかし、鍵がかかっていて開きません。
この扉には鍵穴のようなものがなく、メリーには開けられませんでした。
その日メリーは、魔女のおばあさんに外に出たいと言いました。
「何を言ってるんだい!!外になんて行かせやしないよ!あんたは家事をやっていればいいのさ!」
魔女は大きな声でメリーを怒鳴り、外には出してくれませんでした。
おばあさんの様子がおかしいと思ったメリーは、夜遅く、おばあさんの部屋をこっそり覗きました。
するとそこには、大きな爪と長い茶色の毛を持った化け物がいました。
メリーはおもわず、息をはっとのみ、部屋の扉を閉めました。
「ここにいては行けない!殺されてしまうわ!」
メリーは急いで玄関まで行き、扉に手をかけました。
しかし、どうやっても扉は開きません。
「そうだ!部屋の窓からなら降りられるわ!」
メリーは自分の部屋の窓から飛び降りることにしました。
「メリー、何しているんだい」
真っ黒な廊下の向こうから、声がしました。
化け物は、元のおばあさんの姿でそこに立っていました。
「私を騙したのね!こんなところ、出てってやる!」
「ふふふ。ようやく気づいたのかい。でももう遅いよ。お前はここから逃げられやしないさ」
おばあさんはくるりと一回転して、化け物の姿に変わりました。
メリーは自分の部屋まで必死に走りました。
「まてーーーーーーーーーー!!!」
化け物が廊下の向こう側から追いかけてきます。
メリーは部屋まで着くと、窓を開け、飛び降りました。
ちょうど雑草がクッションになって、メリーは無事魔女の家から出られました。
「早くここから離れなきゃ!」
ほっとしたのも束の間、魔女がほうきに乗って出てきました。
「まてーーーーーーーーーー!!!!!!」
魔女は鬼の形相でメリーを追っています。
「このままでは追いつかれてしまう!どうすれば…!」
メリーは必死に考えました。
「逃がしやしないよ!この小娘!」
辺りはまだまだ真っ暗なため、足元もあまり見えません。
メリーは何度も転びそうになりながら、走り続けました。
魔女もメリーを見失わないように、木を避けながら飛んでいます。
「そうだ!魔女が苦手なもの、それはお日様の光!もうすぐ日が昇るわ!」
メリーは方向を変え、森の出口へ向かって走りました。
「まてーー!!!絶対に逃がしてなるものか!!」
魔女も諦めず、必死に追いかけます。
日が登り始め、辺りがだんだん明るくなった頃、森の出口に近づいてきました。
「森の外へは行かせん!絶対に捕まえてやる!」
メリーは魔女がしっかり着いてきているのも確認して、森の出口へと飛び出しました。
「う、うわぁーーーー!!!これは、太陽の光…!か、体が熱い…!」
森から出ると、陽の光が当たりをつつんでいました。
魔女もつられて森から出ると、太陽の光を全身に浴び、ほうきから転げ落ちました。
「あ、熱い…熱い…メリーや…助けてくれ…」
魔女は陽の光を浴びると、肌がカサカサになり、ポロポロとこぼれおちました。
やがて倒れ込み、そのまま灰となってしまいました。
メリーは助かり、森を出るとこが出来ました。
その後、メリーは家に帰り、お父さんと再開しました。
「メリー、ごめんよ。僕が間違っていた。本当にごめん」
お父さんはメリーを抱きしめ、何度も何度も謝りました。
それから、お父さんは新しい仕事を見つけ、メリーもお花屋さんを開きました。
2人の生活は少しずつ潤い、いつまでも幸せに暮らしました。
親子はとても貧しく、苦しい生活をしていました。
継ぎ接ぎだらけの家に住み、食事は1つのパンを2人で分けて食べました。
父は昨年足を怪我し、歩くこともろくに出来なくなりました。
そのせいで元の仕事をなくし、この家には十分な収入がありませんでした。
小さな娘は、そこら辺で摘んだ花で花飾りを作り、それを街に持っていって売りました。
手先が器用な娘の花飾りは、綺麗でよく出来ていましたが、1日ひとつ売れればいい方でした。
それでも2人は、励まし合い、仲良く暮らしていました。
しかしある時、父は自分の情けなさとこの暮らしに嫌気がさし、娘を森へ捨てようと考えました。
森へ向かう日、朝早くから娘を起こしました。
「これから森へ行って、綺麗な花を摘み行こう。その花で、また花飾りを作っておくれ」
父は娘にそう言い、森へ連れ出しました。
森の中へ入り、娘は花摘みをしました。
父はどんどん森の奥へ入り、娘も後に続きました。
日が暮れ、辺りが暗くなった頃、父は娘にこう言いました。
「父さんは向こうのお花を積みに行ってくるよ。お前はここのお花を摘んでいてくれ」
「でもお父さん、もうこんなに真っ暗よ。一人でいるのは怖いわ」
「大丈夫、すぐに戻ってくるよ。少しの間だけ待っててくれ」
そうして父は、娘を置いて森を出ていきました。
翌朝、日が辺りを照らし始めた頃、森の中はまだ薄暗いままでした。
父に捨てられたことを悟った娘は、いつの間にか寝ていたようです。
森が少しだけ明るくなった頃、娘は目を覚ましました。
娘は川で顔を洗い、近くにあった木の実で腹を満たしました。
「こんなに森の奥では、帰り道も分からない。お父さんには捨てられてしまった。私にはもう居場所がないわ…」
すると、森の魔女が娘の前を通りました。
魔女は娘を見ると、そのあまりの美しさに目を輝かせました。
魔女は思わず、娘に声をかけました。
「あんた、迷子かい?」
「ええ、そうなんです。昨夜父に捨てられてしまったのです」
「なんだい、捨て子かい。かわいそうな子だね。よし、私の家に来なさい。汚いところだが、家がないよりマシだろう」
魔女はそう言うと、娘をほうきに乗せて飛び立ちました。
魔女の家は森のさらに奥にあり、雲まで届きそうなほど細長く高い建物でした。
「さあ、お入り。おまえ、名前はなんて言うんだい?」
「メリー。メリーって言うの」
「そうかい、メリー。あんたは今日から私の娘だ。この家に来たからには、しっかり働いてもらうよ」
「はい!おばあさん、私、何でもするわ!」
それから、メリーと魔女の暮らしが始まりました。
メリーは魔女の家の家事を毎日こなしました。
前の生活とは一転、大きなお家に贅沢なご馳走、メリーは幸せを感じていました。
しかし、魔女にはある企みがありました。
魔女は、メリーを悪い魔女に仕立て上げ、街を破壊してしまおうと考えていたのです。
メリーはそんなことには気が付かず、毎日幸せに暮らしました。
メリーは毎日家事におわれ、大忙しでした。
気づけば、魔女の家に来てから、1度も外に出ていませんでした。
ある天気のいい日に、久しぶりに外に出てみようと、メリーは玄関の扉を開けようとしました。
しかし、鍵がかかっていて開きません。
この扉には鍵穴のようなものがなく、メリーには開けられませんでした。
その日メリーは、魔女のおばあさんに外に出たいと言いました。
「何を言ってるんだい!!外になんて行かせやしないよ!あんたは家事をやっていればいいのさ!」
魔女は大きな声でメリーを怒鳴り、外には出してくれませんでした。
おばあさんの様子がおかしいと思ったメリーは、夜遅く、おばあさんの部屋をこっそり覗きました。
するとそこには、大きな爪と長い茶色の毛を持った化け物がいました。
メリーはおもわず、息をはっとのみ、部屋の扉を閉めました。
「ここにいては行けない!殺されてしまうわ!」
メリーは急いで玄関まで行き、扉に手をかけました。
しかし、どうやっても扉は開きません。
「そうだ!部屋の窓からなら降りられるわ!」
メリーは自分の部屋の窓から飛び降りることにしました。
「メリー、何しているんだい」
真っ黒な廊下の向こうから、声がしました。
化け物は、元のおばあさんの姿でそこに立っていました。
「私を騙したのね!こんなところ、出てってやる!」
「ふふふ。ようやく気づいたのかい。でももう遅いよ。お前はここから逃げられやしないさ」
おばあさんはくるりと一回転して、化け物の姿に変わりました。
メリーは自分の部屋まで必死に走りました。
「まてーーーーーーーーーー!!!」
化け物が廊下の向こう側から追いかけてきます。
メリーは部屋まで着くと、窓を開け、飛び降りました。
ちょうど雑草がクッションになって、メリーは無事魔女の家から出られました。
「早くここから離れなきゃ!」
ほっとしたのも束の間、魔女がほうきに乗って出てきました。
「まてーーーーーーーーーー!!!!!!」
魔女は鬼の形相でメリーを追っています。
「このままでは追いつかれてしまう!どうすれば…!」
メリーは必死に考えました。
「逃がしやしないよ!この小娘!」
辺りはまだまだ真っ暗なため、足元もあまり見えません。
メリーは何度も転びそうになりながら、走り続けました。
魔女もメリーを見失わないように、木を避けながら飛んでいます。
「そうだ!魔女が苦手なもの、それはお日様の光!もうすぐ日が昇るわ!」
メリーは方向を変え、森の出口へ向かって走りました。
「まてーー!!!絶対に逃がしてなるものか!!」
魔女も諦めず、必死に追いかけます。
日が登り始め、辺りがだんだん明るくなった頃、森の出口に近づいてきました。
「森の外へは行かせん!絶対に捕まえてやる!」
メリーは魔女がしっかり着いてきているのも確認して、森の出口へと飛び出しました。
「う、うわぁーーーー!!!これは、太陽の光…!か、体が熱い…!」
森から出ると、陽の光が当たりをつつんでいました。
魔女もつられて森から出ると、太陽の光を全身に浴び、ほうきから転げ落ちました。
「あ、熱い…熱い…メリーや…助けてくれ…」
魔女は陽の光を浴びると、肌がカサカサになり、ポロポロとこぼれおちました。
やがて倒れ込み、そのまま灰となってしまいました。
メリーは助かり、森を出るとこが出来ました。
その後、メリーは家に帰り、お父さんと再開しました。
「メリー、ごめんよ。僕が間違っていた。本当にごめん」
お父さんはメリーを抱きしめ、何度も何度も謝りました。
それから、お父さんは新しい仕事を見つけ、メリーもお花屋さんを開きました。
2人の生活は少しずつ潤い、いつまでも幸せに暮らしました。
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ほんわかした優しいお話ですね!
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メリーちゃんパパ、頑張って! と思わず応援してしまいます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
楽しんで読んでいただけたのなら幸いです!