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初めての雪
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「うわぁ~!真っ白~!!」
朝起きると、辺り一面雪に覆われていました。
「お母さん!外に行ってくる!」
「マフィ、外は寒いから上着を着ていきなさい」
お母さんは小さなマフィにジャンパーを着させました。
それと、手袋にマフラーも。
「はい、いってらっしゃい」
マフィは早速、雪の中を駆け回りました。
しゃりしゃり、ひんやり、冷たい雪。
マフィの町では、雪は滅多に降りません。
そのため、雪を見るのが初めてでした。
「そうだ!雪だるまを作ろう!」
絵本で見た、雪の玉をふたつ重ねたもの。
マフィは雪だるまを作るのが夢でした。
まずは、小さな雪玉を手でこねこね。
次に、小さな雪玉をころころ転がして、大きな雪玉にしていく。
それを、2つ分。
「できたー!」
マフィは玄関の前に、自分と同じくらいの高さの雪だるまを作りました。
「お母さん、見てみて!雪だるま作ったよ!」
「あら、上手に作ったわね。」
「ここに置いといてもいい?」
「もちろんいいわよ。さ、ちょうどおやつが出来たから食べましょう。でも冷えたでしょう」
「うん!」
マフィは上手に出来た雪を見て、鼻水をすすった。
誰もいなくなった時、雪だるまは静かに動き出しました。
「よいしょ、よいしょ」
雪だるまは、何やらもぞもぞと動いています。
「とうっ!」
次の瞬間、雪だるまの体から腕が2本、足が2本生えてきました。
「うん、我ながら素晴らしい体だ!あの女の子には感謝しなくちゃ…」
雪だるまは当たりをキョロキョロ見渡し、何かを探しています。
「ここはそのうち日が当たりそうだな…どこか一日中くらい所は…」
「あっ!!!」
「ん!?!?!?」
雪だるまの背中から、マフィの驚いた声が響きました。
「雪だるまが動いてる!!」
「あっ、あわあわ…」
マフィも雪だるまも大慌て。
お互い、目を合わせたまま動きません。
「雪だるまさん…生きているの?」
雪だるまは言葉が出ません。
「そ、そうさ!僕は生きているんだ!」
マフィの目がだんだん輝きます。
「雪だるまさんが生きてるなんて知らなかった!お母さんに教えてあげなきゃ!」
「ちょっとまって!僕は本当は動いちゃいけないんだ。だから、お母さんには内緒にしておいてね」
「そうなんだぁ。じゃあさ、一緒に遊ぼう!」
マフィは雪だるまの手を引っ張り、近くの丘をかけ登りました。
「雪だるまさんは、なんて名前なの?」
「僕かい?僕には名前なんてないよ」
「そうなんだぁ。じゃあ、わたしがつけてあげる!」
「本当かい!?」
「う~ん…雪は真っ白だから、マシロ!」
「そのまんまだね…でも、気に入ったよ!僕の名前はマシロだ!ところで、君の名前は?」
「私はマフィよ。お母さんがつけてくれたの!」
「マフィか。とてもいい名前だね!」
「うん!それよりマシロ、鬼ごっこしようよ!」
「鬼ごっこかぁ、やろうやろう!」
マフィとマシロは、雪の上を走り回りました。
真っ白な景色に二人の笑い声がひびきます。
2人が夢中になって遊んでいると、だんだんと太陽が出てきました。
「うっ…」
「どうしたの?マシロ?」
マシロの体に太陽の日が当たって、少し溶けていました。
「僕は太陽が苦手なんだ…体が溶けてくよぉ…」
マフィは溶けてくマシロを見て大慌て。
急いで家の中へと運びます。
「あっ!お母さんに見つからないようにしなきゃ!」
マフィは家の中にこっそり入り、静かに忍び込みました。
「冷蔵庫には入らないし…でも他に冷たい所なんて…」
マフィは悩みました。
家にはマシロが入るほど大きな冷蔵庫はありませんし、氷の部屋なんてものもありません。
「マフィ、ありがとう。もういいんだ。僕はこうなる運命だったんだ…」
「マシロ、諦めちゃだめ!どこかいい場所を探すから…」
「ううん。雪だるまの僕は、長く生きられないんだ。雪はすぐに溶ける。だからこそ美しいんだ。僕も美しいままでいたいから、このまま最後まで見届けてくれるかい?」
「…わかった。お別れなんだね」
「ありがとう、マフィ。短い間だったけど、楽しかったよ」
マフィは自分の部屋の真ん中に、小さくなったマシロを置きました。
マシロは少しずつ溶け、やがて手のひらに乗るほどの大きさになりました。
「マフィの手は暖かくて、とても落ち着くよ。ねえマフィ、お願いがあるんだ」
「…なあに?」
「もし、次に雪が降った時には、また僕を作ってくれるかい?もう一度、マフィと遊びたいんだ」
「もちろんよ。今度はすぐに溶けないように、もっともっと大きくて丈夫な雪だるまを作る!そしたらまたマシロと遊べるね!」
「ありがとう。マフィに作ってもらえてよかったよ。僕は幸せな雪だるまさ…」
「マシロ、また必ず会いに来てね。約束だよ」
「うん。僕とマフィとの約束だ。」
マシロはそう言って、完全に溶けてしまった。
20年後…
「お母さん!雪が降ったよ!!」
「あら、本当ね。雪なんていつぶりかしら…」
お母さんの頭に、ある雪だるまが思い浮かんだ。
「あれはきっと夢よね…。雪だるまが喋るなんて、あるわけないもの…」
お母さんになったマフィは、辺り一面の雪を見渡し、クスリと笑った。
「お母さん見てみて!雪だるまを作ったよ!」
小さな女の子が、小さな雪だるまをもって走ってきた。
それは、かつてマフィが作った雪だるまにそっくりだった。
「ふふ。上手に出来たわね!日に当てると溶けちゃうから、日陰に置いときなさい。大事にするのよ。」
「わかったー!」
女の子は大事そうに雪だるまを持ち、日陰にそっと置いた。
「さ、おやつにしましょう」
「うん!」
お母さんは女の子の手を引き、家の中に入った。
「久しぶりだね、マフィ。また会えて嬉しいよ!」
ふと、そんな声が聞こえた。
マフィが振り向くと、小さな雪だるまがこっちを向いて、ニコッと笑った気がした。
「ふふっ。約束通り、また逢いに来てくれたのね。」
マフィはまたニコッと笑い、家の中へと入っていった。
朝起きると、辺り一面雪に覆われていました。
「お母さん!外に行ってくる!」
「マフィ、外は寒いから上着を着ていきなさい」
お母さんは小さなマフィにジャンパーを着させました。
それと、手袋にマフラーも。
「はい、いってらっしゃい」
マフィは早速、雪の中を駆け回りました。
しゃりしゃり、ひんやり、冷たい雪。
マフィの町では、雪は滅多に降りません。
そのため、雪を見るのが初めてでした。
「そうだ!雪だるまを作ろう!」
絵本で見た、雪の玉をふたつ重ねたもの。
マフィは雪だるまを作るのが夢でした。
まずは、小さな雪玉を手でこねこね。
次に、小さな雪玉をころころ転がして、大きな雪玉にしていく。
それを、2つ分。
「できたー!」
マフィは玄関の前に、自分と同じくらいの高さの雪だるまを作りました。
「お母さん、見てみて!雪だるま作ったよ!」
「あら、上手に作ったわね。」
「ここに置いといてもいい?」
「もちろんいいわよ。さ、ちょうどおやつが出来たから食べましょう。でも冷えたでしょう」
「うん!」
マフィは上手に出来た雪を見て、鼻水をすすった。
誰もいなくなった時、雪だるまは静かに動き出しました。
「よいしょ、よいしょ」
雪だるまは、何やらもぞもぞと動いています。
「とうっ!」
次の瞬間、雪だるまの体から腕が2本、足が2本生えてきました。
「うん、我ながら素晴らしい体だ!あの女の子には感謝しなくちゃ…」
雪だるまは当たりをキョロキョロ見渡し、何かを探しています。
「ここはそのうち日が当たりそうだな…どこか一日中くらい所は…」
「あっ!!!」
「ん!?!?!?」
雪だるまの背中から、マフィの驚いた声が響きました。
「雪だるまが動いてる!!」
「あっ、あわあわ…」
マフィも雪だるまも大慌て。
お互い、目を合わせたまま動きません。
「雪だるまさん…生きているの?」
雪だるまは言葉が出ません。
「そ、そうさ!僕は生きているんだ!」
マフィの目がだんだん輝きます。
「雪だるまさんが生きてるなんて知らなかった!お母さんに教えてあげなきゃ!」
「ちょっとまって!僕は本当は動いちゃいけないんだ。だから、お母さんには内緒にしておいてね」
「そうなんだぁ。じゃあさ、一緒に遊ぼう!」
マフィは雪だるまの手を引っ張り、近くの丘をかけ登りました。
「雪だるまさんは、なんて名前なの?」
「僕かい?僕には名前なんてないよ」
「そうなんだぁ。じゃあ、わたしがつけてあげる!」
「本当かい!?」
「う~ん…雪は真っ白だから、マシロ!」
「そのまんまだね…でも、気に入ったよ!僕の名前はマシロだ!ところで、君の名前は?」
「私はマフィよ。お母さんがつけてくれたの!」
「マフィか。とてもいい名前だね!」
「うん!それよりマシロ、鬼ごっこしようよ!」
「鬼ごっこかぁ、やろうやろう!」
マフィとマシロは、雪の上を走り回りました。
真っ白な景色に二人の笑い声がひびきます。
2人が夢中になって遊んでいると、だんだんと太陽が出てきました。
「うっ…」
「どうしたの?マシロ?」
マシロの体に太陽の日が当たって、少し溶けていました。
「僕は太陽が苦手なんだ…体が溶けてくよぉ…」
マフィは溶けてくマシロを見て大慌て。
急いで家の中へと運びます。
「あっ!お母さんに見つからないようにしなきゃ!」
マフィは家の中にこっそり入り、静かに忍び込みました。
「冷蔵庫には入らないし…でも他に冷たい所なんて…」
マフィは悩みました。
家にはマシロが入るほど大きな冷蔵庫はありませんし、氷の部屋なんてものもありません。
「マフィ、ありがとう。もういいんだ。僕はこうなる運命だったんだ…」
「マシロ、諦めちゃだめ!どこかいい場所を探すから…」
「ううん。雪だるまの僕は、長く生きられないんだ。雪はすぐに溶ける。だからこそ美しいんだ。僕も美しいままでいたいから、このまま最後まで見届けてくれるかい?」
「…わかった。お別れなんだね」
「ありがとう、マフィ。短い間だったけど、楽しかったよ」
マフィは自分の部屋の真ん中に、小さくなったマシロを置きました。
マシロは少しずつ溶け、やがて手のひらに乗るほどの大きさになりました。
「マフィの手は暖かくて、とても落ち着くよ。ねえマフィ、お願いがあるんだ」
「…なあに?」
「もし、次に雪が降った時には、また僕を作ってくれるかい?もう一度、マフィと遊びたいんだ」
「もちろんよ。今度はすぐに溶けないように、もっともっと大きくて丈夫な雪だるまを作る!そしたらまたマシロと遊べるね!」
「ありがとう。マフィに作ってもらえてよかったよ。僕は幸せな雪だるまさ…」
「マシロ、また必ず会いに来てね。約束だよ」
「うん。僕とマフィとの約束だ。」
マシロはそう言って、完全に溶けてしまった。
20年後…
「お母さん!雪が降ったよ!!」
「あら、本当ね。雪なんていつぶりかしら…」
お母さんの頭に、ある雪だるまが思い浮かんだ。
「あれはきっと夢よね…。雪だるまが喋るなんて、あるわけないもの…」
お母さんになったマフィは、辺り一面の雪を見渡し、クスリと笑った。
「お母さん見てみて!雪だるまを作ったよ!」
小さな女の子が、小さな雪だるまをもって走ってきた。
それは、かつてマフィが作った雪だるまにそっくりだった。
「ふふ。上手に出来たわね!日に当てると溶けちゃうから、日陰に置いときなさい。大事にするのよ。」
「わかったー!」
女の子は大事そうに雪だるまを持ち、日陰にそっと置いた。
「さ、おやつにしましょう」
「うん!」
お母さんは女の子の手を引き、家の中に入った。
「久しぶりだね、マフィ。また会えて嬉しいよ!」
ふと、そんな声が聞こえた。
マフィが振り向くと、小さな雪だるまがこっちを向いて、ニコッと笑った気がした。
「ふふっ。約束通り、また逢いに来てくれたのね。」
マフィはまたニコッと笑い、家の中へと入っていった。
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