鏡の中の僕

るい

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鏡の中の僕

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あるところに、ゆめとくんという10歳の男の子がいました。
ゆめとくんには特別な友達がいました。
それは、鏡に映るゆめとくん。

ゆめとくんは学校から帰ると、鏡に映るゆめとくんに向かって、一日の出来事を話すのが日課でした。

「今日は友達のりっくんとサッカーをしたんだよ!そしたらりっくんがね…」

「今日の給食はすっごい美味しかったよ!何食べたかって言うとね…」

ゆめとくんは、鏡の自分に自慢するように話しました。

もちろん、鏡に映るゆめとくんは、ゆめとくんの真似をするだけです。


ある時、ゆめとくんは友達と喧嘩をしました。
家に帰ると早速、鏡に向かって愚痴をこぼしました。

「ほんとにむかつく…。僕絶対悪くないもん!」

ゆめとくんの怒りは、まだまだ収まらない様子です。
長いこと愚痴をこぼしたあと、ゆめとくんはまた公園へ遊びに行きました。

鏡の中のゆめとくんは、またゆめとくんの真似をするだけです。


またある時、ゆめとくんはお母さんに怒られてしまいました。

「お母さんっていっつもうるさいんだから!野菜食べなかったからって、あんなに怒らなくてもいいのにさ!」

ゆめとくんは不貞腐れていました。
鏡の中のゆめとくんは、またまた真似をするだけです。



ある深夜、ゆめとくんはトイレに行きたくなって起きてしまいました。

「夜のトイレってちょっと怖いな…。あ、そうだ!」

ゆめとくんは洗面所まで行き、電気をつけました。
鏡に映る自分を見て、少し安心しました。

けれど、鏡に映る自分の様子が、少し変…。

いつもはゆめとくんの真似をするはずなのに、
今はじっとゆめとくんを見つめています。

「え?なにこれ!鏡なのに、なんで真似しないの!?」

鏡の中のゆめとくんは、ニヤッと笑うと、

「僕と入れ替わってよ」


そう言って、鏡の中から両腕を出し、ゆめとくんの肩を掴みました。


「わぁー!!助けて!お母さん!お父さん!」

ゆめとくんは叫んだけれど、誰も来ません。


「僕は君が羨ましかったんだ。」

ゆめとくんは、鏡の中にズルズルと引きずり込まれ、
鏡の世界に閉じ込められてしまいました。

「やった…ついにやったぞ!これで僕は自由だ!」

鏡の中のゆめとくんは、ニセモノのゆめとくんになりました。

ニセモノのゆめとくんが鏡の前で笑うと、鏡の中のゆめとくんも笑っていました。

ニセモノのゆめとくんが鏡の前から消えると、鏡の中のゆめとくんも、どこかへ消えていきました。
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