狼のタルとエサのペコ

るいのいろ

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助け合い

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タルは随分と走った。満月の光を頼りに、できるだけ狼がいないところを探した。ペコは泣き疲れたのか、いつの間にか寝てしまっていた。
タルは大きな木の下そばに穴をみつけ、そこにペコを置いた。

「ペコ、そこで待っててくれ。すぐに戻るからな」

タルはペコをその場に置いて、来た道を走って戻って行った。


「なあバルク、まだやるのかよ」

バルクはヨレヨレになりながら立ち上がった。
口や腹、手足からも血を出し、全身が血だらけになっていた。
バルクは気を失う寸前まで戦っていた。

「…当たり前だ…お前たちをこの先には行かせはしない…」

「なあ、何故そこまであいつらにこだわる?なんの知識も技術もないあいつらのどこがいいんだ?」

「あいつらは…お前達にはないものを持っている…俺はそこに惹かれただけだ…」

「悲しいねぇ…俺たちのしてやったことを忘れたのか?お前に散々尽してきた。お前を立ててやった。なのに俺たちよりあいつらを選ぶのか?」

「ああ、そうだ」

「…そうか」

「なぁ、もうやっちまおうぜ。俺腹減ってきたからよ」

「…そうだな…悪いな、バルク」

そう言うと、取り巻きのリーダーが腕を振り上げた。
バルクには避ける気力も残っておらず、ただ、目を瞑った。

「いてっ!」

すると、腕を振り上げた取り巻きが吹っ飛ぶ音が聞こえた。
バルクが目を開けると、ペコのお父さんが取り巻きの1人にタックルして吹っ飛ばしたようだった。

「なっ…!」

みんなが驚いた顔で見ていると、お父さんはその場に倒れ込んだ。

「大丈夫か…!」

バルクがヨレヨレになりながら駆け寄った。

「おい、大丈夫か…」

「大丈夫…だよ。ありがとう。君こそ大丈夫かい…?」

「なぜ俺なんか助けた…動けるなら早く逃げればよかっただろう…」

「君がペコを助けてくれたからさ…ありがとう、私の息子を助けてくれて」

「俺は別に…」

「ペコは昔から1人だったんだ…。君や、タル君見たいな友達ができて安心したよ…。あの子を、よろしくね」

「へへっ…俺なんかが友達になんて…」

「いてて…何2人で話してやがる…もう許さねえからな…2人とも食ってやる…お前ら!かかれ!」

そこ掛け声で狼たちが一斉に飛びかかった。
もうここまでか…と2人は覚悟を決めた。

「うおっ!!」

「うわぁ!!」

その時、狼たちが次々に倒れていった。

「大丈夫か!?2人とも!」

「タル…なのか?」

「よかった、まだ生きてるな。動けるか?」

「へへっ、見てのとおり、もう動けねえや…すまねえな…」

「そうかい、じゃあそこでじっとしてな。」

タルはそう言うと、狼たちに襲いかかった。

「怯むな!タルごときにやられるかよ!一斉にかかれ!」

狼の1人が叫ぶが、みんなの動きよりもタルの方が早かった。
狼たちはあっという間にやっつけられ、誰も動けなくなった。

「ありがとう…タル…」

バルクはそこで気を失った。

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