狼のタルとエサのペコ

るい

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狼として生きる

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「タル、起きろタル」

「ん…?」

その日目を覚ますと父親の顔が目の前にあった。

「なんだい父さん」

「いつまで寝てるんだ、今日は満月だ。行くぞ」

「え?ああ、そっか。すぐ準備するよ」

「全く。あまり迷惑をかけるんじゃない」

満月の日になると、狼たちは集会を開く。そして狼として本能のままに大暴れする。ひたすら狩りをするもの、暴飲暴食するもの、繁殖のためひたすら腰を振るもの、満月の夜の過ごし方はそれぞれだった。
狼たちはこの日も朝からその準備にかかっていた。

(今日は会えないか…)

タルは満月の日が好きではなかった。自分が理性を失い、狼として本能のまま好き勝手する風習が嫌いだったのだ。狼というのは自分にはあっていないとすら思っていた。

満月の日は他の動物たちを外では見かけない。みんな殺されるのを恐れて家にいるのだ。そのため狼たちはやりたい放題だった。もちろん家の中まで獲物を襲いに行くやつもいた。タルはそんなやつらを軽蔑していた。
だが、狼に生まれた以上それに従う他なかった。


「なにしてる、早く運べ」

父親に迫られてタルは準備を手伝った。


そして夜…。



「満月だぜー!!」

荒野中の狼たちが集まって大騒ぎしていた。
真っ暗な空に狼たちの遠吠えが轟いていた。



「ペコ、今日は早く寝ようか」

ペコの家にもその声は聞こえてきていた。

「うん、もう寝ることにするよ」

「おやすみ、ペコ」

「おやすみ、2人とも」

ペコは布団に潜り込み、目を閉じた。



その頃、タルも家にいた。だが満月なだけあって、体がソワソワして落ち着かない。父親にお前も来るようにと言われたが、タルは無視して家に籠っていた。そして静かに目を閉じた。


「よう!バルク!これも食えよ!」

「ああ、ありがとう」

「それにしてもバルクはでっけえなぁ。こりゃ立派な狼になるぞ」

「ああ間違いねえ!いずれは俺たち狼をしきるリーダーになる男だぜ、こいつは」

「言い過ぎですよ、俺なんてまだまだ及びません」

「こんなに立派で謙虚ときたか!こいつは大物になるぞ~」

「もうよしてください」

バルクを囲む大人たちは大きな声で笑った。


「みんな集まれー!ここからが本番だぜ!」

「お!ついにきたか!」

「待ってましたー!」

「今日は何匹狩れるかな~」

「バルク、今日もお前の腕前を見せてくれよな!」

「ああ、はい、がんばります」

パーティーの本題である狩りがこれからはじまる。
この狩りのために来るやつが大半だ。

「よし、じゃあ行くぞ!今日は食べ放題だー!」

「「うおおおおー!!」」


狼たちは一斉に走って行った。
バルクはそれを後ろから見守り、1人だけ別方向に向かっていった。
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