狼のタルとエサのペコ

るいのいろ

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楽しい日々

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それからタルとペコは毎日遊んだ。
タルはペコが行きたいというところを全部連れて行った。
水が透き通って地面まで見える綺麗な川、人が住む町が見える山のてっぺん、木々がそびえ立ち涼しい風が吹く森の中など。
ペコは目は見えないが、色々な経験をしておきたいと常にタルに言っていた。
2人はお互いが居ないことが考えられないほど、親友になっていた。
雨の日も、雪の日も、嵐の日も、2人は一緒に遊んだ。


そして、2人が出会ってから1年が経った。

「ペコ、大きくなったな」

「そう?タルは変わらないね」

「俺はもう大人だからな」

ペコは1年前よりも倍くらい大きくなっていた。
高かった声も大人らしく、低く強い声に変わりつつあった。

「タル、魚の匂いがする!」

「ああ、あそこにいっぱいいるぞ、昼飯にしよう」

「やったー!」

ペコはもういじめられなくなった。いじめてきた子達よりも体が大きくなったこともあるが、ペコの心が強くたくましくなったからだ。

「タル、今日は木の実の森に行こう。母さんにフルーツパイを作ってもらおうよ」

「お、いいなぁ、よしペコ、どっちが先に着くか競走だ!」

「あ!タル待ってよー!」

2人は仲良く走り回っていった。

「いっぱい取れたねぇ、フルーツのいい匂い」

「ああ、思ったより実ってたな、上出来だ」

「さっそくパイ作ってもらおうよ!」

「ああ!じゃあ帰るか」


2人はペコの家へと向かった。


「母さんただいま!」

「あら、おかえりペコ。それなあに?」

「フルーツだよ!いっぱい採ってきたんだ、これでパイを作ろうよ」

「あら!ちょうどいいわね!ありがとう」

「友達にもあげたいからいっぱい作ってね!」

「ずっと話してたお友達ね?わかったわ。沢山作るから持っていきなさい」

「やったー!タルも喜ぶよ!」

「あ、そうだ、明日は家にいなさいね」

「え?どうして?」

「明日は満月だからね。朝から狼達が活発に動くのよ。全く迷惑な話だわ」

「あ、そうか…」

「だから一緒にパイを作りましょう。家で大人しくしてるのよ」

「うん…」

母さんはタルが狼だってことを知らない。
ペコは父さんにしたタルの正体を明かしていない。
父さんにも、母さんには言うなと口止めをされたからだ。きっとタルが狼だと分かると、母さんは取り乱して怒るだろう。
母さんの弟は、母さんが10歳の頃に狼に喰われたらしい。だから母さんは狼を憎んでいるのだ。弟はまだほんの7歳だったらしい。
タルが狼だってことを知られたら、もうタルと遊ぶことは出来ないだろう。
だからペコは今までずっと隠して過ごしてきた。

そして次の日、朝から狼たちの声が荒野中に響き渡っていた。
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