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まずいことになった
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ペコは俺の背中で気持ちよさそうに揺られていた。
「僕タルの背中が好き。ずっと乗っていたいな」
「ふっ、そうかい」
走りながら俺たちは色々な話をした。
どこで生まれたか、好きなものは何か、将来の話も。
ペコがあまりにも嬉しそうに話すので、俺も夢中になって聞いていた。
「僕、友達とこうして遊んだり話したりするの、初めてなんだ」
「そうなのか」
「楽しいね…僕今すっごい楽しい!」
「…俺もだ」
「ん?何か言った?」
「なんもない。もう着くぞ」
水飲み場の川に着いた。ここは水が流れる音が綺麗だ。
目の見えないペコならここで上手く誤魔化せるだろう。だが、俺の考えは甘かった。
「おい、着いたぞ」
「ここ?」
「ああ、そうだ。ここは丘の上だ。俺たちの村がよく見える。滝も近いからな、水の音が心地いいだろう?」
「うん…そうだね」
「ん?どうかしたか?」
(もしかして嘘だってバレたのか?いや、こいつは目が見えないからバレるはずはない…)
「ちょっとここ臭いかも…」
「臭い?なにか臭うか?」
「うん、獣臭いって言うか、狼の匂いがする。僕鼻もいいから分かるんだ」
確かにここは俺たち狼しか近寄らない場所だ。
「そ、そうか?俺はしないけどな」
「僕狼は嫌いなんだ。あいつらは僕たちの仲間を食べる。やめてっていっても、聞いてくれない。そのせいで僕らは怯えながら過ごさなきゃいけなくなったんだ。
あんなやつら、滅んじゃえばいいのに…。」
俺は息を飲んだ。それと併せショックだった。こいつは狼を恨んでいたのか…。
それよりもまずい、このままでは嘘がバレてしまう。
そして俺の正体も…。
(とりあえずここを離れよう)
「じゃあ戻るか」
「うん、ごめんね、せっかく連れてきてくれたのに」
「いや、俺のほうこそすまない。」
「ううん」
結局俺は、ペコを楽しませることが出来なかった。
俺は友達失格かもしれない。
「あれ、タルじゃねえか」
帰ろうとしていたその時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「久しぶりだな。何してんだ?こんな所で」
声の正体は、俺と同じ歳の狼のバルクだった。
バルクとは昔、まだ俺が期待されていた時によく張り合ったものだ。こいつは運動神経、体格、知性の全てに恵まれている。それに狩りが群れ1番上手い。自分よりも大きい獲物だって狩ってしまう。いわゆるエリート狼だ。
いや、それにしてもまずい。非常にまずい。
こいつはどんな獲物でも狩ってしまう。生まれたばかりの子ウサギだろうと容赦なく殺す。無慈悲な狼として噂されていた。
ペコが見つかったら、一瞬にして殺されるだろう。
「ペコ、隠れてろ」
俺は、自分の体でペコを隠した。ペコが震えているのが伝わった。
「ああ、バルクか。水を飲みに来たところだ。」
「へ~。珍しいな。」
「もう帰るとこだ」
「そうなのか、ちょっと話さないか?」
話なんていい。それより早くここを離れなくては。
「どうした、バルク」
最悪だ。バルクの取り巻きも出てきやがった。
「なんだ、タルか」
「何してんだ?」
「水を飲んでいただけだ」
「ん?なんかここ、犬っころの匂いがするな」
「ほんとだ、犬の匂いだ!」
取り巻きたちがはしゃぎ始めた。まずい、このままではバレてしまう。
「じゃあ俺はもう行く」
「(ベコ、捕まれ)」
ペコは小さく頷き、俺のお腹に掴まった。
「ちょっとまてよ」
取り巻きの1人が俺に話しかける。この声はシグマだ。
「ここには落ちこぼれが飲む水なんてないんだけどな~」
取り巻きたちの笑い声が聞こえる。
俺は何も言い返せなかった。
「少しは俺たちの役に立ったらどうだ?群れのみんなも言ってるぜ、お前にはがっかりだってな」
「そうか、悪かったな」
「おい、俺たちのために獲物を捕ってこい。ちゃんと人数分とってこい。1日5匹だ。そうすれば仲間に入れてやるよ。どうだ?」
「ふざけるな、お前たちの仲間になるくらいなら…」
言い切らないうちに、俺は蹴飛ばされた。
それと同時にペコは吹っ飛んだ。
「なあ、悪い話じゃないだろ?従うよな」
「くっ…」
腹部に激痛が走った。いや、それよりもペコが心配だ。俺はペコの方を見た。
「おい、聞いてんのかよ」
俺はまた蹴飛ばされた。
「おい、やっちまおうぜ」
「まあ、いいだろう」
俺はバルクの取り巻き達に蹴られ続けた。
(くそ…早く離れなくては…ペコ…大丈夫か…)
俺はもう1度ペコの方をみた。
ペコは何かを見ていた。俺はペコの見ている方を見た。
バルクだ。ペコはバルクと目を合わせていた。
もうおしまいだ…。そう思っていたらバルクと目が合った。バルクは俺と目を合わせたあと、
「もうほっとけ、行くぞ」
そういって、取り巻きを連れて去っていった。
助かった。安心するとともに俺はヨレヨレのからだでペコの元へ向かった。
「僕タルの背中が好き。ずっと乗っていたいな」
「ふっ、そうかい」
走りながら俺たちは色々な話をした。
どこで生まれたか、好きなものは何か、将来の話も。
ペコがあまりにも嬉しそうに話すので、俺も夢中になって聞いていた。
「僕、友達とこうして遊んだり話したりするの、初めてなんだ」
「そうなのか」
「楽しいね…僕今すっごい楽しい!」
「…俺もだ」
「ん?何か言った?」
「なんもない。もう着くぞ」
水飲み場の川に着いた。ここは水が流れる音が綺麗だ。
目の見えないペコならここで上手く誤魔化せるだろう。だが、俺の考えは甘かった。
「おい、着いたぞ」
「ここ?」
「ああ、そうだ。ここは丘の上だ。俺たちの村がよく見える。滝も近いからな、水の音が心地いいだろう?」
「うん…そうだね」
「ん?どうかしたか?」
(もしかして嘘だってバレたのか?いや、こいつは目が見えないからバレるはずはない…)
「ちょっとここ臭いかも…」
「臭い?なにか臭うか?」
「うん、獣臭いって言うか、狼の匂いがする。僕鼻もいいから分かるんだ」
確かにここは俺たち狼しか近寄らない場所だ。
「そ、そうか?俺はしないけどな」
「僕狼は嫌いなんだ。あいつらは僕たちの仲間を食べる。やめてっていっても、聞いてくれない。そのせいで僕らは怯えながら過ごさなきゃいけなくなったんだ。
あんなやつら、滅んじゃえばいいのに…。」
俺は息を飲んだ。それと併せショックだった。こいつは狼を恨んでいたのか…。
それよりもまずい、このままでは嘘がバレてしまう。
そして俺の正体も…。
(とりあえずここを離れよう)
「じゃあ戻るか」
「うん、ごめんね、せっかく連れてきてくれたのに」
「いや、俺のほうこそすまない。」
「ううん」
結局俺は、ペコを楽しませることが出来なかった。
俺は友達失格かもしれない。
「あれ、タルじゃねえか」
帰ろうとしていたその時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「久しぶりだな。何してんだ?こんな所で」
声の正体は、俺と同じ歳の狼のバルクだった。
バルクとは昔、まだ俺が期待されていた時によく張り合ったものだ。こいつは運動神経、体格、知性の全てに恵まれている。それに狩りが群れ1番上手い。自分よりも大きい獲物だって狩ってしまう。いわゆるエリート狼だ。
いや、それにしてもまずい。非常にまずい。
こいつはどんな獲物でも狩ってしまう。生まれたばかりの子ウサギだろうと容赦なく殺す。無慈悲な狼として噂されていた。
ペコが見つかったら、一瞬にして殺されるだろう。
「ペコ、隠れてろ」
俺は、自分の体でペコを隠した。ペコが震えているのが伝わった。
「ああ、バルクか。水を飲みに来たところだ。」
「へ~。珍しいな。」
「もう帰るとこだ」
「そうなのか、ちょっと話さないか?」
話なんていい。それより早くここを離れなくては。
「どうした、バルク」
最悪だ。バルクの取り巻きも出てきやがった。
「なんだ、タルか」
「何してんだ?」
「水を飲んでいただけだ」
「ん?なんかここ、犬っころの匂いがするな」
「ほんとだ、犬の匂いだ!」
取り巻きたちがはしゃぎ始めた。まずい、このままではバレてしまう。
「じゃあ俺はもう行く」
「(ベコ、捕まれ)」
ペコは小さく頷き、俺のお腹に掴まった。
「ちょっとまてよ」
取り巻きの1人が俺に話しかける。この声はシグマだ。
「ここには落ちこぼれが飲む水なんてないんだけどな~」
取り巻きたちの笑い声が聞こえる。
俺は何も言い返せなかった。
「少しは俺たちの役に立ったらどうだ?群れのみんなも言ってるぜ、お前にはがっかりだってな」
「そうか、悪かったな」
「おい、俺たちのために獲物を捕ってこい。ちゃんと人数分とってこい。1日5匹だ。そうすれば仲間に入れてやるよ。どうだ?」
「ふざけるな、お前たちの仲間になるくらいなら…」
言い切らないうちに、俺は蹴飛ばされた。
それと同時にペコは吹っ飛んだ。
「なあ、悪い話じゃないだろ?従うよな」
「くっ…」
腹部に激痛が走った。いや、それよりもペコが心配だ。俺はペコの方を見た。
「おい、聞いてんのかよ」
俺はまた蹴飛ばされた。
「おい、やっちまおうぜ」
「まあ、いいだろう」
俺はバルクの取り巻き達に蹴られ続けた。
(くそ…早く離れなくては…ペコ…大丈夫か…)
俺はもう1度ペコの方をみた。
ペコは何かを見ていた。俺はペコの見ている方を見た。
バルクだ。ペコはバルクと目を合わせていた。
もうおしまいだ…。そう思っていたらバルクと目が合った。バルクは俺と目を合わせたあと、
「もうほっとけ、行くぞ」
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