おしゃべりなインコ

るい

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おしゃべりなインコ

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ある街に、仲良し夫婦の元で飼われているインコがいました。
インコの名前は、ティナ。
ティナはお喋りが大好き。仲良し夫婦の会話を聞いて、いつも勉強しています。

「おはよう!いい朝だね!」

「おはよう!いい朝だね!」

朝、ご主人が起きてくると、ティナも真似して元気にご挨拶。

「ティナ、朝ごはんだよ」

「ティナ!朝ごはんだよ!」

ご主人が朝ごはんを入れてくれると、ティナはおしゃべりしながら、カゴの中でバタバタ飛び回ります。

「あなた、おはよう」

「あなた!おはよう!」

奥さんが起きてくると、ティナもまたご挨拶。
仲良し夫婦の朝は忙しい。ティナは2人の支度を見守りながら、ゆっくり朝ごはんを食べるのが日課です。


「それじゃあ、仕事に行ってくるよ」

「仕事に行ってくるよ!」

「いってらっしゃい。気をつけてね」

「気をつけて!いってらっしゃい!」

「今日も愛してるよ」

「今日も愛してるよ!」

「私も愛してるわ」

「私も愛してる!」

仲良し夫婦は、家を出る前に、毎朝必ずキスを交わします。

「チュ!チュ!」

ティナは仲良し夫婦を茶化すように、羽をバタバタさせました。

「ティナ、お留守番よろしくね。いい子にしてるのよ」

奥さんも支度が終わると、お仕事の時間です。

「ティナ!いい子!いってらっしゃい!」

ティナは上手に挨拶すると、元気にお見送り。

2人がお仕事に行ってしまうと、家の中は静かになってしまいました。
会話のないお家は、ティナにとって退屈です。
ふと耳を澄ますと、外の世界から車の音や犬のなく声、人の笑い声など、色々な音が聞こえてきます。

ティナはもっと言葉を覚えたいと思い、そうっとカゴを抜け出しました。

「ティナ!もっともっと!」

カゴから抜け出すと、少しだけ空いている窓からするりの抜け出し、広い広い街の中へと羽ばたきました。


街へ出たティナがまず向かったのは、隣に住むおばあさんの家。
隣のおばあさんは、よくリンゴをおすそ分けしてくれるので、ティナはおばあさんが大好き。
おばあさんの家のりんごの木に止まり、中を覗いて見ます。
おばあさんは、両手にたくさんのお金を持って、なにやらニヤニヤ見つめています。

「へへへ…お金がこんなに沢山…どこに閉まっておこうかな…」

おばあさんは、10年コツコツ貯めた貯金箱を開けたみたい。

「さて、どこに隠そうかな」

おばあさんは家の中をぐるぐる歩き、ちょうどいい隠し場所を探します。

「あ、ここにしようかね」

おばあさんはたくさんのお金を抱え、お菓子の入っていた缶ケースの中に纏めて入れました。

「お菓子の缶ケースの中にお金を隠しているなんて、誰も思わないだろうねぇ。さあて、何を買おうかな…ふっふっふ…」

おばあさんはお菓子の缶ケースを引き出しの中にしまうと、ルンルンとスキップしながら部屋の中を歩きました。

「おばあさん!お金たくさん!お菓子の中!」

外から見ていたティナは、スキップするおばあさんを真似するように、羽をバタバタさせました。
ティナはまた、新しい言葉を覚えました。



次に向かったのは、小さな子供たちが5人もいる大家族のおうち。
今日はみんなでお留守番。にぎやかな声が外まで聞こえてきます。
ティナは中の様子が見える気に止まり、じっと観察してみます。

「兄ちゃんお腹すいたぁ!」

「おやつちょーだい!」

「うーん、おやつはさっき食べたからもう無いなぁ」

「僕知ってるよ!お母さんの取っておきのおやつがある場所!」

「なに!どこどこ!」

5人の子供たちは、お母さんが大事にしていた取っておきのおやつを見つけると、5人でバクバクと全部食べてしまいました。

「ふ~おなかいっぱい!」

「でもさでもさ、これ食べちゃって良かったのかな?」

「大丈夫さ、これはここに隠して…」

1番上のお兄ちゃんは、食べ終えたお菓子のゴミをまとめて、ソファの下に隠してしまいました。

「そうだ!ついでにこれも…」

1番上のお兄ちゃんは、カバンの中から点の悪いテストを取り出して、同じようにソファの下に隠しました。

「兄ちゃん賢い!俺も俺も!」

4人の弟たちは、1番上のお兄ちゃんと同じように、カバンの中から悪いテストやら壊した花瓶の破片やらを次々に取り出して、全部ソファの下に隠してしまいました。

「これで安心!」

5人の子供たちは元気に笑い、外へ遊びに行ってしまいました。

「子供たち!お菓子!テスト!ソファの下!」

全部見ていたティナは、元気に遊ぶ子供たちを見て翼をバタバタ。
ティナはまた新しい言葉を覚えました。



次に向かったのは、若いカップルのおうち。
若いカップルは、ずっとイチャイチャ、イチャイチャ。

「愛してるよ、サニー。」

若い男の人は、イチャイチャしながら甘い言葉をかけます。
ティナがしばらく観察していると、サニーという女の人は帰ってしまいました。
またしばらく観察していると、さっきとは違う女の人がやって来ました。

「バーバラ、君が1番だよ。愛してる。」

若い男の人は、さっきの女の人にも、その女の人にも、同じように甘い言葉をかけていました。
そうして、またイチャイチャ、イチャイチャ。

ティナは観察していると、なんだか体がむずむずしてきて、バタバタと羽ばたきました。

「バーバラ!愛してる!君が1番!」

ティナはまた、新しい言葉を覚えました。



街を飛びまわり、たくさんの言葉を覚えたティナは、せっかく覚えた言葉を誰かに聞いて欲しくなりました。
みんなに聞いてもらえる場所を探しに飛び回っていると、広場に人だかりができているところを見つけました。

「あそこ!みんなに聞かせる!」

ティナは人だかりの中心に止まると、みんなティナに注目しました。
ティナはさっそく、みんなに覚えた言葉を聞かせました。

「ティナ!おしゃべり大好き!沢山覚えた!」

「おしゃべりインコだ!」

「なんだなんだ?インコが喋ってるのか!」

ティナが喋り始めると、さらに人が集まってきました。
お散歩していたお隣のおばあさんも、お買い物をしていたお母さんと5人の子供たちも、デートをしていた若いカップルたちも、みんな集まりました。
ティナはわくわくして、今日あったことを話しました。

「隣のおばあさん!お金たくさん!お菓子の中に入ってる!」

「えぇ!?どうして知っているんだい!?」

おばあさんはびっくりして尻もち。
みんながおばあさんに注目する中、慌てて家へ帰ります。

「子供たち!取っておきのおやつとテスト!割れた花瓶!ソファの下!」

「げっ!なんでそれを…」

5人の子供たちはびっくり。
こっそりお母さんの顔を見ると、お母さんはとんでもなく怖い顔で5人の子供たちを睨みつけました。

5人の子供たちは、大きな叫び声とともに遠くへ逃げていきました。

ティナはその様子を見て、羽をバタバタさせて楽しそう。
すると、若いカップルの男の人と目が合ったティナは、若い男の人の頭に止まり、おしゃべりを続けました。

「バーバラ!愛してる!君が1番!」

ティナがそう言うと、若い男の人は顔が真っ青になりました。

「ちょっと!バーバラって誰よ!」

「ち、これは違くて…」

若い男の人の頬には、真っ赤な手形がつきました。
若い女の人は、男の人を置き去りにして帰ってしまいました。


「ティナおしゃべり大好き!おしゃべり楽しいね!」

ティナは羽をバタバタ、とっても楽しそうにお喋りを続けました。
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