カニ取り合戦

るいのいろ

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カニ取り合戦

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あるところに、4人の仲良し家族がいました。
お母さんとお父さんと、お姉ちゃんと妹の4人家族。
4人は食べることが何よりも大好き。
朝も夜も、みんなで仲良くテーブルを囲みます。

お母さんは、らーめんが好き。
お父さんは、おさしみが好き。
お姉ちゃんは、コロッケが好き。
妹は、カレーライスが大好き。

でも、4人には揃って大好きな食べ物がありました。
それは、カニ。


ある日、隣に住むおばさんが、カニを持ってきてくれました。

「これ、貰い物だけど、良かったらたべてね」

お姉ちゃんと妹は、大喜び。おばさんの前で踊りました。


その日の夜、早速テーブルにカニが並びました。
みんなニコニコ、そわそわ、足早にテーブルに着きました。

「カニだカニだ~~!」

「久しぶりだなぁ。母さん、ビールはあるかい?」

「今日は自分で用意してくださいな」

「私いっぱい食べるー!」

みんな目をきらきらさせて、仲良くカニを囲みます。
でも、みんなの視線はカニが独り占め。
沢山食べようと目をギラギラさせて狙ってます…。

…さあ、カニ取り合戦の始まりです。



「さあ、食べましょうか」

お母さんは、自分のお皿だけを持って席に着きました。

「あれ?お母さん、私たちのお皿は?」

「今日は自分で用意しなさい。」

カニ大好きのお母さん。お皿を用意している間に食べられないよう、自分の分だけしっかり用意しました。
今日はお父さんだろうと、娘だろうと、容赦ありません。


「カニを前にしたお母さん、恐るべし…。」

お母さんは一足先に席につき、3人はお皿を取りに席を立ちました。

「今のうちに…」

お母さんは早速、カニに手を伸ばしました。

「ん~~!おいし~!」

「あー!お母さんずるいー!」

お母さんは一足先に、カニを頬張りました。

「いそげ!いそげ!」

「お母さんに食べられちゃうー!」

「母さん!はしとコップはどこにあるんだ!?」

お父さんは、はしとコップの場所がわからず、お母さんに聞きました。

「もー、引き出しの中にあるでしょ」

「ないない、母さんも探してくれよ!」

「もー!仕方ない人だね!」

お母さんは席をたち、お父さんのはしとコップを探しにキッチンへ向かいました。

「しめしめ…」

お父さんはその隙に席につき、カニの足を1本食べました。

「う、うまーい!」

「あー!お父さんずるい!」

「まあ!お父さんったら!」

「私も食べたいー!」

お父さんは満足そうに、ビールをクイッと口に運びました。


残るカニは8本。さて、誰が食べられるのか。


ようやくみんなの準備ができ、4人がテーブルに揃いました。


「では、みんなで…」

「「いただきまーす!!」」


その瞬間、お母さんが目にも止まらぬ早さでカニをつかみました。
お父さんは、カニをはしで掴み、それを阻止しました。

カニはテーブルの上をを舞い、ゆっくりと皿の上を跳ねました。
その拍子に、カニの足が2本、お姉ちゃんの元へ飛びました。

「やったー!カニ!カニ!」

お姉ちゃんは両手にカニを持ち、美味しそうに頬張りした。

「お姉ちゃんずるいー!」

「んふふ~うまうま」

「お母さん!私のもとって!」

「カニは自分で得るものよ。頑張りなさい」

カニを前にすると厳しいお母さん。
まだまだ戦いは続きます。


「ふんっふんっ!」

「はっはっ!」

「えいっ!やあっ!」

あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、ピョンピョンピョン。
テーブルの上で、カニが踊りだします。

「いただき!」

「わたしも!」

お父さんとお母さんは1本ずつカニを取りました。

「あーー!!わたしのかにがー!」

残るカニは残り1本。
妹は、まだまだ食べられていません。

「ぐぬぬ…」

妹は、だんだん涙目に変わります。

「最後の1本は…!」

それでも、最後の力をふりしぼり、宙を舞うカニを捕まえました。

「やった!やった!ついにカニを掴んだよ!」

妹は、ついに掴んだカニを握りしめ、キラキラした目で見つめました。

「い、いただきまーす!!」

妹が、カニを口に運んだ途端…

「ニャーー!!」

隣の部屋でじーっと狙っていた子猫が、妹の手に飛び込みました。

「…あ!!」

子猫は一瞬の間に、妹の手からカニを奪い取りました。

「そ、そんなー!」

「ンニャ~!」

子猫は、美味しそうにむしゃむしゃとカニを食べつくしました。


「あーあ…」

空になったお皿を見て、妹はぼーっとしていました。

「私の…カニが…」

お母さんとお父さん、お姉ちゃんは満足そうでした。

「あー美味しかった!」

「満足満足!」

「また食べたいねぇー」

みんながお片付けを始めたその時、家のインターホンがなりました。

「これ、よかったらまた食べてくれない?」

「カニだーーー!!」

隣のおばさんが、またカニを持ってきてくれました。
カニは、早速テーブルに並べられました。
すると、またみんなの目がギラギラひかり、テーブルに置かれたカニを見つめました。


「よーし、今度こそ食べるぞーー!!」

妹は、誰よりも先にテーブルにつき、カニに飛びつきました。

「私達も、まだまだ食べるわよー!」

お母さん、お父さん、お姉ちゃんも妹に続き、テーブルのカニに飛びつきました。

この一家には、カニをめぐって騒がしい音が響き渡りました。
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