鬼の子は鬼

るい

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繰り返し

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「桃太郎さん!やりましたね!」

「すごい!すごい!」

「さすが桃太郎さん!あっという間にやっつけちゃいましたよー!」

「えっへん」

ヨウキの死体を横にし、4人は揃って喜んでいた。

(ヨウキが…殺されちゃった…)

キバは草むらに隠れながら一連の鮮やかな流れを見つめるだけだった。キバはふとルキのいる木を見た。
ルキはヨウキの死体を見つめ、震えるわけでもなく一切動かなかった。

「桃太郎さん!今日は鬼鍋にしましょうよ!」

「いいねぇ!それがいい!」

「この前の鬼鍋もうんまかったもんなー!楽しみだ~」

「うむ。そうしよう」

4人はヨウキの死体を持ち上げ、その場を去ろうとした。

(何やってんだ俺…ヨウキが殺されたって言うのに体が動かない…)

キバの体は石になったように動かなかった。キバの頭の中は恐怖心に覆われていた。おそらく、ルキもそうだろう。

「じゃあ行きましょうか桃太郎さん」

「うむ。」

4人はまた呑気に楽しげな歌を歌いながら歩き始めた。
その時、ドサッと何か重いものが落ちる音がした。

(ルキ…!?何してるんだ!?)

「あ…あわわ…」

ルキが登っていた木から落ちてしまったのだ。

「あ…い…いやだ…」

ルキの足はガクガク震えるだけで動こうとしなかった。

「ん?あれ?まだ鬼がいるぞ!」

「またちっこい鬼だ!捕まえろ!」

「鬼!!鬼!!」

桃太郎はまた目を見開き、ルキに向かって襲いかかった。

「いやだ…いやだーーー!!!」

ルキの足はようやく動き、向かってくる桃太郎から逃げるように走った。

(ルキ!!逃げろ!!!)

キバは声を出したつもりだが、全く出ていなかった。

「はぁ…はぁ…やめて…」

ルキは必死で逃げた。だが、桃太郎の速さにはかなわなかった。
桃太郎は一瞬でルキの上にたち、ルキは地面に這いつくばった。

「鬼!!鬼!!」

桃太郎はルキに刀を突きつけた。

「いやだ!!ごめんなさい!!もうしませんから!!死にたくない!!」

桃太郎はルキの嘆きも聞かず、刀でルキの右腕を貫いた。

「痛いーーーーー!!!!」

ルキの右腕から大量の血が溢れた。

「い…痛い…ごめんなさい…やめてください…助けて…」

桃太郎は次は左腕を刺した。

「ぎゃーーーーー!!!!」

ルキはあまりの痛みに腹の底から叫んだ。

「あはははは!あはははは!」

桃太郎は楽しそうに笑いながら何度も刺し続けた。

「うっ…」

ルキはまだ生きているがもう声を出すことも出来なくなった。

「鬼退治!鬼退治!」

3匹が後ろで手拍子しながら囃し立てている。

ルキは動かなくなり、周りには血だまりが広がっていた。

「桃太郎ナイスですー!」

「いやあお見事!」

「さすが!さすが!」

「えっへん」

桃太郎たちはルキを囲み、わいわい踊った。

「今日はご馳走ですね~!」

「まさかこんなに鬼がとれるなんてね!食べ放題だ!」

「食べ放題!食べ放題!」

「帰ろう。」

ルキは桃太郎に抱えられ、ヨウキの死体と共に連れていかれた。

桃太郎たちがその場を去ってどれくらい時が経ったのか分からないが、キバはようやく動くことができた。
と言っても、気絶してしまって後ろに倒れただけだった。





「こいつら…なんてしぶといんだ…」

その頃、鬼之進たちは気を失いそうになりながらも戦い続けていた。みんな血だらけで、何人かは死んでしまった。それは人間たちも同じだった。
戦いは五分五分、どっちも死に物狂いで戦っていた。

「今こそ復讐の時…ここで死んでたまるか…」

鬼之進は理性を失い、気力だけで戦っていた。

「くそっ!皆の者!体制を整え直す!一旦退け!」

人間たちは構えていた銃を下ろし、撤退しようとした。

「まて…逃がすものか…!」

鬼之進は最後の気力を振り絞り、人間立ちに襲いかかった。だが、その動きはあまりにも遅く、あっという間に腕を撃ち抜かれてしまった。
鬼之進はその場に倒れ込んだ。

「今だ!退け!退け!」

人間たちは一目散にその場から逃げ出した。

「まて…逃がさんぞ…くそ…」

「鬼之進…」

「長…長老様…!」

鬼之進が声のする方を見ると、頭から足まで血だらけになった長老の姿があった。

「長老…様…申し訳…ございません…」

「鬼之進…ひとまずここを離れるぞ…ここにいてはみな殺させる…隠れるのじゃ…」

「はい…しかし…私はとうに動ける状態ではありません…長老様だけでもお逃げ下さい…」

「何を言う…みな一緒じゃ…さあ立て…みなも来るのじゃ…」

長老の一声により同じく血だからけの鬼たちが立ち上がった。
長老と鬼たちは鬼之進の体を抱き上げ、ずるずると引きずりながらその場を去った。




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