10人の悲しい犯罪者

るい

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10人の犯罪者

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6人目は、太った男。罪は、児童虐待。
男には娘がいた。かつては幸せな家庭を持っていたが、ある時妻を亡くしてしまう。
妻をなくしたショックとその孤独から立ち直れず、男は毎晩酒に走った。
男は理性を失い、一人娘に暴力を振るい続けた。
何年も、何年も。

しかし、この男の妻は殺されてしまったのだ。
ある晴れた日、家族3人で旅行に行くために電車を待っていると、駅でナイフを持って暴れている男と出会う。
その男は妻を見つけると一目散に向かって、あっという間に刺した。
妻は瞬く間に動かなくなり、そのまま眠った。

「くそ…くそ…」

太った男は最後にそう言って、過去に囚われたまま涙を流した。


7人目は、年老いた老人。罪は、長年にわたる大量殺人。
年老いた老人は、何年にも渡って殺人を繰り返した。
ある時は好きな女を。ある時は1人の子供を。そしてある時は仲良しで幸せそうな家族を。
男は、自分の理想を壊すように殺人を犯した。かつて思い描いた、幸せな未来を壊すように。

年老いた老人は昔、心の底から愛した人を失った。
老人の恋人は、ある時から心を病み自殺した。
老人の恋人は、ストーカー行為にあっていた。
不気味な手紙にしつこいくらいの後追い、何年も続いたその行為に、ついに心を壊した。

「……」

老人は何も言わず、ただ黙って最後を迎えた。

8人目は、無口な老人。罪は、ストーカー。
男は色んな女を好きになった。ただ無口な男は、誰からも好かれなかった。
愛の伝え方を知らずに育った男は、ただ後ろを着いていくしか思いつかなかった。
そうして男は何人もの女性を相手に付きまとい、みな心を病んで行った。
そんな男にも、妻ができ、1人の娘ができた。だが
妻は男の財産を持っていくと、娘と共にすぐに出ていってしまった。

男は愛を知らずに育った。小さな頃から無口で、誰にも相手にされなかった。両親にも、兄弟にも、空気のように扱われた。
男は愛を求め、いつもさまよっていたのだ。

「誰か俺を愛してくれ」

無口な老人は、最後に重い口を開け、そう言った。


9人目は、高齢の父を持つ1人の娘。罪は、ネグレクト。
娘は父の介護を放棄し、毎晩遊び歩いた。
父はその隙に逃げ出し、自由な時間を得ていた。
まだ若い娘は家にも帰らず、父の世話もせず、とにかくあそんだ。
父と同じく愛を知らない娘は、本当の家族を求め、探していた。

そんな娘にも、小さな子供ができた。
父の介護は行わなかった娘だが、自分の子供は大いに可愛がった。
この子が世界一可愛い。それが娘の口癖になった。

「私の子はどこ!?返して!」

娘は最後にそう言って、酷く暴れ回った。


10人目は、ちいさなちいさな子供。罪は、殺人。
ちいさなちいさな子供は、自分の母親を殺した。
小さな子供には父親がおらず、母親と2人で暮らしていた。だが記憶にあるのは、自分に向かってカメラを向ける母親の姿だけ。母親と遊んだ記憶はなく、母親は自分のことを道具としか思っていないとそう感じていた。

ある日の朝、散らかったテーブルに出されたのはカビかけた食パンのみ。母親は子供にそれを朝ごはんとして出し、大切な携帯といつまでもにらめっこしていた。
小さな子供は、テーブルに置きっぱなしになっていたナイフを手に取り、母親の背中に向かってめいっぱい走った。



そうして家を出た5歳の男の子は、夜の都会の街をさまよった。
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