なんでも願いが叶う星

るい

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なんでも願いが叶う星

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ここは、なんでも願いが叶う星。
頭の中で思い描くと、それが現実になる。
謎に包まれたこの小さな星に、5人の子供たちがいた。

「お菓子が食べたい!」

子供たちがそう願うと、目の前の何も無い空間から、大量のお菓子が飛び出しました。

「楽しいおもちゃが欲しい!」

また子供たちが願うと、同じようにして大量のおもちゃが飛び出します。

5人の子供たちは、食べ物やおもちゃ、欲しいものはなんでも手に入るので、何不自由なく生活していました。

でも、この小さな星には、たったの5人しかいません。
5人の子供たちには、家族がいませんでした。

それでも5人はとっても仲良しだったので、毎日楽しく暮らしていました。


しかし、何年も何年も同じ時間を過ごし、苦労ひとつなく暮らしてきた5人は、ついに飽きが来てしまいました。

「このおもちゃもいらない、これもいらない。」

「今まで食べたことない、新しい料理無いかな~」

「この本は軽く100回は読んだね。新しい本が欲しいよ」

この星では、欲しいものが何でも手に入ります。でもそれは、あくまで’’自分が想像できるもの’’のみ。
新作のおもちゃやゲーム、一風変わった新しい料理、新刊の本などは、想像できないため生み出せません。

ある時、誰かがこう言いました。

「…家族が欲しい」

家族を知らない5人は、悩みました。
なんでも手に入るこの星で唯一、どうしても手に入らないもの。

「よし!僕達で家族になろう!」

また、誰かが言いました。みんなは賛成しました。
早速役を振り分け、5人は家族になりました。

でも、上手く行きませんでした。
家族になって、何をすればいいのか知らなかったからです。
この星では仕事は必要ないし、家事も必要ありません。
愛のない家族ごっこは、長続きしませんでした。
5人は、すぐに家族ごっこを辞めてしまいました。

それでも5人の気は晴れません。

またある日、1人があるものを持ってきました。

「みんな見て!小さい僕だよ!」

手には、その子に顔がそっくりな小さな生き物を抱えていました。

「自分より小さい生き物を育てるのが、家族なんじゃないかな?」


子供たちはその言葉を聞いて、それぞれ自分にそっくりな小さな生き物を作りました。
5人は、この小さな生き物を育てることにしました。

一緒にご飯を食べ、一緒にお風呂に入り、一緒に寝る。
そんな生活を、また何年も何年も繰り返しました。

やがて、小さな生き物達はすくすく育ち、5人にとっての本当の子供のようでした。
いつでも目が離せず、楽しいことも、危ないことも、悲しいことも、色んな経験をしました。
時には怪我をしたり、喧嘩をしたり、仲直りしたり。
その姿は、本物の家族でした。


5人の子供たちはすっかり大きくなり、小さな生き物達もすくすく育ちました。
そして5人は、その小さな生き物に愛を与えることに成功しました。


それから、何年も何年も共に過ごしました。
小さな生き物は大きくなると、5人の子供たちと同じように、また小さな生き物を生み出し、家族として育てました。

こうして、家族を知らなかった子供たちは、自分たちの手によって家族を作り出すことに成功しました。

なんでも願いが叶う星に、叶えられないことはないのかもしれません。
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