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第7話 はじめての実習……のその前に?
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『モンブラン祭』と並行しての技術チェックの関門をくぐり抜け。
いよいよ初めての実習が近付いた。
5月の連休明けに、まず『はじめての臨地実習に向けて』という映像教材を見せてもらい。
大まかな実習の流れや、身支度から始まって手洗いや挨拶の仕方、患者さんへの関わり方や困った時の対処など。実習中の生活の留意事項まで(朝ごはんはちゃんと食べよう、夜はしっかり睡眠を取ろう、体調が悪い時は早めに報告、余裕を持って登校しよう、等々)説明されていて。
映像を見て考えたことをまとめてレポート提出しなければいけなかったので、みんな必死でメモを取りながら食い入るように観ていた。
とっても賢そうな看護学生が、天使のような笑顔で患者さんと関わっていて、テキパキとスタッフに報告して、カンファレンスという意見交換の場では堂々と発言していて。
この人が基準、じゃないよね?
自分がこんな風に実習出来るのか、スッゴい不安……。
でも、比較として、望ましくない学生も出ていて、いくらなんでもあれはないよね、なんてヒドい態度だったので。
まあ、さすがにそこまでヒドくならないだろうし、なんて安心してみたり。
『モンブラン祭』が終わって、今度は正式な実習に向けての説明があり。3年間通しての実習全体の説明の回と初めて行く『基礎看護学実習1』の説明の回があり、それぞれの説明を文書にした実習要項が配られた。
「実習に行くに当たり、この内容を熟読して臨んで下さい。ここに書いてある内容は、皆さんが知っているという前提で今後は進めて行きます」
うわっ! この内容、全部覚えろってことだよね?
実習の目的目標や評価方法、日程や実習場所、欠席やトラブル発生時の連絡方法にレポートの書き方等々。
「分からなくなったら、必ず要項を読んでください。それでも分からない時はどんどん質問していいですよ」
よかった、困ったら聞いていいんだ。
夢歌さん、ちょっと一安心。
そして、無事技術チェックをクリアした後。
「これって、なんだろう?」
5月末、配られらた翌月分の(つまり6月分の)時間割表に、丸一日全学年に『自治会ボランティア・親睦会』と書かれた日があった。
実習の前週に。
「あ、その日は1年生の歓迎会も兼ねて市民公園でボランティアするんだって。先輩が言っていたよ」
と、相変わらず情報キャッチが早くて正確な奈央さん。
「歓迎会なのに、ボランティア?」
「道路のゴミ拾いをしながら市民公園までのんびり歩いて行って、今度は公園の遊歩道の草むしりをするんだって」
「……一日?」
「さすがにそれはないよー。それでお昼ごはんを公園で食べたら、午後は公園の施設で自由に遊んでいいんだって」
「公園の施設?」
「歴史博物館と美術館と動物園と遊園地」
「遊園地? あと、動物園もあるの?」
「らしいよ。まあ、規模はそれなりだけど、結構楽しいって。草むしりしたお礼に入場料ロハになるんだってさ。遊園地の乗り物代は実費だけど」
「それ、すでにボランティアじゃないんじゃ?」
「まあ、数百円とはいえ経費を浮かせるために学生自治会が市に交渉したらしいし。あ、その分でおにぎりが出るって。コンビニだけど」
「それは嬉しいけど。でも来週から実習が始まるのに……」
「あのさ、夢歌、実習の内容、知ってるよね?」
「当たり前だよ。最初は地域実習で、市民の皆さんと触れあうんだよね?」
そうなのだ。看護の実習と言えば病院に行くものだと思っていたけど。
最初は地域に暮らす健康な人々の様子を知るため、市内の施設に赴いてインタビューやコミュニケーションを取るんだって。
「その、場所って?」
「まだグループ分け決まってないから、分からないよ」
「グループ実習はね。交代で、全員行く場所があったじゃない?」
「……市民公園」
「そ。コミュニケーションの一環で公園施設についても訊かれるかもしれないし、そもそも広い市民公園に初めて行って迷子にならないように、下調べも兼ねられるように、わざわざそこにしてくれているみたいだよ。……まあ、こういう形式の実習になる前から、不定期で市民公園で親睦会してはいたみたいだけど」
「そんなに広いの?」
「うん。ホームページ見たら、結構広い。遊歩道って、昔のお城の馬場だったんだって。馬が走っていたなら、広いよね、きっと」
そんなわけで。
親睦会当日。
動きやすい格好で、と言われていたので、Tシャツにハーフパンツにスニーカー、という出で立ちの夢歌さん。
皆もだいたい似たような格好。
社会人の人達、特に少し年齢が上の人達は、がっちり手先まで隠れるように長袖だったりアームカバーをはめて、つばの広い帽子も被った完全紫外線対策ファッション。
軍手をはめて何人かはトングを持って、ゴミ袋片手に出発!
ちなみに今日は3学年をシャッフルして6~7人のグループを作り行動する。
1年生は2人。渡部時子さん。夢歌さんと同じく高卒すぐの入学だけど、席が遠くて今まであまり接点はなかった。
でも、実は実習グループが一緒。
1年生は実習が近いので、実習グループを基準に今回のグループ分けをした。
「私、地元なんだよね。だから、市民公園には何度も行ってるから、詳しいよ」
「頼りにしてまーす。公園の遊園地って、どんな感じ?」
「基本は子供向けだけどね。結構ハードな乗り物あるよ。ジェットコースターとか平気?」
「大丈夫」
「じゃあ、『海賊船』とか面白いかも。おっきい船型のコースターみたいなのがあるんだよ」
「うわあ! 楽しみ!」
先輩達に話しかけるのは、やっぱり少し緊張しちゃうので、最初は時子さんとばかり話していたけど。
そのうち、先輩達が話しかけてきてくれて、それに答えているうちに、気が付いたら和気あいあいとおしゃべりしながら市民公園に到着した。
草むしりは大変だったけれど、通りかかるお客さんから「ご苦労さん」「ありがとうね、きれいにしてくれて」なんて声を掛けてもらったり。
労働の後は、少し早めにお昼ごはん。芝生の上で食べるおにぎりとお茶はとっても美味しい。
先生達からお菓子の差し入れもあって(実は先生達も一緒にボランティアしていた)。
食後に一休みした後は、公園内の施設を一回り。動物園は小さめだけど意外と動物の種類が多くてビックリ。
歴史博物館は、鎧とか刀とか飾ってあった。公園の場所にあったというお城のジオラマとかもとっても精巧でボタンを押すと動いて意外と面白かった。
美術館は、……まあ、うん、何かすごいのかもしれない? 抽象画が多くて、夢歌さんは、あんまり興味が持てない感じ。地元出身の画家さんの作品が中心らしい。
最後は、遊園地!
船型のジェットコースター、超面白かった!
一回200円だったけれど、つい3回も乗ってしまった。
お財布の余裕があればもっと乗りたかったな。
「え?」
学校に戻ってその話をしたら。
「いや、僕ムリ。高いところ苦手」
なんと歩くん、高所恐怖症なんだって。
いつも何気に歩くんにやり込められている夢歌さん。ここぞとばかりにからかってしまいたくなったけれど。そこはグッとガマン!
人の弱みにつけこんじゃいけないよね、やっぱり。
そういえば。
今日初めてくらい沢山話した渡部時子さん、何と!
夢歌さんの大好きな少女マンガのファン仲間だと判明し。
実習がとっても楽しみになった。
色んな人の色んな顔が見られて。親睦会楽しかったな。
いよいよ来週は実習だ!
いよいよ初めての実習が近付いた。
5月の連休明けに、まず『はじめての臨地実習に向けて』という映像教材を見せてもらい。
大まかな実習の流れや、身支度から始まって手洗いや挨拶の仕方、患者さんへの関わり方や困った時の対処など。実習中の生活の留意事項まで(朝ごはんはちゃんと食べよう、夜はしっかり睡眠を取ろう、体調が悪い時は早めに報告、余裕を持って登校しよう、等々)説明されていて。
映像を見て考えたことをまとめてレポート提出しなければいけなかったので、みんな必死でメモを取りながら食い入るように観ていた。
とっても賢そうな看護学生が、天使のような笑顔で患者さんと関わっていて、テキパキとスタッフに報告して、カンファレンスという意見交換の場では堂々と発言していて。
この人が基準、じゃないよね?
自分がこんな風に実習出来るのか、スッゴい不安……。
でも、比較として、望ましくない学生も出ていて、いくらなんでもあれはないよね、なんてヒドい態度だったので。
まあ、さすがにそこまでヒドくならないだろうし、なんて安心してみたり。
『モンブラン祭』が終わって、今度は正式な実習に向けての説明があり。3年間通しての実習全体の説明の回と初めて行く『基礎看護学実習1』の説明の回があり、それぞれの説明を文書にした実習要項が配られた。
「実習に行くに当たり、この内容を熟読して臨んで下さい。ここに書いてある内容は、皆さんが知っているという前提で今後は進めて行きます」
うわっ! この内容、全部覚えろってことだよね?
実習の目的目標や評価方法、日程や実習場所、欠席やトラブル発生時の連絡方法にレポートの書き方等々。
「分からなくなったら、必ず要項を読んでください。それでも分からない時はどんどん質問していいですよ」
よかった、困ったら聞いていいんだ。
夢歌さん、ちょっと一安心。
そして、無事技術チェックをクリアした後。
「これって、なんだろう?」
5月末、配られらた翌月分の(つまり6月分の)時間割表に、丸一日全学年に『自治会ボランティア・親睦会』と書かれた日があった。
実習の前週に。
「あ、その日は1年生の歓迎会も兼ねて市民公園でボランティアするんだって。先輩が言っていたよ」
と、相変わらず情報キャッチが早くて正確な奈央さん。
「歓迎会なのに、ボランティア?」
「道路のゴミ拾いをしながら市民公園までのんびり歩いて行って、今度は公園の遊歩道の草むしりをするんだって」
「……一日?」
「さすがにそれはないよー。それでお昼ごはんを公園で食べたら、午後は公園の施設で自由に遊んでいいんだって」
「公園の施設?」
「歴史博物館と美術館と動物園と遊園地」
「遊園地? あと、動物園もあるの?」
「らしいよ。まあ、規模はそれなりだけど、結構楽しいって。草むしりしたお礼に入場料ロハになるんだってさ。遊園地の乗り物代は実費だけど」
「それ、すでにボランティアじゃないんじゃ?」
「まあ、数百円とはいえ経費を浮かせるために学生自治会が市に交渉したらしいし。あ、その分でおにぎりが出るって。コンビニだけど」
「それは嬉しいけど。でも来週から実習が始まるのに……」
「あのさ、夢歌、実習の内容、知ってるよね?」
「当たり前だよ。最初は地域実習で、市民の皆さんと触れあうんだよね?」
そうなのだ。看護の実習と言えば病院に行くものだと思っていたけど。
最初は地域に暮らす健康な人々の様子を知るため、市内の施設に赴いてインタビューやコミュニケーションを取るんだって。
「その、場所って?」
「まだグループ分け決まってないから、分からないよ」
「グループ実習はね。交代で、全員行く場所があったじゃない?」
「……市民公園」
「そ。コミュニケーションの一環で公園施設についても訊かれるかもしれないし、そもそも広い市民公園に初めて行って迷子にならないように、下調べも兼ねられるように、わざわざそこにしてくれているみたいだよ。……まあ、こういう形式の実習になる前から、不定期で市民公園で親睦会してはいたみたいだけど」
「そんなに広いの?」
「うん。ホームページ見たら、結構広い。遊歩道って、昔のお城の馬場だったんだって。馬が走っていたなら、広いよね、きっと」
そんなわけで。
親睦会当日。
動きやすい格好で、と言われていたので、Tシャツにハーフパンツにスニーカー、という出で立ちの夢歌さん。
皆もだいたい似たような格好。
社会人の人達、特に少し年齢が上の人達は、がっちり手先まで隠れるように長袖だったりアームカバーをはめて、つばの広い帽子も被った完全紫外線対策ファッション。
軍手をはめて何人かはトングを持って、ゴミ袋片手に出発!
ちなみに今日は3学年をシャッフルして6~7人のグループを作り行動する。
1年生は2人。渡部時子さん。夢歌さんと同じく高卒すぐの入学だけど、席が遠くて今まであまり接点はなかった。
でも、実は実習グループが一緒。
1年生は実習が近いので、実習グループを基準に今回のグループ分けをした。
「私、地元なんだよね。だから、市民公園には何度も行ってるから、詳しいよ」
「頼りにしてまーす。公園の遊園地って、どんな感じ?」
「基本は子供向けだけどね。結構ハードな乗り物あるよ。ジェットコースターとか平気?」
「大丈夫」
「じゃあ、『海賊船』とか面白いかも。おっきい船型のコースターみたいなのがあるんだよ」
「うわあ! 楽しみ!」
先輩達に話しかけるのは、やっぱり少し緊張しちゃうので、最初は時子さんとばかり話していたけど。
そのうち、先輩達が話しかけてきてくれて、それに答えているうちに、気が付いたら和気あいあいとおしゃべりしながら市民公園に到着した。
草むしりは大変だったけれど、通りかかるお客さんから「ご苦労さん」「ありがとうね、きれいにしてくれて」なんて声を掛けてもらったり。
労働の後は、少し早めにお昼ごはん。芝生の上で食べるおにぎりとお茶はとっても美味しい。
先生達からお菓子の差し入れもあって(実は先生達も一緒にボランティアしていた)。
食後に一休みした後は、公園内の施設を一回り。動物園は小さめだけど意外と動物の種類が多くてビックリ。
歴史博物館は、鎧とか刀とか飾ってあった。公園の場所にあったというお城のジオラマとかもとっても精巧でボタンを押すと動いて意外と面白かった。
美術館は、……まあ、うん、何かすごいのかもしれない? 抽象画が多くて、夢歌さんは、あんまり興味が持てない感じ。地元出身の画家さんの作品が中心らしい。
最後は、遊園地!
船型のジェットコースター、超面白かった!
一回200円だったけれど、つい3回も乗ってしまった。
お財布の余裕があればもっと乗りたかったな。
「え?」
学校に戻ってその話をしたら。
「いや、僕ムリ。高いところ苦手」
なんと歩くん、高所恐怖症なんだって。
いつも何気に歩くんにやり込められている夢歌さん。ここぞとばかりにからかってしまいたくなったけれど。そこはグッとガマン!
人の弱みにつけこんじゃいけないよね、やっぱり。
そういえば。
今日初めてくらい沢山話した渡部時子さん、何と!
夢歌さんの大好きな少女マンガのファン仲間だと判明し。
実習がとっても楽しみになった。
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