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第4話 ビバ! モンブラン祭?!
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瞬く間に一ヶ月が過ぎて。
「モンブラン祭」は終わった……。
……ではあまりにも手抜きだけど。
実際そういう気分の、夢歌さん。
……あまりにも、目まぐるしくて。
とりあえず、一息ついて、整理してみましょう。
まず。
学校生活や何やらの決まりごとを、何回かに分けてレクチャーを受けたり、実習用白衣の採寸だとか、実技で使う個人用の物品(買っちゃいました、憧れのマイ聴診器! ステートって言うんだって! ローマ字の名前も刻印してもらった!)の説明やら斡旋やらで、最初の週は終わった、一応。
最初の週は、基本的にどの日も2時限、半日だったのだ。
ただし。
午後は、学校祭の準備の為に、結局学校にいなければならなかったりする。
まだ校内の様子も分からないうちから、「○○係は午後イチ第○教室に」なんて招集されて。
「じゃあ、コレとアレは、一年生でやっておいてね」
なんて、模造紙やら画用紙やらの買い出しや、チラシの印刷や、装飾に使う折り紙の輪っかやサクラ紙で花を作ったりやら……要するにとりあえず出来そうな雑用を任される。
何もそんなに慌ててやらなくても……。
正味一ヶ月有るのだから、正直そういう会場づくり的なことは、もっと際でもいいんじゃないかと、夢歌さんをはじめ、一年生はおもった、けど。
2週目。
ぱたり、と招集がなくなってしまった。
と言っても、この週から本格的に授業が始まった一年生諸君。
いきなり4時限、丸一日、90分カケる4イコール360分、つまり正味6時間……小難しい講義で、頭はパンク寸前。
中には「最初の授業だからね」と最初の15分くらいは自己紹介に当てる講師もいらっしゃったが。
「では教科書を開いて」
挨拶もそこそこ、みっちり講義に当てる講師の方も結構いらっしゃり。
(そして、そういう講師の講義は……なおさら小難しく感じた夢歌さん。ひがみじゃない……と思う)
この後に係の活動なんてあったら、くたくたで明日起きられないよー!
と、嘆いた、が。
前述の通り、いっそ招集はなく。
夢歌さんはじめ、一年生諸君は何とか2週目を乗りきることが出来た。
で。
講義のことで頭がいっぱいで、夢歌さんは気付かななかったんだけど。
3週目に入って、ようやく、何かおかしいなってことに気付いた。
あれ?
何だか、学校静かじゃない?
夢歌さんの通う栗白山看護専門学校は定員各40名、全校で約120人の、少し規模の小さい看護学校だったりする。
学校の規模にあわせて作られている校舎は、HR教室が3つと、実習室、情報処理室、図書室や自由学習や集会に使う大きな教室が2つ、更衣室に職員室と事務室などのある3階建ての建物で、120人もの学生、つまりは一応大人の体格をした人間がそれだけいたら、結構人口密度が高い。
入学式に使ったホールは、実は隣の市役所の設備で、式典の時だけ借りてるそう。地続きなんで学校の物だと思っていた。
ところが。
廊下ですれ違う学生の数が、何となく少ない。
登下校時も、昇降口の混雑が、心無しか解消された気がする。
「あ、三年生がいないんだってさ」
素朴なギモンを口にした夢歌さんに、今頃? って目で、でも答えてくれたのは、チャラいと思っていたのに、意外と頭がいいらしいことが判明した歩くん。
「三年生は実習で、基本、実習先に直行直帰なんだってさ」
「よく知ってるのねぇ」
夢歌さんが素直に賞賛すると、満更でもなさそうに、顔をほころばせる歩くん。
「年間計画表に書いてあるんだよ」
と言って、一週目に配られた冊子(学生便覧と言って、学校の理念やカリキュラムや学則や、とにかく色々細かい学校の事柄が書いてある)を引っ張り出して、年間計画表のページを開いて見せてくれた。
「ここの【3年実習】って書いてある矢印のところが、実習に行っている期間」
4月から3月までが一目で分かるように一覧になった年間計画表の、ほとんどの月に、その月の半分以上に渡る長い矢印が引かれていた。
「うわっ、こんなにあるの?!」
矢印は、後半にいくほどみっちり書かれていて、矢印と矢印の間隔も、最初は1週間くらい空いているのが、最後は土日挟んで1日しか空いていなかった。
みっちり矢印の間隔が、12月からは緩やかになっていて、そこには【2年実習】と書かれている。
「3年生は、11月で実習は終わりで、そのあとから2年生の実習が本格的に始まるんだって……って、説明あったけど?」
「……自分達の実習のとこしか聞こえてなかったか、な?」
へへっ、とごまかすように苦笑いする夢歌さんから、遠くを見るように視線を逸らして生温かい微笑みを浮かべる歩くん。
「……そうそう、健康診断係は、直前までもう仕事ないから、装飾係の手伝いをしてください、って」
さりげなく話題を変えて、学年係長(という役職が歩くんには与えられた)としての連絡事項を伝えてくれた。
「はーい」
こちらもさりげなく、にこやかにお返事。
……なーんて、余裕で構えていたんだけど。
装飾係って、めちゃくちゃ忙しい!
校内の装飾材料(紙のお花とか、折り紙の輪っかで作る鎖だとか、山のように)に始まって、オープニングセレモニーで使うくす玉や、校門に設置する張りぼてのゲートだとか、大型の立看板。
使い回しの土台もあるけど、テーマに合わせて作り替えなきゃいけない。
細かい作業も大変だけど、大物は大物で、色を塗るだけでも時間が結構かかる。
でも授業は毎日しっかりあるし、課題もあるし。
放課後も2年生はグループ課題があったりして時間が取れない日もあるので、結局1年生がやらざるを得ないんだけど。
そうは言っても2年生がいないと分からない部分が発生すると作業はストップしてしまい。
その上。
看護学校ならではの、技術練習が、始まった、のである。
多分、夢歌さんをはじめ、看護師に憧れて入学してきた学生にとって、一番楽しみにしていた科目。
看護技術の授業。
患者さんの身体を拭いたり、包帯巻いたり、脈や血圧測ったり。
そんな、【看護師さんっぽい】授業に、「ワクワクドキドキしてました」、かっこ過去形。
憧れていても、やりたい気持ちがあっても、習ってすぐに上手に出来れば苦労はないわけで。
どれだけ大変だったのかは、詳しくは次の機会に譲るとして。
とにかく、毎日バタバタと忙しく過ごしているうちに、気が付けば学校祭「モンブラン祭」は開催の日を迎え。
……あっという間に終わってしまったのでした、まる。
……と言うのは大袈裟だけど。
ぶっちゃけ、楽しかったんだよね。
何だかんだ言っても、夢中で毎日過ごしていたし。
オープニングセレモニーでくす玉がなかなか割れずに慌てたりもしたけど。
健康診断係の当番中に、高校の後輩達が見学に来て白衣姿を「先輩かわいい!」と盛んに写メってくれたり。
3年生の、かなりイケメンの先輩が作る焼きそばの屋台に行列したり(でも、同級生の彼女アリ、残念!)
ミス&ミスターコンテストで、夢歌さんが、「天然部門」で選出されていてビックリしたり(推薦者は歩くんに違いない! 許さん!)
献血車がやってきて、ゆるキャラと一緒に写真撮ったり(献血もしたよ)。
先輩方のメチャクチャキレキレのダンスに大フィーバーしたり。
他にもイロイロ。
楽しくて、あっという間の、2日間だった……。
そんなこんなで、初めての学校祭、楽しく無事クリアしました夢歌さん、です。
「モンブラン祭」は終わった……。
……ではあまりにも手抜きだけど。
実際そういう気分の、夢歌さん。
……あまりにも、目まぐるしくて。
とりあえず、一息ついて、整理してみましょう。
まず。
学校生活や何やらの決まりごとを、何回かに分けてレクチャーを受けたり、実習用白衣の採寸だとか、実技で使う個人用の物品(買っちゃいました、憧れのマイ聴診器! ステートって言うんだって! ローマ字の名前も刻印してもらった!)の説明やら斡旋やらで、最初の週は終わった、一応。
最初の週は、基本的にどの日も2時限、半日だったのだ。
ただし。
午後は、学校祭の準備の為に、結局学校にいなければならなかったりする。
まだ校内の様子も分からないうちから、「○○係は午後イチ第○教室に」なんて招集されて。
「じゃあ、コレとアレは、一年生でやっておいてね」
なんて、模造紙やら画用紙やらの買い出しや、チラシの印刷や、装飾に使う折り紙の輪っかやサクラ紙で花を作ったりやら……要するにとりあえず出来そうな雑用を任される。
何もそんなに慌ててやらなくても……。
正味一ヶ月有るのだから、正直そういう会場づくり的なことは、もっと際でもいいんじゃないかと、夢歌さんをはじめ、一年生はおもった、けど。
2週目。
ぱたり、と招集がなくなってしまった。
と言っても、この週から本格的に授業が始まった一年生諸君。
いきなり4時限、丸一日、90分カケる4イコール360分、つまり正味6時間……小難しい講義で、頭はパンク寸前。
中には「最初の授業だからね」と最初の15分くらいは自己紹介に当てる講師もいらっしゃったが。
「では教科書を開いて」
挨拶もそこそこ、みっちり講義に当てる講師の方も結構いらっしゃり。
(そして、そういう講師の講義は……なおさら小難しく感じた夢歌さん。ひがみじゃない……と思う)
この後に係の活動なんてあったら、くたくたで明日起きられないよー!
と、嘆いた、が。
前述の通り、いっそ招集はなく。
夢歌さんはじめ、一年生諸君は何とか2週目を乗りきることが出来た。
で。
講義のことで頭がいっぱいで、夢歌さんは気付かななかったんだけど。
3週目に入って、ようやく、何かおかしいなってことに気付いた。
あれ?
何だか、学校静かじゃない?
夢歌さんの通う栗白山看護専門学校は定員各40名、全校で約120人の、少し規模の小さい看護学校だったりする。
学校の規模にあわせて作られている校舎は、HR教室が3つと、実習室、情報処理室、図書室や自由学習や集会に使う大きな教室が2つ、更衣室に職員室と事務室などのある3階建ての建物で、120人もの学生、つまりは一応大人の体格をした人間がそれだけいたら、結構人口密度が高い。
入学式に使ったホールは、実は隣の市役所の設備で、式典の時だけ借りてるそう。地続きなんで学校の物だと思っていた。
ところが。
廊下ですれ違う学生の数が、何となく少ない。
登下校時も、昇降口の混雑が、心無しか解消された気がする。
「あ、三年生がいないんだってさ」
素朴なギモンを口にした夢歌さんに、今頃? って目で、でも答えてくれたのは、チャラいと思っていたのに、意外と頭がいいらしいことが判明した歩くん。
「三年生は実習で、基本、実習先に直行直帰なんだってさ」
「よく知ってるのねぇ」
夢歌さんが素直に賞賛すると、満更でもなさそうに、顔をほころばせる歩くん。
「年間計画表に書いてあるんだよ」
と言って、一週目に配られた冊子(学生便覧と言って、学校の理念やカリキュラムや学則や、とにかく色々細かい学校の事柄が書いてある)を引っ張り出して、年間計画表のページを開いて見せてくれた。
「ここの【3年実習】って書いてある矢印のところが、実習に行っている期間」
4月から3月までが一目で分かるように一覧になった年間計画表の、ほとんどの月に、その月の半分以上に渡る長い矢印が引かれていた。
「うわっ、こんなにあるの?!」
矢印は、後半にいくほどみっちり書かれていて、矢印と矢印の間隔も、最初は1週間くらい空いているのが、最後は土日挟んで1日しか空いていなかった。
みっちり矢印の間隔が、12月からは緩やかになっていて、そこには【2年実習】と書かれている。
「3年生は、11月で実習は終わりで、そのあとから2年生の実習が本格的に始まるんだって……って、説明あったけど?」
「……自分達の実習のとこしか聞こえてなかったか、な?」
へへっ、とごまかすように苦笑いする夢歌さんから、遠くを見るように視線を逸らして生温かい微笑みを浮かべる歩くん。
「……そうそう、健康診断係は、直前までもう仕事ないから、装飾係の手伝いをしてください、って」
さりげなく話題を変えて、学年係長(という役職が歩くんには与えられた)としての連絡事項を伝えてくれた。
「はーい」
こちらもさりげなく、にこやかにお返事。
……なーんて、余裕で構えていたんだけど。
装飾係って、めちゃくちゃ忙しい!
校内の装飾材料(紙のお花とか、折り紙の輪っかで作る鎖だとか、山のように)に始まって、オープニングセレモニーで使うくす玉や、校門に設置する張りぼてのゲートだとか、大型の立看板。
使い回しの土台もあるけど、テーマに合わせて作り替えなきゃいけない。
細かい作業も大変だけど、大物は大物で、色を塗るだけでも時間が結構かかる。
でも授業は毎日しっかりあるし、課題もあるし。
放課後も2年生はグループ課題があったりして時間が取れない日もあるので、結局1年生がやらざるを得ないんだけど。
そうは言っても2年生がいないと分からない部分が発生すると作業はストップしてしまい。
その上。
看護学校ならではの、技術練習が、始まった、のである。
多分、夢歌さんをはじめ、看護師に憧れて入学してきた学生にとって、一番楽しみにしていた科目。
看護技術の授業。
患者さんの身体を拭いたり、包帯巻いたり、脈や血圧測ったり。
そんな、【看護師さんっぽい】授業に、「ワクワクドキドキしてました」、かっこ過去形。
憧れていても、やりたい気持ちがあっても、習ってすぐに上手に出来れば苦労はないわけで。
どれだけ大変だったのかは、詳しくは次の機会に譲るとして。
とにかく、毎日バタバタと忙しく過ごしているうちに、気が付けば学校祭「モンブラン祭」は開催の日を迎え。
……あっという間に終わってしまったのでした、まる。
……と言うのは大袈裟だけど。
ぶっちゃけ、楽しかったんだよね。
何だかんだ言っても、夢中で毎日過ごしていたし。
オープニングセレモニーでくす玉がなかなか割れずに慌てたりもしたけど。
健康診断係の当番中に、高校の後輩達が見学に来て白衣姿を「先輩かわいい!」と盛んに写メってくれたり。
3年生の、かなりイケメンの先輩が作る焼きそばの屋台に行列したり(でも、同級生の彼女アリ、残念!)
ミス&ミスターコンテストで、夢歌さんが、「天然部門」で選出されていてビックリしたり(推薦者は歩くんに違いない! 許さん!)
献血車がやってきて、ゆるキャラと一緒に写真撮ったり(献血もしたよ)。
先輩方のメチャクチャキレキレのダンスに大フィーバーしたり。
他にもイロイロ。
楽しくて、あっという間の、2日間だった……。
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