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1章
2
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カレリスは迷いなく進んだ。先刻まで おとなしく森を包んでいた魔瘴は進むほどに濃度を増し、今は攻撃的にジスとデュランに向かってくる。
(風が出てきた)
北からの冷たい風が澱となった瘴気を巻き上げるので、かなり上の方を飛行していても汚染が激しい。雲のようになって浮遊している魔瘴を巧みに避けながら辺りの様子を抜け目なく観察する。
「そろそろシエカート公爵領が見えてきますよ」
「ルートからだいぶ離れてんな…… ルクスが自分でここまで来たとは思えないんだが」
「一応、騎士ですからその辺は弁えている……はずです。エルメだけが来たにしても妙ですね」
「デュラン、ここで待機してくれ。通信機の範囲で様子を見てくる。
何かあったら他の奴に位置を伝えて応援頼む」
「気を付けて」
ジスは更に速度を上げてカレリスに促されるまま竜を駆った。この見知らぬ領域に入ってからというもの、いくら夜とはいえ魔瘴の濃度が高すぎる。ルクスが気づいた異常は魔瘴噴出孔かもしれない。
(素直に報告しとけってんだ!)
滅多に目にすることはないのだが、噴出孔は 開いたり閉じたりするため時間が経つと移動する。その移動に巻き込まれたのならエルメはすでに魔化を起こしているし、ルクスの命もないだろう。だがカレリスの様子からして まだ間に合うような希望が見えた。
空は一層冷え込み、冷たい雲が身体を濡らすそばから凍っていく。手綱を取っていたジスは カレリスが高度を落とす体制に入るのを悟って姿勢を低くした。
(……何だ?)
足元に迫り来る黒い森をじっと目を凝らして観察すると、瘴気を多分に含んで立ち込めている靄が 風に煽られ所どころ薄くなったり濃くなったりと忙しない。靄の中にうっすらと見える木々の影と思しきものが ざわざわと揺れながら少しずつ移動しているように見えた。
(森が動いてる?いや…… ――噴出孔か!)
木々が枝を伸ばすように、噴出した瘴気がいくつもの筋となって地面と厚い魔瘴の層をつないでいた。森のように見えていた黒い塊は そこら中にできた噴出孔から渦を巻いて噴き上がる魔瘴の塊だったのだ。カレリスの身体が魔力に包まれ白く光った。止まる気はないらしい。重ね掛けした障壁に治癒効果を追加してジスはカレリスの意思を尊重した。
ガパリと口を開いたカレリスは咆哮を上げて纏った魔力を放出した。放たれた竜の魔力はその勢いも凄まじく、咆哮とともに熱量を増大させ 太い光線になって一直線に魔瘴の層を切り裂いた。周辺の瘴気を消し飛ばし出来た裂け目から はっきりと中の様子を見ることが出来る。
このあたりはごつごつとした岩石地帯で木らしい木はほぼないようだ。苔に覆われた大地が時折 固そうな岩肌をさらしている。地面から突き出たいくつもの細長い――といっても両腕を広げたくらいの幅がある――象牙色をした岩が苔と蔦に巻かれ、ゆるい曲線を描きながら空へ伸びていた。岩と砂で出来た地面が激しい衝撃波によって噴出孔ごと抉り取られ、この裂け目周辺だけならしばらくは捜索できそうだった。
「デュラン、噴出孔だ。多すぎて巣 みたいになってっぞ。
カレリスが無力化させたとこを今のうちに捜索する。位置は……」
「わかります、先ほど見えました。
ここをシーグルに引き継いで俺もそちらに向かいます」
「よろしく」
ジスは速度を落として注意深く様子を探った。かなりの魔力を消費してカレリスが作ってくれた裂け目の淵はじわじわと狭まり始めている。あまり時間をかけられない。周りを明るく照らしながら、時折警笛を鳴らし応えを待ってみるも静かなもので、聞こえるのはあちこちから瘴気が噴出する音だけだ。
(妙だな)
カレリスの示すままにここまで来た。探している同胞の近くまで来たのなら普通は竜同士 鳴き声で連絡を取り合うはずだ。もしかしたら鳴き声の圏内にいないのかもしれない。そうでなければすでに手遅れか……
「いや、手遅れならあんな魔力の使い方しない」
一旦 上の方に出てみれば何か見えてくるかもな、と 手綱を絞って上昇した。
厚い魔瘴の層の上で 風はさらに激しくなっていた。濁った生ぬるい空気から解放されたジスは、ゆっくりと息を吐きながら 大きく開いた裂け目を見下ろす。そんなふうに眺めてみれば なんとも奇妙な場所だった。
まず、この辺りに木らしい木がないのは確かだがそれはほんの一部であること。大きく成長した様々な種類の樹木が ここ一帯――岩石地帯の周りを縁取るように茂っているため、ここはまるで 大森林の中にぽっかりとあいた穴だ。何らかの原因があって ここ一帯だけ森の生育が阻まれていたのではないだろうか。さらに注目すべきは岩の形だ。ジスの足元から 裂け目の一番端の方まで視線を巡らせば、土と砂が盛り上がって出来た小高い丘が弧を描くように横たわり、その斜面はトゲのような形をした岩に覆われている。これらの岩はもっと不揃いでも良さそうなものなのに どれも似たような形をしている。しかも大中小と規則正しく分類され、細く尖って突き出た面を外側にして並んでいるのだ。どんな環境にあれば あの形状になるのか ジスにはわからなかった。そして不可解な、地面から生えている細長い岩の群れ。低く飛行している時は気付かなかったが この象牙色の岩は二つで一組のようだ。弧を描く丘に沿って ほぼ等間隔に 二列になって並んでいる。何箇所かの二つの岩が曲線を描きながらつながった状態で残っていることから 元々はアーチのようになっていたと思われる。
(なん……か、既視感あるな。 何だ?)
「ジス、合流します」
通信機からの声で思考が霧散したジスは 遠目にデュランの姿を確認すると片手を上げた。先ほどから感じる違和感を一つずつ片付けようと しばらく二人で並走しながら様子を探ることにした。
「この岩は遺跡とかそういう……人工物に見えるか?」
「人工物にしては装飾もないし雑……っと、タリヤ、どうしたんです?」
ここに来てから デュランの竜――タリヤの様子がおかしい。どこかソワソワと落ち着かず、デュランの制御を聞かずに上昇しようとする。なんとなく及び腰だ。カレリスは何か感じるものがあるのか、困惑した様子で 地面から細長く突き出た岩の間を行ったり来たりを繰り返す。
「ここに何かあるのかもしれませんね。降りて様子を見てきます」
「だめだ」
「瘴気が濃くなってます。裂け目が閉じる前に出来ることはしておかないと」
確かにそうなのだが。デュランを行かせるのは酷く胸が騒いだ。
「俺が行く」
数時間ぶりに着地した地面は固かった。そこら中に生えている草の丈は意外と高く ジスの腰辺りまで伸びているものもある。苔で覆われた岩は気を抜くと滑るので、慎重に進もうと気合を入れたところで ふと思う。
(岩だよな?)
何か間違っている気がしたのだ。
ジスはしゃがんで苔をはがし、岩肌を撫でさすって感触を確かめた。初めはひやりとしていた岩は手袋を外し直に触れれば ジスの掌の体温を吸ってぬるく熱を持った。
「ジス!何か異常でも?」
「いや、気のせいだった!」
小高い丘の上、弧を描く丘に沿って突き出た 苔と蔦が絡む細長い岩の前に立ったジスは しげしげとそれを見上げた。ほんのりと黄色がかった バタークリームの色をしたその岩は、様々な濃さの緑とよく映えて美しい。振り返ると、ヒョコヒョコ後ろを着いてきていたカレリスが不安げにこちらを見ていた。
「エルメの気配はわかるか? 何か察したからここまで来たんだろ?」
そう言うとカレリスはビクリと身体を震わせ両翼をすくめて俯いた。
「えっ 責めてるわけじゃなくてだな、 …… 何だ!?」
予想外に恐怖の反応をされて動揺したのも束の間、地面がグラグラと揺れたかと思うと、小高い丘は獣が起き上がるように ボロボロと土砂を落として高く盛り上がっていく。あまりのことにジスの反応が少し遅れた。一瞬で足元が崩れ 空中に放り出されたジスは 真っ逆さまに落下した。小高い丘を成していた土と砂は、斜面を覆うトゲのような岩と 象牙色をした岩の群れを残して流れ落ちていく。魔法で自身に障壁を巡らせ 落下しながらその様子を見ていたジスは、元はアーチ状だったと思われる岩列の正体を悟った。
(骨だ。 それも、竜の……!)
土砂が崩れ落ちたあとに現れた脊椎の列、肋骨の多さから、この巨大な骨の持ち主が 竜であることを確信した。魔力を纏ったカレリスが 降り注ぐ土砂を縫って真っ直ぐにこちらへと向かってくる。ここで土砂に巻き込まれてはひとたまりもない。立ち込める砂埃で視界も悪かった。ジスは警笛を鳴らして より明確に位置を示した。
カレリスは翼の動きを最小限に抑え 速度を緩めて接近した。ジスが腕をのばして鞍のベルト部分をつかんだ時だった。
ィィィ…… フィ…… ィィィィ……
「―― ルクス!!」
轟音を立てながら崩れ流れていく土砂の中でも 警笛のかすれた高い音が途切れがちに鳴るのをジスは聞き逃さなかった。素早く竜の背に騎乗し体勢を立て直すと 全神経を傾けて音の発生源を探した。落ちてくる土砂を避けながら高度を上下させ、細い音を頼りに進むとこの巨大な竜のちょうど腹の中、太い胴椎と肋骨の間にかろうじて残っていた土の上でエルメが魔力を纏ってルクスを守るように覆いかぶさり蹲っている。
「エルメ!飛べるか!?」
ジスが叫ぶと同時にカレリスが甲高い鳴き声を上げ、急激に加速して骨と骨の間へ入り込んだ。隆起する振動が ルクス達のいた場所を跡形もなく払い落としてしまった。土砂に紛れて落ちるルクスをなんとか回収したジスはエルメの姿を探した。ふらふらと飛行する影を目ざとく見つけてほっと息を吐く。長い間ルクスをかばっていたのだろう、いつ魔化を起こしてもおかしくないほど瘴気に蝕まれている。ジスはエルメに治癒魔法をかけるために追いかけた。焼け石に水だがしないよりはマシだ。
「デュラン、ルクスを回収した。エルメもまだ飛べる」
「ジス!無事ですね。ほかの4人を呼んでます。
ルクスは……砦まで耐えられそうですか?」
「ギリギリかもしれねえ」
「そこで何が起きているんですか?ここからだと状況が全くわからない」
「俺もわかんねえ。ただ ……い竜…… ……の…
急に通信が途切れ始めた。
「ジス?」
「…… …… ――魔化だ!」
「エルメが!?」
「い… エ…メじゃ… て別… ……… !」
シュゴッ と、破裂音が通信機から響いた。
「ジス! 返事を ……!?」
突然、ドンッという轟音が腹の底を揺さぶった。次の瞬間、凄まじい衝撃波が幾重にもなって押し寄せ 視界を塞いでいた土埃と瘴気の靄を吹き飛ばし、草木を無理やり剥がして去っていった。
とっさに障壁を重ねて 受ける衝撃を緩めたとはいえ、デュランが先程までいた位置から結構な距離を強引に押しやられてしまった。顔を上げると ここ一帯の森林を遠くの方まで見渡すことが出来る。いまだ地響きを上げて隆起している巨大な塊が次第にその輪郭を明確にしていく。
星明りの差す空に影絵のように黒々と描かれたのは巨大な竜の姿だった。
「デュラン! 今どーなってんの!?」
シーグルとリッタがデュランを見つけて近づいた。アトラトとフランジも合流している。
「ルクスを確保しました。……ジスが」
「それでジスはぁ…… … どこに」
「…………」
デュランが無言で指した方に4人は顔を向けた。
「魔化が起きている、と」
所どころ肉を失い骨を剥き出しにした巨大な竜が 身体から魔瘴を噴き出しながら、ゆっくりと頭をもたげ 咆哮を上げた。
******
激しい衝撃波を巨大な竜の腹に入って凌いだジス達は 一気に噴き出た魔瘴の奔流にのまれて位置を見失っていた。
気絶しているルクスに無理やり治癒薬を飲ませ 落とさないよう自分と括り付けて固定したあと、ふらふらと飛行するエルメに障壁をかけた。カレリスをゆっくり飛行させて先導すると のろのろとついてくる。ジスは頻繁に振り返ってエルメの様子を確認した。上下左右を濃い魔瘴に巻かれ、ほんの少し距離が開いただけでも はぐれてしまいそうだった。容赦ない風が叩きつけるように吹く中を慎重に進んだ。
濃い魔力が巨大な竜の身体に集中するのがわかった。
(――来る!)
上空が白く光った直後、強烈な熱量を持った魔力の塊が落雷のようになってジス達に襲いかかった。それををギリギリで躱して次の襲撃に備える。いくつもの魔力の光線に執拗に襲われ、神経がすり減っていく。
「クソッ!」
ルクスの状態も悪いがエルメも瀕死だ。エルメがこの攻撃を避けきれるか気が気でなかった。帰還する道のりであてられる瘴気の量を考えると 障壁に使う魔力量を切り詰めても砦まで帰還できるかわからない。せめてほかの5人と合流してルクスとエルメを預けたかった。
空気を裂くような細い音が次第に大きくなって近づいてくる。何か……たぶん竜の尾がこちらを薙ぎ払おうと勢いをつけて襲来しているのだろうが 厚い瘴気に遮られ 視覚は全く頼りにならない。もはや感覚に頼るしかない。ジスはエルメに合図すると カレリスの手綱を絞って上昇し、すんでのところで躱した。
空をきった竜の尾は 土産とばかりに突風を起こし、カレリスとエルメの翼を煽ってバランスを崩させた。なんとか体勢を立て直し顔を上げると、すぐそこに 巨大な竜の顔があった。ギョロリとした眼は沼のように濁っていたが、ジスと目が合った一瞬、知性の光を灯したように見えた。竜の身体は先程の 勢いをつけた動きに耐え切れず、腐臭を放つ自身の肉をボトボトと落としている。
オオオ…… ォォオオオ……
(鳴き声、か……?)
風の音かもしれないが、その音色はジスの心をざわつかせた。それに呼応するようにカレリスとエルメが悲しげに鳴き声を上げた。
骨と腐肉の塊が地響きを上げて落ちていく。胸部の肉が剥がれ 心臓が露わになったところで、ジスはカレリスを加速させ 勢いをつけて剣で突き刺した。どくどくと脈打っていた心臓は放射状に強い光を放ったあと急速に結晶化して、きらきら輝きながらゆっくりと落ちていった。巨大な竜の身体はボロボロと崩れていった。
ジスは、魔瘴に巻かれて位置を見失ってる現在の状況を思い出した。あまり魔力を使いたくないが、脱出するためには、上を塞いでいる魔瘴が薄くなってるところを探して確実に切り取らなければならない。しかも落下物を増やしてしまった。思わず振り返ってエルメの姿を確認した。飛び方は覚束ないが ちゃんとついてきている。大量の魔瘴噴出孔が吐き出す瘴気の中でルクスを守ってくれていたのだ。見捨てて行きたくなかった。
「よしよし、その調子でついて来いよ」
先導していたジスに影が差した。大きな脊椎の一部が崩れ こちらに降りかかってきているのだ。
「エルメ 避けろ!」
――避けられそうにない
その時、魔力で出来た風が ジス達の頭上のものを吹き飛ばした。上空を覆っていた魔瘴が鋭角の扇状に裂けているので そこから脱出すれば合流できる。カレリス達の鳴き声で タリヤが大体の位置を把握してくれたのかもしれない。
ガクン とエルメがバランスを崩した。
かなり下方に落ち込んでしまったエルメを追ってジス達も下降した。もうほとんど地面をエルメがよたよた移動している。忘れそうになるが ここは魔瘴噴出孔の密集地帯なのだ。巨大な竜が放った衝撃波によって この周辺は一時的に無力化されているとはいえ、いつ噴出が始まるかわからない。見上げれば 瘴気の裂け目は細い線になっていた。
カレリスの爪にルクスの鞍を引っ掛けてエルメを補助しながら上昇した。風に煽られその度に体勢を崩すが、カレリスはエルメを離すつもりはないようだ。
「……ス、 ジス! 聞こ……すか?」
「デュランか、無事でよかった」
「それは、……いえ、す…に帰…し……ょう」
空気を裂く音があちこちから鳴り始めた。噴出孔が活動を再開したのだ。周りの瘴気がいっそう増して視界が悪いどころではない。近くにデュラン達が来ているなら一刻も早くルクスを預けたい。正直この様子では うまく砦に戻れても持ち直すのは難しいのではないか。
上昇するにつれ風はどんどん強くなった。ゴウゴウとうなりをあげてジスの聴覚を奪い、カレリスの翼をへし折る勢いで襲い掛かってくる。糸のようになってしまった瘴気の裂け目から差すわずかな光を頼りに ジスは夢中で竜を駆った。
「あっ! カレリス!」
横から叩きつけてきた ひときわ強い突風に翼をとられてしまった。
あとは物みたいに落下するだけとなったそのとき、黒い澱となった魔瘴の中に 光の粒がゆらゆら漂っているのが見えた。
( ――精霊だ )
それは先導するような、思わせぶりな動きだった。
ジスは手綱をぐっと掴んで障壁をかけ直した。帰還で使う魔力のことはもう考えない。翼にやさしい風を選んでカレリスの体勢を整えさせ、つながってるかも不明な通信機で連絡した。
「5人共 帰還しろ! ルクスはまだ無事だ」
「…… ………」
つながってるのかもしれないが 激しい風の音に遮られ 全く聞き取れない。
「信じられないかもしれねえが精霊を見た」
「ジ……… …… …
「デュラン、砦で待っててくれ」
そこら中から噴き出す魔瘴の中を、吹き荒れる風の間を縫って進んだ。ジスの少し先を行く光の粒たちは集まったり離れたり、ときに急かし、ジス達をどこかへ案内しているようだった。今いる場所も方向も、どこをどう進んでいるのかもわからなかったがとにかく見失うわけにはいかない。必死になってついて行った。
急に風が止まった。あれだけの荒れようが嘘みたいに静かで、空気も澄んでいる。そしてさらに驚愕したことに、
( 家だ )
明かりがひとつ灯っていたのが、また一段と明るくなった。多分、人が住んでいるのだ。
こんなところに人が住んでいるとは考えもしなかったし、どんな人がこんなところに住んでるのか想像もつかない。親切な人であることを心から祈りながら ジスはその家の扉を叩いた。
「夜分に悪いが、中に入れてもらえないか。怪我人がいるんだ」
出来るだけ騎士らしく、丁寧な言葉を意識して声をかけたのだった。
(風が出てきた)
北からの冷たい風が澱となった瘴気を巻き上げるので、かなり上の方を飛行していても汚染が激しい。雲のようになって浮遊している魔瘴を巧みに避けながら辺りの様子を抜け目なく観察する。
「そろそろシエカート公爵領が見えてきますよ」
「ルートからだいぶ離れてんな…… ルクスが自分でここまで来たとは思えないんだが」
「一応、騎士ですからその辺は弁えている……はずです。エルメだけが来たにしても妙ですね」
「デュラン、ここで待機してくれ。通信機の範囲で様子を見てくる。
何かあったら他の奴に位置を伝えて応援頼む」
「気を付けて」
ジスは更に速度を上げてカレリスに促されるまま竜を駆った。この見知らぬ領域に入ってからというもの、いくら夜とはいえ魔瘴の濃度が高すぎる。ルクスが気づいた異常は魔瘴噴出孔かもしれない。
(素直に報告しとけってんだ!)
滅多に目にすることはないのだが、噴出孔は 開いたり閉じたりするため時間が経つと移動する。その移動に巻き込まれたのならエルメはすでに魔化を起こしているし、ルクスの命もないだろう。だがカレリスの様子からして まだ間に合うような希望が見えた。
空は一層冷え込み、冷たい雲が身体を濡らすそばから凍っていく。手綱を取っていたジスは カレリスが高度を落とす体制に入るのを悟って姿勢を低くした。
(……何だ?)
足元に迫り来る黒い森をじっと目を凝らして観察すると、瘴気を多分に含んで立ち込めている靄が 風に煽られ所どころ薄くなったり濃くなったりと忙しない。靄の中にうっすらと見える木々の影と思しきものが ざわざわと揺れながら少しずつ移動しているように見えた。
(森が動いてる?いや…… ――噴出孔か!)
木々が枝を伸ばすように、噴出した瘴気がいくつもの筋となって地面と厚い魔瘴の層をつないでいた。森のように見えていた黒い塊は そこら中にできた噴出孔から渦を巻いて噴き上がる魔瘴の塊だったのだ。カレリスの身体が魔力に包まれ白く光った。止まる気はないらしい。重ね掛けした障壁に治癒効果を追加してジスはカレリスの意思を尊重した。
ガパリと口を開いたカレリスは咆哮を上げて纏った魔力を放出した。放たれた竜の魔力はその勢いも凄まじく、咆哮とともに熱量を増大させ 太い光線になって一直線に魔瘴の層を切り裂いた。周辺の瘴気を消し飛ばし出来た裂け目から はっきりと中の様子を見ることが出来る。
このあたりはごつごつとした岩石地帯で木らしい木はほぼないようだ。苔に覆われた大地が時折 固そうな岩肌をさらしている。地面から突き出たいくつもの細長い――といっても両腕を広げたくらいの幅がある――象牙色をした岩が苔と蔦に巻かれ、ゆるい曲線を描きながら空へ伸びていた。岩と砂で出来た地面が激しい衝撃波によって噴出孔ごと抉り取られ、この裂け目周辺だけならしばらくは捜索できそうだった。
「デュラン、噴出孔だ。多すぎて巣 みたいになってっぞ。
カレリスが無力化させたとこを今のうちに捜索する。位置は……」
「わかります、先ほど見えました。
ここをシーグルに引き継いで俺もそちらに向かいます」
「よろしく」
ジスは速度を落として注意深く様子を探った。かなりの魔力を消費してカレリスが作ってくれた裂け目の淵はじわじわと狭まり始めている。あまり時間をかけられない。周りを明るく照らしながら、時折警笛を鳴らし応えを待ってみるも静かなもので、聞こえるのはあちこちから瘴気が噴出する音だけだ。
(妙だな)
カレリスの示すままにここまで来た。探している同胞の近くまで来たのなら普通は竜同士 鳴き声で連絡を取り合うはずだ。もしかしたら鳴き声の圏内にいないのかもしれない。そうでなければすでに手遅れか……
「いや、手遅れならあんな魔力の使い方しない」
一旦 上の方に出てみれば何か見えてくるかもな、と 手綱を絞って上昇した。
厚い魔瘴の層の上で 風はさらに激しくなっていた。濁った生ぬるい空気から解放されたジスは、ゆっくりと息を吐きながら 大きく開いた裂け目を見下ろす。そんなふうに眺めてみれば なんとも奇妙な場所だった。
まず、この辺りに木らしい木がないのは確かだがそれはほんの一部であること。大きく成長した様々な種類の樹木が ここ一帯――岩石地帯の周りを縁取るように茂っているため、ここはまるで 大森林の中にぽっかりとあいた穴だ。何らかの原因があって ここ一帯だけ森の生育が阻まれていたのではないだろうか。さらに注目すべきは岩の形だ。ジスの足元から 裂け目の一番端の方まで視線を巡らせば、土と砂が盛り上がって出来た小高い丘が弧を描くように横たわり、その斜面はトゲのような形をした岩に覆われている。これらの岩はもっと不揃いでも良さそうなものなのに どれも似たような形をしている。しかも大中小と規則正しく分類され、細く尖って突き出た面を外側にして並んでいるのだ。どんな環境にあれば あの形状になるのか ジスにはわからなかった。そして不可解な、地面から生えている細長い岩の群れ。低く飛行している時は気付かなかったが この象牙色の岩は二つで一組のようだ。弧を描く丘に沿って ほぼ等間隔に 二列になって並んでいる。何箇所かの二つの岩が曲線を描きながらつながった状態で残っていることから 元々はアーチのようになっていたと思われる。
(なん……か、既視感あるな。 何だ?)
「ジス、合流します」
通信機からの声で思考が霧散したジスは 遠目にデュランの姿を確認すると片手を上げた。先ほどから感じる違和感を一つずつ片付けようと しばらく二人で並走しながら様子を探ることにした。
「この岩は遺跡とかそういう……人工物に見えるか?」
「人工物にしては装飾もないし雑……っと、タリヤ、どうしたんです?」
ここに来てから デュランの竜――タリヤの様子がおかしい。どこかソワソワと落ち着かず、デュランの制御を聞かずに上昇しようとする。なんとなく及び腰だ。カレリスは何か感じるものがあるのか、困惑した様子で 地面から細長く突き出た岩の間を行ったり来たりを繰り返す。
「ここに何かあるのかもしれませんね。降りて様子を見てきます」
「だめだ」
「瘴気が濃くなってます。裂け目が閉じる前に出来ることはしておかないと」
確かにそうなのだが。デュランを行かせるのは酷く胸が騒いだ。
「俺が行く」
数時間ぶりに着地した地面は固かった。そこら中に生えている草の丈は意外と高く ジスの腰辺りまで伸びているものもある。苔で覆われた岩は気を抜くと滑るので、慎重に進もうと気合を入れたところで ふと思う。
(岩だよな?)
何か間違っている気がしたのだ。
ジスはしゃがんで苔をはがし、岩肌を撫でさすって感触を確かめた。初めはひやりとしていた岩は手袋を外し直に触れれば ジスの掌の体温を吸ってぬるく熱を持った。
「ジス!何か異常でも?」
「いや、気のせいだった!」
小高い丘の上、弧を描く丘に沿って突き出た 苔と蔦が絡む細長い岩の前に立ったジスは しげしげとそれを見上げた。ほんのりと黄色がかった バタークリームの色をしたその岩は、様々な濃さの緑とよく映えて美しい。振り返ると、ヒョコヒョコ後ろを着いてきていたカレリスが不安げにこちらを見ていた。
「エルメの気配はわかるか? 何か察したからここまで来たんだろ?」
そう言うとカレリスはビクリと身体を震わせ両翼をすくめて俯いた。
「えっ 責めてるわけじゃなくてだな、 …… 何だ!?」
予想外に恐怖の反応をされて動揺したのも束の間、地面がグラグラと揺れたかと思うと、小高い丘は獣が起き上がるように ボロボロと土砂を落として高く盛り上がっていく。あまりのことにジスの反応が少し遅れた。一瞬で足元が崩れ 空中に放り出されたジスは 真っ逆さまに落下した。小高い丘を成していた土と砂は、斜面を覆うトゲのような岩と 象牙色をした岩の群れを残して流れ落ちていく。魔法で自身に障壁を巡らせ 落下しながらその様子を見ていたジスは、元はアーチ状だったと思われる岩列の正体を悟った。
(骨だ。 それも、竜の……!)
土砂が崩れ落ちたあとに現れた脊椎の列、肋骨の多さから、この巨大な骨の持ち主が 竜であることを確信した。魔力を纏ったカレリスが 降り注ぐ土砂を縫って真っ直ぐにこちらへと向かってくる。ここで土砂に巻き込まれてはひとたまりもない。立ち込める砂埃で視界も悪かった。ジスは警笛を鳴らして より明確に位置を示した。
カレリスは翼の動きを最小限に抑え 速度を緩めて接近した。ジスが腕をのばして鞍のベルト部分をつかんだ時だった。
ィィィ…… フィ…… ィィィィ……
「―― ルクス!!」
轟音を立てながら崩れ流れていく土砂の中でも 警笛のかすれた高い音が途切れがちに鳴るのをジスは聞き逃さなかった。素早く竜の背に騎乗し体勢を立て直すと 全神経を傾けて音の発生源を探した。落ちてくる土砂を避けながら高度を上下させ、細い音を頼りに進むとこの巨大な竜のちょうど腹の中、太い胴椎と肋骨の間にかろうじて残っていた土の上でエルメが魔力を纏ってルクスを守るように覆いかぶさり蹲っている。
「エルメ!飛べるか!?」
ジスが叫ぶと同時にカレリスが甲高い鳴き声を上げ、急激に加速して骨と骨の間へ入り込んだ。隆起する振動が ルクス達のいた場所を跡形もなく払い落としてしまった。土砂に紛れて落ちるルクスをなんとか回収したジスはエルメの姿を探した。ふらふらと飛行する影を目ざとく見つけてほっと息を吐く。長い間ルクスをかばっていたのだろう、いつ魔化を起こしてもおかしくないほど瘴気に蝕まれている。ジスはエルメに治癒魔法をかけるために追いかけた。焼け石に水だがしないよりはマシだ。
「デュラン、ルクスを回収した。エルメもまだ飛べる」
「ジス!無事ですね。ほかの4人を呼んでます。
ルクスは……砦まで耐えられそうですか?」
「ギリギリかもしれねえ」
「そこで何が起きているんですか?ここからだと状況が全くわからない」
「俺もわかんねえ。ただ ……い竜…… ……の…
急に通信が途切れ始めた。
「ジス?」
「…… …… ――魔化だ!」
「エルメが!?」
「い… エ…メじゃ… て別… ……… !」
シュゴッ と、破裂音が通信機から響いた。
「ジス! 返事を ……!?」
突然、ドンッという轟音が腹の底を揺さぶった。次の瞬間、凄まじい衝撃波が幾重にもなって押し寄せ 視界を塞いでいた土埃と瘴気の靄を吹き飛ばし、草木を無理やり剥がして去っていった。
とっさに障壁を重ねて 受ける衝撃を緩めたとはいえ、デュランが先程までいた位置から結構な距離を強引に押しやられてしまった。顔を上げると ここ一帯の森林を遠くの方まで見渡すことが出来る。いまだ地響きを上げて隆起している巨大な塊が次第にその輪郭を明確にしていく。
星明りの差す空に影絵のように黒々と描かれたのは巨大な竜の姿だった。
「デュラン! 今どーなってんの!?」
シーグルとリッタがデュランを見つけて近づいた。アトラトとフランジも合流している。
「ルクスを確保しました。……ジスが」
「それでジスはぁ…… … どこに」
「…………」
デュランが無言で指した方に4人は顔を向けた。
「魔化が起きている、と」
所どころ肉を失い骨を剥き出しにした巨大な竜が 身体から魔瘴を噴き出しながら、ゆっくりと頭をもたげ 咆哮を上げた。
******
激しい衝撃波を巨大な竜の腹に入って凌いだジス達は 一気に噴き出た魔瘴の奔流にのまれて位置を見失っていた。
気絶しているルクスに無理やり治癒薬を飲ませ 落とさないよう自分と括り付けて固定したあと、ふらふらと飛行するエルメに障壁をかけた。カレリスをゆっくり飛行させて先導すると のろのろとついてくる。ジスは頻繁に振り返ってエルメの様子を確認した。上下左右を濃い魔瘴に巻かれ、ほんの少し距離が開いただけでも はぐれてしまいそうだった。容赦ない風が叩きつけるように吹く中を慎重に進んだ。
濃い魔力が巨大な竜の身体に集中するのがわかった。
(――来る!)
上空が白く光った直後、強烈な熱量を持った魔力の塊が落雷のようになってジス達に襲いかかった。それををギリギリで躱して次の襲撃に備える。いくつもの魔力の光線に執拗に襲われ、神経がすり減っていく。
「クソッ!」
ルクスの状態も悪いがエルメも瀕死だ。エルメがこの攻撃を避けきれるか気が気でなかった。帰還する道のりであてられる瘴気の量を考えると 障壁に使う魔力量を切り詰めても砦まで帰還できるかわからない。せめてほかの5人と合流してルクスとエルメを預けたかった。
空気を裂くような細い音が次第に大きくなって近づいてくる。何か……たぶん竜の尾がこちらを薙ぎ払おうと勢いをつけて襲来しているのだろうが 厚い瘴気に遮られ 視覚は全く頼りにならない。もはや感覚に頼るしかない。ジスはエルメに合図すると カレリスの手綱を絞って上昇し、すんでのところで躱した。
空をきった竜の尾は 土産とばかりに突風を起こし、カレリスとエルメの翼を煽ってバランスを崩させた。なんとか体勢を立て直し顔を上げると、すぐそこに 巨大な竜の顔があった。ギョロリとした眼は沼のように濁っていたが、ジスと目が合った一瞬、知性の光を灯したように見えた。竜の身体は先程の 勢いをつけた動きに耐え切れず、腐臭を放つ自身の肉をボトボトと落としている。
オオオ…… ォォオオオ……
(鳴き声、か……?)
風の音かもしれないが、その音色はジスの心をざわつかせた。それに呼応するようにカレリスとエルメが悲しげに鳴き声を上げた。
骨と腐肉の塊が地響きを上げて落ちていく。胸部の肉が剥がれ 心臓が露わになったところで、ジスはカレリスを加速させ 勢いをつけて剣で突き刺した。どくどくと脈打っていた心臓は放射状に強い光を放ったあと急速に結晶化して、きらきら輝きながらゆっくりと落ちていった。巨大な竜の身体はボロボロと崩れていった。
ジスは、魔瘴に巻かれて位置を見失ってる現在の状況を思い出した。あまり魔力を使いたくないが、脱出するためには、上を塞いでいる魔瘴が薄くなってるところを探して確実に切り取らなければならない。しかも落下物を増やしてしまった。思わず振り返ってエルメの姿を確認した。飛び方は覚束ないが ちゃんとついてきている。大量の魔瘴噴出孔が吐き出す瘴気の中でルクスを守ってくれていたのだ。見捨てて行きたくなかった。
「よしよし、その調子でついて来いよ」
先導していたジスに影が差した。大きな脊椎の一部が崩れ こちらに降りかかってきているのだ。
「エルメ 避けろ!」
――避けられそうにない
その時、魔力で出来た風が ジス達の頭上のものを吹き飛ばした。上空を覆っていた魔瘴が鋭角の扇状に裂けているので そこから脱出すれば合流できる。カレリス達の鳴き声で タリヤが大体の位置を把握してくれたのかもしれない。
ガクン とエルメがバランスを崩した。
かなり下方に落ち込んでしまったエルメを追ってジス達も下降した。もうほとんど地面をエルメがよたよた移動している。忘れそうになるが ここは魔瘴噴出孔の密集地帯なのだ。巨大な竜が放った衝撃波によって この周辺は一時的に無力化されているとはいえ、いつ噴出が始まるかわからない。見上げれば 瘴気の裂け目は細い線になっていた。
カレリスの爪にルクスの鞍を引っ掛けてエルメを補助しながら上昇した。風に煽られその度に体勢を崩すが、カレリスはエルメを離すつもりはないようだ。
「……ス、 ジス! 聞こ……すか?」
「デュランか、無事でよかった」
「それは、……いえ、す…に帰…し……ょう」
空気を裂く音があちこちから鳴り始めた。噴出孔が活動を再開したのだ。周りの瘴気がいっそう増して視界が悪いどころではない。近くにデュラン達が来ているなら一刻も早くルクスを預けたい。正直この様子では うまく砦に戻れても持ち直すのは難しいのではないか。
上昇するにつれ風はどんどん強くなった。ゴウゴウとうなりをあげてジスの聴覚を奪い、カレリスの翼をへし折る勢いで襲い掛かってくる。糸のようになってしまった瘴気の裂け目から差すわずかな光を頼りに ジスは夢中で竜を駆った。
「あっ! カレリス!」
横から叩きつけてきた ひときわ強い突風に翼をとられてしまった。
あとは物みたいに落下するだけとなったそのとき、黒い澱となった魔瘴の中に 光の粒がゆらゆら漂っているのが見えた。
( ――精霊だ )
それは先導するような、思わせぶりな動きだった。
ジスは手綱をぐっと掴んで障壁をかけ直した。帰還で使う魔力のことはもう考えない。翼にやさしい風を選んでカレリスの体勢を整えさせ、つながってるかも不明な通信機で連絡した。
「5人共 帰還しろ! ルクスはまだ無事だ」
「…… ………」
つながってるのかもしれないが 激しい風の音に遮られ 全く聞き取れない。
「信じられないかもしれねえが精霊を見た」
「ジ……… …… …
「デュラン、砦で待っててくれ」
そこら中から噴き出す魔瘴の中を、吹き荒れる風の間を縫って進んだ。ジスの少し先を行く光の粒たちは集まったり離れたり、ときに急かし、ジス達をどこかへ案内しているようだった。今いる場所も方向も、どこをどう進んでいるのかもわからなかったがとにかく見失うわけにはいかない。必死になってついて行った。
急に風が止まった。あれだけの荒れようが嘘みたいに静かで、空気も澄んでいる。そしてさらに驚愕したことに、
( 家だ )
明かりがひとつ灯っていたのが、また一段と明るくなった。多分、人が住んでいるのだ。
こんなところに人が住んでいるとは考えもしなかったし、どんな人がこんなところに住んでるのか想像もつかない。親切な人であることを心から祈りながら ジスはその家の扉を叩いた。
「夜分に悪いが、中に入れてもらえないか。怪我人がいるんだ」
出来るだけ騎士らしく、丁寧な言葉を意識して声をかけたのだった。
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