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高校生編

10.対チノヒルズ高校 【3】

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 ピピーっ。

 審判が笛を吹く。ペトラが悪質なファールをした。

 どんなファールかと言うと、速攻で走ってレイアップもしくはダンクをしようとしている選手を後ろから引っ張るなどという、下手したら大怪我をして一生不自由な身体になるかもしれない様なくらい危ない行為だ。

 ペトラにパーソナルファールが吹かれた。

 「おい!今のはなんだ?!危ねぇだろ!やっていい事とやっちゃいけないことがあんのがワカンねぇのかテメェ?!」

 ザイオンがペトラに詰め寄った。親友の剛が相手のラフプレーにあったのを見て冷静ではいられない。もしかしたら剛が2度とバスケ出来なくなると想像しただけで、どれほど悲しい出来事か。想像もしたくなかった。

 「チッ」

 ペトラが忌々しそうに舌打ちをする。

 「おい、聞いてんのかテメェ?!あ”あ“?」

 ザイオンはペトラのユニフォームの襟元を掴むが、審判と両チームの団員によって二人の間に距離を取らされた。

 「ちょっと、あなたいい加減にしなさいよね!それでもし剛が大怪我してたら許さないんだから!」

 エレナも随分フラストレーションが溜まっていた。剛のことがとても大事なエレナにとって先程に起こったいくつかのラフプレーに対してもし怪我したらと心配も兼ねて「あいつはなんなんだ?」と何を目的でそんなことしているのが分からなくてそれが原因でフラストレーションが溜まっていた。

 そんなエレナをクールダウンさせるべく、剛とグレン部長が彼女もペトラから遠ざけた。

 剛は自分の身体を動かしてエレナに怪我してないよアピールをする。

 「ほら、試合にファールはつきものでしょうがないじゃん?それに僕も大丈夫だから、もう落ち着いて、ね?」

 剛がそう言うとエレナは。

 「あなたがそう言うんなら分かったわよ。でも本当に気をつけてね。ああ言うのは一回懲らしめてやらないとッ。」

 エレナはまだ興奮したままだった。

 「調子に乗るんじゃねぇぞ…」

 ペトラはそんな言葉を吐き捨てた。

 そして5回ファールをした事により、彼は退場となった。彼はユニフォームを脱ぎ捨てて体育館から出ていった。

 「難は去りましたね…」

 そんなことを誰かが言った。その言葉はいかに彼が目に上のたんこぶだったのがわかる。

 そして何事もなかったかの様に試合が始まる。

 そして残り数秒だった試合も終わり、スコアは51-45で終わった。

 前半終了間際に、ラメロ君が自陣の方から時間が少ないため、ボールを貰ってすぐオールコートシュートを決めたのだ。

 流石に凄すぎるから敵味方誰もが「おお」と感嘆の声を上げて拍手をした。そもそも普通は決まらない様なすごく難しいシュートなのだ。

 「流石だな、ラメロ。」

 「ああ、ありがとう。」

 前半が終わったのを知らせるブザーが鳴った後、チームメイトとハイタッチをしていた。

 そして第3クォーターが始まる。

***
 「あれ?部長ってエレナと兄妹の関係だったんですか?」

 剛はそんな疑問をグレンにぶつけた。

 「ああ、そうだな。知らなかったか?」

 「ええ、初耳ですよ?でもどうして一緒に住んでないんですか?」

 それを聞くとグレンは答えづらそうにしていた。

 「まぁ…なんだ。あれだよ、私は実の父に養子に出されたんだよ。君も会ったことはあるだろう?父の兄が不妊の原因らしくて叔父夫婦に子供が出来なくてね…仕事上と言うか、うちの家系上でどうしても跡継ぎが必要でしかも跡継ぎが養子の場合、親族の誰かから子供を回さなきゃいけない事になってるんだ…さっき言ったステイシアムの血が入っていなきゃ跡継ぎとして認められないから私がね。」

 とても複雑な家庭状況だなと剛は自分で聞いといて他人事みたいにしていた。

 「ほんとは妹を養子にしようとしてたらしいんだけどね、妹は当時小さくて親と別れたくないって泣いていたよ。当然私も両親とは別れたくなかったが、そんな妹の姿を見てたらいつの間にか自分が養子になるよって言っていてね。それのこともあってかエレナが自分のせいで私が養子になる事になったって責任を感じていて顔を合わしても挨拶したらすぐどこかへ行ったり気まずい雰囲気になったんだ。」

 グレンは身の上の話を終えると、手に持っていたボトルの水を一口飲んで立ち上がった。

 「すまないね、こんな思い話をしちゃって。後半もあるんだしその調子でがんばれよッ。」

 そう言ってグレンは剛の背中を叩いた。
***
 ブーッ。

 相手のエンドラインからボールがラメロ君に渡される。

 渡されたのと同時に時間をカウントするパネルの数字も動き出した。1秒、また1秒と時間は減っていく。

 そこから相手の攻撃が止まらなかった。いつのまにか同点の54-54になっていて、そこからはシーソーゲーム的な感じだった。

 得点をするとすぐ誰かが速攻に走ってまた得点をするみたいな感じだ。

 ラメロ君のパスがゴール下で待っていた味方へ通りイージーなスタンディングダンク。そこからグレン部長が速攻に走り、ガリナリ先輩がエンドラインからの正確な遠距離スローインが部長の手に渡り部長がユーローステップで相手を交わしてのレイアップ。

 そこで速攻へ走った剛達が自陣ゴールへまだ戻りきれていないまま、ラメロ君がエンドラインからボールを受け取りゴール下へパスしてまたイージーダンクをかまされたり。

 今度は速攻で右コーナーで待機していた剛へグレン部長がパスをしてスリーが決まるなど。

 一進一退の攻防戦となっていた。

 そのまま試合の得点は広がりもせず勝負の行方が分からない様な試合となった。そんな感じで第3クォーターが終わるのを伝えるブザーが鳴った。

 得点は73-73、どちらかがリードを取った訳でもない。もしリードを取ったとしてもすぐに同点にされていた。

 次が最後のクォーターとなった。

***
 「ああ、それで頼むよ。ああ、今回の女は上玉だ。ビデオカメラを忘れんなよ。」

 男は電話を終えると、一人で不気味に笑って何かぶつぶつ言っていた。

 「くくく…あいつら今に見てろよ。特にあのアジア人とそれにぴったりくっついてるあの生意気な女ぁぁ…絶対犯してやんよ…俺様に恥をかかせたことを後悔しなァッ!!!」

 そう言いながら彼はどこかへ向かって行った。その行動が自滅を及ぼすのも知らずに。



 
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