NBAを目指す日本人

らんしゅすてるべんしょん

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高校生編

4.入部

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 家へ帰って、シャワー浴びてから学校へ行く支度をしていたら家のチャイムが鳴った。

 親も多分まだ寝てるだろうから、自分が見に行くしかないなと思ってドアを開けると、エレナが手を振ってニコニコしていた。

 「おはよーございまーす!」

 そして剛は開けたドアを閉めようとしだが、阻まれた。

 「ちょっとッ、どうして閉めるのよ?!こんな綺麗な美少女が一緒に学校行こうって誘いに来たのにその対応は冷たくない?!」

 何言ってるんだこいつは、という顔は剛はしたが美少女と言う点は否定できない。事実だからだ。

 「自分で自分のこと美少女とか言うやつは、ロクでもないに決まっている。」

 剛は悪態をつくが、相手は聞く耳を持たないのかぷりぷりとまだ文句を言って怒っている。

 「まぁいいわ、早く準備して、学校に行くわよ」

 剛がとても疑問に思ったようで、面倒臭そうな顔で。

 「なんで一緒に行く必要が……あ、はい、わかりましたすぐに準備してきます。」

 「よろしいッ」

 ところがエレナの無言の圧力をしてきたので、剛は反抗を続けるのは愚作だと思い従った。なぜ従ったかというと、彼は女を怒らせると怖い目に合うと知っている。

 現に剛の母が代表的な例となっている。綺麗な人の無言ほど恐ろしいものはないと知っていた。

 剛は急いで支度を済ませて、家から出ると「じゃあ行こっか」といい、二人で登校をした。

***

 そして学校へ着くと自分のクラスへと向かう。エレナも同じクラスだから当然のように二人で一緒に自分達のクラスへと向かった。

 しかし何か視線を感じた。

 「おい誰だあいつ、エレナさんと一緒に登校してきたぞ。」

 「見た感じアジア人っぽいな…」

 「顔は全然パッとしないぞ、なんであんなやつなんかと…」

 「髪長くて顔がよく見えない、きっとロクな顔をしてないから髪の毛で誤魔化してるんだ。」

 なんかコソコソ喋っている人達のお陰でそういえば髪を切らなくては、と剛は思い出した。それにしても失礼な奴らだと剛は思っていた。

 するとそこに見知った顔があった。ザイオンだ。

 彼も剛に気づいたのか、談笑していたのをやめて剛の元へ向かう。

 「またあったね剛!まさか同じクラスだったとは!」

 「そうだね、僕もびっくりしたよ。」

 そうしていると、ザイオンの後ろから声がした。多分さっきまで一緒にいた友達だろう。

 「やぁ、始めましてこれ僕はクリス。ザイオンとは中学校からの付き合いだ。よろしく。」

 そう言ってハンドシェイクを求めてきた。剛はそれに応えて挨拶した。

 「僕は剛です、よろしくお願いします。」

 「ザイオンから聞いたよ、今日の朝彼をボコボコにしたんだって?中々やるじゃん!君も部活入る?」

 クリスはとても興奮した様子で聞いてきた。だがやはり彼も身長がとても高い。ザイオンほどではないが剛が自分はチビだと自覚できるくらい高かった。

 「うん、そのつもりだよ。」

 「じゃあ君も僕のライバルだね!よろしく!」

 そんな感じにワイワイしていると後ろから声がした。

 「ちょっと、みんなして私の存在を忘れてないかしら?わざと?」

 エレナがとても不満ですとわからせるように顔をして頬を膨らませていた。

 「こんにちはエレナさん、わざと無視してた訳じゃないけど、声かけていいかどうかわからなかったんだ。ごめんね」

 クリスだけじゃなくザイオンもなんか畏ったように挨拶をしたため、剛は違和感を覚えたが特に気になるわけではないのでそのままほっとくことにした。

 「はい、よろしくね。これからうちの剛をよろしくね。」

 ん?と剛は不審に思った。そこでこっそりエレナに聞いた。

 「おい、“うちの”ってなんだ?」

 エレナに聞いたが、彼女はこっちが何言ってるんだ?みたいな顔でこういった。

 「なんだ?ってそのままの意味よ。あなたはもう私の家族だから。」

 「家族…?」

 「あら、聞いてなかったっけ?昨日お父様が言ってなかった?私とあなたを結婚させるって?だから今は婚約者よ私達。」

 剛は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

 「それに私も個人的にあなたに興味があったし、あなたも私みたいな美少女を婚約者にできるって、ウィンウィンじゃないの?これからよろしくね、“未来の旦那様…♡“」

 そんな風に剛の耳元で彼女は囁いた。思わず剛はそれにゾクッとして身体を震わせたが、それでもイマイチ状況を飲み込めない。俺はそんな話知らないぞという顔をしていた。

 「一応予定だから、まだ公開もしないんだし互いのことを知っていきましょう。それにどういうことかこれから分かるし。その時まで待っててね。」

 「なんだそれ?」

 剛は思わず聞き返すが、エレナは悪戯っぽくウィンクをして人差し指を自分の口元に当てた。

 納得いかないが、彼女からこれ以上有意義な情報は引き出せないと思ったのか家に帰ってから両親を問い詰める事にした。

 




 「おい誰だあいつは?エレナさんととても仲良さそうだったぞ?」

 「く、俺は認めないからな…エレナは俺のだ。」

 「何言ってんだ?お前なんかエレナさんが相手にする訳ないだろ。」

 「あいつが出来るなら俺にだって出来る。今に見てろよ。」




 何やら彼らの知らないところで不穏な雰囲気があったが、当の本人達がそれを知るのはこれから先のことだ。


***

 放課後、剛はザイオンとクリスと一緒にバスケットボールのサークルへ向かっていた。そこに何故かエレナもついて来ていた。

 「なんでエレナがついてきてるんだ?」

 剛が不思議そうに聞くと、エレナが得意げに言った。

 「それはもちろんこのエレナさんが剛専属のマネージャーになるためについて来ているのさ!」

 彼女は胸を張って言った。だがそれは余りにも刺激的なほどのもので気恥ずかしさ故かザイオンとクリスは目を少しばかり逸らした。

 「ところでエレナさんは剛とどんな関係なの?」

 何故か今日剛が自分以外の人の口からエレナの名前を呼ぶ時呼び捨てにする人がいなくて必ず“さん”をつけていた。中には“様”付けもいたので剛はすごく気になっていた。

 「よくぞ聞いてくれました!剛は私の恋人です!」

 「「「はぁぁぁ?!」」」

 見事に3人の声がハモった。

 ザイオンとクリスはあまりの衝撃に口をパクパクさせていた。

 剛はエレナに近づき聞いた。

 「お前意味わかんねぇよ、今日いきなり謎に婚約者とかもだけど恋人になった覚えすらねぇよ。それに秘密にするんじゃなかったのか?」


 エレナは悪戯っぽく笑って囁く。

 「別に“婚約者”だなんて言ってないでしょ?そ・れ・に・これから悪い虫が付かないようにお姉さんが唾付けとかなくちゃねっ♡」

 エレナはそのまま剛の耳に息を吹きかけた。あまり突然の事に剛はビクっとしてついて思考を放棄しようと考えた。

 「と、ところでどっちから告白したんですかっ?!」

 クリスは息を荒くして聞いた。

 「もちろん、剛からよっ。しょーがないから付き合ってあげたわっ」

 「おい、デタラメ言うんじゃ…」

 剛は否定しようとしたがエレナが手に持っていたものに気づいた。剛の家の鍵だ。今日は確か両親がどっちも出張で誰も家にいない…

 「はい…そうです…私から告白しました…」

 剛は彼女の話に乗るしかなかった。


***

 体育館へ行くとそこには入部希望生が沢山いた。そして気がつくと部長らしき人が手を叩いた。

 さすがスパルタンバークと呼ぶべきか、高校バスケの名門校と呼ばれるだけあって、筋力トレーニングのための施設もあるし、体育館もとても広い。バスケットコート何面あるんだ?と言うくらい広かった。そしてやはり人数も多い。


 「よし、これで入部希望生は全員か?私はこの部活の部長を勤めているグレン・グリーンだ。じゃあ、これからやる事を言うぞ。まず最初に言うがここの練習はとてもハードだ。残念だがついて来られないものに情けを掛けている時間はない。ここ数年何代か前の先輩方が優勝まであと一歩で負けまくっている。我々は彼らの意思を無駄にしない…」

 こんな感じに部長が演説をしている。それにしても長いなと剛は思っていた。

 《おいおい、遂に部長(生徒)まで校長は話がとにかく長いの病気にかかっちまったのか?》


 そんなことを思っていると、周りからヒソヒソと笑い声が聞こえた。

 「おい、あそこにアジア人がいるぜ」

 「しかもチビの癖によく来たな」

 「全くだ、どうせ数日後、いや数分後には自分の能力の無さに気づいて居なくなっていると言うのによ…」

 結構失礼な野郎達がいるとそのくらいにしか剛は思っていなかった。

 そして説明が終わってから軽くドリブルやシュート、レイアップなどの簡単な練習をさせられていた。

 そして簡単な練習が終わると部長がまた全員を集合させた。

 「よし、これからお前達の実力を見させて貰うためにミニゲームをやらせてもらう。自分達でチームを作って集まれ。出来るだけ1チーム5人にしろ。それからまた説明する。」

 そう言って俺たちは3人は互いを見て頷いた。ポジション的に剛がガードをできるとして、クリスはフォワード、ザイオンはフォワードとセンターって感じだ。

 あとは二人適当に集めなきゃと思っていると2人で揃っている人達がいたので声をかけた。

 「おーい、そっちは2人だけか?丁度俺ら3人なんだ一緒に組まないか?」

 ザイオンはそうやって声を掛けると相手がこっちを見て笑った。

 「ふっ、アジア人じゃねぇかそんな奴と組むくらいなら俺ら二人でやった方がマシだ。行こうぜ。」

 「ああ」

 ザイオンとクリスが申し訳なさそうにしてた。

 「すまん、でも俺たちはそんなこと思ってないから。むしろ俺はお前を認めている。」

 やはりここは人種差別をする人はいる。基本的に余りないけどやはりする人はするみたいだ。

 「いや、大丈夫だよ。僕は気にしてないし。」

 二人は申し訳なさそうな顔をまだしていた。

 「ま、そんなことより。早くチームメイトを見つけないとねっ」

 「あ、ああ」

 そしてすぐに見つかった。

 「よろしく~、ダリアだ」

 「よろしく、俺はアレクサンダーだ」

 ダリアとアレクサンダーは二人ともやはり体格がよく身長が高い。

 ダリアがフォワードやガードをこなせるらしいし、アレクサンダーはセンターしかできないそうだ。

 そうしていると一人だけ誰とも組めずにいた人がいた。

 「なぁ、あいつどうする?」

 「出来るだけ5人って言ってたからあいつも誘うか。」

 そして剛は「おーい」と先程悪態を吐かれたのかどうか分からないくらい能天気な感じだった。それを見たザイオンとクリスはフッとお互いに笑いハモって言った。

 「「あいつは大物になるな」」
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