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空色フロンティア

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02 お犬様を救出せよ

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 はあ、前回はマジで酷い目にあったぜ。
 ほんとに初日から飛ばしすぎたな。
 今日は和やかにといきたいもんだな。
 結局前の報酬は治療代と、パチンコに全部使ったからな、結局一文なしだ。
 このままじゃまた餓死寸前の状態になる。
 マジで、それだけは本当に勘弁だぜ。
 最近はこの世界でも生活必需品の物価が上がっているからなぁ。
 こっちは何故か金が無いのに。
 おっと、久しぶりのお客さんだ。

「いらっしゃい」

「どうもこんにちは」

 今回は女性だ。
 時期は夏も終わりに差し掛かった事なので、とりあえず今回は業務スーパーで買ったやっすい紅茶を適当に出した。
 
「さて、少しばかり神妙な顔をしているけど、依頼はなにかな」

「一応聞きますけど、此処って何でも引き受けるんですよね?」

「ええ、勿論。たとえどんな依頼でも100%引き受けるのがウチの店のウリなんでね。」

「実は...私の大事なペットがこの前逃げ出してしまってどこに行ったのかぎ分からないので、探して欲しいです。あの子は私な大事な家族で...」

「なるほどね。ちなみにペットはなんですか?」

「犬です」

「犬種は?」

「しば犬です」

「なるほどね。ペットの写真ありますか」

「これです」

 ふーん、なるほど。
 ぱっと見はまあ、何の変哲のないいたって普通のしば犬だろう。
 しかし、よく見てみると、首輪がどう見ても明らかにやばい。
 なんか痛そうなトゲトゲの奴がついてるぞ。
 初めて見たわこんなの。
 しかもしば犬にやる奴いるんかよ。
 こういうのって金持ちがブルドッグにやるものじゃないの?(ど偏見)
 んー、まあ、でも分かりやすい特徴があるほうが見つかりやすいから割と好都合なんだけどな。

「なるほどね。では、契約書作るから少しお待ちを。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
       契約書       

 ペットの捜索を全て当店に任せる。
 代金はきちんと支払う。    
 報酬は後払いで良いが、一切のキャン
 セルは受け付けません。報酬以外のお   
 金は必要ありません。
 報酬金二千五百スコル。






 異世界何でも屋        印
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ご契約内容を確認のうえ、これにサインを」

「わかりました」

「ちなみにペットの犬の名前はなんて言うんです?」

「太郎三世です」

 いや、太郎三世ってル◯ン三世かよ。
 一世、二世はどこにいったんだよ。
 じゃあもし一世がいたらアルセーヌ太郎、になるのかな?まあ、どうでもいいけど。

「どこらへんにお住まいで?」

「メリンドパーク付近です。」

 メリンドパーク...めっちゃくちゃ広いぞ。
 二千五百スコルじゃ足りないくらいだよ。
 まあ、別に良いけど。

「では、メリンドパーク内にいる可能性が高いと...」

「多分そういう事だとおもいます。」

「わかりました、じゃあ早速探しに行ってきまーす。」

「えっ、はやっ」

 俺は愛車のチャリンコに乗った。
 恥ずかしいことに、こんな良い年になってもバイク買う金なかったんだ。
 このチャリはパチンコで大勝ちした時にノリでパチ屋で交換したんだ。
 まあ、少し距離があるから多分あと30分くらいで着くかな?
 ん?なんだ。

「どいて、どいてー」

「えっ、ちょっ、おまっ。」

 急に少女が飛び出してきた。

「ズドーン」

「いってー、」

「くるくるくるくるほわほわほわはわ」

「おい、大丈夫か?」

「はひ、はいひょうふへふ」

「大丈夫そうじゃないな。よし、とりあえず病院行こう」

よく見ると俺のチャリは木っ端微塵になっていた。ヤベェな大事故だよ。俺は少女を担ぎ上げて、病院に運んだ。診てもらったが特に異常はないらしい。少し頭を打ったくらいで軽傷だそうだ。良かったわー、人様を死なせたら嫌だからね。少女は落ち着きを取り戻したそうだ。

「すみません、私がドジなせいで...」

「大丈夫だ、気にする必要はないよ。殆ど俺の不注意でもあるし。」

「いや、でも自転車が...」

「チャリは...確かに木っ端微塵だけどあんなのいつでも買えるよ。」

まるで大丈夫そうに俺は振る舞っているが本心はそうではない。やはりチャリンコが壊れたことが心残りだな。俺ほぼ一文なしだし、今の残金じゃあ、マーブルチョコぐらいしか買えないんだよなあ。

「あの、ちょっと良いですか?」

「なんだ?」

「メールアドレス交換しませんか?」

メールアドレス。アドレス帳には誰一人登録してなかった。理由は単純だ。友達がいないからだ。

「良いよー、俺ボッチだからね」

「わーいありがとう。」

この子が俺の初めてのメール相手となった。やったね。人生どう転ぶかはわからねぇもんだね。うん、うん。って、ヤベェ犬のことすっかり忘れてた。はやく探さないと。俺は少女と少し会話して犬を探しに行った。もっと話したかったなあ。

少しの名残惜しさを残し、俺はメリンドパークに向かった。本来チャリンコで行くはずだったのに、今さっきその手段が失われた。はあ、仕事頑張るかあ。ここは異世界だから色々な交通機関があるんだけど、お金無い。歩くか。俺のような低所得にはこの世界はきついぜ。メリンドパークはこっから10キロ離れてるからなぁ。しんど。

あれから暫く歩きやっと、隣町に着いたぜ。まだ、5キロ残ってるからなあ。いやぁ、金がある時にバイクかっとけばよかった。ん?なんか携帯が鳴っている。どうやらニュースだ。

「新規ニュース。メリンドパーク封鎖中」

「.....はあ、?」

「現在メリンドパークでは大規模な被害が出ています。現在メリンドパークでは治安がかなり悪化していますので近寄らないでください。暴徒化した市民や地元警察が通行人を襲うという事例が発生しておりますので、決して近づかないようにしてください。」

「いや、マジかよー」

「同時にニュースです。同じくメリンドパークで迷子と思われるしば犬を発見しました。首にトゲトゲの首輪をしております。現在メリンドパーク保護センターで保護しています。」

「えっ、犬見つかったのか。探す手間は省けたけどよ、そこまでの道のりが厄介だな。もう隣街まできてしまったしなぁ。引き返せねぇ。まあ、グダグダ言ってもしょうがねぇ。さっさと連れて帰ってやるよ、待ってくれよ、お犬様!!」

俺はやや早歩きで街に向かった。あの街は夜になるとさらにやばくなる。だから昼間のうちにそこに入り、そこから出たい。そしてささっと面倒事を起こさずお犬様を連れて帰るそれが俺のプランだ。

着いたぜぇ。まだ3時位だ。ニュースでは封鎖中と言っていたがまだ普通に開いていた。よーし、ここから保護センターまで、猛ダッシュだ。どんな奴にもかまわねぇ。

「うぉー」

俺は全力疾走をした。案の定治安の悪い所なので絡んでくる奴が続々と現れる。

「おい、おめぇ、金よこせ。」

「あん?俺は一文無しじゃ、オラァー」

「うわー」

俺にぶつかってどっかに吹っ飛んでいった。

「逆に俺が貰いてえよ」

そして、また厄介な奴が来た。もうやだこの街嫌い。

「ああ、やんのかこr...」

「黙れカス野郎、俺は忙しいし、急いでるんだ。」

今度は蹴っ飛ばしてやった。キョトンとしてたからあんまり効いてないんだな。俺の渾身の蹴り。

「よし、着いたぜ」

ここがメリンドパーク保護センターだ。あまり良い噂を聞かないから早めに済ましたいものだ。しかし中に入ったが建物は老朽化し、ボロボロになっていた。一体何年改装工事せずに放置したんだよ。

嫌な予感がし、俺は思いっきり扉をぶっ壊して中に入った。するとそこにはズタボロになったしば犬が横たわっていた。今回依頼された迷犬、太郎三世だ。看守が、

「もう終わりかよ、雑魚犬。お前みたいな下等生物は人間様を喜ばせることが使命だろ。」

と抜かしたこと言いやがった。

「ふざけんじゃねえ。動物の命なんだと思ってんだ。」

「あん?誰だお前。命?俺は物としか見てないけどな。」

「この野郎。お犬様にやった分、倍返しじゃあ」

そう言うと相手の方から攻撃してきた。避けようとしたが難なく攻撃された。なるほどなかなかの強者だな。しかし、俺には1日一回のもう一つの魔法が使えるんだ。その名も「アンドロス」名前は適当だが効果は相手のIQが5秒間だけ3になるんだ。この、5秒が重要だ。相手が無気力になるはず(?)だからその間にそいつに叩き込む。

「アンドロス」

「、、、Qケ?」

「今だ、食いやがれ。」

俺は存分に殴ってやった。そして5秒経った。しかし相手は無傷だ。武道鍛えとけば良かったなあ。

「動物なんてな、所詮はおもちゃだよ、そうさ、おれより弱い生き物全てだよ。所詮周りはカス、ゴミ以下なんだよ。ゴミは焼却されて当然だろ?だっかっらっ俺が利用してやってんだよ。意味わかるか?よーするに頭の悪いお前のようなゴミに説明するとなぁ、そういうことになるぜ。弱肉強食ってやつだぁー。」

「俺はお前の言ってることは何一つわからねぇ。特に口論で反抗する気もねえ。だけどな、一つ反論するなら、どうぶつなめんなぁー、この野郎。おらぁー。根性入ってるかー」

俺は最終手段の頭突きを行った。俺が唯一誇れるのはこの、ダイヤモンド並みに硬い頭だ。これならクルミくらいなら割れるぜ。俺の頭突きはだいぶ効いたらしい。相手が怯んでいるうちに

「逃げろー俺‼︎」

俺は犬を抱えて猛ダッシュした。多分過去一走っただろう。しかし、背後を見れば奴が追いかけてきてる。

「なんでお前はそんなに執念深いんだよ」

「この現状が世間に出回ったら困るからねぇ。そうなる前に君を殺す事に決めたんだよー。あはっはっはっはー、楽しくなってきたなぁ~。追いかけっこなんて何年ぶりだろうなぁー。」

「ほんと、自分の事しか考えてない奴だなお前。俺はお前みたいな奴、大っ嫌いだよ。もうちょっと協調性持とうぜ。お前どうせクラスで浮いてただろ。」

「クラスぅ?なに言っていだお前ぇ」

「そういえばこの世界にクラスという言葉は存在しないんだった。」

もう少しでメリンドパークを抜ける。奴もメリンドパーク外には出られない筈だから大丈夫なはず。しかし、俺はもう少しな所でつまずいて転んでしまった。やばい、絶対絶命だ。このままコイツにやられたら犬もそのまま死ぬ。どうしよう。もう魔法を全て使い尽くしてしまったからな。

その時太郎三世が相手の急所に噛み付いた。そいつはあまりの痛さに泡吹いて倒れた。

「あ"あ"あ"あ"あ亜亜亜亜亜ぁぁぁぁぁ」

「ナイス太郎三世。お前のおかげで助かったぜ。」

俺は太郎のお陰で無事にメリンドパークを出た。助かったー。しかし太郎三世は結構瀕死だ。このままの状態では持ち主に返せないので俺は治療屋に連れて行くことにした。治療屋は昔からお世話になっているからなぁ。とりあえずメリンドパークを出た。もうあんな街懲り懲りだぜ。

暫く走ってすぐ着いた。治療屋だ。

「いらっしゃいだにゃん。よろずやさん。元気だったかにゃん?」

「ああ、元気だよ。それよりコイツを見て欲しいんだ。」

「あー、結構傷ついているにゃんねー。まあ、でも1分ぐらい治療すれば治るにゃん。」

「はは、それは良かった。安心したよ。」

そして1分が経過した。

「治ったにゃん♪。きっともう大丈夫だにゃん。まあ、暫くは安静にしといたほうが良いけどにゃん。」

「ああ、ありがとう。また世話かけてすまんな」

「いやいや、よろずやさんの為なら大丈夫だにゃん♪」

少し治療屋と話をし、感謝して飼い主のところに向かった。すると飼い主がいた。こっちに気づいて太郎三世を抱きしめて泣いた。道中色々あったがとにかく大事な家族が無事で良かった。

「太郎を探していただきありがとうございます。こちらお礼です。」

契約書に書いてあった2倍の金額が入っていた。5000スコル。色々あったから5000スコルでも少ない位だ。ただお金以上に大切なものを感じた気がするな。あー、俺も家族欲しいー。


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