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獲物は反撃を開始する
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彼らの様子を微笑ましそうに見ていたミリウスは、おもむろに切り出す。
「さて、ここは長くは居られないし、また追手が来るだろうから、安全な場所に移動したいよね…………でも、外見がねぇ」
「このままじゃあ、すぐ見付かっちまうよな」
アウインも師に同意した。ミリウスは可愛らしく首を傾げながら思案する。
「ん~……アル君、女装でもする?」
「……え?」
何とミリウスの提案通り、アルは女装する事になった。正確には、全員が魔法で毛色を変えるなどして変装する事になったのである。
魔法をかけたのはアウインだ。スタイリングはミリウスが担当したのだが、それがまたプロ並に凄い。
アウインは金色の短髪になり、黒いローブでは無くスリーピースのスーツを着ている。いかにも魔法使い然としたいつもの風貌とは全く違う。暑がったのでベストだけでジャケットは着ていないが、かなりちゃんとした大人に見える。早苗もうっかりドキッとしてしまうくらい格好いい。
ミリウスは髪の長さはそのままに、焦げ茶色に変え、ハーフアップを止めて一つに結んだ。それだけで随分男性的な印象になる。
金と銀のニ人組は、金髪と銀髪の美少女達だった。金髪の方がセレーナ、銀髪の方がサラと言うらしい。このままでは目立ちまくる事この上無いので、ニ人共髪をミリウスと同じ焦げ茶に変え、サラは短髪にして男装させる事になった。
早苗はと言うと、何故かアルの希望でそのままの黒髪をセミロングに伸ばされ、日焼けを隠す化粧をされ、服装も可愛らしい緑のワンピースを着せられた。
コンコン、扉をノックして声をかける。
「アル? 終わった?」
「……終わったよ」
扉を開けて入ると、化粧道具を片付けるミリウスとベッドに横たわる深窓の美少女……ではなく、女装させられたアルが居た。
アルは早苗と同じ黒髪になっていた。緩くカールした長い髪を白いリボンでサイドアップにして、清楚な白いブラウスに踝くるぶしまである紺のロングスカートを穿いている。
骨格を隠す為ブラウスはふんわりした長袖で、喉仏も襟で隠れる作りだ。少々季節感が合わないが、顔色が悪く病弱そうな外見には違和感が無い。胸には詰め物をしているのか、膨らみまであった。
全ての衣装を調達したのはミリウスだが、一体この短時間でどうやって揃えたのか不思議で仕方無い。
「……うわあ、凄く、凄ぉーく綺麗だねっ」
早苗はベッドに駆け寄る。
「……あんまり嬉しくないけど、ありがとう。君も……馬子にも衣装だね」
「うっ……だよね~似合わないよね、こんな長い髪初めてだし、スカートだって高校の制服以来だし……」
アルの感想に、少し焦ったように言い訳を並べた。
「クスクス……」
ミリウスが笑いながら部屋を後にする。パタリと扉が閉まった。
部屋は早苗とアルのニ人だけだ。アルは彼女の手を取ると、親指で甲を撫でる。
「……冗談、そう言う格好も可愛いよ」
「へ……? わっ!」
そのまま手を引かれ、彼の胸に倒れ込む。
「ご、ごめっ……んっ?!」
慌てて身体を起こそうとした時、唇に柔らかい物が押し付けられた。
どうやら口付けをされているらしい。ただ触れるだけの口付けは初めてだ。
「本当に、凄く可愛い……」
「……あ、ありが、とう……?」
そんな事を言われるのは初めてで、どう返すのが正解か分からない。どぎまぎしてしまう。
「俺の方こそ、ありがとう……助けてくれて……」
「…………わ、私は何もっ! 教会に運んだのはアウインさんだし、傷を癒したのは神父さんだしっ……」
自分に出来る事など、ほとんど無かった。早苗はそう思っている。
「治癒代、高額だったでしょう? ……それに俺、呼吸止まってたらしいね」
「……っそれは、あっ」
今度はギュッと抱き締められた。
「さて、ここは長くは居られないし、また追手が来るだろうから、安全な場所に移動したいよね…………でも、外見がねぇ」
「このままじゃあ、すぐ見付かっちまうよな」
アウインも師に同意した。ミリウスは可愛らしく首を傾げながら思案する。
「ん~……アル君、女装でもする?」
「……え?」
何とミリウスの提案通り、アルは女装する事になった。正確には、全員が魔法で毛色を変えるなどして変装する事になったのである。
魔法をかけたのはアウインだ。スタイリングはミリウスが担当したのだが、それがまたプロ並に凄い。
アウインは金色の短髪になり、黒いローブでは無くスリーピースのスーツを着ている。いかにも魔法使い然としたいつもの風貌とは全く違う。暑がったのでベストだけでジャケットは着ていないが、かなりちゃんとした大人に見える。早苗もうっかりドキッとしてしまうくらい格好いい。
ミリウスは髪の長さはそのままに、焦げ茶色に変え、ハーフアップを止めて一つに結んだ。それだけで随分男性的な印象になる。
金と銀のニ人組は、金髪と銀髪の美少女達だった。金髪の方がセレーナ、銀髪の方がサラと言うらしい。このままでは目立ちまくる事この上無いので、ニ人共髪をミリウスと同じ焦げ茶に変え、サラは短髪にして男装させる事になった。
早苗はと言うと、何故かアルの希望でそのままの黒髪をセミロングに伸ばされ、日焼けを隠す化粧をされ、服装も可愛らしい緑のワンピースを着せられた。
コンコン、扉をノックして声をかける。
「アル? 終わった?」
「……終わったよ」
扉を開けて入ると、化粧道具を片付けるミリウスとベッドに横たわる深窓の美少女……ではなく、女装させられたアルが居た。
アルは早苗と同じ黒髪になっていた。緩くカールした長い髪を白いリボンでサイドアップにして、清楚な白いブラウスに踝くるぶしまである紺のロングスカートを穿いている。
骨格を隠す為ブラウスはふんわりした長袖で、喉仏も襟で隠れる作りだ。少々季節感が合わないが、顔色が悪く病弱そうな外見には違和感が無い。胸には詰め物をしているのか、膨らみまであった。
全ての衣装を調達したのはミリウスだが、一体この短時間でどうやって揃えたのか不思議で仕方無い。
「……うわあ、凄く、凄ぉーく綺麗だねっ」
早苗はベッドに駆け寄る。
「……あんまり嬉しくないけど、ありがとう。君も……馬子にも衣装だね」
「うっ……だよね~似合わないよね、こんな長い髪初めてだし、スカートだって高校の制服以来だし……」
アルの感想に、少し焦ったように言い訳を並べた。
「クスクス……」
ミリウスが笑いながら部屋を後にする。パタリと扉が閉まった。
部屋は早苗とアルのニ人だけだ。アルは彼女の手を取ると、親指で甲を撫でる。
「……冗談、そう言う格好も可愛いよ」
「へ……? わっ!」
そのまま手を引かれ、彼の胸に倒れ込む。
「ご、ごめっ……んっ?!」
慌てて身体を起こそうとした時、唇に柔らかい物が押し付けられた。
どうやら口付けをされているらしい。ただ触れるだけの口付けは初めてだ。
「本当に、凄く可愛い……」
「……あ、ありが、とう……?」
そんな事を言われるのは初めてで、どう返すのが正解か分からない。どぎまぎしてしまう。
「俺の方こそ、ありがとう……助けてくれて……」
「…………わ、私は何もっ! 教会に運んだのはアウインさんだし、傷を癒したのは神父さんだしっ……」
自分に出来る事など、ほとんど無かった。早苗はそう思っている。
「治癒代、高額だったでしょう? ……それに俺、呼吸止まってたらしいね」
「……っそれは、あっ」
今度はギュッと抱き締められた。
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