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5話 部活の勧誘

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 「君もまた、我々と同じく、この世成らざる者達と戦う力を持つ側の人間なのだろう?であればー」

 「えっ?何それ??」

 「・・・??」

 「「・・・えっ??」」

 意気揚々と勧誘の言葉を並べていた宇都美は、何のことだかさっぱりの俺と、2人して小首を傾げた。

 「ふむ。君は、これまで、物理少年として、人知れず、フラグメントとの戦いに身を投じてきたのではないのか??」

 「えーっと、まず、フラグメントって何??」

 「・・・白川くん?」

 宇都美は、これは一体どういう訳だね?という意を込めた、白川へ視線を向ける。

 「ん?・・・彼は、物理少年。間違いない!」

 と言って、白川は親指を立てる。

 「物理少年??・・・って何?ちなみに、俺、物理は苦手な方なんだけど。」

 しかし、俺のこの発言を聞いた白川も、眉間を吊り上げ、小首を傾げる。

 「ただいま戻りました、契約主マスター。少々地獄へと、有給を申請するために、席を外しておりました。」

 空間が歪み、手のひらより少し大きめの黒い渦から、クレイドルは現れた。

 「あっ、あの時の悪魔!・・・確か、クレイドル、だっけ?あの時は、力を貸してくれてありがとう。助かったよ。」

 「いえいえ、あの程度、礼には及びません。きっちりと、対価も頂いたことですし。まぁ、強いて言うなら、契約には値しますが。」

 「・・・え?契約?」

 クレイドルは、俺の右手を掴み、俺の視線の高さまで、翼をパタパタと動かし浮上する。

 すると、中二病チックな魔方陣が、俺の右手の甲に現れる。

 そこへ、クレイドルが手をかざすと、ほんの僅かに、魔方陣の形が変化した。

 「これであなたは、私の正式な契約主マスターとなりました。」

 「え??何それ??ってか、この魔方陣何??消えんの??」

 「その魔方陣が消える事はありません。契約主マスターが二十歳の誕生日を迎えるか、童貞を卒業なされるまでは。」

 「・・・へっ??」

 目覚めてからというもの、俺は、謎の状況に置かれ続け、とうとう頭がバグってしまったらしい。

 「これで契約主マスターは、正式な物理少年となりました。以後、私は契約主マスターの傍で控え、いつ、いかなる時でも、契約主マスターの命に従い、契約主マスターの欲するだけのお力を、お貸しする事が可能となります。また、この世成らざる者との戦闘以外で、契約期間中に、契約主マスターが命を落とすことがないよう、護衛も勤めさせて頂きます。」

 とりあえず、俺は、クレイドルがペラペラと話している間、右手の甲を擦ったり、引っ掻いたりして、中二病チックな魔方陣を消そうとしたが、全く消える気配はなかった。

 「先程から、君は、一体全体、何をしているのだね?」

 「何って、見たら分かるだろ!?このくそ恥ずかしい魔方陣をーー」

 「あぁ、そうではなく、私は、先程から1人で、何をぶつぶつと言っているのか?と問うているのだ。」

 「1人でって、いや、だから!ここに居るだろ!?悪魔が!」

 宇都美は、訝しげな眼差しで、俺とクレイドルの方を伺う。

 「ん。居るよ?」

 いつの間にか近付いていた白川は、クレイドルに顔を近付け、そのほっぺたをつついていた。

 「・・・可愛い。」

 「あんまり触らない方が良いミ。僕らとは相対する属性だから、反発するミ。」

 小動物の言う通り、白川がつつく度に、バチッ、バチッ、という効果音が発生していた。

 「あ、ミーちゃん。お帰り。」

 「久方ぶりに、人間界へと訪れてみれば、再び、あなたと接点を持つことになるとは。因果なものですね、ミカエル。」

 「・・・全くだミ。」

 天使と悪魔、そして、その間で両者をキョロキョロと交互に見る白川。

 「・・・2人は知り合い?」

 「えぇ。古来より、魔法少女と物理少年は対となる存在。故に、切っても切れない腐れ縁、みたいなものです。」

 「腐れ縁・・・、まぁ、確かにそんなものミ。」

 「んー、成る程。」

 意味深な雰囲気を匂わせる天使と悪魔。

 「そこに、居るのだな?天使と悪魔がッ!!」

 ガチャンッ!と大きな音を立てて立ち上がる宇都美。

 「天使であるミカエルくんの事は聞いていたが、悪魔も存在していたとはッ!!名はッ!?あぁ、そう言えば、クレイドルくんと呼ばれていたなッ!!・・・クフフフ、フハハハハッ!フハハハハッ!!」

 宇都美は、仮面を右手で押さえ、高らかに笑う。

 「やはり、君には、何としてでも、我が部へ、入部して貰わねばなるまいッ!!」

 俺へと指を指しながら、そう言い放つ宇都美。

 「これで、この世のまことの理に、また1歩近付けるのだッ!!そして、私が暴くッ!!この世界の真理しんりをなぁッ!!フハハハハッ!!」

 「あれは、いつもあんな感じ。こういう時は、ほっといて良い。」

 独り盛り上がっている宇都美を指差し、白川が平淡な口調でそう言った。

 「・・・あぁ、そっ。」

 俺も白川につられて、平淡な口調で答えた。
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