『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

文字の大きさ
73 / 75
第三章

第三章31 〈試行錯誤〉

しおりを挟む
 
 私はエンドレスサマーの、マスターコアの化身マスコ。
 ダンジョンマスターであるユウタ様に仮初の身体を与えてもらい、ダンジョン内であれば自由に動けるようになりました。


 タロ様とジロ様が旅に出て、もうすぐ一カ月が過ぎようとしています。
 外は本格的に冬が訪れ、このエンドレスサマーも客足がかなり減りつつあります。

 いくらエンドレスサマーが常夏とは言え、寒い冬にわざわざ馬車に乗ってここまでやって来るもの好きな人間は少ないようです。
 モヤに転移ゲートがあると言っても、そのモヤまでの移動が大変では意味がありません。


 で、暇になったダンジョンマスターのユウタ様は何をしているのかというと、新名物『らうめん』なる物の開発に勤しんでおります。



「麺云々を抜きにしてもスープ作りもこんなに難しいとは……」

「麺はバンチが打ってみるって言ってたけど、スープがアンタの理想とはかけ離れてるんだろ?」

 今は海の家カモメ店主のアイラ様と試行錯誤を繰り返して『らうめん』の命であるらしいスープを試作しているようです。


「やっぱり魚介ダシだけじゃなくて、動物系のWスープのがいいのかなぁ……」

「ユウタの言ってる事はあんまり分かんないけど、色々試してみるしかないね」

「魚も乾物が無いから、どうしてもスープが生臭くなりがちだしなぁ……」

「一度身とアラや骨は分けて調理してみるかい?」

「そうだね。一度分けて焼いてからダシをとってみよう。ダメなら煮干し作りも視野に入れなきゃなんだよな」

 何やらブツブツ言いながら、魚を下ろしています。
 なかなかの手際のようです。


「それから味はどうするか……味噌や醤油があると良いんだけどなあ……やっはシンプルに塩か。この前は刺身も塩で食べたけど、結構美味かったしな」

「魚醤なら手に入らない事もないけどね。ここで作れない事もないだろうし」

「うーん……魚醤かぁ。独特な臭いがあるんだよなぁ……それか思い切って豚骨的なスープにするかだな」

 どうやら何か思いついたようです。
 ナイトウルフのステアーとピニャに狩りのお願いをしたみたいですね。


「それはそれとして、魚介スープも諦めないぞ」

 次々と下ろした魚を網の上に乗せて焼き色を付けていきます。

「ここで余分な脂も落としてっと……」

 焼き色がしっかりとついた物から水を張った鍋に入れていきます。
 鍋の中には乾燥させた海藻も入っているようですね。


 魔法で火を起こし、水からゆっくりと煮出していくようです。


「そうだユウタ。香味油なんかもあったほうが良いんじゃないか?」

「香味油?」

「ヤキメンにも使ってるんだけどさ。ネギやニンニクなんかを油で素揚げしたり漬け込んだりして、香りをうつした油のことだよ」

「いいね! 最後に回しかけたら風味が増しそうだ」

「香味脂は私に任せな。どっちみちヤキメンで使うからさ」

「わかった。アイラさんにお任せするよ」

 そう言ってまた鍋の火加減を調節しています。


 タロ様とジロ様が居なくなってしまい、最初はどうなることかと思いましたが、ユウタ様は釣りをしたり新名物の開発に取り組んだりと、なにかと忙しくしておられます。

 もしかしたら寂しさを紛らわすためなのかもしれません。
 タロ様、ジロ様、外の世界を思う存分駆けられたのなら、一刻も早くお戻りなさいますよう……。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ハーハッハッ! 美味かったな! 次だ! 次の名物を目指すぞ!!」

『そんな事は言われんでも分かっておる! ビシエイドの全ての名物を制覇してくれるわ!!』

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...