『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第三章

第三章27 〈提案〉

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「じゃあ、いくぞ? みんな準備はいいか?」


「早くしなさいよ」
「本当面倒な奴だな」
「みんな待ってるぞ」


「じゃあ起動するぞ? 転移ゲート、起動!!」


 チョロ……チョロロロ……ジョボボボボボ……!!


「キターーーー!!」


 転移ゲートの起動を、固唾を飲んで見守っていたみんなから、ワァーッと歓声が上がる。

 俺は帝国ドランゴニアからエンドレスサマーに帰り、温泉を引くための転移ゲートの起動作業をしていたのだが、それがたった今終わったのだ。


「よーし、これでエンドレスサマーも天然温泉を楽しめるようになるぞ」

「それは結構な事だけどよ……オメーに言われて、色んな場所にお湯がいくように配管組んだはいいが、この湯量じゃ溜まるまでに数時間掛かるぜ?」

 そう言ったのは、エンドレスサマーの建築物の全てを手掛ける腕利き大工のバルおじだ。

 俺はエンドレスサマー内の色んな所で温泉が楽しめるよう、転移ゲートの源泉から配管を組んで数カ所の風呂に温泉を引く事を計画していた。


「そっかぁ……ならとりあえずは浜辺の露天風呂だけ温泉にして、露天のお湯が溜まったら他にも回しますか」

「それがいいと思うぜ? そうと決まれば、ギル、トミー、露天以外のバルブ閉めに行くぞ」

「「へい」」

 バルおじの子分というわけではないが、バルおじをいつも手伝っている二人がついて行く。



「えー? お風呂まだ入れないの~?」

 すぐ温泉に浸かれると思っていたリリルからのクレームだ。

「仕方ないだろ。露天だけに絞っても溜まるのは一、二時間掛かるんじゃないか?」

「うっそ~。楽しみにしてたのに……」

「仕方ないぞ。とりあえず解散して数時間後に集まる事にした方がいいぞ」

 タロの意見に皆が賛成し、散り散りに持ち場へと戻って行く。
 戻って行ったのだが、みな温泉が気になるらしく、入れ替わり立ち替わりで誰かが湯の量を確認しに来ている状態だ。
 これではみんな仕事にならない。



 と言うわけで、

「タロ! お前に湯量確認隊長の任を与える!」

 さすがのタロも引き受けてくれないかなと思ったが、俺の心配とは裏腹にタロはやる気満々だ。

「イエッサー!」

 短い手を一生懸命伸ばして敬礼をしている。

「ハッ」

 その姿を見て、通りがかったジロが鼻で笑って去って行った。
 完全に見下した笑い方だったけど、タロには内緒にしておこう。


「じゃあ湯が良い感じに溜まったら連絡するように」

「ラジャ!」


 俺はジッと露天の湯と睨めっこしているタロを残して、アイラの店『海の家カモメ』を目指す。
 湯が溜まるまでヤキメンでも食べて待とうと思っていた。


「しかし、ドランゴニアでもドンパチやってきてたとはね~。しかもドラゴンや魔族と……よく生きてたね」

 出来立てのヤキメンを運びながらアイラさんが言う。

「ドンパチって、嫌な言い方しないでよ。戦闘になったのは流れですよ。あくまでもダンジョンの調査を命じられただけで、ドラゴンな魔族も偶然ですって」

「偶然で魔族と何回も戦うかね~?」

 アイラさんは年上のお姉さんて感じで、色々な事を気軽に相談出来るから、ついつい色々話してしまう。


「まあ、無事に帰ってきて何よりだよ。ココはアンタがいて初めて成立してる場所なんだ。無理だけはしないでね」

「気を付けます」

 俺はヤキメンを頬張りながら考える。
 確かに今回も何とかなったから良かったが、出来れば魔族と戦いたくないし、面倒な事にも巻き込まれたくない。

 俺の当初の目的は、ここを海のリゾートにしてのんびりと過ごす事だったはずだ。


「ヨシ! 当分エンドレスサマーでノンビリする事に決めた!」


「……本当か?」

「ん?」

 尋ねてきたのはジロだった。


「本当に当分いるのか?」

「そのつもりだけど?」

「ならしばらくの間、俺が外に出てもいいか? たまには外に出たくてよ」


 突然の守護者代理からの提案だった。

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