『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

文字の大きさ
24 / 75
第二章 エンドレスサマー

第二章9 〈二人組〉

しおりを挟む
 
「なーなーユウタ~、サトゥルのお店やってないよ?」
「ん~……本当にやってないなぁ」

 アイテムの換金を頼みたかったのに、お店が営業していないのは困るな。
 それにバルおじが言っていた、問題を抱えていそうってのも、あながち的外れでもないのかもしれないな。
 一応ノックだけしてみるか。


 コンコンコン……。
 ……コンコンコン。

「サトゥルさーん! ユウタですけど~……」

 しばらく待ってみたが返事がない。

「留守か……心配だけど、仕方ないから帰るかタロ」
「だな」

 そう言って俺たちが立ち去ろうとした時、ふいに誰かに呼び止められた。


「おい兄ちゃん。ここの店主の知り合いか?」

 俺に声をかけて来たのは、紳士を装っているが目つきの悪い男と、いかにもガラの悪いゴロツキといった感じのテンプレ通りの二人組みだ。

「……」

 サトゥルさんは本当にトラブルに巻き込まれているのかもしれない。
 ここはただの客を装って情報を聞き出した方が賢明かな。

「おめー兄貴が聞いてるだろ? 答えろや!」
「オイ、やめねーか。お兄さんが怖がってんだろ」
「す、すいやせん」

「で? お兄さんは店主の知り合いかい?」
「いえ、路銀が寂しくなってきたので、アイテムの換金で偶然寄っただけですけど」
「そうかい……悪い事言わねーから、ここの店で換金するのはやめときな」
「え? 何故ですか?」
「ここの店主は人の客を横から掠め取る悪人だからだよ!」
「お前は黙ってろ! だが、まあそういう事だ。ルールを破って、あるお方の客を掠め取った悪人なのさ。で、不義理を働いた奴に制裁をって事で、俺たちみたいなのが雇われてるのさ」 

 あのサトゥルさんが不義理? ルール違反?
 にわかには信じられないな。
 これは裏をとる必要があるな。


「お兄さん、俺たちみたいなのに絡まれてるのに嫌に冷静だな」
「大物気取ってんじゃねえぞコラァ!!」

「ヒィィ……勘弁して下さい。本当は怖くて怖くて仕方ないんです。もう行きますから許してください」

「いや、怖がらせて悪かったな。店主の行方を知らないんならいいんだ」
「で……では……」

 急に下手な演技をしてしまったけど、怪しまれなくって良かった。
 次からはもう少し上手に芝居しないとな。

 〈スキル【演技】を有効にします〉

 オイ~、遅いよ……いや、上手く演じなきゃと思ったからスキルが出たのか?
 イマイチよく分からん。
 スキル【操作盤コンソール】で確認すると、確かに【演技】がオンになっている。
 ふむ……やはりよく分からん。
 まあ、スキルの事は置いといて、何とか情報を集めなければ。


「オイラがさっきの奴ら噛んでやれば、色々吐くと思うぞ?」

 いやいや……万が一アイツらの言い分の方が正しかった場合に、それでは困っちゃうからね……俺もサトゥルさんも。

「ならどうすんだ?」
「何とかサトゥルさんに会わないと……」

 離れた所から見ていたら、二人組も諦めたのかどこかに去って行った。

 もう一度お店をノックしてみるか……。

 二人組がいないことを確認してから、サトゥルさんの店に近づく。
 そしてノックをしようとしたら、ゆっくりと静かにドアが開いた。

「サトゥルさん!」

 俺が声を掛けると、サトゥルさんは人差し指を口に当て静かにするよう促してきた。
 そして店の中に手招きされ、俺とタロが入るとすぐさまドアを閉め鍵を掛け奥の部屋へと案内される。


「ここなら大丈夫です」
「ふぅ……サトゥルさん大丈夫ですか? さっきの奴らは……何があったか話してもらえませんか?」

 サトゥルさんはとても申し訳なさそうに切り出した。

「ユウタさんに前回交換に出していただいた、道具箱と金杯があったでしょう? それを私が横取りしたとアルモンティアの換金所の店主に言われまして……」

 アンモンティアのアイテム換金所……ファンタジー版越後屋セルジオか!

「確かに初めはアルモンティアで換金に出しましたけど、店主の横柄な態度が嫌で取引せずに帰って、サトゥルさんにお願いしたのに」
「セルジオさんにそう文句を言われてから、店の周りをガラの悪い二人組がうろつくようになりまして……店に入ろうとするお客にある事ない事言って追い返してしまうようになったんです」
「そんな……酷すぎる」
「その内身の危険を感じるようになりまして……それで店を閉めて隠れていたんです」

 そんな……俺があの悪徳店主にサトゥルさんの店で換金してもらうって言ってしまったばっかりに、サトゥルさんに迷惑をかけてしまった。
 この責任は俺が取らなくちゃ。


「すみません。俺が下手な事言ってしまったせいで、サトゥルさんに迷惑かけてしまって……全て俺の責任です。俺が何とかしますので、それまで安全な場所で隠れていて下さい」
「そんな……お客様であるユウタさんに迷惑を掛ける訳には……」
「いえ、迷惑なら俺が掛けてしまったんで責任とらせてください。それにこの店が万が一無くなってしまったら、俺も困りますから」

 取り敢えず、サトゥルさんに万が一があっちゃダメだから、エンドレスサマーに避難してもらおう。


「タロ、俺が2人組を引きつけるからサトゥルさんと村の外で待っててくれ」
「まかせとけ!」
「うわぁ! 犬が喋った!」

 サトゥルさん……驚くのも無理ないけど、そんな大声出したら見つかりますよ。

 俺はサトゥルさんにタロがフェンリルである事や話せる事、そしてエンドレスサマーに避難してもらう事を説明した。

「フェ…フェ…フェンリル……」
「大丈夫! サトゥルは噛まないぞ」
「か……か……噛む……」
「こらタロ! サトゥルさんをあまりからかうな」
「メンゴ!」

「じゃあ、俺は先に出て奴らを引きつけるんで、タロと2人で村の外で待っていてください」
「わ、わかりました」

 俺は二人より一足先に裏口から外に出た。
 少し店から離れてから表に回ると、やはりあの二人組が店を見張っていた。


「あの~」

「なんだ、さっきのお兄さんか。どうした?」
「さっき向こうで換金所の店主が隠れるように歩いてました」
「なんだと~? 嘘じゃねえだろうなコラァ!」
「オマエは黙ってろ! 堅気のお兄さんに凄んでんじゃねえ! 情報ありがとうよ。その辺りまで案内頼めるか?」
「勿論です。こっちですよ」

 そう言って俺は2人組をサトゥルさんの店から離すのに成功した。
 スキル【演技】が少しは役に立ったのかな?
 歩きながらサトゥルさんの店の方を軽く窺うと、タロが無事にサトゥルさんを連れ出してるのが見えた。


「この辺で人目を気にしながら歩いてるのが見えたんです」

 十分店から距離をとれたから、適当な場所を二人組に教えた。

「ありがとな、お兄さん」
「いえ……では俺はこれで」

 俺はその足で村の外で待つタロとサトゥルさんと合流してエンドレスさまーに向かう。
 もちろんタロがオリジナルサイズのフェンリルに戻ったときに、サトゥルさんが驚きの余り足腰が立たなくなったのは言うまでもない。


 エンドレスサマーに着いて、マスコとリリル、ジロに事情を話してサトゥルさんを匿ってもらう。
 ここにいる限りは万が一にも二人組やセルジオに見つかる事はないだろう。

「マスコ、リリル、サトゥルさんを頼んだぞ」
「俺様には頼まね~のかよ!」
「ジロは戦力の要だろ!? お前が全員を守るんだぞ」
「お、おう……素直に頼まれると恥ずいな」

『では行くぞユウタ。我らの仲間に手を出した事を後悔させてやろう』

 へえ……タロ的にもサトゥルさんは仲間サイドの人間なんだな。

「ユウタさん、本当に無理しないで下さいね。これでユウタさんが怪我でもしたら私は……」
「大丈夫ですよ。全て片付けて帰ってくるんで、リリル達と待っていてください。決してサトゥルさんに危害を加える奴らじゃないんで」
「そうよ。私達と海で遊んで待ってましょ」

「それじゃあ行ってくる。行くぞタロ! 反撃開始だ!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...