7 / 75
第一章 ダンジョンマスター・ユウタ
第一章6 〈アルモンティア〉
しおりを挟む
モヤから戻ってすぐに、買ってきたレモンゴで試作中だ。
レモンゴの実を絞り、果汁を湧き水に混ぜて魔法で凍らせ細かく砕いて食べてみる。
「おお!コレ相当美味いぞ」
「美味し~!」
「うまいうまい!サッパリとした酸味の中にしつこくない甘さが涼を誘うね」
タロのコメントは的確だがコイツはグルメなのか?
まあリリルとタロにも好評ようでなによりだ。
常夏設定のエンドレスサマー内だと美味さ倍増だね。
「これいくらで売るの?」
『ダンジョンリゾート開店直後の重要な資金源です。値段設定は肝心だと思われます』
……何故かサブコアからマスターコアが話しかけてきた。
しかもダンジョンリゾートの経営に乗り気だよ。
もう面倒だから副社長に任命してやろうか。
「サブコアから急に声するとビックリするから……具現化とか出来ないの?」
『不可能です。ですが、魂のない人形のような物が有れば操作は可能です』
マジで? ならゴーレムとか作ればいいんじゃないの?
俺は土魔法で土人形を作り出して、マスターコアにそれを操ってもらう事にした。
『ユウタ様ありがとうございます。これでエンドレスサマー内でならお力添え出来ます』
「なかなかやるじゃない。見てくれはヒドイけど」
「スゴイよユウタ~」
「そのうち腕のいい職人に可愛い人形を作ってもらおう。んで看板娘になってもらうぞ。とりあえず名前はマスコな」
「なんか良く食べそうな名前ね」
「何でマスコなんだ?」
タロには何故マスコなのか理解出来ないみたいだ。
マスターコアだから略してマスコなんだよ!
マスコも気に入ってくれるといいけど……。
『土の身体に名前まで……本当にありがとうございます』
気に入ってくれて何よりだ。
話はだいぶ脱線していたが、カチ割りレモンゴの値段は一杯500チッポにしようと思っているんだけど……。
何も考えていないタロも含め、値段には全員が賛成してくれた。
それからマスコに守護者の事について聞いてみる。
ずっと気になってたんだよね。
『原則としてダンジョンマスターが守護者になります。ですが例外もあります……守護者がダンジョン内に不在の時です。その場合は代理の者が死亡するとマスターの権利が勝者に移動してしまいますので、ユウタ様も十分お気を付け下さい』
なるほど。出来れば戦闘とか一切起きない平和なダンジョンにしたいけどな。
後は、バルガスさんとパントさんに頼んだ物が出来上がるまでは運転資金の調達と、モンスターの配置が主な仕事になる。
モンスターは、食べられる弱い魚系モンスターを多数召喚して海に放つ。
モンスターとは名ばかりのただの魚だ。
あとは浜辺に蟹と貝も召喚して配置する。
大量に召喚したが、モンスターと呼ばないような雑魚ばかりなので魔力も大して消費しないで済んだ。
いつかは釣りとかもやれるようにしたいし、浜焼きバーベキューなんかも名物にしていきたいな。
夢ばかりが膨らんでゆく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここがアルモンティアか……モヤとは違ってデカイな」
俺とリリルとタロで運転資金調達の為、ダンジョンから30km程離れたアルモンティアの町まで足を伸ばしてみた。
出来るだけモヤにお金を落として村を活気づけたいところだけど、サトゥルの店だと現金が足りない可能性があるからね。
運転資金確保のために今日は安く売るつもりはないんだよね。
「ユウタ! こっちこっち!」
リリルとタロが換金所を見つけてくれたらしい。
2人の所に行くと何故か行列に並んでいる。
「えっと……君達は何をしているのかな?」
「見てわかんないの? 並んでんのよ」
何で並んでるのかを聞いてるんだよ俺は。
「ユウタ~、オイラ達はどうしてもこのヤキメンってのを食べてみたいんだ」
タロ達が食べたがっているのは、屋台で売っているヤキソバの様な食べ物だった。
ソースのような香りがとても香ばしい。
しかしヤキソバに似た食べ物がこの世界にあるとは思いもよらなかった。
「はいはい……帰りに買ってやるから先に換金所行かせてくれよ」
「ええーー!? 今食べたいんだけど!」
「知らねーよ先行くぞ」
「お金くれたら自分達で買って食べてるから……」
「俺がいなきゃ言葉が通じないだろうが。用事済ませてからにしようぜ」
「オイラは人間の言葉話せるぞ!」
「うるさいお座り!!」
ダダをこねる2人を無視して換金所を探しに行く。
冒険者ギルドと商人ギルドに挟まれるように、換金所はありすぐに見つかったが、モヤの換金所とのあまりの違いに驚いた。
まずデカイ。
サトゥルの店15倍くらいデカい。
そして装飾がエグい。
趣味が悪いと言っても言い過ぎじゃない。
こんな豪華絢爛な店構えしてちゃ、当店はぼったくってますって言ってるようなもんだろうに。
「御免ください」
無駄に装飾品でゴテゴテした扉を開けて中を覗いてみる。
すると、すぐ店員が気付いてくれて中へ通された。
儲けてそうなだけあって、サービスはしっかりしてるのかな?
「すぐに店主が参りますので、こちらでお待ち下さい」
いかにも美人秘書なお姉さんに言われて、高そうな椅子に腰を掛ける。
タロは足元に座り、リリルはそのタロの上に座っている。
しばらく待っていると、カウンター越しにいかにもお金持ちって感じのお爺さんが来た。
だがその雰囲気はあまり良いものではなく、ファンタジー版越後屋と言ったところか。
「どうもお待たせしました。当換金所の店主セルジオです」
「そっちの越後かい」
「何か言いましたか?」
しまった思わず声に出てしまった。
だが、さっきからセルジオと名乗る店主の視線が気になる。
丁寧な言葉遣いとは裏腹に、何か汚い物を見るかのような目で俺達を見ている気がする。
「それで今日はどのうような品を?」
今日換金するのは宝石で装飾された金杯二脚と、これまた宝石で装飾された小さい道具箱だ。
あらかじめ【真贋・解析】で鑑定した結果は、金杯が一脚200万チッポ。
道具箱が320万チッポ合計720万チッポの価値があるらしい。
手数料など引かれて600万チッポになればいいのかな。
「これはなかなかの逸品ですな。特に道具箱が素晴らしい」
カウンターに並べたアイテムを見て、セルジオが真剣な顔になっな。
これだけの規模の店の店主なだけあって、確かな眼を持っているようだ。
鑑定スキルを持っているのかな。
よく考えてみたら、この世界の換金所も大変だ。
換金に来た客が、俺みたく鑑定スキルを持っている事だってあるのだから。
下手な値段を付けよう者なら、一発で信用を失ってしまう。
「お待たせしました。素晴らしい品で、つい見惚れてしまいましたよ」
「運良く良い宝箱引けたみたいです」
「やはりダンジョンは夢がありますな。そうそう、ギルドの登録証をお願いします」
持っていない事を伝えると、露骨に嫌な顔をされた。
「はぁ~……本当は登録していない人とは取引したくないんだよ。登録くらいチャチャっと済ませて来ては? 両隣がギルドなんだから」
あまりの変貌振りにカチンとくるが、初めから嫌な感じは見え隠れしていたから驚きはしない。
それに今はまだギルドなんかに登録して、しがらみを作りたくないんだよな。
あくまでもマイペースにリゾート経営ライフを送りたいから。
「なら全部で320万チッポだ」
「は?」
「聞こえなかったか?全部で300万チッポって言ったの!」
一瞬で値下げしやがった。
「俺一応鑑定スキル持ちなんですけど……」
「はん! ギルドに登録もしてないような奴の言う事誰が信じるのかね?」
「面倒だから登録してなかったけど、腹立ったから登録してくるわ」
そう言ってアイテムを回収して換金所を出た。
「何アイツ感じ悪い」
「オイラが噛んでやろうか?」
「こらタロ!お座り! お前が噛んだら死んじゃうからね。とにかく登録してからが勝負だ」
冒険者ギルドと商人ギルドどちらに登録するか悩むところだが、商売する以上いずれは商人ギルドに登録しないといけない時が来るだろう。
今回は冒険者ギルドに登録しよう、記念にもなるし。
ギルドに入る前に【操作盤】を使ってスキル構成の隠蔽を図る。
【真贋・解析】をオフにして【鑑定】だけをオンにする。
それから【四次元的なアレ】以外全てオフにして最後に【剣術】だけをオンにして偽装完了だ。
これならアイテムボックス持ちの駆け出しの冒険者っぽいだろう。
ギルトに入り受付で、ファンタジー恒例の水晶に手を当ててから冒険者登録をする。
水晶に手を当てる事で所持スキルがわかるらしい……偽装しといて良かった。
手数料を支払い登録証をもらう。
見てみると『ルーキークラス』と書かれている。
所持スキルの欄には、剣術・鑑定・アイテムボックスとだけ書かれている。
それから受付の人から、ランクアップやランクダウンの条件の説明をされそうになったが、ルーキークラスから上げようとは思わないので丁寧に辞退した。
ヨシ……これであのセルジオをギャフンと言わせる準備が出来た。
【操作盤】で元の状態に戻す事も忘れないようにしてから、換金所に戻って行く。
「登録してきたで! これが登録証や。所持スキルに鑑定があるやろ?」
【交渉術】のせいか、何故かエセ関西弁になりながらセルジオに登録証を見せた。
セルジオはまさか本当に鑑定スキルを持っているとは思わなかったのか、明らかに動揺している。
恐らく交渉術の一つとして鑑定スキル持ちだと言う人が多いのだろう……俺の事もその手の客と思って大きく出ていたに違いない。
「で? 査定ナンボやったっけ!?」
「……600万チッポです」
「ほ~ん……登録証持ってきただけで倍増するんやね」
「いや……それは、その……」
「で? ワイ鑑定スキルある言うたよな? ワイの鑑定とだいぶ開きがあるようやが」
「それは……手数料とかありまして……」
セルジオの顔色が悪い。
「手数料? それだけで120万も取るん!? そらこんな店が建つわけやわな」
「……勘弁して下さい。700万チッポお支払いします」
「いや……もうええ。脅迫しとるんちゃうし、この店では取引せん! 信用ないわ! モヤのサトゥルさんに600万くらいで換金してもらうわ」
「そんな……!」
「最初から誠実に査定してくれてたら、多少安くても取引したのに……残念です」
そう言って俺たちはセルジオの店を出た。
「あ~スッキリした!アイツの顔ったらなかったわね」
「オイラももう少しで噛むところだったよ」
「お座り!!」
「結局町に来たのは無駄足だったわね~」
「そんな事ないさ。サトゥルがいかに誠実な仕事してるかが確認出来たし、町も一度見てみたかったからね」
「ねぇユウタ~、そんな事より約束のアレ食べに行こうよ~」
「仕方ない……行くか」
「「やったーー!」」
そうして行列に並んでやっと順番が来た。
「らっしゃい!」
元気なお姉さんにヤキメンを2つ頼む。
もちろんタロの分はネギ系の野菜は抜きにしてもらって、リリルは俺の分を少し分けてあげるから2つでいい。
「うっま」
「美味しい~!」
「この舌にまとわりつく肉の旨味が何とも言えないね~」
タロはやっぱりグルメなのかもしれない。
それはさておき、このヤキメンうますぎる。
いずれあのお姉さんと交渉してダンジョンにも出店してもらえないかなあ?
もしくは暖簾分けしてもらうか……。
やはり海辺でヤキソバ的な物を売らないわけには行かないと思うんだよね。
それからアルモンティアの帰りに回り道をしてモヤに寄り、サトゥルと680万チッポで取引を成立させた。
サトゥルとはバルガスさんやパントさんと同じ日に換金する約束をして、その日までに現金を用意しておいてもらう事にして、ダンジョンへと帰った。
レモンゴの実を絞り、果汁を湧き水に混ぜて魔法で凍らせ細かく砕いて食べてみる。
「おお!コレ相当美味いぞ」
「美味し~!」
「うまいうまい!サッパリとした酸味の中にしつこくない甘さが涼を誘うね」
タロのコメントは的確だがコイツはグルメなのか?
まあリリルとタロにも好評ようでなによりだ。
常夏設定のエンドレスサマー内だと美味さ倍増だね。
「これいくらで売るの?」
『ダンジョンリゾート開店直後の重要な資金源です。値段設定は肝心だと思われます』
……何故かサブコアからマスターコアが話しかけてきた。
しかもダンジョンリゾートの経営に乗り気だよ。
もう面倒だから副社長に任命してやろうか。
「サブコアから急に声するとビックリするから……具現化とか出来ないの?」
『不可能です。ですが、魂のない人形のような物が有れば操作は可能です』
マジで? ならゴーレムとか作ればいいんじゃないの?
俺は土魔法で土人形を作り出して、マスターコアにそれを操ってもらう事にした。
『ユウタ様ありがとうございます。これでエンドレスサマー内でならお力添え出来ます』
「なかなかやるじゃない。見てくれはヒドイけど」
「スゴイよユウタ~」
「そのうち腕のいい職人に可愛い人形を作ってもらおう。んで看板娘になってもらうぞ。とりあえず名前はマスコな」
「なんか良く食べそうな名前ね」
「何でマスコなんだ?」
タロには何故マスコなのか理解出来ないみたいだ。
マスターコアだから略してマスコなんだよ!
マスコも気に入ってくれるといいけど……。
『土の身体に名前まで……本当にありがとうございます』
気に入ってくれて何よりだ。
話はだいぶ脱線していたが、カチ割りレモンゴの値段は一杯500チッポにしようと思っているんだけど……。
何も考えていないタロも含め、値段には全員が賛成してくれた。
それからマスコに守護者の事について聞いてみる。
ずっと気になってたんだよね。
『原則としてダンジョンマスターが守護者になります。ですが例外もあります……守護者がダンジョン内に不在の時です。その場合は代理の者が死亡するとマスターの権利が勝者に移動してしまいますので、ユウタ様も十分お気を付け下さい』
なるほど。出来れば戦闘とか一切起きない平和なダンジョンにしたいけどな。
後は、バルガスさんとパントさんに頼んだ物が出来上がるまでは運転資金の調達と、モンスターの配置が主な仕事になる。
モンスターは、食べられる弱い魚系モンスターを多数召喚して海に放つ。
モンスターとは名ばかりのただの魚だ。
あとは浜辺に蟹と貝も召喚して配置する。
大量に召喚したが、モンスターと呼ばないような雑魚ばかりなので魔力も大して消費しないで済んだ。
いつかは釣りとかもやれるようにしたいし、浜焼きバーベキューなんかも名物にしていきたいな。
夢ばかりが膨らんでゆく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここがアルモンティアか……モヤとは違ってデカイな」
俺とリリルとタロで運転資金調達の為、ダンジョンから30km程離れたアルモンティアの町まで足を伸ばしてみた。
出来るだけモヤにお金を落として村を活気づけたいところだけど、サトゥルの店だと現金が足りない可能性があるからね。
運転資金確保のために今日は安く売るつもりはないんだよね。
「ユウタ! こっちこっち!」
リリルとタロが換金所を見つけてくれたらしい。
2人の所に行くと何故か行列に並んでいる。
「えっと……君達は何をしているのかな?」
「見てわかんないの? 並んでんのよ」
何で並んでるのかを聞いてるんだよ俺は。
「ユウタ~、オイラ達はどうしてもこのヤキメンってのを食べてみたいんだ」
タロ達が食べたがっているのは、屋台で売っているヤキソバの様な食べ物だった。
ソースのような香りがとても香ばしい。
しかしヤキソバに似た食べ物がこの世界にあるとは思いもよらなかった。
「はいはい……帰りに買ってやるから先に換金所行かせてくれよ」
「ええーー!? 今食べたいんだけど!」
「知らねーよ先行くぞ」
「お金くれたら自分達で買って食べてるから……」
「俺がいなきゃ言葉が通じないだろうが。用事済ませてからにしようぜ」
「オイラは人間の言葉話せるぞ!」
「うるさいお座り!!」
ダダをこねる2人を無視して換金所を探しに行く。
冒険者ギルドと商人ギルドに挟まれるように、換金所はありすぐに見つかったが、モヤの換金所とのあまりの違いに驚いた。
まずデカイ。
サトゥルの店15倍くらいデカい。
そして装飾がエグい。
趣味が悪いと言っても言い過ぎじゃない。
こんな豪華絢爛な店構えしてちゃ、当店はぼったくってますって言ってるようなもんだろうに。
「御免ください」
無駄に装飾品でゴテゴテした扉を開けて中を覗いてみる。
すると、すぐ店員が気付いてくれて中へ通された。
儲けてそうなだけあって、サービスはしっかりしてるのかな?
「すぐに店主が参りますので、こちらでお待ち下さい」
いかにも美人秘書なお姉さんに言われて、高そうな椅子に腰を掛ける。
タロは足元に座り、リリルはそのタロの上に座っている。
しばらく待っていると、カウンター越しにいかにもお金持ちって感じのお爺さんが来た。
だがその雰囲気はあまり良いものではなく、ファンタジー版越後屋と言ったところか。
「どうもお待たせしました。当換金所の店主セルジオです」
「そっちの越後かい」
「何か言いましたか?」
しまった思わず声に出てしまった。
だが、さっきからセルジオと名乗る店主の視線が気になる。
丁寧な言葉遣いとは裏腹に、何か汚い物を見るかのような目で俺達を見ている気がする。
「それで今日はどのうような品を?」
今日換金するのは宝石で装飾された金杯二脚と、これまた宝石で装飾された小さい道具箱だ。
あらかじめ【真贋・解析】で鑑定した結果は、金杯が一脚200万チッポ。
道具箱が320万チッポ合計720万チッポの価値があるらしい。
手数料など引かれて600万チッポになればいいのかな。
「これはなかなかの逸品ですな。特に道具箱が素晴らしい」
カウンターに並べたアイテムを見て、セルジオが真剣な顔になっな。
これだけの規模の店の店主なだけあって、確かな眼を持っているようだ。
鑑定スキルを持っているのかな。
よく考えてみたら、この世界の換金所も大変だ。
換金に来た客が、俺みたく鑑定スキルを持っている事だってあるのだから。
下手な値段を付けよう者なら、一発で信用を失ってしまう。
「お待たせしました。素晴らしい品で、つい見惚れてしまいましたよ」
「運良く良い宝箱引けたみたいです」
「やはりダンジョンは夢がありますな。そうそう、ギルドの登録証をお願いします」
持っていない事を伝えると、露骨に嫌な顔をされた。
「はぁ~……本当は登録していない人とは取引したくないんだよ。登録くらいチャチャっと済ませて来ては? 両隣がギルドなんだから」
あまりの変貌振りにカチンとくるが、初めから嫌な感じは見え隠れしていたから驚きはしない。
それに今はまだギルドなんかに登録して、しがらみを作りたくないんだよな。
あくまでもマイペースにリゾート経営ライフを送りたいから。
「なら全部で320万チッポだ」
「は?」
「聞こえなかったか?全部で300万チッポって言ったの!」
一瞬で値下げしやがった。
「俺一応鑑定スキル持ちなんですけど……」
「はん! ギルドに登録もしてないような奴の言う事誰が信じるのかね?」
「面倒だから登録してなかったけど、腹立ったから登録してくるわ」
そう言ってアイテムを回収して換金所を出た。
「何アイツ感じ悪い」
「オイラが噛んでやろうか?」
「こらタロ!お座り! お前が噛んだら死んじゃうからね。とにかく登録してからが勝負だ」
冒険者ギルドと商人ギルドどちらに登録するか悩むところだが、商売する以上いずれは商人ギルドに登録しないといけない時が来るだろう。
今回は冒険者ギルドに登録しよう、記念にもなるし。
ギルドに入る前に【操作盤】を使ってスキル構成の隠蔽を図る。
【真贋・解析】をオフにして【鑑定】だけをオンにする。
それから【四次元的なアレ】以外全てオフにして最後に【剣術】だけをオンにして偽装完了だ。
これならアイテムボックス持ちの駆け出しの冒険者っぽいだろう。
ギルトに入り受付で、ファンタジー恒例の水晶に手を当ててから冒険者登録をする。
水晶に手を当てる事で所持スキルがわかるらしい……偽装しといて良かった。
手数料を支払い登録証をもらう。
見てみると『ルーキークラス』と書かれている。
所持スキルの欄には、剣術・鑑定・アイテムボックスとだけ書かれている。
それから受付の人から、ランクアップやランクダウンの条件の説明をされそうになったが、ルーキークラスから上げようとは思わないので丁寧に辞退した。
ヨシ……これであのセルジオをギャフンと言わせる準備が出来た。
【操作盤】で元の状態に戻す事も忘れないようにしてから、換金所に戻って行く。
「登録してきたで! これが登録証や。所持スキルに鑑定があるやろ?」
【交渉術】のせいか、何故かエセ関西弁になりながらセルジオに登録証を見せた。
セルジオはまさか本当に鑑定スキルを持っているとは思わなかったのか、明らかに動揺している。
恐らく交渉術の一つとして鑑定スキル持ちだと言う人が多いのだろう……俺の事もその手の客と思って大きく出ていたに違いない。
「で? 査定ナンボやったっけ!?」
「……600万チッポです」
「ほ~ん……登録証持ってきただけで倍増するんやね」
「いや……それは、その……」
「で? ワイ鑑定スキルある言うたよな? ワイの鑑定とだいぶ開きがあるようやが」
「それは……手数料とかありまして……」
セルジオの顔色が悪い。
「手数料? それだけで120万も取るん!? そらこんな店が建つわけやわな」
「……勘弁して下さい。700万チッポお支払いします」
「いや……もうええ。脅迫しとるんちゃうし、この店では取引せん! 信用ないわ! モヤのサトゥルさんに600万くらいで換金してもらうわ」
「そんな……!」
「最初から誠実に査定してくれてたら、多少安くても取引したのに……残念です」
そう言って俺たちはセルジオの店を出た。
「あ~スッキリした!アイツの顔ったらなかったわね」
「オイラももう少しで噛むところだったよ」
「お座り!!」
「結局町に来たのは無駄足だったわね~」
「そんな事ないさ。サトゥルがいかに誠実な仕事してるかが確認出来たし、町も一度見てみたかったからね」
「ねぇユウタ~、そんな事より約束のアレ食べに行こうよ~」
「仕方ない……行くか」
「「やったーー!」」
そうして行列に並んでやっと順番が来た。
「らっしゃい!」
元気なお姉さんにヤキメンを2つ頼む。
もちろんタロの分はネギ系の野菜は抜きにしてもらって、リリルは俺の分を少し分けてあげるから2つでいい。
「うっま」
「美味しい~!」
「この舌にまとわりつく肉の旨味が何とも言えないね~」
タロはやっぱりグルメなのかもしれない。
それはさておき、このヤキメンうますぎる。
いずれあのお姉さんと交渉してダンジョンにも出店してもらえないかなあ?
もしくは暖簾分けしてもらうか……。
やはり海辺でヤキソバ的な物を売らないわけには行かないと思うんだよね。
それからアルモンティアの帰りに回り道をしてモヤに寄り、サトゥルと680万チッポで取引を成立させた。
サトゥルとはバルガスさんやパントさんと同じ日に換金する約束をして、その日までに現金を用意しておいてもらう事にして、ダンジョンへと帰った。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる