沖田氏縁者異聞

春羅

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第三章

第五話

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 山南は、刀を捨てる。

 新撰組の志は、尊王攘夷であった。

 それが今はどうだ。

 佐幕派・倒幕派に分かれ、“不逞浪士”と名指した者達をただ、斬っている。

 山南はこの状態を、疑問に思わずにいられない。

 こんなことに、私の剣を振るう気は無い……新撰組に……近藤さんにも土方くんにも、ついていけない、と。

 相談を持ち掛けなくとも、伊東がにこやかに同意を示してきた。

「いやあ、私も反対ですよ、屯所の移転には」

 しかし山南は、彼を“味方”だとは思えない。

 魂胆は手に取るようにわかる。

 伊東は、新撰組を瓦解させる気だ。

「近藤局長も、渋々……といった様子でしたよ。恐らく、発案は土方君でしょうねぇ……」

 山南は胡麻擂りに気が及ばないぐらい、一つの言葉に脳内を支配された。

 近藤さんは……君には相談をしたのか!

 試衛館から寝食を共にしてきた私より、新参に過ぎない所か近藤さん……あなたを破滅に追い込まんとする男に……!

 呆然とした頭で、確信した。

 私の存在意義は、失われた。


 四ツどき、つまりおよそ午前十時。

 普段ならとっくに起きている早起きの山南は、非番の日に部屋で本を読んでいる時

 でも、朝は必ず隊士達が集まる道場に顔を出していた。

 その姿が無かったのを不思議に思い、部屋を覗きに来たのは永倉だ。

 にこやかに本から目線を上げる和やかな顔は無く、よく使い込まれた文机の上には手紙が。

 宛名は近藤。

 理解するのを、頭が拒否した。

 律儀に手紙の封を切らずに携え近藤の部屋を空ける。土方の顔を見て、あから
さまにマズいという顔をした。土方とて追い出されてやるわけにはいかない。ややバカ

 正直に告げた。

「近藤さん、サンナンさんの部屋に……置き手紙が」

 近藤は鬼瓦のように厳めしい顔をさらに険しくしながら、その文面に眼を走らせた。

 乾いた音を響かせて手紙を握りしめる微かに震える横顔を、土方は無言のまま、

「なんと書いてあった?」

と窺う。

「……江戸へ……帰ると……」

 明らかに全文の内容ではないが、十分過ぎる言葉だった。

 すぐに各隊隊長を集めての緊急会議が開かれる。

 そこには、藤堂の姿は無かった。北辰一刀流で同門の山南に人一倍心酔し、試衛館時代から慕っていた藤堂の気持ちは伊東が現れても変わりはしない。隊務で江戸に、行っていたのだ。

「山南さん……っどうして……!」

 近藤は心底悔しそうに、ギリッと歯を鳴らした。

 拳を握るその様を視界の隙間に、ずっと思案顔をしていた土方が言った。

「……総司、お前が追っ手だ。行け……!」

「……ッ歳!」

 近藤はハッとして珍しく怒鳴り、俺達は顔を見合わせざわめいた。

「……僕、が……?」

 ただ一人、沈黙していた当の沖田は眼を見張った。

「……厭か」

 諫めるような目付きの近藤を余所に、ずっと真正面を見据えて話していた土方が、沖田の双瞳を捉えて言った。

「……いえ、行きます」

 総司はすくっと立ち上がり、大小二本を腰に差した。

「総司!」

 引き留めたい……といった表情がありありと浮かぶ近藤に、沖田は微笑った。

 近藤と土方が去った部屋には、幹部隊士達の非難の声、欺瞞に満ちていた。

 土方……サンナンさんを捕らえる為なら手段を選ばない気だ。

 総司なら、サンナンさんと斬り合いになってもまず負けはしない。

 いやそれ以前に、あのサンナンさんが総司を斬ってまで逃げようとするとは思えない。

 土方は、サンナンさんが絶対に逃げられない追っ手を選んだのだ。

 総司の気持ちも考えず……。

 皆一様に眉間を寄せていた為、気が付かなかった。

 白磁の肌を、悦楽に染める狐……伊東甲子太郎に。

 
 山南の追っ手……沖田は、馬の準備をしていた。

 江戸へ向かったのならいくつかの宿に立ち寄るはず。一軒一軒、捜すしかない。

 まず会って話を聞こう……それからどうするか考えればいい。

「総司」

 低い、よく通る声が後ろから聞こえた。

「あれぇ? 土方さん! お見送りですかぁ?」

 振り向くと土方は、沖田の贔屓目もあるかもしれないが、ひどく苦しそうだ。

「サンナンさんを……頼む……。必要ならば、斬ってこい。……お前は、必ず帰れよ」

 生来の天の邪鬼・土方さんの真意を汲み取れるのは、多分僕しかいないんじゃないかな。

「土方さん……はいっ! 行ってきます!」

 つまり、山南は連れて帰ってくるなと言っていた。

 脱走は新撰組の法度により許されていない。幹部だからといって追うことをしなければ、他の隊士に示しがつかない。でも、捕まれば必ず切腹だ。

 土方は、山南を逃がす気だったのだ。

 不器用な優しさ……。この優しさに気付いていいのも、隊内では沖田だけかもしれない。


 冬の乾いた風が、喉を刺す。早馬を走らせながら、軽い咳をした。

「総司さんっ!」

 昼下がりの人手で賑わう町中でも、すぐに誰の呼び声かはわかる。手綱を引いて馬を止めた。

「……月野さん、こんにちは」

「こ、こんにちは! お身体、大丈夫ですか?」

 月野は頬を赤くして見上げる。沖田は、馬にびっくりしたのからだろう、などと思っていたが。

「大丈夫です。……そんな不安そうな顔をしないでください。土方さんが心配しますよ?」

 一人の道のりの中で沖田なりに考えたいくつかの山南を助ける方法には、もしかするとこれきり、月野に会えないかもしれないものもあった。

 それでも、止まることなど考えなかった。


 “山南敬助”

 大津の宿の記帳に、堂々と書いてある。

 逃げる気が無いのだろうか。

 まだ京都からは次の休息所、大津にいること。記帳に本名を書くこと。

 とても、江戸へ帰ると言って出て行った人間のすることとは思えない。

 それも出て行ったのは鉄の掟で縛られた新撰組……捕まれば命は無いということが、わからないはずはなかった。

 山南さんは死ぬ気だ……!

 僕に会えば、例え泣いて説得しても屯所へ戻り、切腹して果てる気なのだ。

 引き返そうとした。

 見つけられなかった振りをすればいい!

 馬に乗ろうと手綱に手を掛けた。

「沖田くん! ここだよ!」

 その時聞こえた声に、絶望した。

 声の主を見上げると、宿の二階から山南は軽く手を振っていた。


 襖を開くと、山南は窓際で外を見つめながら言った。

「ここは眺めがいいよ。来てご覧」

 軽く音を立てて閉めた襖には、墨染めの桜。昔詠まれた詩……

 深草の 野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け

のように沖田の、隊士達の気持ちを汲んで、色を失ったようだ。

 いや、絶対に、僕が悲しい結果にさせはしない。

 ゆっくりと大刀を抜くと、山南はやっと沖田を見た。背景には眼に痛いくらいの、あの池田屋の夜まで着ていた、けれど今では誰も着ていない隊服のような青い空……は黄昏て、焼けていた。

「……斬りますよ」

 本気だと伝える為に、平突きの構え。けれど山南は刀を取ろうともしない。

「抜いてください」

 すると、愛刀・赤心沖光を引き寄せ、すらりと抜く。正眼に構えたのと同時、沖田は一気に踏み込んだ。

 鋼鉄の火花と共に、沖田の非人清光は宙に飛ぶ。

 山南は擦り上げた刀を、沖田の首筋目掛けて振り下ろした。

 どうかしている。自分の死に際に、ひどく達成感を覚えるなんて。

「……これで、いいのかな?」

 しかし山南は、首の皮一枚でピタリと止めた。

「手加減は止してください」

「こちらの科白だよ。それに、君に悪役は似合わない」

 にっこりと笑い、刀を納めた。

 沖田は必死だった。

「僕を斬って江戸へ行ってください! 山南さんなら気付いているはずです! 僕は……今に刀も握れなくなります……。先生の役に立てないなら、生きていたって意味が無いんです! 弱って死ぬくらいなら今、あなたに逃げてもらう為に、この命を使いたい!」

「……今まで……そんな風に、思っていたのだね」

 山南は、人柄通りの温かな手の平で沖田の頭を撫でた。

「君の命は剣の為……近藤さんの為にあるわけではないよ」

 すぐにハッとして

「ああ! すまない! 子どもに対するみたいな真似をして」

と、その手を離した。

「君は君の為に生きればいい。そう生きるのが難しいなら、愛する女性の為に」

 沖田はストンと、その場に山形の膝を作って腰を下ろした。

「そんなヒト、いませんよ」

 そんなことが、許される女のひとはいません。

 呟く沖田に目線を合わせるように、山南は片膝を付いた。

「……もう夕方だから今日は泊まって、明日の朝、一緒に帰ろう」

 また、イヤだと駄々を捏ねそうになるのをぐっと堪えると、

「今夜は呑もうか」

と、窓際の方に座り直した。


 目覚めたのを気付かれないようにゆっくりと細く眼を開けると、山南はすっかり支度を済ませ、また窓の向こうを見つめている。 

 眠っている間に逃げてくれれば、という微かな望みは消えた。

 それとも寝たふりを続ければ逃げてくれるだろうか……と、思いながら沖田は再び眼を閉じた。

「沖田くん、そろそろ起きなさい」

 山南は最初にふっと笑ってから言った。狸寝入りなんてお見通しだったのかもしれない。


 山南の言葉を、その背後で聞いた。

「近藤局長、山南、只今帰りました」

 近藤はもう、何も言わなかった。横に居る土方も、用意していたように表情さえ変えない。各隊隊長の誰もが山南を問い質したり、連れ戻した沖田を責めたりしない。

 覚悟は、出来ていた。

「……切腹、申し付ける」

 静かだった。

「有り難き、仕合わせに御座います」

 山南は深々と、頭を下げた。

「介錯は、沖田くんにお願いいたします」


 稽古場で月野と明里が話していると、輪違屋の芸妓が満面の笑みで告げた。

「え? 身抜け……?」

「おめでとう、明里。もう自由の身や!」

 意味が分からないという様子で明里は慌てた。

「なんでっ! 誰が身抜けやなんて……あたしはっ山南先生に身請けしてもらうんよ!」

 他のお客さまが勝手にそんなことを、と思った。明里の先輩芸妓は折角のことをなんで喜ばないのか不思議そうに、むしろ怒るように言った。

「せやからその山南センセが、あんたを身抜けさせてくれって、お金を置いていかはったんよ?」

 でも身請けと身抜けは、似ているようで全然違う。身請けは、芸妓を引き取る為、

 妻にする為に置屋から請け出すこと。身抜けは、ただ、置屋から抜けさせること。

「あたし以外に女が出来て……それでもあたしに情けを掛けてくれたんにゃろか」

 現実は……比べようもないくらいに残酷とは知らず。

 玄関の方が急に騒がしくなった。

「永倉さま困ります!」

 黄色い声の合間に、永倉の呼び声がする。

「明里天神! いるんだろ! 一緒に来てくれ!」

 切羽詰まった声にハッとすると、明里が飛び出したきっかけの言葉が聞こえてきた。

「サンナンさんが!」


 壬生の新撰組屯所まで、月野はこれで三度目、必死に走った。

 山南の急に駆けつける明里を追いかける。知らせた永倉は、息を切らせながら言った。

 山南が新撰組を脱走し、捕まって、切腹すると。

 月野が涙を風に次々振り撒きながら走る後ろ姿に付いてきたのは、山南の心配は明里に遠慮して、沖田と、土方が気になってのことだった。

 もしかしたらこの悲しい事件に関わりがあるかもしれないお二人が、どんな苦しみを抱えているか。

 思うと、大人しく稽古場に残るなんて出来なかった。

「山南センセェッ!」

 新撰組屯所として間借りしている場所の一つ、前川家の屋敷の出格子に、明里はしがみ付いた。

 躊躇したかのような間の後に窓が開かれ、少し離れた月野が居る場所からは、その手だけが見えた。

 お互いに手繰り寄せ、しっかりと、二人の手が繋がれた。

「約束を……果たせずに、すまなかったね……」

 明里は何か伝えようと口を動かすも言葉にならず、全てが悲痛な泣き声になった。

「……君は自由だよ……。故郷に帰りなさい。お母さまが、病気なのだろう?」

 ――……

 あたし、山南先生に出逢えてよかった。

 すごぉく、大切な人やの。

 あたしきっと、あの人がいてへんかったら……。

 ――……

「あたし……っ生きていけませんッ……あなたがいなければ……自由になっても……意味がない……!」

 山南は室内の介錯人にも、外にいる永倉、月野にも聞こえない小さな声で何か囁くと、想いを振り切るように素早く窓を閉めた。

 明里はその場で崩れ落ち、片手で口を押さえながら、声を殺して泣いた。

 山南の立派な最期の邪魔にならないようにと慮ってだ。指先から覗く震える顎骨から、一所懸命に歯を食いしばっているのがわかった。月野は慰め方の見当も付かないのに近寄って、その背を擦った。

「沖田くん……最期の我が儘だ。私がいいと云うまで、待ってくれないか」

「……はい」

 総司さんが……介錯を……。誰よりも優しいあの人が……どんな気持ちで。

 月野の眼からも、同じように涙が流れてきた。


 末期の盃を終えた山南の首を落とす沖田は慎重に刀を抜き、八双に構えた。

 切腹の作法の一つ、介錯人は抜刀する時、音を立ててはいけない。余計な恐怖を与えない為だ。

 山南は、麻の水浅葱を右肌左肌と脱いだ。この男らしく緩やかで、悲しくも美しい手順を、近藤はじっと見守っている。

 ……泣きたいですね……先生。

 一息に、左腹に刀を突き付けた。

 襖が開いた。

 土方だ。

 自責のような面持ちで見下ろした先には、苦痛に歪む山南の瞳がある。土方の眼に映るその瞳が刹那晴れやかになると、山南は難なくグッと刀を右に引き、一旦抜いて鳩尾から心の臓を貫くと、介錯を促す合図を沖田に。

 眼が、合った。

「……お見事!」

 近藤が送る最後の賛辞を背に、刀を放り投げて、走り逃げたかった。

 当然、そうはいかない。白刃の赤い血を懐紙で拭う。

 近藤は後日、かの赤穂義士の切腹でもこうも見事ではなかっただろう、と語っている。


 先生と呼んだ時の照れた顔が、たまらなく愛しかった。

 山南は明里に、周りを思いやること、人同士の争いなんて何の意味もないこと、そして、人を愛することを教えた。

 山南の言う言葉なら全部信じられ、正しい言葉に従う素直さを取り戻すことができた。

 その言葉に背いているのは、たった一つ。

 ずっと胸で繰り返す、最期の言葉だけ。

 “私のことは、忘れなさい”

 月野は、山南の介錯をした沖田と、切腹という処分に関わっていた土方のことを、客としてだけではない気持ちで慕っている。

「明里さん……帰ってしまうんですね」

 そのことに気付いている筈なのに、明里は一言でさえ恨み言を言わない。いや、恨み言どころか。

「お別れする前に、仲良うなれて良かったわ……ありがとう」

 にっこりと微笑んだ表情は、山南に重なる。

 月野は思う。山南の影響で自分が変わったと言っていたが、今の明里が、元々の明里だった。山南は、それを引き出した。

 明里は、ふるさとに帰った。

 最後まで笑顔の明里を、涙で見送った。


 それ程寒くもないのに、淡雪のちらつく空。閉め切った部屋の中にまで舞い込んできそうな泪雪。

「サンナンさんの死は無駄にしねぇ」

 近藤と土方は二人、おぼろな月を見上げた。いや、実物は見えてはいないのだ。

「トシ……山南さんは……」

「新撰組を“見棄てた”理由なんて、俺ぁわかんねぇ。ただ、死を選んだ理由はわかる」

 近藤は馬鹿正直に真っ直ぐで、人の行動に裏があるとは考えない。だからヤケに人に好かれてしまうのだが、その分自分は傷付くし、また真っ直ぐに考え込む。

 少しばかりの毒が必要な団体の大将をやるには、俺みてぇな“冷血”が混ざって丁度いい。わざと見棄てたなんて言う俺みてぇにな、と土方はやや俯く。

「なぜだ! 何故、あの人が死ななけれはならない!」

 山南の死に、隊士の誰もが嘆かず、涙を流さなかった。泣けば切腹を言い渡した局長が、悪者になることを知っているからだ。その心に気付いてか、近藤も隊士の前で泣かなかった。

 しかし流石にこの時は、眼に涙を滲ませていた。

 だから俺は、泣くわけにはいかねぇ。

「サンナンさんは、伊東の下心に勘付いていた」

 よく“鋭い”と言われる眼光を、意識的に冷たく光らせる。

「伊東さんに……下心?」

 土方に非難する気は無い。

 学識と地位のある奴を無条件に信頼するあんたには思いもよらねぇだろうが、伊東の薄汚さは俺と……サンナンさんが保証する。

「まさか!」

 求める者に無条件で心を開く近藤だからここまでの人数の男が惚れ込むが、やはり反面、一見好意的な人間を疑ってみる事を知らない。

「伊東は近々、脱隊を言い出してくるぜ」

「……なんだと!」

 近藤は、閉じていてもでかい口を真一文字にした。餓鬼大将の頃から変わらない、

 考え込む時……いや、怒りを我慢する時の癖だ。

 やっと目覚めてくれそうな機を逃さず演説した。

「野郎は生粋の勤王屋だ。幕府に尻尾振るばかりの人斬り狼を、天子サマの飼い犬にする気でウチに来た。……たりめぇだが、全員を動かすのは無理だったんだろ。分隊の名目で隊を抜ける。……サンナンさんは、例え幹部であっても、脱走した者は切腹……隊規は絶対だと、身を以て……」

「だからどうして!」

 机にドンと、口に入るとは見知っていても信じられない大きさの拳を叩きつけ、土方の言葉を止めた。

「山南さんが……しなくても、いい……!」

 大人らしいとは言えない表現だが、気持ちはわかる。

 山南の決心は、別に急になわけでも、伊東に知らしめる為だけでも無い。どうしようもなく、少しずつ歯車が食い違っていったのだ。

「サンナンさんは、もう刀を握る気は無かった。隊務に矛盾を感じていた。……池田屋の頃からだ」

 近藤は唖然と、四角い顔を青くしていった。

「……俺はッ……気付いてさえいなかった……!」

「……気付いてても、何も出来やしなかったぜ、俺は。……伊東は俺に任せろ。なんとかする」

 サンナンさん……どんなに見苦しくなろうと俺独りになろうと、俺達の大将の神輿は生涯、下ろしはしねぇ……そこで、見ていてくれよな。

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